国連軍による攻撃により、4つの基地との通信が不能となったラルス・フィラマイナ基地の地下司令室は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなっていた。
「応答せよ!応答せよ!こちらラルス・フィラマイナ!デスデモーナ基地、応答せよ!」
「直ぐに通信兵を走らせろ!哨戒機も各基地へ至急向かわせるんだ!」
まだ夜明け直前で、普通ならまだ起床時間では無いにも関わらず、司令室は大勢の幹部と通信員の怒号が響き、大混乱の様相を呈していた。
「参ったな………まさか敵の進撃速度が此処まで早いとは」
ファンターレも自分が予想していたよりも敵の進撃速度が常識外にも早い事に驚き、頭を抱えていた。
レイフォル方面軍の本拠地であるレイフォリアの防衛線であったデスデモーナ基地を含めた4つの基地にはそれぞれレイフォル一帯をカバーできる複数のレーダーサイトと、陸軍航空隊が駐留していたのだが、それがたった数時間のうちにあっさりと突破されてしまい、既にラルス・フィラマイナを含めたレイフォリアは喉元に刃や銃口の2つの武器を突きつけられている状態である。
最強と謳っていた帝国軍の優位が音を立てて徐々に崩壊しつつあるというのを、ファンターレは恐れていた。
(どうする………小規模と中規模だったとはいえ、4つの基地を同時に陥落させた敵に対してどう対抗すべきなのか?)
ファンターレは何とかムー大陸での優位を保つための最善策を必死になって考える。
しかし、これまでに上がっている情報から敵と真正面にぶつかるのは燃料と物資不足のレイフォル方面軍には非常に荷が重いのは誰の目にも明らかであった。
彼は暫く集中して今後の対応を考える。
それから30分程して、ファンターレはランボールに問い掛ける。
「ランボールよ、海軍の方はどうなってる?」
「はい。第2艦隊は出港準備を整えつつあるそうです。しかし、備蓄している燃料の残量を考えますと動けるのは第63水雷戦隊と第2艦隊旗艦『グレードウォール』が限界でしょう」
今レイフォル港には帝国海軍の精鋭の一角である第2艦隊が駐留しており、この艦隊はグレード・アトラスターの2番艦である『グレードウォール』が旗艦を勤めている。
しかし、日米の潜水艦部隊の通商破壊作戦による航路情勢の不安定化により、レイフォル港の戦力は第2艦隊の先遣隊としてやってきたグレードウォールが率いる第1戦隊と護衛の第63水雷戦隊のみであり、残りの部隊は本国に足どめを食らっている。
第1戦隊はグレードウォール以下の軽空母4、第63水雷戦隊の軽巡洋艦1、駆逐艦8と少なく現状は貴重な海軍戦力である。ファンターレはこちらの態勢が整うまで敵の足どめを図ろうとある考えを起こす。
「それだけの海上戦力があるのならもしかしたら敵の意表を突けるかもしれん」
「どう言う事でしょうか?」
「うむ………直ちに第2艦隊の出撃可能な全艦艇による海上特別攻撃隊を編成し出撃させよ!それと、レイフォリア防衛のための最低限の戦力を残し、陸海軍航空隊を艦隊の上空援護に付けさせよ!」
突然の命令にその場にいた一同が目を見開き、彼に視線を向ける。
「第2艦隊をレイフォル沖南方海域に展開させ、グレードウォールによる艦砲射撃で敵地上部隊を攻撃せよと通達!」
「しかし司令、同海域に敵の潜水艦が潜んでいる可能性があります!それにマイカル港から姿を消した日本とアメリカ艦隊の行方が掴めない以上は迂闊な行動は……」
「そんな事は百も承知だ。だが此処で後手に回っては敵の思う壺だ………此処で打って出ない限り、我が軍に勝利は無い。それにグレードウォールなら大抵の攻撃には耐えられる。自慢の46センチ砲の破壊力と射程距離を生かすにはこれしか方法はない」
「しかし………」
「上空援護もつける。それなら敵も迂闊には手は出して来ない筈だ」
「…………………分かりました。直ちに艦隊へ伝えます」
思い切った作戦に部下達は戸惑いつつも、彼の言葉を信じて直ちに動いた。
その1時間後には、司令部から命令書と即席の作戦指示書がレイフォル港沖で停泊していた、グレードアトラスター級戦艦2番艦『グレードウォール』に届けられた。
1番艦グレードアトラスターよりも充実した艦隊旗艦設備を持つグレードウォールの防御区画内に設けられた長官室に第2艦隊司令部要員が召集された。
続く
皆様からのご意見とご感想お待ちしております