エジェイより西5キロ地点にもうけられたロウリア軍東部諸侯団の野営地では、3万人のロウリア兵がクワ・トイネとの戦闘に備えてテント内にて仮眠を取っていた。
「……………」
只1人、東部諸侯軍を指揮するジューンフィルアは専用テントから、夜空を見上げながら、今後の事を考えていた。
(数日掛けて相手を精神的に疲弊させてから、隙を突いて一気に正面から仕掛けたほうが少ない損害で、エジェイ攻略が出来る…………あのアデムが考えそうな事だな)
今回の侵攻作戦に於いて、戦略の全てはアデムの考案が基になっている。その殆どが、人を精神的に追い詰める物が中心で、少なくともジューンフィルアの観点からすれば卑怯この上ない作戦ばかりである。
しかし、数で圧倒的に劣っているクワ・トイネとはいえ、数が多いだけの自軍では、質的に優れているクワ・トイネとの差が出てしまうのは当然であり、それを挫くためには相手を精神的に疲弊させるしか方法は無い。
ジューンフィルアは軍人であるなら、上の命令には絶対服従をしなければならないと教えられているため、このような作戦でも素直に首を縦に振って従う事しかできなかった。
「明日は晴れそうだな」
無駄な考えを捨てて、戦う事だけを考える事にした彼は、星が綺麗に見える夜空を見上げる。
ヒュルルルルルルルルルルルルルルルルル~
「何だ?」
静かな夜を、何かが落下してくるような音が聞こえてくる。
そして一瞬だけその音が止んだかと思った瞬間……
ドッカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!
耳の鼓膜が破れそうな轟音と共に、強烈な閃光と爆風が辺りに広がった。
直後にやってきた衝撃波でジューンフィルアの体は木の葉のように舞い上がり、近くにあった木に叩きつけられた。
「な…何が…………」
突然起きた謎の大爆発にジューンフィルアは霞む視界の中、辺りを見回す。
「これは……」
最初の爆発で、陣地内で兵士が休息をとっているテントの半分が吹き飛び、多くの兵士が手足を吹き飛ばされるなどの重傷を負っていた。
「目が……目が見栄ねぇ!!誰か!誰か!」
「腕は………俺の腕が………何処にあるんだよ!」
「おい!物資が燃えてるぞ!」
積み上げられていた武器や食料などの物資の大半が燃えていた。
「急いで消せ!あれが燃え尽きたら我々は……」
ジューフィルアは急いで消火の指示を出し、軽傷者と無傷の兵士が水や土を燃え上がる物資に掛け必死に消火に勤める。
その様子を、エジェイ西門の壁の上から見ていたノウは、何が起きたのか理解が追い付かなかった。
「なんだこの爆発は!?敵陣で火山でも噴火したとでも言うのか!」
ダイダル基地の要塞砲から撃ち込まれた、51センチ榴弾による爆発は敵陣を一瞬で黒い煙や炎で包み込んだ。
敵陣から衝撃波がエジェイに遅れて到達し、辺りに積み上げてあった資材や松明を薙ぎ倒した。
「なんて威力の爆裂魔法だ!日本はこれ程の爆裂魔法を持ち込んで、10キロ先の敵陣に遠距離から撃ち込んだと言うのか!?」
さっきまで、自分たちより下と見ていた自衛隊の能力にノウは戦慄した。それと同時に、彼等と敵対しなくて良かったとも思った。
『オメガ1よりFO、初弾命中』
「了解。FOよりFDC、初弾命中」
『了解。FDC、各中隊効力射。目標60発、榴弾』
驚愕するノウの側では特科連隊の観測員達が機材を使って着弾観測を行い、上空のOH-1偵察ヘリからの情報を特科連隊射撃指揮所に送り、次の射撃に移る。
「撃ち方始め!」
「撃てぇ!」
闇夜の中を待機していた99式自走りゅう弾砲、FH-70りゅう弾砲を装備した特科中隊による射撃が始まった。
基地に持ち込まれている合計20門の榴弾砲から1斉射につき20発の砲弾が撃ち出され、陣地に向かって飛翔する。
『弾着……今っ!』
20発の155ミリ弾による曳火射撃による空中爆発は衝撃波で歩兵と馬を吹き飛ばし、破片が重装騎兵の盾と鎧ごと引き裂く。
斉射は陣地は瞬く間に爆発に飲み込まれる。
『こちらオメガ、全弾命中』
「了解。FOよりFDC、全弾命中」
『了解!』
特科隊の隊員達は日頃の訓練で培った技術を遺憾無く発揮し、素早く砲に砲弾と装薬の装填を行い射撃に備える。
『FDCより各中隊、最終弾発射!』
3斉射目を撃ち出され、砲弾が再びロウリア軍陣地に撃ち込まれる。
「うわぁぁぁ!」
3回の斉射で放たれた砲弾60発は既に東部諸侯団の陣地に壊滅的な被害を与えており、もはや誰も戦えるような状態ではなくなっている。
「何が………一体何が……」
60発+1発の砲撃の中、爆音と衝撃により意識が朦朧としていく中でジューンフィルアは自らの身に何が起きたのかも自軍がどうなっているかも正確に把握しないまま、意識を失った。
「これが、彼らの強さだと言うのか……………」
砲撃が終わり、硝煙が立ち込めている敵陣地だった場所を見ていたノウは敵には勝った筈なのに大きな敗北感も味わった。
「敗けた…………」
膝を突いて大内田の顔を思い浮かべた。
「彼等は本当に何者なんだ?」
続く
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