ヒノマワリ王国首都ハルナガ京
地理的にレイフォルに隣接するこの国は早くからグラ・バルカスによる支配を受けており、ハルナガ京には帝国の正統府が置かれており、陸軍1個大隊が駐留している。
「はぁ………またこんな食事か」
正統府の最高責任者である外務省の『オール・ブーツ』は、本国からの補給が途絶え、更にはヒノマワリ王国の食料事情が逼迫しているせいで貧相になった夕食にため息を吐く。机の上に置かれた皿には固いパンが1個と野菜が少々しかなく、飲み物も水のみという有り様で、彼や正統府の幹部級の人間はこれでもマシな方であった。
ヒノマワリ王国に駐留している陸軍部隊では深刻な食糧不足により兵士同士での食料の奪い合いや現地民に対する略奪も発生し、もはや精強と言われた帝国陸軍の姿は見る影もなかった。
「クソ!何が悲しくてこんな貧相な食事を採らなければならんのだ!」
オール・ブーツはそう声を荒げつつも固いパンを齧る。
「不味い…………」
固いパンの味に食欲が失せ、パンを皿に置くと席から立ち上がり窓を開けて外の空気を吸い込む。
「もはや電気も作れんか」
燃料不足による影響で発電機は止まり、今はレーダーサイトや通信システムに優先して電力が回されているため正統府周辺は真っ暗である。
静かで空気が澄んでいる以外に何もないハルナガ京に、何処からか音が聞こえてくる。
「雷か?」
ゴォォと言う音は段々近付いてきており、南から聞こえてくるのが分かる。
「何だ?」
その直後、ハルナガ京に爆音が響き渡った。
「うぉっ!」
爆音に驚くオール・ブーツ。
「何なんだいったい……」
「主任!」
そこへ陸軍の連絡兵がやって来た。
「敵の来襲です!」
「来襲だと!?本当か?」
「はい!レーダーと通信塔が破壊されました!至急地下室へ避難を!」
「分かった!直ぐに全部隊に正統府を守るように指示を出せ!」
「はっ!」
連絡兵に促されオール・ブーツは正統府庁舎の地下に作られた地下道を通って、飛行場近くにある地下司令室へと避難した。
ハルナガ京に設置されていたレーダーサイトと通信塔を破壊したAGM-88はグラ・バルカス帝国軍部隊の目と耳を奪った。
混乱に陥る駐留部隊は次なる敵襲に備えて部隊配備を急ぐが、燃料不足と食糧不足、練度不足による士気低下で迅速な展開が難しく動きが非常に鈍い。
そんな彼らに構う事なく、次なる一手が加えられようとしていた。
『attack……ready、now!』
対レーダーミサイルを撃ち終えたF-16Cに変わり、爆装した3機のF-15EからペイブウェイⅣ500ポンドレーザー誘導爆弾が投下される。
F-15Eの右エアインテイク下に取り付けられているセンサーポッドから放たれるレーザー光線により対空陣地に向けて誘導されていくペイブウェイⅣは正確に地上目標へと降り注ぐ。
「第1から第20までの対空砲陣地から通信途絶!」
「兵舎、弾薬庫、車両格納庫が破壊されました!」
「損害拡大中!」
次々と破壊されていく対空砲陣地、弾薬庫に兵舎、ハルナガ京に爆発による閃光が煌めいて衝撃波が伝播する中、地下司令室に籠っているオール・ブーツは恐怖に震えていた。
「どうする?逃げるか…………でもどうやって…」
彼は最早、此処から逃げる方法しか考えていなかった。
「そうだ!飛行場にまだスタークラウドがあった筈だ!」
オール・ブーツは思い出した。
ハルナガ京に作られた飛行場には『スタークラウド』と呼ばれる、帝国が保有する航空機の中で最速を誇る2人乗りの軍用機があるのを思い出した。
「直ぐにスタークラウドの準備を……」
その時、地下司令室に途轍もない衝撃が走る。
「あぁっ!格納庫と滑走路がやられました!」
地上監視用の潜望鏡を覗いていた帝国兵が叫ぶ。
「何だと!?スタークラウドは!!」
「恐らく………破壊されたものと思われます」
唯一の脱出手段を絶たれたオール・ブーツは床に膝から崩れ落ちた。
合衆国空軍による空爆は続き、飛行場と弾薬庫、兵舎を無力化した3機のF-15Eは搭載していた全ての爆弾を使い果たし身軽になると高度を下げて戦果確認を行う。
『こちらアタック隊、部屋の片付けは終わった、何時でも上がってきてくれ』
爆撃を終えたアタック隊は無線で鋼鉄の盾作戦開始を意味する内容文を発信した。
『了解。これよりそちらへ遊びに行く』
鋼鉄の盾作戦の本番となる次の一手が打たれようとしていた。
続く
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