ヒノマワリ王国での戦闘が終結し2日が経った。
王国内のグラ・バルカス帝国兵は軒並み国連軍に投降し、帝国が所有していた施設は全て国連軍に接収され、掲げられていた帝国旗が下ろされていく。
「押さないでください!食料は皆さんに行き渡る様に致しますので!ご協力ください!」
「怪我人はこちらに並んでください。病人の方がいらっしゃればこちらまで申し出てください!」
今回の戦闘で被害を受けた住民達には、国連軍による炊き出しと治療や手厚い保護を受けており、国連軍の兵站部隊は各々の技術を使い住民達への対応に走り回る。
「やった…………やったぞ………」
「本当にグラバルカスの連中が居なくなったんだ!これで自由だ!!」
「もうあんな思いなんてしなくて済むんだ………うっ……」
「ウォォォォ!!!」
正統府前でハルナガ京の住民達はグラバルカス帝国の支配から解放された喜びに湧き、あっという間にお祭り騒ぎになる。
「おい見ろ!あれ!」
元帝国軍基地にはバルクルス基地から進出してきた国連軍地上部隊とエヌビア空軍基地から国連軍航空部隊が次々と飛来してきた。
「デカい………帝国の飛行機よりも大きいぞ……」
「帝国はあんなの持ってる連中に喧嘩売ったのかよ……同情するな」
ハルナガ京を低空飛行でアプローチに入った国連軍のC-130輸送機は基地に着陸する。
貨物室のドアが開かれると、そこから大内田、パットン、ゲオルグ、ウィリアムら国連軍司令部の面々が降り立つ。
「どうやら思った以上の激戦だったようですな」
基地の滑走路に降り立ち開口一番、大内田は破壊された格納庫等の建物を見てそう言い放つ。
「それにしても作戦から2日で復旧させるとはな……貴国の工兵部隊には恐れいるな」
パットンは陸自の施設科の仕事振りに素直な感想を述べる。
「いえ、そちらの工兵部隊の助力もありますよ。この規模の航空基地を復旧させるのは我々の力では不可能でした」
基地の滑走路復旧作業には陸自の施設科に加えて、ムー陸軍の工兵部隊も携わっており、導入したばかりのブルドーザーやショベルカー、ダンプカーを上手く活用し僅か2日で復旧させたのであった。
そして現在、飛行場には基地防空用の対空兵器が次々と運び込まれ、多数の誘導弾、対空機関砲や自走高射機関砲が基地を守るように展開、空自の高射隊が装備する移動式レーダー車による警戒が行われている。
「あちらに司令部を設けてあります」
大内田らはその足で飛行場から正統府庁舎に設けられた前線司令部に赴き、次なる作戦に向けて爆撃で破壊された軍施設の復旧と次の作戦に向けての準備に入った。
しかし、数時間後の司令室内は重苦しい空気が漂っていた。
その原因は大内田、ウィリアム、パットン、ゲオルグの4人が使用する机の上に置かれた様々な火器だった。
「これが例のロケットか」
机の上に置かれた数本の鉄製の筒………
降伏した敵部隊から鹵獲した携帯式対戦車砲が置かれている。
今回の作戦で国連軍側に重大な損害を負わせた原因であるグラ・バルカスの新兵器の存在は彼等に少なくない衝撃を与えていた。
「なんかパンツァーシュレックに似てるな」
ウィリアムがランチャーを持ち上げる。彼が手にしているソレは第2次世界大戦でドイツ軍が使用した事で有名なパンツァーシュレックに非常に似ており、違う事と言えば口径が一回り小さいというだけである。
「こっちも見てみろ、サブマシンガンだぞ。奴らにとっては贅沢品だな」
この砲の他にも、これまで見られなかった新型と思われるサブマシンガンや自動小銃らしきものも多数鹵獲されており、帝国軍がこれらの火器の開発配備しているという証拠だった。
「捕虜の証言からも、これらは向こうの新兵器に間違いないようです」
「また連中も厄介なの持ち出してきたもんだ。現にこのランチャーでアパッチが落とされたし、飛行場での戦闘じゃ車両が吹っ飛ばされて負傷者が出たらしいじゃないか」
「えぇ。幸い全員無事だったのが不幸中の幸いでした」
この作戦で撃墜されたアパッチは修理不能でスクラップになり、大破した高機動車も修理不能のため廃車となったが、パイロットは両足骨折と体の一部に打撲を負い、高機動車に乗っていた隊員も負傷したが命に別状はない。
貴重な戦闘ヘリを1機、車両1両を失ったが作戦そのものには支障は無いもののヘリ撃墜の余波は司令部にも少なくない衝撃をもたらしていた。
「これからはヘリ運用には慎重にならざる得ないな。それに車輌での市街地戦も可能な限り避けるようにしないとイラクやアフガンの繰り返しだ」
「車輌に関しては我々は秘策を用意している」
「秘策ですか?それはどのような?」
ゲオルグがパットンが言った秘策の意図について尋ねる。
「明日になれば分かります。直ぐに本国に連絡を取るので、しばらく待っててほしい」
パットンはそう言うと、無線機を使いある処へと無線交信を行う。
「私だマイラス少佐」
『これは!パットン閣下!』
パットンが掛けた無線の相手は本国で仕事をしているマイラスだった。
「久し振りだな少佐、実は例の件なんだが状況が変わった。例のアレを直ぐに用意してほしい」
『アレをですか!?分かりました!どれ程を用意すれば?』
「そうだな………メーカーにある分だけ全部、それも大至急だ」
『あるだけ全部を大至急ですか!?』
「無理か?」
『いえ、少しお時間を頂ければ、今日の夜にはどうにか』
「分かった。頼んだぞ」
『了解!』
無線を切りったパットンの表情に余裕が生まれていた。
そして翌日
「出来ました!」
早朝の午前7時から国連軍のムー陸軍部隊エリアは喧騒に包まれていた。
ムー陸軍の戦車部隊と装甲車部隊の兵士達が何やら作業を行っていた。
「これがラ・シャルマン市街戦仕様です。地球世界の戦訓を元に開発しました」
マイラスとムー兵、合衆国兵士の目の前には10両のラ・シャルマンの姿があった。しかし、そのラ・シャルマンはノーマルとは違う姿に変貌を遂げていた。
M4A3E8と外観が酷似するラ・シャルマンの溶接車体の前面には技術躍進により実用化に成功したチタンとセラミック合金製の簡易的な増加装甲プレート、車体側面と砲塔全周には爆発反応装甲、車長用キューポラと砲手用ハッチには機銃と防盾が増設されている。また車体下面にも地雷防御用の増加装甲が施されており、全体的に物々しい雰囲気を醸し出していた。
「しかしよく予算が降りたな」
「上も馬鹿じゃないって事です。陸軍は全てのラ・シャルマンにアップグレードキット装備させようと本格的な導入に踏み切ったみたいです」
マイラスが言うアップグレードキットとは、アメリカのM1エイブラムスの市街地戦生存キット『TUSK』をヒントに開発されたラ・シャルマン改修用機材の事であり、昨日パットンがマイラスに話していた例の件とはこの拡張キットの事だったのである。
その日の夕方にはリグビエル・ビサンズとカラッゾオートモービルの工場から初期生産分となる100両分のキットが本国の空軍基地から国産輸送機『ラ・カオス』10機に載せられ運び込まれ、夜を徹した作業の末、殆どの車輌への装着作業が完了している。
「これで市街地戦に於いても直ぐに撃破される心配は無いでしょう」
「助かったよ少佐。これで犠牲を減らせる事が出来そうだ」
パットンは一層凛々しく頼もしい姿となったラ・シャルマンに期待の目を寄せる。
続く
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