日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

72 / 258
第3話

グループ1が輸送船団への攻撃任務に従事している中、レイフォル沖に展開しているグループ2に所属する海上自衛隊の潜水艦『もちしお』『せとしお』『せいりゅう』の3隻は、帝国領パガンダ州からレイフォルに向けて航行中の船団を追尾していた。

 

 

「目標、的針、的速変わらず。気付かれた様子はありません」

 

 

 

せいりゅうの発令所のソナーマンが座っている多機能ディスプレイには、ソナーが捕捉した船団の数と速度を示す光点とデーターが鮮明に表示されている。

せいりゅう以下の海上自衛隊の潜水艦のソナーが捉えた情報は全てコンピューターにより情報処理と解析が行われ、精度の高い情報を得る事が出来、水中攻撃指揮装置を用いての高度な攻撃が可能となっている。

 

 

「目標を確認する」

 

 

せいりゅうはその場で浮上を掛けて、潜望鏡による目標の目視確認を行う。

せいりゅうに搭載されている潜望鏡は高精度のセンサーカメラとなっており、発令所のディスプレイに潜望鏡からの映像が写し出される。

 

 

「潜望鏡下ろせ」

 

 

素早く目視確認を行うと潜望鏡は直ぐに下げられる。録画された潜望鏡のカメラ映像から目標の確認を行う。

 

 

「軍艦みたいですね。駆逐艦級が6隻と軽巡と重巡級が2隻、戦艦が2隻か」

 

 

せいりゅう艦長の『大村慎二』1佐は資料室から手にしていた資料を開く。

資料にはグラ・バルカス帝国海軍が保有していると想定される軍艦と旧海軍の軍艦との性能を照らし合わせた早見表が記されており、大村は映像に写っている軍艦と早見表の軍艦と見比べる。

 

 

 

「駆逐艦はスコルピウス級、巡洋艦はタウルス級とレオ級、戦艦はオリオン級とヘルクレス級だな」

 

「情報通り、彼等の兵器って旧軍のものにそっくりですね。違う所を見つける方が難しいですよ」

 

「そうだな。なにせ大和にそっくりな戦艦も持ってる連中だからな」

 

「攻撃しますか?」

 

「勿論。見敵必戦、サーチアンドバトルだ」

 

「了解。総員戦闘配置を下命します」

 

 

 

せいりゅうは戦闘態勢に入り、もちしおとせとしおを含めた3艦は艦隊を囲むように展開する。

 

 

「魚雷戦用意。目標敵駆逐艦並びに巡洋艦。全管魚雷装填、1番と3番は有線を装填」

 

 

せいりゅうの魚雷発射管4門に89式長魚雷が装填される。攻撃の優先順位は対潜装備が施された駆逐艦を優先して攻撃する。これは古今東西、対潜装備が施された巡洋艦や駆逐艦のような中小艦艇は潜水艦にとっては厄介な敵であり、先にそれらを無力化してから重要目標を叩くのが基本的な戦術である。

 

 

 

「発射管注水」

 

 

 

魚雷発射管に海水が注入され、発射扉が開かれる。

 

 

 

「攻撃準備完了」

 

「1番、3番発射!」

 

「発射」

 

 

 

発射ボタンが押されたと同時に発射管からワイヤーで繋がれた2発の89式長魚雷が放たれ、同時に他の艦からも同型の魚雷が放たれた。艦からの誘導に従って89式長魚雷は変則的な軌道を描きながら艦隊へと接近する。

 

 

 

 

 

その頃、海上を航行するグラ・バルカス帝国海軍第3艦隊第1戦隊と第4戦隊、第9駆逐隊はレイフォル方面への戦力増強のために母港のパガンダ州からレイフォル州に向けて移動していた。

全艦ともレーダーやソナーを使い、駆逐艦が艦隊の外周を囲むように展開し、内側に戦艦2隻と巡洋艦2隻が布陣している典型的な輪形陣を組んでいる。

 

 

艦隊旗艦を勤めるヘルクレス級戦艦『サリン』の艦橋では、艦隊司令官『レオール』中将が自らの艦隊の陣容を眺めていた。

 

 

「うむ、さすがの陣容よ」

 

 

レオールは自信の艦隊の能力に絶対の自信を持っており、転移後はパガンダ州防衛の任に就いていて久しく実戦を経験していなかったが、艦隊のレイフォル移動が決まった時に、ムー大陸で大規模な軍事作戦が行われるのではないかと直感で感じ取り、最前線であるレイフォルへの移動に期待を持っていた。

 

 

「司令、例の話を聞きましたか?」

 

 

側に控えていた参謀長が話し掛けてくる。

 

 

「第2文明圏への最侵攻の話か?」

 

「えぇ。飽くまで噂ですが、その作戦にはグレード・アトラスター級が2隻も投入されると聞きましたが」

 

「情報では、ムーの港に例の化け物戦艦……確かキイとか言う名前だったか?ソイツと日本の1個艦隊、更には陸軍のボーグ大将が率いていた陸軍第4師団を壊滅させた日本軍が駐留していると聞いてる。上は本気で今年の末にはムーを含めた第2文明圏への大進撃作戦を実行するらしい。グレード・アトラスター級の派遣もそれに伴っての事だろ」

 

「しかし相手が強くても所詮は数が少ないです。そんな連中にそれ程までの戦力を投入する必要がありますかね?」

 

 

 

参謀長は知らなかったが、日本がこれまでの戦いで紀伊以外にも潜水艦やミサイル等の近代兵器を使用している事は帝国は把握はしているが、それを実際に目撃した将兵は軒並み戦死か行方不明のため、確実と思われる情報が軍上層部や政府にも上がっておらず、今の所、軍は日本と新生合衆国に対しては油断できないが、戦力差で押せば多少の被害は負うかもしれないが負ける事は無いという意見で一致している。

一部の人間は日本とアメリカ、両国から支援を受けるムーやマギカライヒ等の国家に危機感を持っている者も居るが、数は非常に少ない。

 

 

 

「何にせよ相手に対して我々は戦うだけだ。上がそう言うなら指示に従っていれば良い」

 

 

レオールは考えても無駄だと、思考を切り替える。

 

 

 

 

その直後、爆音が響き渡った。

 

 

 

「何だ!?」

 

「左舷駆逐艦ララワグ、ピリエラウワ、イクリール、右舷駆逐艦ファング、グラフィアス、アル・ニヤト被弾!」

 

 

見張りからの報告で、艦隊は一度に駆逐艦6隻が航行不能となり、全艦とも船体を真ん中から左右に引き裂かれて沈んでいく。

 

 

「司令!」

 

「うむ!全艦対潜戦闘配置!」

 

 

レオールは経験からこの攻撃は潜水艦による魚雷攻撃であると判断に対潜戦闘態勢を指示する。対潜水艦戦闘のプロである駆逐艦が無力化された事により、戦闘はせずに艦隊全艦は全速力でこの場から退避を優先する。

しかし彼等は海上自衛隊の潜水艦に完全捕捉されているため、逃げようとしても無駄な行為だった。

 

 

海中の3艦から放たれる89式長魚雷は正確に艦隊の音を捉え、次々と命中していく。

命中する度に艦は真下から突き上げられるような爆発に見舞われ、船体を引き裂かれながら何も出来ずに沈んでいく。

 

 

「航跡も見えず、ソナーで捕捉さえ困難……………やはり彼等は我々の遥か上を行く存在なのか」

 

 

レオールは艦橋から次々と沈められていく艦を見ながら、相手の実力に自分たちの力ではどうしようもないと実感した。

その直後、サリンの船体に強い衝撃が走り、船体が真下から突き上げられた。船底に大穴が空き、そこから海水が入り込んでいくと、ほんの僅かな時間のうちにサリンの艦内各所に浸水していき、乗員の防水作業の暇もなくサリンの船体は前と後ろに分かれて、艦首と艦尾が上を向きながら沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

「艦長、推進音消えました」

 

「了解。警戒態勢」

 

 

攻撃を終えた3艦は何事も無かったかのように、戦闘態勢を解き、静かにその場から離れていった。

帝国は絶対安全だと信じていた航路に対する脅威を抱き領海警備を強化する事になるが、それを嘲笑うかのように2か国の潜水艦部隊の存在すら掴めず、通商破壊により経済的に大きな打撃を受ける事となり、領海警備のために貴重な戦力の分散を招く事なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




皆様からのご意見とご感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。