日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第26話

水上特別攻撃作戦の命令書と作戦指示書を携えてグレードウォールへとやって来たランボールは今、第2艦隊司令部が置かれているグレードウォールの重要区画に設けられた会議室で緊張した面持ちで宛がわれた椅子へと座っていた。

 

 

「『第2艦隊旗艦グレードウォールは水上特別攻撃部隊を編成。レイフォル沖南方20カイリ洋上に展開、敵地上部隊に艦砲射撃を実施。その後、同海域の適当と思われる浅瀬にグレードウォールを乗り上げ、北上してくると思われる敵艦隊を攻撃せよ』」

 

 

作戦司令書を読み上げたランボールは目の前に居る、第2艦隊司令長官『アケイル・ハーストン』中将が放つ雰囲気に体が硬直しているのを感じる。

 

 

「ランボール少佐」

 

「は」

 

「この作戦、上空援護はどれ程出せる?」

 

「80機ほど」

 

「……………たったこれだけの上空援護で、こんな思い付きのような作戦は通用すると思っているのか?私は大勢の将兵の命を預かっている。只の一兵卒と言えど、無駄に死なせる訳にはいかん!」

 

 

アケイルの言葉から、この作戦内容に対する大いなる不満が見て取れる。他の艦隊参謀達もこの作戦に対して懐疑的となっており表情からもそれが読み取れる。

 

 

「それは仰る通りです閣下。ですが我々は帝国の未来のために存在しています」

 

「それは分かっている。私も軍人であり、命令は絶対だと理解している。だが、このように根拠も意味も無いような作戦で大勢の将兵達と貴重な戦力を失えば、どのように責任をとるのだ?」

 

「それに関しまして、ファンターレ閣下よりアケイル閣下へ書簡があります」

 

「書簡?」

 

 

ランボールはファンターレから預かった手紙を手渡す。

 

 

「内容については自分は関知していません」

 

「そうか」

 

 

アケイルは手紙を開き内容を見る。

 

 

「……………………………『帝国臣民のための矛と盾となれ』か。ファンターレめ狡い奴だ」

 

「閣下!その言葉は……」

 

「あぁ……かつての合言葉だな」

 

 

アケイルの言うかつての合言葉とは、グラ・バルカス帝国が転移してくる前に居たユグドという世界で、ライバルであるケイン神王国との運命戦争の際に当時の皇帝であった『グラ・シャイン』が、士気が低くなっていた軍全体にラジオ放送で呼び掛けた言葉である。

この言葉に当時の陸海軍は、自分よりも帝国の未来を担う罪の無い市民や非戦闘員を最優先で守る事により帝国はまた勝利の道を歩めると捉えた事で士気を取り戻し、見事に戦争に勝利を収めている。

 

それ以降、この言葉は帝国に深刻な事態が起きたと判断された時に軍全体に如何なる軍事行動を許可する合言葉となっており、グラ・シャイン亡き後に即位した現皇帝のグラ・ルークスも皇太子時代に冬戦争でこの言葉を合言葉にして軍を率いていたと言われている。

 

それが使われていると言う事はこの戦争、帝国がいよいよ追い詰められている事を暗示しており、アケイルはファンターレの意思を汲み取り少し考えに入った。

 

 

 

「分かった。このアケイルの身命を賭して自ら先頭に立ち陣頭指揮をしよう」

 

「ありがとうございます!それでは私はこれで失礼いたします」

 

 

ランボールがその場を去ろうとした時……

 

 

「ランボール少佐」

 

「はい」

 

「もし……万が一作戦が失敗した時には、ファンターレにこれを渡してくれないか?」

 

 

そう言うとアケイルは一枚の手紙を渡す。

 

 

「これは……」

 

「なに………只の手紙さ。万が一作戦が失敗したらその手紙は燃やすなり海に捨てるなりして処分してくれ」

 

「では私が責任を以てお預かりします」

 

 

ランボールは手紙を大事そうに懐に仕舞い込むと、今度こそその場から去っていった。

 

 

「よし!これより艦隊は水上特別攻撃隊を編成、直ちに準備に掛かれぃ!」

 

 

アケイルの一言で第2艦隊全体が動き出した。

作戦は短期戦が予想されたため、アケイルの権限によりレイフォル港から作戦に必要な燃料と弾薬がグレードウォール以下の作戦に参加する水上特別攻撃隊の艦艇に追加で運び込まれていく。

 

 

 

そして、1日掛けた準備により夕方にはグレードウォールと第63水雷戦隊の出撃準備は整い、夜更けを待ってから出港準備に入る。

 

 

『出港用意!』

 

 

出港準備のラッパが鳴り響き、艦橋にアケイル以下の艦隊司令部要員が集まる。

 

 

「両舷前進微速、取りかぁじ!」

 

 

 

艦長の号令によりグレードウォールのその巨体がゆっくりと前進を開始した。

グレードウォールに続くように第63水雷戦隊旗艦のレオ級軽巡洋艦『ラサラス』以下、スコルピウス級駆逐艦8隻が続く。

攻撃隊はそのままレイフォル港を出港していった。

 

 

 

 

しかし、この部隊の動きは既に国連軍により察知されていた。

 

 

 

 

ムー大陸南方沖を航行中の日米合同艦隊は、衛星がキャッチした水上特別攻撃隊の出撃情報を受け取っていたのである。

 

 

「まさか向こうから出てきたとはな」

 

 

紀伊のCICにあるメインディスプレイに投影されているレイフォル港を出撃するグレードウォール以下の艦隊の姿を捉えた衛星画像を見ていた松田はそう呟く。

 

 

「今まで地に根が張ったように動かなかったグレードアトラスター級の同型艦が自ら出てきた………彼らは何を考えてるのでしょうか?」

 

「分からん。だが一番の脅威であるこのグレードアトラスター級が小規模の艦隊を率いて出てきたという事は、何かを仕掛けようとしているに違いない」

 

「では艦隊を北上させますか?」

 

「あぁ。念のため地上の国連軍にも警戒するように伝えてくれ。艦隊はこのまま北上する」

 

「了解!」

 

 

紀伊以下の艦隊はその場よりレイフォル南方沖海域に向け敵艦隊迎撃のため北上を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

続く




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