VFA-27のスーパーホーネット15機から放たれた多数のAIM-120アムラームは闇夜の中を設定された高度をマッハ4の超音速で飛行しており、ホーネットとE2Dのレーダーによる中間誘導によりミサイルは敵が居る方向へ真っ直ぐ飛び続ける。
アムラームは撃ちっぱなし能力を持つ中距離ミサイルのため、ミサイルを発射したホーネットは中間まではレーダーで誘導し、ミサイルに内蔵されているレーダーが目標を捉えれば後はミサイルが自動で目標に飛んでいくため発射母機はその場から離脱できるのである。
そんな事が出来るとは知る由もない水上特別攻撃隊の上空直掩機隊76機は、先行していた哨戒機からの報告が途絶えた事に慌てていた。
「哨戒1番機応答せよ!応答せよ!」
直掩機隊指揮官の『タレス・バードス』中佐は無線機を使って必死に呼び掛けていたが、反応は全く無かった。
「クソ!やっぱりやられたか?」
タレスは長年の勘から哨戒機が敵の攻撃を受けたのでは無いかと感じた。
「だが敵とは距離がかなり離れてる筈だ………敵はいったいどうやって」
彼は片手に持っている周辺海域の海図から敵と自軍との距離をある程度は予想できているものの、やはり距離は百キロ以上は離れており、タレスは敵がどうやって哨戒機のパイロットが無線を使う暇も与えず仕留めたのかを考えた。
しかし、ミサイルの存在が殆ど知られていないグラ・バルカス帝国軍の、しかも一部隊の指揮官が知り得る筈もなかった。
「どんな手を使ったか分からんが、一先ず警戒だけはしておくか」
タレスは無線で部下達に警戒するよう呼び掛ける。
「指揮官機より全機へ、直ちに警戒態勢をとれ。少しでも異変があれば報告するように」
それだけを指示すると、直掩機隊は直下の海上を航行している艦隊を守るように大きく広がって展開する。
「さて、敵はどうやってこの包囲網を破るか?」
自軍のパイロットの技量の高さと戦術の優秀さに自信を持っているタレスは、敵がどうやって挑んでくるか考える。
その直後………
ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!
突然、暗闇の空に炎と爆音が響く。
「なんだ!?」
次々と爆発していくアンタレスにタレスは一瞬だけ動揺する。
「何が起きてる!?」
タレスは取り敢えず操縦桿を激しく操作し機体を大きく動かす。
「状況報告!」
『分かりません!味方が次々………ガッ!』
『18番機がやられた!』
『6番機が落ちた!何が起きて………ガッ!』
『こちら7番機被弾した!誰か助けてくれぇぇぇ!!』
無線機からは混乱するパイロット達の怒号と悲鳴が聞こえてくるが、状況的に敵の攻撃を受けている事は理解できた。
『うわっ!何か槍みたいなのがっ!』
無線のスピーカーから聞こえてきた部下の声に、タレスは暗闇の中を敵が紛れ込んできているのかと見回す。
「何だ?」
一瞬だけ、凄く小さくではあるが多数の光点のような物が前方に見えた。タレスは前方から敵が向かってきていると思い、スロットルレバーに備えられている機関砲の引き金を握り混み、機関砲を発射する。
無論これは当てるつもりで撃ってるのではなく、味方に前方から敵が向かってきていると教えるためである。
「なっ…………」
しかしその直後、彼の乗り込むアンタレスに1本のアムラームが直撃し、機体は彼の体とともに一瞬でバラバラとなった。
「何が起きている!?」
直下の水上特別攻撃隊の艦艇からも上空で次々と爆発が起きているのが確認されており、グレードウォールではレーダー員が艦橋に報告を入れていた。
『上空の直掩機隊の反応が次々と消失しています!』
「敵機か?」
『ディスプレイ上には友軍機以外に多数の高速飛翔物体が映っています。航空機の速度とは思えません』
「何が起きてるんだ?」
アケイルは突然の事態に動揺を隠せなかった。今までに無かったかのような経験が次々と舞い込んできてしまい、彼を含めた艦隊参謀達はどうして良いのかが分からなかった。
「艦長、取り敢えず対空・対潜警戒を厳に。艦隊戦闘配置」
「了解!」
アケイルは取り敢えず定石通り、艦隊に戦闘配置を命令し、グレードウォール以下の艦艇は空と海中からの攻撃に備えて陣形を変更する。
『艦橋、たった今、上空直掩機隊の反応が全て消失しました』
「全滅と言う事か?」
『はい………』
僅かに十数分のうちに全ての上空直掩機を失った水上特別攻撃隊。空の守りを完全に失った艦隊に衝撃が走る。
「司令、我々はこれから」
「………………………此処で任務を放棄しては帰れん。戦わずして失われた航空部隊の兵士達の犠牲は無駄にはしない。我々はこのまま目的地に向かう」
「………………司令」
アケイルの決意は固かった。それと同時にアケイルは失われた犠牲を無駄にしてまで与えられた任務を放棄するような軍人ではない事は誰もが知っている。
しかも今回の任務は敵の帝国本土侵攻を止めるまでは行かなくても足止めさえ出来れば準備をするための時間が出来、1人でも多くの臣民や皇帝の命が助かる可能性が生まれる事にも繋がる。
それを一番理解しているアケイルの心情を汲んだ艦隊参謀達とその場にいたグレードウォール乗員らはそれ以上、彼に異を唱える事はしなかった。
「分かりました。我々も男です!司令の後を着いていきます」
「すまんな…………もし此処にカイザルも居たら、こんな場合どうするんだろうな」
アケイルはかつての戦友であるカイザルの事を思い出す。
転移前の運命戦争、ライバルのケイン神王国との戦争で士官候補生として共に当時の最新鋭艦であったオリオン級戦艦1番艦オリオンに乗り込み戦争を戦い抜いた彼は、現特務軍司令のミレケネスと共にカイザルの事を当時から知っている数少ない人物である。
日本の捕虜となっており未だ帰還できていない戦友の顔を思い浮かべながら、これから自分達に降り掛かってくる運命がどのような結果をもたらすのかを、思案する。
「……………」
暗闇の中、灯火管制で海上を突き進む水上特別攻撃隊に、次なる試練が待ち受けていた。
続く
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