ガーディアンフォースに入った私達は、色んな人に出会った。
私と同じ古代ゾイド人の人や、オーガノイドも居て、皆良い人達で一安心。
まだまだ知らない事や覚えなきゃいけない事が沢山あるし、お仕事も大変だと思うけれど……
皆一緒なら、きっと、頑張って乗り越えて行けるよね。
[シーナ]
[ZOIDS-Unite- 第14話:カイとクルト]
ガーディアンフォース入隊3日目……
入隊早々ハードな訓練が待ち受けているのろだうと身構えていたカイは、盛大な肩透かしを喰らっていた。
……というのも、入隊翌日から早速行われる予定であった操縦訓練が急遽お預けとなってしまったからだ。
原因は、ブレードイーグルと専属開発整備班との間に起きたトラブル。
ガーディアンフォースに所属した以上、ブレードイーグルの整備やメンテナンスを行うのはガーディアンフォースの専属開発整備班のスタッフ達。勿論、精鋭部隊の開発整備を一手に担っているのだから、スタッフ達も腕利きばかりであるし、その技術はトップクラスだが……どんなに優れた技術を持つ専属開発整備班の面々といえど、古代ゾイドを扱った事のある者は誰一人としていない。
その為、現代ゾイドと異なる構造やシステムを多く持つブレードイーグルの今後を考え、事前にその機体情報を解析し準備を整えておこうという事になった所までは良かったのだが……
予期せぬ……いや、冷静に考えてみれば寧ろ当然なのだが……トラブルが起きたのはまさにこの直後。
ブレードイーグルの表示言語から機体システムのプログラミング言語に至るまで、全て古代語で入力されている事が判明し、このままでは誰も手が付けられないではないか。という事態に陥ったのだ。
これには流石に総合主任であるトーマは勿論、専属開発整備班一同、揃いも揃って頭を抱えてしまった訳だが……此処で躓いてしまっていてはガーディアンフォース専属開発整備班の名折れ。言語が読めないのなら、解析して読める言語に書き換えるまでの事!と、彼らは急遽ブレードイーグルの言語解析から取り掛かる事になった。
これによって、言語解析が終了するまでの間イーグルは朝から晩まで第三格納庫から出るに出られず、前述の通り操縦訓練がお預けになってしまったカイの訓練内容は、トレーニングルームや基地のグラウンドを利用して基礎体力などを鍛える体力練成に変更されてしまったのである。
「カイってさ、何の訓練も受けてないって言ってたけど、結構あっさり体力練成の訓練メニューこなせてるよな」
ベースのグラウンドで共にランニングをしていたレンから投げかけられた言葉に、カイは何となく空を見上げながらぼんやりと答えた。
「まぁ、行方を眩ませてた3年間。情報屋なんかやってたしな」
そう。情報屋として3年もの間飛び回っていたカイにとって、体力に関する訓練は大して苦ではなかった。
元々運動は得意であったし、商売柄、散々危ない連中に追い掛け回され続けた事で身に付いた逃げ足の速さは、瞬発力と持久力という形で発揮され、ワイヤリール一本を頼りに様々な場所を巡って来た事で身に付いた身軽さや平衡感覚も、現在ガーディアンフォースの中で一番身軽ですばしっこいレンと張り合えるレベル。
現時点で足りないものがあるとすれば、全体的にやや筋力が劣る事くらいだが……それでも指示された体力練成の内容に十分付いていける事はカイの中で微かな自信や希望に繋がり、モチベーションにもなっていた。
「情報屋?! スッゲー!! なんかカッコいいな!」
無邪気に目を輝かせるレンにカイは苦笑を浮かべる。
「そう言って貰えるのは嬉しいけど……裏社会に片脚突っ込んでるような仕事だし、そう良いもんじゃねーよ。方々から恨みは買うわ、ヤベー連中には追い回されるわ……苦労ばっかだぜ?」
「けど、3年もそんな生活してたんだろ? やっぱスゲーよ」
「俺はレンやエドガーの方がスゲーと思うけどなぁ……」
カイが呟けば、レンは目を丸くしてきょとんと訊ね返して来た。
「そうか?」
「そうか? って……そりゃそうだろ。だってほら、お前らっていくつの時にガーディアンフォースに入った?」
「んと、去年」
「だろ?? 普通ならハイスクールに入る歳でガーディアンフォース入ってる方がよっぽどスゲーじゃん」
その言葉に、レンは微かに自嘲の色を滲ませる。
「まぁ……確かにガーディアンフォースになるのは俺の夢だったから、それが叶ってるのは嬉しいけど……お父さんみたいな立派な人になるんだよ~って、周りの連中から勝手に期待された挙句、いざガーディアンフォースになってみりゃ『親の七光り』って陰口叩かれて、なんだかなぁって感じだよ」
普段明るく陽気なレンの口からそんな言葉が飛び出すと思っていなかったカイは、思わずぽかんと彼を凝視する。
一方のレンは、そんなカイの視線に気付いたのか誤魔化すような苦笑を浮かべていた。
「あ、いや、だからさ……俺にしてみれば、周りの期待とか妬みとか一切気にせずに自分のやりたい事をやりたいようにやって来たカイの方が、滅茶苦茶カッコ良く見えるって事」
カイは何と答えたものやらと暫し考え込んでいたが、やがて不意に微笑みながらぽつりと呟いた。
「……そっか、ありがとな」
「へ?」
唐突な感謝の言葉に思わず首を傾げたレンに、カイは穏やかな笑みを浮かべたまま口を開く。
「親父に反発して好き勝手やって来ただけの俺を「親不孝者」だの「ろくでなしの放蕩息子」だのって罵倒する奴はいくらでも居るけど「カッコいい」なんて言ってくれるの、きっとレンくらいだから……だから、ありがとな。って……寧ろなんかごめんな。俺月並みの言葉しか言えなくて。でもさ、周りがなんて言おうと……俺はレンの事凄いって思うし、尊敬してんのはホントだぜ?」
カイの言葉に、レンは明るい笑い声を上げながら呟いた。
「お前律儀だなぁ」
「そうか?」
首を傾げるカイを見つめ、レンはいつもの陽気な笑顔を浮かべる。
「あんな愚痴聞いても、俺の事尊敬してるって言ってくれただけで滅茶苦茶嬉しいぜ。ありがとな。なんだか自信湧いて来た」
「おう」
ランニングを続けながら笑い合う2人の間には、早くも友情の芽生えを感じさせる朗らかな空気が満ちていた。
~*~
その日の夕方、訓練を終えたカイはいつものようにブレードイーグルの言語解析の進捗を確かめに、第三格納庫へと足を運んでいた。
「シーナぁ~! イーグルの言語解析、どれくらい終わった~?」
整備ブリッジからイーグルのコックピットを覗き込んでいるシーナに声を掛ければ、彼女は笑顔で手を振りながら答えた。
「もうすぐ終わる所~! 明日のお昼までには変換作業も終わるから、お昼から操縦訓練始められるって!」
「マジで?!」
シーナの返事に嬉々とした表情を浮かべ、カイは階段を駆け上り、キャットウォークから整備ブリッジへ向かう。
が、しかし……
「博士~!……って……」
ブレードイーグルのコックピットを覗き込んだカイは一瞬気不味そうな表情を浮かべると、面白くなさそうな声で作業している人物を眺め、口を開いた。
「なんだ、お前かよ」
そう……普段ならばイーグルのコックピットを陣取って言語解析作業に従事しているのはトーマなのだが、今日この日は、その息子であるクルトの方が作業に従事していたのだ。
一方、開口一番あんまりな言葉を投げかけられたにも拘わらず、クルトは寧ろ涼しい顔で膝の上に抱えたラップトップから顔を上げようともせずに口を開いた。
「別に俺の事も博士と呼んでくれて構わんぞ。俺だってれっきとした一級工学博士だからな」
「お前の事まで博士って呼んでたら、シュバルツ博士が2人になってどっちがどっちだかわかんねーじゃん」
呆れ顔でぼやくカイをふんっと鼻で笑って、クルトはラップトップのキーボードを叩き続ける。
その態度からクルトが自分を馬鹿にしている事を察し、カイは思わずイラっとした表情を浮かべるが、お約束となりつつある神経の逆撫で合いのような応酬が始まる前に聞き覚えの無い無機質な男性の声が響いた。
[言語解析作業、全て完了しました。変換作業に移行しますか?]
「え? 誰??」
目を丸くしたカイの前で、クルトが得意げな笑みを浮かべる。
「そういえばお前には紹介してなかったな。コイツは俺が作った次世代型軍用AIの『テオ』今日1日中、言語解析作業を補佐してくれていた俺の相棒だ」
だが、そんなクルトとは打って変わり、カイは驚愕というよりも拍子抜けしているような顔で呟いた。
「マジかよ……お前、自作AI作れるくらい凄い奴だったんだな……」
「おい。貴様今まで俺を何だと思っていたんだ」
「さぁな」
小馬鹿にしているような笑みを浮かべるカイに、クルトがジトリとした視線を向ける。
しかし、そんなギスギスした空気を全く意に介さず声を上げたのはやはりテオであった。
[初めまして。私は次世代型軍用AI『テオ』戦闘補佐及び解析、情報収集、戦術予測、戦況観測、その他、整備メンテナンス全般の補佐等が主な仕事です。よろしくお願いします]
丁寧なその自己紹介にカイはふと笑みを浮かべ、クルトが抱えているラップトップへと語り掛けた。
「俺はカイ=ハイドフェルド。このブレードイーグルの登録パイロットだ。よろしくな。テオ」
「テオに話しかけるなら、そっちじゃなくてこっちだ。こっち」
ラップトップに笑顔を向けるカイを呆れ顔で眺め、クルトは自分の左耳に装着している小型インカムを指差す。
が、当のテオはそのような細かい事を気にする様子もなく、不思議そうな声を上げた。
[通信インカムの収音範囲内ですので、音声認識には特に問題ありませんが?]
「お前には問題なくても、こっちの気分的に問題大有りだ。ただの作業用ラップトップにお前が居ると思い込んで笑顔で話しかけてるんだぞ。コイツ」
[成程。つまりカイは、初めてご挨拶をした際のシーナと同様、私が搭載されている場所を知らないのですね]
理解した様子のテオの言葉にカイは首を傾げ、その様子を察したシーナが説明を始めた。
「テオちゃんはね、クルトのディバイソンの中から色々お手伝いしてくれてるの。だから、テオちゃんに話しかける時はクルトが付けてるコレに話しかければ良いんだって」
そう言って、シーナもクルトの小型インカムを指差す。
カイはそこでやっと納得した表情を浮かべ、クルトの小型インカムを見つめながら口を開いた。
「そっか。お前ディバイソンに組み込まれてんのな」
[はい。その為、ディバイソンのコックピット外における情報処理全般に関しては、専用デバイスによって情報を得て処理を行っています]
「へ~ぇ。なるほどなぁ……」
初めて目の当たりにしたAIという存在に興味津々のカイ。
クルトはそんなカイを何処か呆れた様子で眺めていたが、気を取り直すような軽い溜息を吐くとラップトップのモニターに視線を戻して作業を再開する。
「言語解析が完了したんだったな。テオ、解析データを元に変換作業へ移行。俺はこれから夕食を摂って来るから、何か問題が起きた時は報告してくれ」
[了解]
テオの返事の後、クルトは立ち上がって抱えていたラップトップをコックピットの座面に置くと、ひょいっと身軽に整備ブリッジへと飛び移りシーナに笑いかけた。
「シーナさんも、よろしければ夕食、一緒にどうですか?」
「うん。カイも一緒に行こうよ」
クルトの誘いに笑顔で頷いたシーナがカイを誘う。
しかし、カイはクルトをチラッと見た後、軽く首を横に振った。
「いや、俺は先にシャワー浴びて来るから先行ってろよ」
「あ、そっか。カイ、今日もずっと運動してたもんね。うん。いってらっしゃい」
小さく手を振るシーナに軽く手を振り返し、カイは第三格納庫を後にする。
その後ろ姿を見送った後、彼女はクルトに微笑みかけた。
「じゃ、先に晩ご飯食べて来よっか」
「そうですね。そうしましょう」
何処か上機嫌な様子のクルトにクスクスと笑い声を上げながら、シーナも彼と共に食堂へと向かうのだった。
~*~
「シーナと一緒はともかく、クルトもってのはちょっとなぁ……」
思わず声に出してぼやきながら、カイはシャワールームへと向かっていた。
そう。彼がシーナの誘いを断ったのは別にクルトへ気を遣った訳ではなく、単に自分が彼と一緒に居たくなかったというただそれだけだ。
(妙に見下して来るっつーか、馬鹿にされてるっつーか……一体何がそこまで気に食わねーんだ?……)
ガーディアンフォースに入隊した3日前のあの日……初めて顔を合わせた時から、クルトは妙にカイに対してのみ当たりがキツい。
そしてカイも、自分の事を嫌っていると解りきっている人間に対し、わざわざ表面を取り繕ったり、一歩譲ったりするような
このまま仲違いを続けていれば、そのうちベース内の雰囲気も悪くなるであろうし、他の者達にとっても迷惑になるであろうと頭では解っているのだが……自分は別に何も悪い事はしていない。あくまであちらが妙に一方的に自分を嫌って来るからやり返しているだけであって、クルトが態度を改めない限り自分にはどうしようもない。と、つい反発心が沸いてしまう。
自分と違ってシーナがクルトに気に入られている……まぁ、彼の反応から察するに恐らくシーナに気があるのだろうから当然と言えば当然なのだが……その事が尚更、自分一人だけが除け者にされているような気がして、反発心に拍車を掛けているのもカイは自覚していた。
「……もしかしてクルトの奴、俺の事を恋敵だとでも思ってんのかな……」
やれやれといった様子でぽつりと呟いた彼は、ふと疑問を持つ。
「俺は別に……シーナの事で張り合う気は無いんだけど……うん。無い。無いよな?……」
遺跡で出会ったあの日から、シーナは傍に居て当たり前の存在となってはいるが……自分にとってのシーナの立ち位置を真剣に考えた事は今まで無かった。
起こした以上最後まで面倒を見てやると、ずっと味方で居てやると約束した大切な存在だが……大切な……妹分? それとも、自分も恋愛的な意味でシーナに好意を寄せているのだろうか? 特にこれと言って意識した事は無いが……
いや、確かに恋愛的な意味で意識した事は無いが、シーナの笑顔を可愛いと思う自分が居るのは確かであるし……
自分にとってシーナは妹分なのか? 恋愛対象なのか?……正直自分でもよくわからない……
(……まぁ、それはそれで一旦置いとこう……今考えてもしょうがねぇや)
疲れたような溜息と共にカイは思考を切り替える。
それに、クルトはシーナと顔を合わせる前からいきなり突っ掛かって来た訳であるし、きっと自分を嫌う理由はもっと別にあるのだろう。
「気に食わない理由があるなら、ハッキリ言や良いのに……ホント、面倒臭ぇ奴だなぁ……」
疲れた表情を浮かべて、カイは「汗と共に悩みも洗い流せれば良いのに……」と心底思いながらシャワールームの中へと姿を消した。
~*~
翌日の午後。
カイは4日ぶりの空を謳歌していた。
離陸から旋回、急旋回、急上昇や急降下も一通り問題なくこなして見せたカイに、トーマが通信で呼びかける。
「なるほど。アマチュアゾイド乗りだったにしては確かに筋が良いな。シュバルツ少佐が君の腕を買っていたのも納得だ」
「ルーカス兄ちゃんが??」
驚きの声を上げたカイに、トーマは笑顔を浮かべた。
「ああ。まぁ、筋が良い事と今のレベルで任務をこなせるかどうかという事は、また別の話だがな」
「それくらい俺だってわかってるよ。で? 一通り基本操縦のチェックは終わったんだろ? 次は??」
先を急かすカイに、トーマの笑みが微かに意地の悪い色を滲ませる。
「ほう。やる気があるのは大いに結構だ。そうだな……あとは当然! 戦闘訓練に決まっている!」
「へ?? ちょッ?! 今から?!」
いきなりブレードイーグルめがけ、トーマの乗るストームソーダーがウイングソードで切りかかって来る。
それを間一髪で躱し、カイはわたわたとブレードイーグルの姿勢を立て直しながら情けない声を上げた。
「いきなりなんて聞いてねーよ!! せめて休憩挟んでからとかさぁ!!」
「敵はいきなり攻めてくるんだ。突然の奇襲にも臨機応変に対応出来るようにならなければな」
「基本操縦からいきなりハードル上げ過ぎだっつーの!!」
ひらりひらりと、次から次へ、あらゆる方向からウイングソードで切りかかって来るトーマのストームソーダーから逃げ回るブレードイーグル……その姿をシーナが心配そうにオペレータールームから見上げていた。
「カイ、大丈夫かな……」
「大丈夫大丈夫。トーマの奴、全然本気じゃないし。怪我をさせるような事はしないよ」
心配そうなシーナとは打って変わって、リーゼが隣で面白がっているような声を上げる。
フィーネも、そんなリーゼに苦笑を浮かべつつトーマへ通信を入れた。
「トーマさん。カイもまだ初日だし、あんまり意地悪しないであげて下さいね」
「心配ご無用ですよフィーネさん。加減は十分心得ておりますので」
「これの何処が?!」
得意げに返されたトーマの返事にカイが思わず抗議の声を上げるが、トーマはそれを全く聞いていないらしい。
ほぼ一方的な展開の戦闘訓練の様子を、第二格納庫から訓練に出る準備をしていたレンとエドガー、そしてクルトの3人も眺めていた。
「シュバルツ博士、すっげー楽しそうだな……」
苦笑を浮かべつつ呟くレンに、エドガーが微かな呆れの色を滲ませながら口を開く。
「博士もこのところ、臨時戦闘員としての出撃が無かったからな。久しぶりに自分の手でゾイドを操縦しているんだ。ゾイド乗りの血が騒ぐ……って奴なんじゃないか?」
「なるほど。確かにあり得るよな。博士だって元は父ちゃんと一緒に前線で戦ってたゾイド乗りなんだし」
しかし、苦笑を浮かべつつも何処か楽しそうに空を見上げるレンとエドガーの2人とは打って変わって、クルトは片手で頭を抱えるようにしてやれやれと首を横に振っていた。
「全く……素人相手に大人げない……」
「あれ? 珍しいな。てっきりクルトはカイの事嫌ってんだと思ってたけど、心配してんのか?」
不思議そうに訊ねて来たレンに、クルトはむすっとした表情を浮かべる。
「別にアイツの心配をしている訳じゃない。素人相手に調子に乗って遊んでいる父親が息子として恥ずかしいだけだ」
「そうは言うが、一応攻撃は全て躱している訳だし。少しはカイの実力も認めてやって良いと思うがな」
ストームソーダーの攻撃を躱し続ける中で、少しずつギクシャクしていた動きが滑らかになりつつあるブレードイーグルを見上げエドガーが呟くも、クルトは面白くなさそうにふんっと鼻を鳴らして口を開いた。
「躱せて当たり前だ。父さんは完全に遊んでいるだけだし、機体性能自体は信じ難い事だが古代ゾイドであるブレードイーグルの方がストームソーダーよりも上なんだからな。そんな高性能機であの程度の攻撃もロクに躱せないならば、完全に宝の持ち腐れ……ハッキリ言って猿以下だ」
あまりに辛辣なその言葉に、レンはエドガーと顔を見合わせ肩を竦めて見せる。
確かに異例の入隊であったとはいえ、レンとエドガーは良い意味でも悪い意味でもカイを特別視してはいない。
選ばれたからにはそれなりの理由があるだろうし、選ばれた以上、共に戦う仲間だと認識しているからだ。
しかし、クルトはどうやらそうではないらしい……その事がレンの中で妙に引っかかっていた。
~*~
「クルトの奴、なんであんなにカイの事毛嫌いしてんだろうな?」
1日の訓練が終わり、カイ達よりも一足先に食堂で夕食を摂りながらレンはエドガーに話しかける。
エドガーはシチューに手を付けつつ、呆れた様子でレンへ訊ね返した。
「お前、わからないのか??」
「え? だってカイもクルトも、ガーディアンフォースに入った以上、一緒に働く仲間じゃねーか。もっとこう……仲良くすりゃ良いのにさぁ……」
「そう簡単な話じゃないんだろ。クルトにとっては」
「なんで??」
いまいち要領を得ないレンに、エドガーは小さな溜息を一つ吐いて語り出す。
「僕達は最年少でガーディアンフォースに選ばれ、誰もそれに対して異を唱えなかった。それは逆を言えば、僕達が両親と同じように平和の担い手になる事を誰もが期待していたからだ。まぁ、僕に関しては両親の罪の贖罪を息子の僕にも求める声が少なからずあったから……というのもあるが」
「それはッ!……気にする事ねぇって何度も言ったろ?……」
悔し気な、苦々し気な表情を浮かべたレンに、エドガーが思わず黙り込む。
エドガーの両親……レイヴンとリーゼが過去に犯した罪を巡り、幼い頃から偏見の目に晒されていたエドガーとその妹を守ってくれたのは、幼馴染であるレンとクルトだ。
だからこそ、レンもクルトもこの話題を嫌っていたし、いつしかその事を話題に出さないのが暗黙の了解になっていたのを思い出して、エドガーはそっと静かに口を開いた。
「すまない……この事は言わない約束だったな……」
「いや……けど、それとクルトがカイを嫌うのとどう関係あるんだ??」
空気を変えるように訊ねて来るレンに、エドガーは若干呆れた視線を向ける。
「わからないか?ガーディアンフォースで働く父親を持つ者として、クルトも僕達と同じ期待に晒されていたのに、年下の僕達だけが先にガーディアンフォースに選ばれて、1人だけ置いてけぼりを喰らってたんだぞ?」
「じゃぁ、クルトが俺やエドに嫉妬してるって言いたいのか?」
「いや、そうじゃなくて……」
エドガーは溜息と共に一息入れると、根気よく説明を続ける。
「1人置いてけぼりを喰らったからこそ、クルトは僕達に追いつきたい一心で必死に学んで、訓練を受けて、やっと今期入隊して来たんだ。なのによりによって、そのクルトと同じタイミングで訓練も何も受けていないカイの異例入隊……今までの自分の努力や苦労を全否定されているように感じても仕方ないって事さ」
「あ~……そういう事か……」
やっと理解した様子のレンを疲れた表情で眺めた後、エドガーは疲れた様子でパンを千切り口に運ぶ。
しかし、レンはレモン水を数口飲むと、釈然としない面持ちで口を開いた。
「けどさ。ぶっちゃけそれ、カイ自身は何も悪くねーじゃん。そりゃシュバルツ少佐の口添え一つでポンッと入って来たのは事実だけど……訓練無しで入って来たのはシーナも一緒なのに、なんでシーナは良くてカイは駄目なんだろ……」
「シーナは古代ゾイド人で、ユナイトも連れてる。一番安全に暮らせる場所は此処しかない。だが、カイは……少なくともクルトにとっては“別に此処に居る必要を感じない存在”なんだろ」
その言葉を聞いて暗い顔をしたまま、まだ一口も手を付けていない自分の夕食に視線を落とすレンに、エドガーは困ったような表情を浮かべる。
「だから最初に言っただろう? そう簡単な話じゃない。って。おまけにカイも、クルトに突っかかられてばかりで苛立ってるようだから尚更さ」
「え?? マジで??」
「ああ。昨夜クルトが僕の部屋までわざわざ愚痴りに来た。カイが自分からクルトに喧嘩を売るような……挑発するような物言いをする事があるって。まぁカイにしてみれば、散々そういう扱いをされて来た分の細やかな仕返しといった所だろうから……こればかりは本人同士が折り合いを付けてくれないと、僕達じゃどうしようもない」
エドガーの言葉に、レンは両手で頬杖を突いてむすっと口を尖らせる。
「なんかヤダな……仲間内でギスギスしてんの……」
「それに関しては僕も全面的に同意だ……だが、僕達に出来るのは2人の相談に乗ってやる事と、多少時間が掛かっても、どうにか折り合いを付けて落ち着いてくれるのを願う事くらいだと僕は思う」
静かにそう語る同い年の幼馴染を見つめ、レンは降参したような表情を浮かべた。
「俺、時々エドのそういう大人びたトコ、ちょっと憧れるよ……」
「歳の割に老けこんでるだけさ」
「なぁなぁ、何の話だ?」
ふと聞こえた声に顔を上げれば、カイが自分の夕食の盆を抱えて此方に歩いて来る所であった。
レンとエドガーはチラッと視線を交わし合うと、なんでもなさそうに取り繕う。
「あぁ。エドが歳の割に大人びてるって話」
「なーんだ。それで歳の割に老け込んでるとかなんとか言ってた訳か。あ、隣良いか?」
「おう! 来い来い!」
自分の隣の椅子を引っ張り出し座面を叩くレンを見て面白そうに笑いながら、カイが席に着く。
疲れた様子で夕食のハンバーグに手を付けるカイを眺めて、エドガーが優しく訊ねた。
「午後の抜き打ち戦闘訓練、随分堪えたようだな。大丈夫か?」
「ああ。死ぬほどビックリしたけど……イーグルに懸けられてた賞金目当ての連中から1週間も逃げ回ってたのに比べりゃ、まだマシな方だ」
苦笑を浮かべながら答えるカイに、レンも訊ねる。
「ベースでの生活も、ちょっとは慣れたか?」
「おう。そっちは何とか。特に不便もねーし……まぁ、強いて言うならクルトの事くらいかな……」
若干気不味そうな表情で視線を逸らしながら予想通りの言葉を呟いたカイを見て、「やっぱりそれか」といった目くばせをチラッと交わすレンとエドガー。
だが、カイはそんな2人にポツリと意外な一言を零した。
「初対面の時から妙に嫌われてる感あるなとは思ってたんだけどさ……俺もその……自分の事嫌ってる奴とわざわざ仲良くする必要ねぇや。って態度悪くなっちまうトコあっから……そういうの止めれば、向こうも多少なり突っ掛かって来なくなんのかな~? とは思ってんだけど……」
その一言に静まり返ったレンとエドガーを交互に見つめ、カイは戸惑ったように訊ねる。
「……俺、何か変な事言ったか??」
「いや、変な事は言ってねーけど……」
「僕達はてっきり、カイもクルトの態度に苛立って完全にクルトを嫌ってるだろうとばかり思っていたから……」
「あぁうん。正直滅茶苦茶大っ嫌い」
キッパリとそう言い放ちはしたものの、直後、カイは手にしたフォークをペン回しのようにくるくると遊ばせながら頬杖を突いて、伏し目がちに言葉を続けた。
「……けどさ、どっちかが折り合い付けなきゃ延々と埒が明かねーのは俺も薄々感じてるし。俺とクルトがいつまでもこうしてギスギスしてたんじゃ、基地内の雰囲気も悪くなる一方だろ? 只でさえ俺は色々とトラブルの種になりやすい立場だから、やっぱ俺が折れるしかねーのかなって……」
普段とは違う大人びた声音でそう語ると、彼は指先で器用に遊ばせていたフォークを持ち直し、再び食事に手を付け始める……レンとエドガーはそんなカイを暫く眺めていたが、やがて、レンが口を開いた。
「……さっき、その事でエドと話してたんだけどさ。クルトはきっと、何の訓練も受けずに入って来たカイに嫉妬してんじゃねーか? って思うんだ」
唐突な一言に、カイは少しきょとんとした表情を浮かべた後、ポツリと呟いた。
「……そっか。理由はそれか」
驚く程あっさりと「クルトが嫉妬しているのでは?」という事を受け入れ、納得した表情を浮かべたカイに、エドガーが不思議そうに訊ねた。
「何か……思い当たる節でもあるのか?」
「まぁな。入隊初日に大人しく家に帰れば良かっただろ。とか、アマチュアがこなせる程任務は甘くないとか散々言われまくったし。それに確かあの日、死に物狂いで訓練受けてやっと入隊したのにっつてたし……」
そこまで語ったカイは困ったような笑みと共に片手で頭を抱え、前髪をくしゃりと掻き上げる。
「なぁんだ。考えて見りゃ結構判り易いっつーか……何で俺、今まで気付かなかったんだろ……俺さ、今まで自分が嫌われてる理由が分かんなくてモヤモヤしてたから、解って逆にスッキリしたぜ。ありがとな」
パッと頭を抱えていた手を下ろし、何処か晴れやかな表情を浮かべるカイに、レンとエドガーはお互いに顔を見合わせた後、ホッとしたような笑みを浮かべ合ってカイを再び見つめた。
「まぁ、クルトもそのうち一緒に仕事してりゃカイの事認めて態度改めるだろうし、それまではちょっと我慢しなきゃなんねーと思うけど、俺もエドもフォローするし、いつでも相談してくれよ」
「別にクルトの事に限らず、訓練や任務の事でも、ベース内の生活や規則の事でも構わないからな。僕達もまだ入隊1年で至らない事も多いが、何かしら助けになれると思う」
そんな二人を交互に見つめた後、カイはホッと安堵したような表情を浮かべて呟いた。
「……ああ。2人ともありがとな」
特にこれといったきっかけはないが、不意に3人は誰からともなく笑い合う。
精鋭部隊ガーディアンフォースの期待の若手である彼等も、早速他愛のない話に花を咲かせながら夕食を食べるその姿は、年相応の少年達そのものであった。
~*~
一方、クルトはと言えば第三格納庫の整備ブリッジに胡坐を掻き、ラップトップを操作していた。
本日の訓練で父の操縦するストームソーダーから追い掛け回されていたブレードイーグルを見上げ、彼は友人に語り掛けるかのようにふと口を開く。
「それにしても今日は災難だったな。いきなりストームソーダーに追い掛け回されて、流石に疲れただろ?」
しかし、彼の言葉にイーグルは静かに咽を鳴らすような鳴き声を返す。
「クルルルルッ」
「……まぁ、性能はお前の方が上だし、あの程度ならじゃれ合い同然かもしれんが……一応、任務や訓練を行ったゾイドは機体コンディションのチェックを行う決まりでな。いちいち面倒臭いと思うかもしれんが、少し付き合ってくれ」
「キュルル」
まるでブレードイーグルの言葉が解っているかのように会話をするクルトは、短く鳴いたブレードイーグルを微笑みながら見上げると再びラップトップを操作し始める。
第三格納庫へ様子を見に来たシーナは、そんなクルトの姿を目の当たりにして不思議そうに目を瞬かせると、そっと彼の元へ歩み寄って話し掛けた。
「クルト、イーグルの言葉分かるの??」
「シーナさん!! あ、えっと! お、お疲れ様です!」
シーナが傍に来ていた事に気付いていなかったクルトがきょどりながら挨拶をすれば、シーナも穏やかに微笑んで返事を返す。
「あ、うん。クルトもお疲れ様。ねぇねぇ、さっきイーグルとお話してたけど、クルトもイーグルの言葉が分かるの??」
彼女の問い掛けに、クルトは暫し目を丸くしたままシーナを見上げていたが、次の瞬間ハッとした様子でラップトップへ視線を落とすと恥ずかしそうに顔を赤くしながら口を開いた。
「い、いえ……別にイーグルの言葉が解る訳ではないのですが……恐らくこう言っているのだろうと、勝手に解釈して自分が一方的に喋っているだけです……昔から、そうなんです。自分は、人間相手よりもゾイドや機械相手に話しかける方が……気楽というか、話が弾むというか……」
そう言いながらクルトはふと暗い顔をする。
学生時代にゾイドや機械に話しかける姿を変人扱いされ、頭がおかしいだの、人間の友達がいない可哀想な奴だのと言われて来たのが脳裏を掠めたのだ。
だが、また変人扱いをされる事を恐れるクルトに対して、シーナは無邪気に笑った。
「クルトって機械ともお話しできるの?! 凄いね! 私のお父さんみたい!」
「……はい??」
唐突な言葉に困惑するクルトに、シーナは何処か得意げに語り出した。
「あのね、私のお父さんもゾイドだけじゃなくて機械ともお話が出来る人だったの。凄いでしょ?」
「は、はぁ……」
ぽかんと返事を返すクルトの隣にぺたんと座って、シーナはふと、クルトのラップトップを覗き込む。
「今日はどんなお仕事してるの?」
「あぁ、えっと……ブレードイーグルの機体コンディションのチェックです。任務や訓練を行ったゾイドは、例え損傷等が無くてもチェックを行うのが決まりでして」
「そっか。健康診断してるんだね」
納得した様子で笑うシーナは、そのまま笑顔でブレードイーグルを見上げる。
そんなシーナを眺めて、クルトは出会って以来疑問に思っていた事を訊ねた。
「あの……以前から少々不思議に思っていたのですが……退屈ではありませんか?」
「え? 何が?」
「いえ……シーナさんは自分や父さんが作業していると、いつも傍で眺めてらっしゃるでしょう?退屈ではないのかなと……」
そう。シーナは仕事が終わると必ず格納庫へやって来て、自分やトーマがラップトップを操作していたり、機材を操作していたりするのをこうしてジッと眺めている。それがクルトにとっては不思議でならなかった。
こういった事に興味があるのか、それともただ単に物珍しさから眺めているのか……だがどちらにせよ、終始ただジッと邪魔をする事もなく傍で大人しく作業を眺めているのは流石に退屈ではないかと疑問に思っていたのである。
だが、シーナは少し寂し気に微笑むとそっと呟いた。
「なんだか落ち着くの……私のお父さんも博士で、いつもゾイドの開発とかしてたから。こうしてゾイドや機械の沢山ある場所で作業してる人の傍に居ると、昔に戻ったみたいで……懐かしくて」
シーナはブレードイーグルを見上げ、少し明るく語った。
「実はね、ブレードイーグルもお父さんが作ってくれたゾイドなの」
「えぇ?! シーナさんのお父様がですか?!」
「うん」
驚くクルトにクスッと笑って見せて、シーナは懐かしむような眼差しでブレードイーグルを再び見上げる。
「だから……かな? イーグルの傍でお仕事してる人を見ると、余計懐かしく思っちゃうのかもしれない」
「……なるほど。それでいつもこうして作業風景を眺めてらしたんですね」
納得した様子で静かに呟いたクルトへ、シーナが申し訳なさそうに微笑みながらそっと切り出した。
「ごめんね。お仕事中に迷惑じゃないかなって自分でもちょっと思ってたんだけど……」
「いえそんな! 自分も父さんも迷惑だなんて思っておりませんよ!!」
思わず大声でそう言ったクルトの顔を見上げ、シーナが目を真ん丸に見開いてぽつりと呟く。
「……ほんと?」
「ええ! 勿論です! シーナさんの落ち着く場所が自分や父さんの傍なら、その……いつでも来て下さい! 少なくとも自分は大歓迎です!!」
大袈裟な程必死な彼の言葉に、不意にシーナは鈴を鳴らすような声でクスクスと笑いだす。
「良かったぁ。そう言ってもらえて。なんだか安心しちゃった」
そんな彼女を眺めて、愛しさとは別に切なさのような感情が込み上げて来たクルトは、無意識に心配そうな眼差しでシーナを見つめるのだった。
~*~
(懐かしい……か……)
作業と夕食を終えシャワー室へ向かいながら、クルトは先程の切なさのような感情の理由を考えていた。
(シーナさんにとっては、どんなに同じ古代ゾイド人が居ても、この時代に家族や友人はもう居ない……いつも絶やす事の無いあの笑顔の奥では、1人である寂しさや不安をずっと抱えているんだろうか?……)
出会った日から可憐で美しい少女だと思っていたが、彼女の抱える孤独の一端を垣間見た今は、触れれば壊れてしまいそうな儚げな印象を抱かずにはいられない。
だからこそ、彼女が自分の傍を「落ち着く」と思っているのなら……彼女の居場所になれるのなら、そう在り続けよう。彼女の孤独や不安を受け止めて、今まで以上に優しく、明るく、誠実に彼女と向き合おう。それで少しでも、彼女が安心出来るのなら……
と、そこまで考えた時点で、ふとカイの姿が頭を過り、クルトは眉根に皺を寄せる。
(そういえばアイツ、シーナさんと一番仲が良いよな……)
シーナと親し気に話していたカイの姿を思い出してつい苛立ってしまうが……当のシーナにとってみれば、カイは目覚めて以来ずっと今まで旅をして来た人物なのだから、そもそも出会って数日の自分が親密度で敵う訳が無い……と思い至り、クルトはガックリと肩を落とした。
「……駄目だ。ただでさえガーディアンフォースに入隊して以来、アイツの存在に苛立ってばかりなのに……シーナさんの事でまでアイツの事を考えるのは不毛だ。余計惨めになる……」
ぐったりと呟きながらシャワー室の前までやって来た時、目の前でドアが開く。
シャワー室から出て来たのは、よりによってカイであった。
「あ……」
小さく声を上げ自分を見上げるカイに、クルトはむっとした顔で思わず口を開いた。
「言っておくが! 俺は絶対お前に負けないからな!!」
「……は?」
あまりにも唐突な一言にぽかんと首を傾げたカイの傍を足早に通り過ぎ、クルトはシャワー室の脱衣所へ歩いていく。その後ろ姿がシャワー室のドアに閉ざされて見えなくなった所で、カイはぽかんとしたまま呟いた。
「……やっぱレンやエドガーが言ってた事、当たってるぽいな。俺は別に好きでガーディアンフォースに入った訳じゃねーんだから、張り合うつもりねーんだけど……」
案の定やれやれといった様子で自室へ戻って行くカイには、クルトの言葉の真意が半分しか伝わっていないのだった……