敵水上特別攻撃隊の航空部隊を葬ったVFA-27に変わり、対艦装備を満載したVFA-102のF/A-18Fは、次なる攻撃態勢に入る。
『stanby、redy、fire!』
VFA-102飛行隊は主翼下に搭載されていたASM-84Jハープーンミサイルを発射した。放たれたハープーンはシースキーミングモードで慣性誘導により事前に設定されたルートを伝い水上特別攻撃隊へ向かっていく。
その頃、戦闘態勢を維持した状態で航行するグレードウォールは、第63水雷戦隊に守られる形で航行している。
「静かだな」
先程の上空直掩機隊全滅以降、何も起きず静かな時間が過ぎていく事に誰もが違和感と不安を感じていた。
「全くです…………ですが妙な違和感を感じますが」
「私もだ……敵は我々を捉えている筈だが、何故攻撃してこない?」
アケイルは80機もの航空機を全滅させる戦力を持ち、既に自分達を捉えている筈の敵が何もしてこないという事に不安を感じると同時に、異様な程の胸騒ぎに見舞われている。
(分からん………敵の意図が分からん……)
静かな海上を航行している攻撃隊。
月明かりもなき新月の夜の中、何処からともなく轟音のような音が聞こえてくる、
「何だ?この音は」
「分かりません………警戒員、状況報告!」
「右前方異常な…………ん?」
その時、右前方を見張っていた見張り員が海面スレスレを白い炎のような物が高速で飛翔し、こちらへ向かってやって来ているのを発見したも
「右前方水面、高速飛翔物体接近!」
「左前方水面にも高速飛翔物体接近!」
「対空戦闘!」
艦長が咄嗟にそう指示するが、その直後、グレードウォールの右舷を航行していた駆逐艦から爆発が起きた。
「グラフィアス被弾炎上!」
護衛の駆逐艦グラフィアスが突如として爆発炎上し、注意がそちらに向けられる。しかしその直後、グレードウォールの左舷と前方を航行していた軽巡洋艦ラサラスと駆逐艦3隻が立て続けに爆発炎上を起こした。
「何が起きている!?」
「先程の高速飛翔物体が友軍艦艇に次々と直撃しています!」
「対空戦闘配置は!」
「既に完了しています!」
「撃て!」
攻撃隊は対空戦闘を開始するが、新月のまっ暗闇の中ではハープーンを捉えるのは至難の業であり、たとえハープーンのターボジェットエンジンから放たれる噴射炎が目視で見えたとして其処に対空砲を撃ち込んでも、時速900キロで飛翔するハープーンを追尾するのは非常に難しく、しかも対空砲の死角である水面ギリギリを飛行しているため、終末誘導に使われている内蔵のレーダーに捕まった艦艇に成す術は無い。
重巡洋艦なら当たり所では一撃で大破させる程の破壊力を持つハープーンが撃ち込まれた駆逐艦は文字通り木っ端微塵に吹き飛ばされ、軽巡洋艦ラサラスも命中した箇所からの浸水と大火災により戦闘・航行不能となり、退艦命令が下された。
そして残りの3隻の駆逐艦のうち2隻にハープーンが襲い掛かり一瞬のうちに轟沈、残りの駆逐艦1隻はハープーンの攻撃を受ける事なく撃沈された友軍艦艇の乗員の救助を開始した。
グレードウォールにも数発が直撃したが、大和型と同等の防御力を誇るグレードウォールには掠り傷にしかならなかった
「被害報告!」
「飛翔物体、右舷と左舷舷側に命中するも被害無し!」
「流石はグレードウォールだ……びくともしないな」
帝国の最新技術を誇るグレードアトラスター級の装甲は通常の戦艦の比ではない。この世界では紀伊型を除けば最高クラスの防御力と攻撃力を誇るグレードアトラスター級は正に超弩級戦艦を名乗るのに相応しい能力を持っている。
だが、それを分かっているアケイルの表情は暗かった。
「直掩機隊に続いて第63水雷戦隊までもが……」
グレードウォールの護衛の任を担っていた第63水面戦隊が10分もしないうちに駆逐艦1隻を除いて全滅したのである。
アケイルは2度目の悪夢に対して、顔には出さなかったが内心は言い知れない恐怖感に支配されつつあった。
「司令、アルニヤトから発光信号!」
「内容は!」
「『本艦は救助のため留まる。貴艦は任務を遂行されたし』です」
「……………………了解と伝えろ」
「はい」
「本艦はこのまま作戦を続行する!機関最大戦速!」
グレードウォールは駆逐艦1隻に後を任せ、単艦で目的地であるレイフォル南方沖の砲撃地点へと目指す。
「司令、敵艦隊はグレードアトラスター型と駆逐艦1隻を残し全滅しました」
紀伊のCICでロナルドレーガンと早期警戒機からの報告を受ける松田。その表情には余裕があった。
「此処までは作戦通りだ。敵残存艦の動きは?」
「1隻を残し敵戦艦増速。レイフォル南方沖海域を目指しています」
「目的は海上から地上部隊への艦砲射撃……あの辺りからなら大和型の主砲でも内陸の地上部隊へも届くか」
松田は敵が一心不乱に南下している事から、彼らの目的が海上より国連軍地上部隊への艦砲射撃をしようとしていると推測していた。現に残ったグレードウォールは針路を変える事なく、真っ直ぐに南下を続けている。
「向こうが現場海域に到着するのは何時になる?」
「明朝かと」
「我々が向こうと接触できるのは?」
「敵艦が南方海域に到達するのとほぼ同時ですね」
「本艦は護衛艦2隻と共にこのまま全速力で目標に向かう!奴に先を越されたらアウトだ!」
紀伊は護衛艦しらぬい、まやの2隻を伴い、他の艦を現状に留まらせてから最大戦速で目的地へと急いだ。
続く
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