日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第5話

日米による通商破壊作戦が功を奏し、グラ・バルカス帝国は軍事的にも経済的にも深刻な影響を受け始めていた。

特に多大な資源や物資を使う軍は特に深刻だった。レイフォルに駐留するレイフォル方面軍は空輸によって何とか繋いでいるものの、レイフォルにある滑走路はベガ型双発機や中型輸送機などの運用を前提として整備されているが、空輸では海上輸送に比べて一度に輸送できる物資の量が限られている上に、海上輸送が困難な現状では燃料を確保するのも難しくなっている。

 

しかも、グラ・バルカスは第2文明圏へ勢力を伸ばしていた影響力も徐々に下火になりつつあり、既に属国と化していた一部の小国からはこのタイミングにて次々と国交断絶を言い渡される事態も起きた。

 

普段のグラ・バルカスならその圧倒的な武力に物を言わせる手段を取る所であるが、現状ではその武力でさえ機能不全に陥っており、レイフォルやヒノマワリ王国の守りを固めるべく属国化した国から軍を引き上げ、属国を次々と喪っていく事になっていく。

 

 

第2文明圏におけるムー、マギカライヒ、日本、アメリカによるグラ・バルカス帝国へ対する包囲網は狭まりつつある。

 

 

 

 

 

中央歴1643年8月中旬

 

 

グラ・バルカス帝国への一大反抗作戦を控えた、ムーでも着々と準備が進められていた。

最前線基地となっているバルクルス基地上空では、空軍の戦闘機が空中戦の訓練を行っていた。

基地上空をムーの主力機であるマリンの改良型であるマリン改と、見慣れぬ機体が空中戦を行っていた。

 

 

『クソ!!』

 

 

マリン改を操縦するパイロット達は、相手側の機体に見事に翻弄されていた。

マリン改と対峙していたその見慣れぬ機体は、日本人から見ればかつての局地戦闘機『紫電改』を思わせる寸胴な胴体に、低翼配置の主翼、主翼前方から突き出ている4門の20ミリ機関砲を持っている。マリン以上の速度を発揮し、高速でマリン改に近づいて圧倒的な火力を一度に大量に撃ち込み、深追いせず直ぐ全速力でその場を離脱していく一撃離脱戦法を採っている。

 

 

『流石にマリンの後継機なだけはあるな』

 

 

マリン改に乗っていたパイロットは、小さくなっていくその機体を見て呟く。

 

 

 

 

 

訓練後、基地の滑走路へ着陸した例の機体とそのパイロット達は基地に訪れていた白衣を着た技術者らしき集団に囲まれていた。

 

 

「どうでしたか中尉?」

 

「良いね。凄く良いよ………アグレッサー役のアンタレスとは比べ物にならないよ。基本さえ覚えれば、誰だってアンタレスに遅れを取る事は無いな」

 

 

 

技術者からの質問に答える、同基地に所属するベテランパイロット『パーテリム』中尉は自身の機体を背にそう答える。彼の背に佇む例の機体こと、マリンに変わる次期主力戦闘機『マリンⅡ』。

これは先代のマリンの後継機としてマイカル航空が日本の航空機メーカーからの技術協力の元開発した新型機であり、つい2ヶ月前に行われたコンペで軍の次期主力戦闘機として制式採用されたばかりの最新鋭機である。

 

 

「日本からの協力があったとはいえ、よくぞこれだけの機体を産み出したものだね」

 

「我々にとってはこの機体は悲願でしたから。これからは速度と火力の時代ですよ」

 

 

 

基地に訪れていたマイカル航空から派遣されてきた技術者達は、2ヶ月前に配備されたばかりのこの機体について実戦部隊におけるデータ収集と初期不良の改善を目的にパイロットや整備員から様々な評価を聞いて回っている。

日本からの協力はあったものの、次期主力戦闘として開発したマリンⅡをもっと良い機体として仕上げるため、本格的な量産を前に実戦部隊を訪れてはマリンⅡの改善に全力を注いでいた。

 

 

「まだ問題な部分はあるけど、コイツはきっと良くなる。それだけのポテンシャルは秘めていると保証するね」

 

「成る程。まだ改良の余地ありか」

 

 

技術者達は現場の様々な声を細かく集めていき、徐々にレポートを作り上げていく。

 

 

「さて、午後からは予定通り高等空戦訓練だ!整備と燃料補給はしっかり頼むぞ!」

 

 

 

午後からは同基地に所属するアグレッサー部隊の鹵獲アンタレスとの実戦を想定した高等空戦訓練が予定されており、レイフォル方面から飛んでくるグラ・バルカスの領空侵犯機に対応する部隊となっている彼等は相手に遅れを取る事が無いように気合いを入れ直し休憩に入った。

 

 

「こんな引退寸前の老いぼれにあんな機体を寄越してくれるなんざ、人生どんな事が起こるか分からんね」

 

「引退だなんて……中尉程の腕を持つパイロットがそんな弱気な」

 

「弱気にもなるもんさ。儂と同じ年齢のパイロットなんて早々おらん。もしかしたらコイツが現役最後の搭乗機になるかもな」

 

 

パーテリムは年相応の皺が目立つ手でマリンⅡの機体を撫でる。

彼はこの基地のパイロットの中で最も年長で、空軍の現役パイロットの中でも最高齢に達しているが、持ち前の視力と反射神経の高さから未だに現役パイロットとして同基地で最前線に立ち続けている。

 

 

 

「それにしても最近、グラ・バルカスの連中の不法侵入が増えてきましたね」

 

「通商破壊が効いてる証拠だろう。連中も追い詰めらてるから必死なんだろうな」

 

 

彼の言う通り、日米による通商破壊作戦開始後からレイフォル方面からグラ・バルカス帝国軍機による領空侵犯事案が増えてきている。確認されるのはアンタレスに護衛されたベガ型双発機によるバルクルス方面の偵察活動が主であるが、大抵はマリン改により追い払われレイフォルへ向けて帰っていくため、空中戦に発展する事は無い。

 

 

「まぁ今は訓練あるのみさ。いざとなれば俺たちが出れば良い話だ」

 

 

昼食を挟んで、機体の再整備と燃料補給を終えて訓練再開に向けた準備が進められる中、静かなドーソン基地内に突如としてサイレンが響き渡った。

 

 

「また連中ですかね?」

 

「だろうな。毎度ご苦労だな」

 

 

ふと滑走路を見ると、スクランブル部隊のパイロット達が格納庫へと走っていき、牽引車によってマリン改が曳き出されていくのが見える。

 

 

「午後の訓練は延期だなこりゃ」

 

「我々はどうしますか?」

 

「一応備えとこう。まぁ、お鉢が回ってくる事は無いと思うがな」

 

 

 

パーテリムの部隊は先に飛び立ったスクランブル部隊の後続のため、スクランブル部隊のマリン改が飛んでいくのを見送るが、万が一に備えて何時でも出撃できるように待機する。

 

 

 

 

 

 

それから30分して、パーテリム達が待機している待機所に内線電話が掛かってきた。

待機所の責任者が電話の受話器を取ると同時に、パーテリム達は何事かと、体が自然に座っていた椅子から離れる。

 

 

「こちら待機所……………了解!スクランブル!」

 

 

責任者の声と同時にパーテリム達は待機所から飛び出して、隣の格納庫に走った。

 

 

「回せぇぇー!!」

 

 

マリンⅡに引っかけられていた梯子を登ってコックピットに付いたパーテリム達は、スタータースイッチを操作してエンジン始動させ、整備員達は機体各部に異常が無い事を確認しタイヤ止めを外す。

 

 

 

「ようやく出番か」

 

 

パイロット達は風防を閉め、酸素マスクを着用、飛行服を覆っている電熱服のケーブルをサイドコンソールのソケットに繋いだ。

 

 

『コントロールタワー、剣閃01出るぞ』

 

 

マスクと連動している無線で管制塔にそう伝えると、タイヤのブレーキロックを解除し、マリンⅡを自走させながら格納庫から出し、滑走路の離陸準備地点へと移動させる。

 

 

『剣閃01、離陸を許可する』

 

『了解』

 

 

離陸準備地点へやって来た剣閃隊はパーテリム機を先頭にバルクルス基地から次々と離陸していく。

 

 

『早速実戦か……腕が鳴るな』

 

『報告では向こうは爆撃機を中心とした十数機の飛行編隊だって言ってましたけど、もしかして向こうが反撃に出てきたんでしょうか?』

 

『それを確認しに行くんだよ』

 

 

剣閃隊はグラ・バルカスの目的を探るために管制塔からの誘導を受けながら北へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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