ジェロニモ6墜落の報告はリアルタイムでバルクルス基地へともたらされた。
「何て事だ……」
指揮所内に設置されたモニターに、ハルナガ京上空で旋回待機しているストライクイーグルのセンサーポッドからのカメラ映像が写し出される。映像には西エリアの屋敷の門に突っ込んだ状態のジェロニモ6の姿がある。
「直ぐにジェロニモ6の救出部隊を編成!直ぐに敵がやって来るぞ!」
「了解!」
直ぐにジェロニモ6のパイロット救出のための救出部隊編成が行われる。
不測の事態に備えて、ヘリ部隊には予め数機のヘリと航空自衛隊の航空救難団が待機しており、直ぐに指揮所から命令が伝達される。
「皆聞け、陸自のアパッチが1機墜落したらしい!」
「墜落ですか!?」
「あぁ。場所は敵地の真っ只中だ。作戦本部からパイロット救出の命令を受けた!直ぐに行くぞ!」
「「「「「了解!!」」」」」
航空救難団救難隊は直ちに出動態勢に入り、UH-60Jで編成されたヘリ部隊が飛び立つ。
援護のため普通科大隊からも3個分隊がジェロニモ6の墜落地点へと向かう事となった。
「スター41、直ちに現場に急行。状況を知らせ」
『スター41了解!』
墜落現場確認のため大塚は指揮下にある1機のコブラを墜落地点に向かわせた。
その頃
「う…………」
墜落したジェロニモ6の操縦席に座っていた機長兼操縦士の『大村武』3尉は体に走る激痛から目を覚ました。
「生きてるのか………」
目を開けると直ぐに前席のガンナーに声を掛ける。
「清水!聞こえるか?」
「えぇ……聞こえますよ。3尉も気がついたみたいですね」
ガンナーの『清水幸一』1等陸曹が答える。
「怪我は?」
「俺は両足が動きません。3尉は?」
「同じだ……それ以外は何ともない。コイツが頑丈で良かった。だがこれじゃ2人とも動けんな。逃げようにもこの足じゃ歩くどころか、機体から降りられん」
「じゃあ助けが来るのを待ちますか?」
「そうだな。無線が使えるかな?」
大村はダメもとで無線を確認する。
「こちらジェロニモ6、こちらジェロニモ6、送れ」
ヘッドセットからは雑音しか聞こえてこない。
試しに周波数を変えて試すが、やはり雑音しか聞こえてこない。
「ダメだ。壊れたみたいだ」
「じゃあ助けが呼べませんね」
「直ぐにとはいかないかもしれんが、今頃救助部隊編成されてる筈だ。まだ希望はあるぞ」
「じゃあ救助部隊が来るまではこのままですか」
「そうだな。だが此処は民間人の敷地内だ……しかもヒノマワリの人間が味方とは限らん。もしかしたら敵に通報してるかもな」
「もし敵に見つかったらどうなると思います?」
「これだけやらかしたんだ、見当がつかんな」
そんな会話をしていると、屋敷の方向から複数の人影がやって来るのが見えた。
「あぁ……清水、拳銃を使えるようにしとけ」
「了解」
大村と清水は護身用の9ミリ拳銃を取り出し、マガジンを挿入してスライドを引き初弾を送り込む。
「民間人か?」
近づいてきた人影は軍服を着ておらず、銃や刀剣ような武器は持っていなかったため、大村はこの屋敷の住人と認識した。
キャノピー越しに見えた住人達は大村と清水の2人を困惑そうな表情で見ている。
「どうします?」
敵意は無いように見えるが、念のため片手に拳銃を握った状態で彼等に視線を合わせ、もう片方の手で手を軽く振った。
すると、彼等の中から1人だけ身分が高そうな服を着こなした日本人と同じ黒髪黒目の若い女性が出てくると、片手でキャノピーを優しく叩いた。
『御貴殿方は日本国の方でしょうか?』
女性はそう呼び掛けてきた。
「はい」
大村は一言そう言って、首を一回縦に振った。
『ご安心ください。私たちは御貴殿方に危害を加える気はございません。私たちは日本国の味方です』
その言葉に2人は敵意は無いと判断したが、一応警戒しつつもアパッチのキャノピーを開けた。
「お怪我をなさっていますね。直ぐに此処から」
すると、彼女の使用人らしき女性達が2人をコックピットから引き出そうとする。
「痛っ!」
「も、申し訳ございません!」
使用人達は2人を慌てて座席に戻す。
「すいません。我々は両足が折れてるので、動けないのです」
「そうでしたか。申し訳ございません、直ぐに医者をお呼びしますので」
女性は使用人に医者を呼びに行かせる。
大村は使用人達を従える彼女が何者かが気になり、失礼を承知に質問をする。
「あの、少しお聞きしてもよろしいですか?」
「はい」
「失礼かもしれませんが、貴女はどちら様でしょうか?」
「これは、名乗りもせずに大変失礼致しました」
すると彼女はスカートの両端を指で摘まんで、少し広げると、優雅なお辞儀をしながら自分の素性を名乗る。
「私はヒノマワリ王国第3王女、フレイアと申します」
続く
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