ZOIDS-Unite-   作:kimaila

31 / 48
第31話-それぞれの可能性-

 合同演習が中止になって、ガーディアンフォースベースへとんぼ返りする破目になった俺達。

 ルネ姉ちゃん達が居るのもあと少しだし、中止になった演習の分も、残りの訓練頑張るしかねぇんだけど……

 ゼロとブレードイーグルは修復に時間が掛かる。って話だったし……

 俺達、どうすりゃ良いんだろう?

 [レン=フライハイト]

 

 [ZOIDS-Unite- 第31話:それぞれの可能性]

 

「それにしても……随分派手にやられたわね……」

 

 演習から一夜明けた、ガーディアンフォースベースの開発作業棟一階。修復整備ドッグ。

 早朝に帰還したホエールキング「ヴァルフィッシュ」から、搬送用キャリアーでゾイド用の大型フレーム修正機へと運ばれて来たライガーゼロを見上げ、深刻な表情を浮かべているのはルネであった。

 現在運用されているライガー系ゾイドの中では、唯一の装甲型キャノピーを採用しているライガーゼロ。従来のシールドライガー、ブレードライガーよりも遥かに頑丈である筈の機体が、此処までのダメージを受けて帰って来た事に対し、彼女も衝撃を受けているらしい。

 そんな彼女の隣には、何処か泣き出しそうな表情で相棒を見上げるレンの姿があった。

 

「うん……あの時、俺がもっとしっかり避ける事が出来てたら、こんな事には……」

 

 まるで懺悔のように呟いたレンの後ろ頭を、ルネが掌で軽くしばく。

 戸惑ったように目を見開いたレンの視線の先で、彼女は微かに呆れたような表情を浮かべていた。

 

「過ぎた事に対して、たらればの話をしてもしょうがないでしょ。落ち込んでる暇なんかないわよ。レン」

「うん……それも、分かってるんだけどさ……」

 

 しゅんと足元に視線を落としたレンに、小さな溜息を一つ吐いて、ルネは再びライガーゼロを見上げる。

 

「もし、乗ってたのがゼロじゃなくてシールドライガーだったなら、あんたとっく死んでたのよ? ゼロが命懸けで必死に守ってくれたのに、此処であんたが挫けて立ち止まってちゃ駄目じゃない。そんなんじゃ、元気になったゼロに合わせる顔、無いんじゃないの?」

「うん……」

「なら、気持ち切り替えなさい」

 

 ぽんぽんと背中を叩かれ、こくりと頷くレン。

 なかなか簡単に立ち直れそうに無い彼に対し、ルネはふと真面目に語り出した。

 

「ゼロをこんな風にした赤と銀の高速戦闘用ゾイド……あんたがゼロと一緒に挑んでこれだけやられたんだもの。正直こんな事言いたくないけど、恐らくうちの部隊の人間でも歯が立つかどうか怪しいわ」

 

 唐突なその言葉に、思わずきょとんとした表情でレンが顔を上げる。

 ルネは敢えて、フレーム修正機へのセット作業に入ったライガーゼロを見つめたまま、言葉を続けた。

 

「今現在、うちの首都守備隊に配備されてる機体の殆どは、従来の強化ガラス製全面キャノピー。装甲キャノピーを採用した新型のケーニッヒだって、私のロジャーと、ストライド中佐の指揮官機だけ。同じようにコックピットをピンポイントで狙われたら、たまったもんじゃないわ。あの幻影騎兵連隊(ファントムリッター)とかいう連中の出現に戦々恐々としてるのは、私達共和国軍も同じなの」

 

 そこまで語った後、彼女はふとレンを見つめる。

 

「だからこそ、残りの訓練期間で少しでもあんたが成長出来るように、私も力を貸してあげる。二度とこんな思いをしないように……でも、別にあんた1人に背負わせるつもりは、無いからね」

「え?……」

 

 戸惑ったように見上げたその先には、優しく穏やかな笑みがあった。

 

「皆で強くなって、皆で立ち向かって、皆で勝てば良い。そうでしょ?」

 

 温かいその言葉が、落ち込んでいたレンの心に染み渡る。

 そうだ。幻影騎兵連隊(ファントムリッター)はガーディアンフォースだけでなく、帝国軍にとっても共和国軍にとっても脅威である事に変わりはない。その脅威に立ち向かわなければならないのは、自分1人だけではないのだ。ルーカス達も、ルネ達も、そして幼い頃から共に切磋琢磨してきたエドガーとクルトも、新たな仲間であるカイとシーナも、尊敬し憧れる父、バンも……皆居るではないか。

 

―レン!―

 

 ふと、幼い頃に言われた言葉が脳裏を過る。

 

―英雄の息子だからって、勝手に期待を押し付けてくる奴等なんか気にするな! 辛い時や苦しい時は俺達を頼れ! 悲しい時はちゃんと泣け! 何でも独りで抱え込むな!―

 

 泣き出しそうな顔で叱ってくれたクルトの姿に、その言葉に、どれだけ救われたか分からないというのに……気が付けばすぐに独りで抱え込もうとしている自分が、どうしようもなく不甲斐ない。

 だが同時に、こうして自分が間違えそうになる度、何度でも“独りじゃないよ”と伝えてくれる人々がいる事に対して、どれだけ自分が恵まれているのかを噛み締める。

 大丈夫。皆一緒だ。独りじゃない……レンの顔に、笑顔が戻った。

 

「あぁ。そうだよな。ありがとう。ルネ姉ちゃん」

 

 やっといつもの調子で返事を返した彼に対し、満足げな笑顔を見せたのも束の間。

 ルネは掌を返すように、浮かべた笑顔へ意地の悪い影を落とした。

 

「やっとやる気出したわね。今日の訓練、みっちりしごいたげるから覚悟しなさいよ?」

 

 彼女の笑みに、レンが若干たじたじとした愛想笑いを浮かべる。

 

「で、でも、ゼロは暫く修復に時間掛かるらしいし……訓練受けたくてもゾイド無しじゃ……」

「何言ってんのよ。訓練ぐらい、いくらでもやりようならあるじゃない」

「……えっと、白兵戦訓練?とか?」

「この話の流れでなんでそうなるのよ。ゾイド戦に決まってるでしょ。あんたちゃんと話聞いてた?」

「えぇぇぇ?……」

 

 途方に暮れたようにレンは眉を八の字にして、困惑の表情を浮かべた。

 一瞬、ルネの駆るケーニッヒウルフから身一つで逃げ回れ。と言われるのだろうか?などという考えが脳裏を過り、思わず身震いする。いくらなんでもそんな事は無いだろう。と思いたいが、突拍子も無いような事を平然と思い付くルネの性格を考えると、全く有り得ない話という訳でも無い。

 しかし、ルネは困惑するレンの反応を楽しんで満足したのか、明るい笑みを浮かべながら優しく問い掛けた。

 

「私の相棒が“2頭”居るの、忘れたの?」

 

 その言葉に、レンがきょとんとした表情を浮かべる。

 

「ロジャーとティムだろ?……え?! まさか?!」

 

 レンが再び目を見開く。

 そんな彼に、ルネは笑いながら頷いた。

 

「そう! そのまさかよ。ちゃーんと連れて来てるんだから」

 

 その言葉に、レンがパァッと目を輝かせた。

 

   ~*~

 

「ティム? 誰だそれ?」

 

 午前訓練開始前、ルネの相棒のうちの1機“ティム”を借り受ける事になったレンは、自分と同じように相棒が修復中であるカイと共に、駐機されている共和国軍の輸送型ハンマーヘッドへと歩いていた。

 不思議そうに首を傾げているカイに、レンはくすくすと笑い声を上げる。

 

「ルネ姉ちゃんってさ、自分のゾイドに名前付けてんだ。地上戦闘訓練でいつも乗ってたケーニッヒウルフが“ロジャー”で、“ティム”ってのは、コイツの名前」

 

 そう言って、レンはハンマーヘッドから降りて来た白い機体を見上げる。

 その機体を見て、カイも思わず目を見開いた。

 

「シールドライガーじゃねーか! しかも首都守備隊の白ライガー! すっげー! 俺初めて本物見た!!」

 

 年相応の子供らしい反応を見せるカイに、レンが微笑ましげな笑い声を上げた。

 シールドライガー。長年、共和国軍の主力ゾイドとしてその名を轟かせているライオン型ゾイド……首都守備隊仕様の特徴的な白い機体は、対立戦争時代に「青い稲妻」の異名で呼ばれた通常の青いシールドライガーとは、また違った印象を与える。

 フットアンカーでシールドライガー“ティム”から降りて来ながら、ルネは目を輝かせているカイの姿に思わず得意げな笑みを浮かべた。

 

「どう? カッコいいでしょ?」

 

 スタッと目の前に着地しながら問い掛ければ、カイが大きく頷く。

 

「勿論! シールドライガーって、これまで色んな有名ゾイド乗りが相棒にしてた超有名ゾイドだし! それだけでもテンション爆上がりなのに、首都守備隊仕様機とかレアカラーじゃん! 滅茶苦茶カッコいい!」

 

 興奮気味に即答するカイに、うんうん。と頷きながら、ルネは微笑まし気に彼を見つめる。

 

(飛行ゾイドにしか興味が無いのかと思ってたけど……この子もゾイドが大好きなのね)

 

 かつて、ティムと出会って目を輝かせていたレンの姿が、目の前のカイと重なる。

 なんとなくそんなカイの頭を優しく撫でた後、彼女はレンの肩をぽんっと叩いた。

 

「ほら。レン。久しぶりなんだからちゃんと挨拶しなさいよ?」

「あぁ!」

 

 元気良く頷いたレンはティムの前へと走って行き、その名を呼んだ。

 

「ティム! 久しぶり!!」

「グルルルルル」

 

 彼の挨拶に、ティムは喉を鳴らすような声を上げ、僅かに頭を下げる。

 まるで「お久しぶりです。」と挨拶を返しているようなティムの姿に、レンも嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

「ゼロが治るまでの間だけど、またよろしくな!」

「また??」

 

 不思議そうに訊ねたカイを振り返り、レンが頷く。

 

「あぁ。実は俺がゾイドの乗り方覚える時に乗ってたの、ティムなんだ」

「マジで?!」

 

 思わずあんぐりと口を開けたカイの反応を面白がるように笑って、ルネが説明を引き継いだ。

 

「ゾイドの操縦を覚えたい。ってレンが言い出した頃、練習機として暫く貸してたのよ」

「いやいやいや! 暫く貸してたのよ。って、そんな簡単に貸せるもんなのかよ?! 首都守備隊の機体だろ?!」

 

 ギョッとした様子で捲し立てるカイに、レンとルネは顔を見合わせる。

 

「まぁ、バンおじさんは世界を救った大英雄だし。一応共和国軍側に軍籍だって置いてる訳だから。シールドライガー1機貸し出すくらい、もう右から左よ。空いてる機体はないか? って打診されて、丁度その頃は私もロジャーの慣らしに忙しかったし、レンがゾイドを生き物として大切に扱う子なのは昔からよく知ってたから、稽古つけてあげてきてね。って、ティムに頼んだってわけ」

「無茶苦茶だ……」

 

 頭を抱えて嘆くように呟いた後、カイはふとレンに訊ねた。

 

「つーかさ、ゼロが完成するのと同時に専属パイロットしてんだから、ティムで操縦の訓練してたのってそれより前って事だろ? その頃って、お前まだガーディアンフォースじゃなかったんだよな?」

「うん。えっと、5年前? くらいだったよな?」

「そうね。私が20歳の頃だった筈だから」

 

 レンは自分と同い年。という事は、5年前の時点で12歳の筈だ。

 そんな頃から、軍の、しかも首都守備隊から借り受けたシールドライガーを乗り回していたとは……

 いくら司令官であるバンの息子とはいえ、そんな子供の頃からベースに出入り出来るものなのか?とか、既にその頃からガーディアンフォースの隊員になる事が決まっていたのか?とか、新たな疑問が次から次に湧き上がりはするのだが、最早軽い眩暈すら感じる程のエピソードに、カイはただ一言、げっそりと呟いた。

 

「お前、ホントにハンパねーな……」

「そうか?」

 

 きょとんと首を傾げるレンに溜息を一つ吐くと、カイは気を取り直すようにティムを見上げる。

 まぁ経緯はどうあれ、訓練を続行出来る機体があるというのは少し羨ましい。元々ライガーゼロは、従来のシールドライガーと、バンのブレードライガーのデータを元に開発された同系列ゾイドだ。機体感覚もそう変わらないであろうし、かつての練習機であったのならば、慣れるのにも然程時間は掛からないだろう。

 だが自分の場合、修復中のブレードイーグルの代わりにトーマのストームソーダーを借りれば良い。という訳にはいかなかった。自分が手探りでゾイドの操縦技術を身に付けたのはレドラーであるし、ベースの機体にレドラーは無い。乗った事の無いストームソーダーでは慣れるのに相当時間が掛かるだろう。まともに訓練出来るくらい慣れた頃には、ブレードイーグルの修復が終わっている筈だ。

 これから先、今回のようにブレードイーグルが修復中で出撃出来ない場合に、ストームソーダーで出撃する可能性も無いわけではない。操縦を覚えておいて決して損は無いのだが、自分はまだ、ゾイド戦以外の訓練も殆ど受けてはいない為、まずは其方の訓練を優先しよう。という事で話が決まっていた。

 

「訓練、頑張れよ。レン」

「おう!」

 

 ぽんっと肩を叩けば、満面の笑顔でレンが元気良く頷く。

 そんなレンに笑顔を返せば、レンもぽんっと肩を叩いて来た。

 

「カイも白兵戦訓練、頑張れよ」

「おう」

 

 フットアンカーでティムへと乗り込んでいくレンを見届けて、カイはトレーニング棟の方へと歩き出す。

 白兵戦訓練。その名の通り、ゾイドではなく自身の身で戦う為の訓練だ。射撃ならば自信はある。だが、近接格闘などの武器を使用しない戦闘の経験は皆無に等しい上に、訓練相手は自分よりも頭一個分以上身長差のあるウィルとシドだ。正直不安で仕方がない。

 

「お。来た来た」

 

 トレーニング棟の前で待っていたウィルが笑顔を見せる。その隣で、シドもヒラッと手を振って見せた。

 そんな2人に小さく手を振り返し、カイは歩きながら訊ねる。

 

「白兵戦訓練って、具体的にはどんな事すんの?」

「まぁ、主に射撃訓練と近接格闘の二種類だな。どっちを先にやりたい?」

 

 いつもの明るく陽気な声で訊ね返して来たウィルへ、カイは迷わずに一言答えた。

 

「じゃぁ射撃で」

 

 あまりの即答振りに、少々面食らった様子のウィルがシドと顔を見合わせる。

 軽く肩を竦めて見せた後、シドがくいっと背後にあるトレーニング棟の入口を親指で指し示した。

 

「射撃場はトレーニング棟の地下にある。ついて来いよ」

 

 歩き出したシドの後に続いて、カイは至って気楽そうに頭の後ろで手を組みながら歩き出す。

 そんな彼に、後ろから付いて来ているウィルが不思議そうに訊ねた。

 

「意外と緊張してないんだな?」

「ま。射撃に関してはな。銃の扱いは慣れてるし」

 

 なんでもなさそうに答えたカイに、シドが地下射撃場への階段を降り始めながら肩を竦める。

 

「白兵戦訓練受ける前に、瓦礫街の調査任務任されたくらいだからなぁ。ぶっちゃけ俺達、教える事無いんじゃないか? 射撃に関しては」

「どうかなぁ? 俺に銃の扱い教えてくれたの、しがない賞金稼ぎのお兄さんだから」

 

 ただし、元軍人で銃の天才の。と心の中で付け足しつつ、カイはふと微かな疑問に行き着く。

 

(つーか、こうしてきちんとした射撃場で撃つのは俺もこれが初めてだな……俺の銃の腕って、現役軍人から見てどれくらいのレベルなんだろ?)

 

 自分の身を護る程度の腕ならある。腕が鈍らないようにと練習していた時も、ほぼ全弾的に命中させる事が出来ていた。だが、師匠であるザクリスにはまだまだ遠く及びもしない。

 

(まぁ、規格外ハイスペックお化けのあいつと自分を比べる方が、そもそも馬鹿馬鹿しいか)

 

 呆れたような笑みを浮かべつつも、その眼には何処か自信に満ちた光が宿る。

 射撃場の的は撃ち返してくるわけではない。チョロチョロと動き回るわけでもない。落ち着いて、いつも通りに引き金を引くだけで良い。何も難しくはない筈だ。

 しかし、この時点ではウィルもシドも、そしてカイ自身も、この射撃訓練が予想外の結果に終わる事になるなどとは全く考えてもいなかった。

 

   ~*~

 

「……いや、おかしいだろこれ」

「え? 何が?」

 

 射撃訓練開始から数分後。

 真っ先に口を開いたシドに、カイが至って何でもなさそうに言葉を返す。彼にとっては「試しに1マガジン分撃ってみてくれ」と言われたので、言われた通りに撃っただけだったのだが、対するウィルとシドにとってはカイも充分“規格外”の存在であった。

 撃てみてくれ。と言った際、カイは特に戸惑う様子も緊張する様子も無かった。それだけでも違和感を感じたというのに、射撃開始前に銃の作動点検を行い、射撃姿勢に入り、何の躊躇いも無く最大装弾数である17発をノンストップで全て撃ち切ってみせるまでの流れの全てに、非の打ち所はまるで無く、むしろまだ全然本気を出していない事を感じさせるような余裕すら漂わせていた。

 そんな彼に戸惑いながら、射撃評価の為に撃ち抜いた人型の黒パネルをレーンのすぐ手前まで移動させた時、2人はその結果に衝撃を受けたのである。

 カイの撃ったパネルは体の中央に設けられた的以外の場所も穴だらけで、恐らく素人が一見しただけでは、大した腕ではないように見えただろう。しかし、軍人であるウィルとシドは、その全てが人体の急所である事を理解していた。

 的の中央。心臓に当たる部分に開いた穴は5つ。その他は、額に3つ。左右の目の位置に1つずつ。これだけでもかなりゾッとする結果だが、左右の鎖骨の位置に開いた穴は鎖骨を砕くだけでなく、その下に通っている鎖骨下動脈と呼ばれる動脈が丁度交差する位置。腕や肩の動きを阻害されるだけでなく、撃ち抜かれればまず間違いなく失血性ショックを起こし、最悪死ぬ事も充分考えられる……更に左右の肩に1つずつ開いた穴も上腕骨と肩を繋ぐ関節を砕く位置だった。鎖骨への被弾が無かったとしても、こんな場所を撃たれたら腕を上げられなくなってしまう為、確実に抵抗も反撃も出来ない。

 この時点で、弾丸は計14発分。残りの3発分が何処に当たっているかと言うと、体中央の的の向かって左端に近い部分に集中していた。これも的の得点的に見れば大したことは無いが、人体の構造で言えば3発とも肝臓に命中している位置だ。こんな場所を3発も撃たれたら、被弾した肝臓が原型を留めているかどうかも怪しい。

 この人型の黒パネルをただの的ではなく、完全に1人の“敵”とみなし、更には確実に動きを封じるか、殺すつもりでいなければこんな場所を撃つ事などあり得なかった。

 

「……カイ」

「何?」

「念の為に訊いておきたいんだが、何故、的以外の場所まで撃った?」

 

 微かな警戒を含んだ声音でウィルが訊ねても、カイは作業台の前で空になったマガジンを抜き、替えのマガジンに弾薬がフルで入っている事を確認してグリップに叩き込みながら、何でもなさそうに答えた。

 

「駄目だったのか? パネルの的しか撃つなとは言われてないぜ?」

「俺が訊いているのはそういう屁理屈じゃない。撃った理由だ」

 

 真剣なその声音に、カイは何処か面倒臭げな溜息を一つ吐くと、愛銃……シルバースライドのグロック17にセーフティーが掛かっている事を再度確認してホルスターに収めながら振り返る。

 その薄紫色の瞳は、微かに荒んだ影を落としていた。

 

「遊びじゃねぇからだよ」

「なに?」

 

 少年らしからぬ冷たい声音に怯みもせず、ウィルが眉を(ひそ)める。

 そんな彼を見据えたまま、カイは腕を組んで作業台に腰を預けながら淡々と語り出した。

 

「銃を撃つのは遊びじゃねぇからだよ。銃を人に向ける時ってのは、自分の身を護る時だ。それは情報屋だった頃も、ガーディアンフォースの隊員になってからも変わらない。俺にとっては、いかに相手を無力化して逃げるかが重要で、その為には急所を撃ち抜くのが確実だから撃った。ま、ただの板人形相手に急所もへったくれもねぇんだけどさ」

 

 そう言って僅かに口角を上げるカイの姿は、形式通りの訓練しか想定していなかった軍人2人を完全に嘲っているようにしか見えない。

 

(全く……なんて少年なんだ……)

 

 確かに、平和な時代で軍人をしている自分達よりも、裏社会すらその身一つで渡り歩いて来たカイの方が、そういった命のやり取りをよく心得ていることだろう。

 しかし、空に焦がれ、鋼の鷲と共に空を舞うカイの強さと真っ直ぐさを知っているからこそ、ウィルは目の前の彼が語った「銃を撃つ事に対する価値観」に、一種の危うさを感じた。

 相手を無力化する為に急所を撃つ。そう語った口振りはまるで、相手を無力化出来るのならばその生死などどうでも良い。とでも言いたげだった。自分の身を護る為と簡単に割り切って、明確な殺意無しに相手の命を平然と奪ってしまえるなど、大人ならばともかく、この歳の少年にしてはあまりにも考えが早熟過ぎる。と……

 

「ホント、可愛げのねぇガキ……」

 

 隣でぽつりとぼやいたシドに少し呆れた視線を向けた後、ウィルは溜息を一つ吐いて再びパネルを見つめた。

 

「……なるほど。確かに弾は全弾急所を的確に捉えている。この腕なら軍でも充分通用するだろう」

「え? マジで??」

 

 先程の冷たい態度から一転し、きょとんと年相応の表情を浮かべたカイを振り返り、ウィルは言葉を続ける。

 

「だが、容赦が無さ過ぎるというのは、場合によっては任務に差し支えるという事も覚えておいた方が良い。敵や犯人といった者を生きたまま確保しなければならない事も多々ある。それは警察も軍もガーディアンフォースも同じだ。人1人に此処までやる必要は無い」

 

 微かに厳しい声音のウィルに対し、カイは組んでいた腕を解き、後ろ手に作業台の縁へ両手を突きながら口を尖らせる。

 

「んな事わかってるよ。敵1人に1マガジン全弾ぶっ込むとか、無駄撃ち通り越してただの馬鹿じゃん。それに、試しに1マガジン分撃ってみろって言ったのはハーマン中尉の方だろ?」

 

 その言葉に、今度はウィルの方が少しぽかんとした表情を浮かべる。

 カイは少し拗ねたように言葉を続けた。

 

「俺が使ってるグロックは1マガジン17発だから、パネル1枚相手に17発全部どうやって消費するか、結構悩んだんだぜ?動かねぇ的の真ん中に全弾撃つってのも物足りねぇしさ。どうせならと思って思いつく限りの急所撃ってみりゃ、やり過ぎって怒られるし。どうしろってんだよ」

「そこはまぁ……大人しく的を撃ってくれさえすれば良かった。としか言いようが無いんだが……」

 

 ぽかんとしたまま戸惑ったように答えたウィルに、カイはいたずらっ子のような笑みを浮かべて訊ねた。

 

「ま、なんだかんだ言って俺は訓練経験皆無の新人で、おまけに未成年だし。多少心得があるっつっても、どうせ何発か外すだろう。くらいにしか思ってなかったんだろ?」

「そう……だな。正直此処まで銃の扱いに長けているとは思っていなかった。すまん」

「別に良いよ。ガキだからって舐められるのは慣れてる」

 

 そう言いながらカイもレーンの前に戻り、自分が先程撃ち抜いたパネルを確認し始める。

 そんな彼に、シドが何処か呆れた様子で訊ねた。

 

「ところで、こんなエグい急所誰に教えて貰ったんだよ」

「え?」

「脳天と目ん玉はともかく、関節だの動脈だの肝臓だの……どう考えてもお前くらいのガキが普通に知ってる急所じゃないだろ。それを教えたのも、銃の扱いを教えてくれたっていう賞金稼ぎか?」

「いや。あいつが教えてくれたのは銃の扱いだけだよ」

 

 返って来た意外な一言に、ウィルとシドは顔を見合わせる。

 そんな2人を振り返り、カイは一瞬躊躇うような沈黙の後、そっと口を開いた。

 

「俺がこういう急所を知ったのは瓦礫街なんだ。情報屋してた頃に一時期あの街でも活動してたから。目の前で撃たれた奴とか、その辺に転がってた死体とか眺めてるうちに、なんとなく覚えちまってさ」

 

 あまりにも衝撃的なその言葉に、2人が言葉を失ったのは言うまでもないだろう。

 瓦礫街は悪の巣窟としても、踏み入れば2度と生きては出られない場所としても、軍では有名なのだから。

 

「……マジかよ」

「……なるほど……な」

 

 やっとの思いで振り絞る様に呟かれた言葉には、戸惑いがありありと滲んでいた。

 青ざめたシドと、頭を抱えるウィル。しかし、カイはそれでも何処か安心した様子で彼等を見つめ、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「なんだ。俺が瓦礫街に居たって言ったら、クルトみてーにぶちキレるんじゃねーかって思ってたけど……案外怒らねーんだな。2人とも」

「いや、怒るとかそういうレベルの話ではなくてだな……」

「なんつーか、歳の割に壮絶な人生歩んで来てんのな。お前……」

 

 予想外の2人の反応に、カイも流石に苦笑するしかない。

 まだ10数年しか生きていない自分が、年上の軍人から此処まで言われるとは思ってもみなかった。

 だが、だからこそ……今、自分がこの場所に居る事に感謝の気持ちもあった。

 

「……ま。昔は昔。今は今。ってな」

 

 その顔に大人びた穏やかな笑みを湛えながら、カイは瓦礫街の任務でレンに言われた言葉を思い返す。

 

「瓦礫街の任務の時、レンが言ってくれたんだ。俺達と一緒にガーディアンフォースやってんのは、昔のお前じゃなくて、今のお前だ。って。過去は消せやしないし、変える事も出来ねーけど……そういう薄汚くて仄暗い過去だって、俺の人生だから。それを教訓に、これから変わる事は出来るんじゃないか? って、今は思えるし……変わりたいんだ。だから、俺にもう一度きちんと前を向かせてくれたレンには、本当に感謝してる。……身に沁みついたものが抜けるまでは、まだまだ時間が掛かりそうだけどな」

 

 そう言って自分が撃ったパネルを振り返った後、彼は再びウィルとシドを見つめる。

 

「あの日、あの孤島の遺跡でシーナ達と会ってなかったら、俺はきっと今も裏社会に半分染まったまま、当てもない旅をしながら情報屋を続けて……きっとそのうち、ロクな死に方しなかったんじゃねーかな? だからさ……シーナにも、ユナイトにも、勿論イーグルにも、どれだけ感謝したってし足りない。ガーディアンフォースに入るきっかけをくれたルーカス兄ちゃんにだって感謝してるし、俺みたいな生意気で可愛げのねぇガキ相手に、根気よく訓練つけてくれてるあんた達にだって……」

 

 ウィルとシドが驚いたように目を見開くのを見て、カイは急に照れ臭くなったのか、誤魔化すような笑い混じりに続きを捲し立てた。

 

「まぁなんつーかさ! こうして考えてみると、俺、シーナと出会ってから色んな人に感謝するようになったな~って思うし、やっぱ大事な事だって思うんだよ。だから、そんな当たり前の事すら忘れてたあの頃には、俺ももう戻りたくないし、戻る気も無いから安心してくれって言いたいだ―ぐぇ?!」

 

 カイの言葉を遮るように、その首に腕を回して乱暴に頭をわしゃわしゃと撫で回したのはシドだった。

 

「なんだよ急に素直になりやがって! そんなの聞いたら、もうお前の事クソガキって呼べねーじゃねーかよ!」

「なんでそこでキレんだよ?! 訳分かんねぇ!!」

「うるせぇ! 大人しく撫でられてろ馬鹿!」

「シメながら撫でんなっつの!」

 

 ギャアギャアと怒鳴りあう2人の姿に、ウィルは苦笑ながらも何処か微笑まし気にそのやり取りを眺める。

 

「シド。お前の照れ隠しは多分、カイにはかなり伝わりにくいと思うぞ」

「照れてねーし!」

 

 乱暴に頭を撫で回していた手を止めながら、シドが真っ赤になって怒鳴る。

 そんなシドを振り返る様に見上げ、カイは薄紫色の両目をきょとんと見開いた。

 

「なんだ。あんた照れてんの?」

「照れてねーっつってんだろ! あーもう! とりあえず射撃訓練の続きだ! 続き!!」

 

 そう言って放り出すようにカイを放した後、シドはズカズカと作業台の方へ向かい、おもむろに自分の拳銃の点検を始める。そんな彼の後ろ姿をぽかんと眺めているカイの肩を、ウィルがちょんちょんとつついた。

 

「何?」

 

 小声で振り返ったカイに、ウィルがニヤニヤと何やら耳打ちする。

 次の瞬間、カイの顔にも同様の笑みが浮かんだ。

 

「じゃぁ、次はお手本見せてくれよ。シド兄ちゃん」

 

 直後、手にしていたマガジンをガシャンと作業台の上に取り落として固まったシドを見て、カイとウィルは盛大に笑い転げた。

 

   ~*~

 

 結局、午前中を射撃訓練に当てはしたものの、現時点で既にカイの射撃の腕は充分だった。

 指示した通りに的だけを撃たせても、その成績はトップレベルと言って差し支え無く、カイ自身もその評価にはただただ驚くばかりで、ウィルとシドが過大評価をしているだけなのでは?と再三疑った程だ。

 しかし、ウィルとシドが撃ってみせたパネルを一緒に確認し、その結果から見て彼等の評価は正真正銘の本心であると認める他無かった。話ではウィルよりもシドの方が射撃が得意であるという事だったが、そのシドですら、カイの射撃成績に僅かに及ばない。無論、ウィルの射撃成績に関してはお察しである。

 

「なんというか、正直凹むなぁ……」

 

 昼休憩に入り、昼食を摂りながらおもむろに呟いたのは、勿論ウィルだ。

 そんな彼にカイは苦笑を浮かべ、シドはただただ呆れた眼差しを向けている。

 

「ガーディアンフォースの隊員は、どいつもこいつも規格外ばっかだって事だろ」

 

 頬杖を突きフォークを咥えたまま、彼は負け惜しみのようにぼやいた。

 そんな2人の落ち込みように、カイはなんとなくバツの悪そうな表情を浮かべて呟いた。

 

「えっと……なんか、ごめんな?」

「いやいや。お前が謝る必要は全く無いぞ。俺達がもっと腕を磨くべきだという事だ」

 

 そう言って笑うウィルの隣で、シドは何処か釈然としない様子でカイを見つめる。

 

「つーかお前もさぁ、俺達よりも実力上だって分かったんだし。もうちょい喜んだらどうなんだ? 射撃場での素直さ何処行ったんだよ……」

「いや、なんていうかさ……嬉しさより戸惑いの方がデカいっつーか……実感ねぇっつーか……」

 

 苦笑と共にそう答えた後、カイも頬杖を突く。

 何処か遠くを眺めるような眼差しで、ぼんやりと昼食のパスタに視線を落としながら、彼は言葉を続けた。

 

「俺なんかよりもっとスゲー奴知ってるから、どうしてもそいつと比べちまうんだよ。どうすればあいつみたいに……自分の手足みたいに、銃を扱えるんだろう?って……」

 

 彼の脳裏に浮かぶのは、勿論ザクリスである。どんなに良い評価を得ても、銃の師匠である彼の背中はまだまだ遠い。上には上がいる。とはよく言ったものだ……などと考えていたカイの頭を、ウィルがわしゃりと撫でた。

 

「謙虚である事も、向上心を忘れない事も確かに大切だ。だがな。誰かに褒められて、それを素直に喜ぶことが出来るのは……子供のうちの特権だぞ」

 

 その言葉に、カイは微かに目を見開く。

 家を飛び出したあの日からこれまでの間、ガキと呼ばれ、見下され、邪見にされといった事ならばいくらでもあった。だがこんな風に……普通に子供扱いされた事は、殆ど無かったような気がする。ザクリスとアサヒがふとした時に「子供なんだから大人を頼れ。」と手を差し伸べてくれた事が何度かあった程度だ。

 

(そっか……)

 

 カイは、そこでやっと気が付いた。

 

(独りで旅をしてた頃とは、もう違うんだ……)

 

 もう、周りの大人と対等であろうとしなくて良い。周囲の人間を必要以上に疑わなくて良い。隙を見せぬようにと気を張らなくて良い。演じなくて良い……ガーディアンフォースの隊員である以上、任務の時は流石にそうはいかないが、それでも、こうして仲間と過ごす他愛のない日常の中では、もう自分も普通の少年で良いのだと。

 穏やかながらに切なさの滲んだ笑みを浮かべ、カイはふと考え込む。

 どんなに知識や技術を身に付けても、所詮自分は子供だったのだ。何も知らない。何も分かってはいない。無知で無謀な子供だったのだ……普通の子供のように扱われただけで、こんなに胸が温かい。

 もしかしたら、自分はずっとそれを望んでいたのかもしれない。軍人の息子だからとか、名家の出だからとか、そういう鬱陶しい物など全部抜きにして、ただ周りの大人に普通の子供として扱って欲しいと。クラスメイトや同年代の子供に、対等に接して欲しいと。

 

(気付くのに、随分遠回りしちまったなぁ……)

 

 短いようで長かった情報屋としての3年は、過ちだらけの日々だった。身も心も随分すり減らしてしまった。そんな自分に一つ救いがあるとすれば、手遅れになる前にシーナ達と出会い、まっとうな道に戻れた事。

 これまでの日々が何処か虚しいような、寂しいような……それでも、それが今や過去である事が何処か懐かしいような、ホッとしているような……こういった感覚をなんと表現すれば良いのかは分からないが、それは不思議と嫌な感覚では無かった。

 

「せっかく射撃訓練の成績が満点なんだ。この調子でサクッと、近接格闘訓練の方も済ませるとしよう」

 

 ウィルの言葉にハッと我に返ったカイは、またも苦笑を浮かべた。

 

「あんまり期待すんなよ? 俺、素手の勝負は殆ど経験ねぇから。」

「とか言って滅茶苦茶強かったりしてなぁ~?」

 

 ニヤニヤと笑うシドに、カイは内心途方に暮れる。

 射撃訓練の成績が良過ぎたが故に、午後の近接格闘訓練は、全く逆の意味で彼等を驚かせる事になってしまうだろう。どうか根気よく、出来ればお手柔らかに教えて貰えますように。と、彼は祈った。

 

   ~*~

 

 午後訓練の開始から、ウィルとシドは案の定カイの予想通り、先程とは全く逆の意味で驚いていた。

 瞬発力はある。身軽であり動きも素早い。観察力も反射神経も申し分無い……が、とにかく自分から攻勢に転じるのが下手過ぎる事と、頑張って反撃をしてみても一撃一撃の威力が弱過ぎて、正直話にならない。

 呑み込みが早い為、基本を一から指導した事で改善は見られたものの、そもそもの筋肉量が他の隊員に比べて低いのだろう。情報屋時代も、基本的には逃げの一手。反撃は主に銃であった事から、そこまで筋力の付くような生活をしていなかった事は想像に難く無いが、まさかここまでとは……

 

「謙遜かと思ってたけど、お前本当に非力っつーか……近接格闘の経験ねぇんだな」

 

 腕を組んでそう語るシドの声音には、珍しく呆れも冷やかしも無い。本当にただしみじみと、むしろ何処か感心しているようにすら聞こえる。

 ぐったりと床に座り込んでスポーツドリンクを数口飲んだカイは、そんなシドを見上げ呟いた。

 

「だから言ったじゃん。あんまり期待すんなよ? って」

「射撃にステ値全振りし過ぎなんだっつの。ま、苦手な物の一つや二つあった方が可愛げあるけどな」

「そりゃどうも」

 

 タオルで顔の汗を拭いた後、カイはふと気付いたように辺りを見渡す。

 

「そういや、ハーマン中尉は何処行ったんだ?」

「さぁ?なんか助っ人呼んで来るとか言ってたけど」

 

 シドが肩を竦めて見せた丁度その時、トレーニング棟の模擬戦フロアにウィルが戻って来た。

 

「カイ! 助っ人連れて来たぞ!」

 

 満面の笑顔でそう語るウィルの後からついて来たのは……

 

「……え?」

 

 至極面倒臭そうな表情を浮かべたクルトであった。

 あまりにも意外過ぎる助っ人の登場に、カイは立ち上がりながら思わずクルトを指さす。

 

「助っ人? お前が??」

「人を指さすなと親に教わってないのかお前は」

 

 いつぞや言った言葉を返されて、カイは面白くなさそうに指を下ろしながらクルトを見つめた。

 後方支援戦闘員として共に任務に出る隊員ではあるが、あくまで彼の所属は専属開発整備班。技術屋の彼が近接格闘訓練の相手というのはどうも腑に落ちない。

 だが、そんなカイの戸惑いなど露知らず、ウィルはクルトの肩をポンッと叩く。

 

「お前運動得意だし。軍での特殊戦闘員訓練の成績も良かったって話だっただろ? 少し相手してみてやってくれないか?」

「俺はゼロとイーグルの修復整備に戻りたいのですが……」

 

 釣れない態度のクルトに対し、カイも何処か呆れた視線を彼に向けながら呟いた。

 

「まぁ、成績良かったっつったって、技術屋のお前が相手じゃなぁ……」

 

 しかし、その一言にクルトの眉が微かにピクッと動く。

 まるで不良のような悪い笑みを浮かべ、クルトがカイに詰め寄った。

 

「ほう? 初心者だと聞いていた筈だが、随分と腕に自信があるらしいな? 俺がお前に負けるとでも?」

 

 見下しと挑発を隠そうともしないその言い草に、カイも思わずカチンとくる。

 

「初心者だからって、あんまり舐めてると足元掬われるぜ? 一級工学博士様?」

「ふん。やれるものならやってみろ。言っておくが、俺はハーマン中尉やオコーネル中尉ほど優しくは無いぞ」

「上等だ。そこまで言うならやってやるよ。お前なんかにぜってぇ負けねぇからな」

「良いだろう。後から後悔するなよ?」

 

 睨み合うカイとクルトを交互に眺めた後、ウィルは何処か戸惑ったような視線をシドへ投げかける。その眼差しはまるで「あれ?もしかして人選間違えた?」と訴えているようだ。

 ……そんな彼に、シドは無言で頭を抱え、やれやれと言わんばかりに首を横に振るのだった。

 

   ~*~

 

 その頃、午後訓練を行っていたルネは、ふとある事に気が付き始めていた。

 レンにとって、ティムはかつての練習機だ。機体感覚を思い出すのに時間は掛からない。それは予想通りだったのだが……ライガーゼロで訓練を受けていた時よりも、妙に手強いように感じる。

 思えば、ゼロ以外のゾイドに乗ったレンと手合わせするのは今回が初めてだ。彼が此処までティムを……シールドライガーを自在に扱えるとは正直思っていなかった。

 

(もしかしたら……)

「そこだぁ!」

 

 考え事に没頭するルネに対し、Eシールドを展開したレンが横から体当たりして来る。

 それを間一髪で回避し体勢を立て直すが、その時には既に展開していたシールドを解除したティムが右前脚のストライククローを振り上げていた。

 すかさずロジャー……ケーニッヒウルフのエレクトロンストライククローで迎え撃とうとするが、再び展開されたEシールドに阻まれたばかりか、そのまま押し切られる形で弾き飛ばされてしまい、ルネは内心舌打ちする。

 此処までシールドライガーを手強いと感じたのは、一体いつ以来だろうか?

 

「レン、妙に調子が良いな……」

「うん……なんだかいつもより強い気がする……」

 

 ルネとレンが一対一で戦い始めてしまった為、そっとその勝負の行く末を見守るエドガーとシーナも、レンの動きが今までと違う事に気付き始める。

 シールドライガーは、長年共和国軍の第一線を支え続けている名ゾイドだ。しかし、どんなに安定した性能と人気を誇る機体とはいえ、最新型プロトタイプであるライガーゼロと比べてしまうと、やはり性能差というものが出て来てしまう。それなのに、ライガーゼロよりもシールドライガーに乗っている時の方が強いというのは……

 

「まさか……な……」

 

 ぽつりと呟かれたエドガーの独り言に、シーナはきょとんと首を傾げていた。

 

   ~*~

 

 午後訓練終了後、それぞれ搭乗機から降りた面々は、第二格納庫前に集合する。

 ……しかし、今日の彼等の様子はいつもと何処か違っていた。独り思いつめるかのように深刻な表情で押し黙ったままのエドガーと、そんな彼の様子に心配そうな表情を浮かべるレンとシーナ……

 その様子に、ルネは姉というよりも母親のような温かい眼差しで、エドガーを見つめた。

 

「エド。どうかしたの?」

「いや……その……」

 

 かなり躊躇いがちに返事を返しながら、エドガーがチラッとレンを見る。その際に視線が合ったレンが、ほんの少しだけだが、不安げな眼差しをエドガーへと向けた。

 

「俺が……どうかしたのか?」

「……なんというか……正直、こんな事は言いたくないんだけど……」

 

 そう前置きしたエドガーは、意を決したように重い口を開く。

 

「レンは……もしかしたら、ゼロよりもシールドライガーの方が適正高いんじゃないかと思う」

「え?……」

 

 戸惑いに目を見開いたレンは、完全に頭の中が真っ白になってしまったのか、そのまま時が止まってしまったかのように凍り付いた。

 だが、エドガーの言葉にルネは苦笑する。

 

「なるほど……エドは観察力が高い分、やっぱり気付いてたのね」

「え?! ちょ、ちょっと待ってくれよ! いきなり何を言い出すかと思えば、なんでそんな事……」

 

 ガーディアンフォースへ正式入隊した時から、ずっとゼロに乗ってきたというのに、そのゼロへの適性を遠回しに否定されれば、流石のレンも当然戸惑う。

 しかし、そんなレンにルネはくすくすと笑って見せた。

 

「安心しなさい。レン。確かにエドの言ってる事は間違ってないわ。けど、当たってもいない」

「え??」

「どういう事?」

 

 揃ってルネを見つめるレンとエドガーの隣で、シーナが不意に呟いた。

 

「シールドライガーの方が適正があるって言うより、Eシールドを使った格闘戦で本領発揮するタイプ。って事だよね? ルネさん」

「シーナ正解! よく出来ました~!」

 

 満面の笑顔でシーナの頭を撫で回すルネと、ただただ嬉しそうに頭を撫でられているシーナを交互に見た後、レンとエドガーは顔を見合わせる。

 

「いや、それって要するに……」

「シールドライガーの方が向いている。という事だよな?」

「もー! 2人とも鈍いわね……」

 

 わざとらしく溜息を吐いて見せた後、ルネは両手を腰に当てて仁王立ちしながらレンの顔をずいっと覗き込む。

 思わずビクッと後ずさったレンに、彼女は言った。

 

「ライガーゼロにもあるでしょ?! シールドユニット!」

「あっ!」

 

 そこでようやくハッとしたように声を上げたレンに、ルネはニヤッと笑う。

 現在、ライガーゼロ-プロトの試作CASユニットは全3種類。赤を基調としたブレードゼロ。青を基調としたブーストゼロ。そして、黄色を基調としたシールドゼロだ。

 元々、ブレードゼロが近接特化ユニット。ブーストゼロが遠距離及び追跡特化ユニット。そしてシールドゼロは後方支援及び援護特化ユニットとして設計されている。その為、シールドゼロユニットを近接戦に活用するという発想が無かった事に、レンも、そしてエドガーも、まさに目から鱗の状態であった。

 

「とは言ってもなぁ……換装の取り回しを優先したせいで、シールド強度に難有りなんだよな。あのユニット」

「そこはまぁ、シュバルツ博士と追々詰めて頂戴。とりあえず私が言えるのは、近接格闘戦をやるならあんたには絶対“盾”が必要だって事」

 

 そう言って、ルネはぽんっとレンの肩を叩く。

 

(盾……か……)

 

 確かにティムで操縦を覚えた頃、最も得意としていたのがシールドアタックだった。

 父であるバンがかつてシールドライガーに乗っていた頃、必殺技として一番よく使っていた。と聞き、自分もそれを極めてみたくなったから……それがまさか、こんな形で役に立つとは思ってもみなかった。

 提示された新たな可能性に、レンは何処か自信を得たような笑みを浮かべる。

 

「うん。シュバルツ博士と相談してみるよ。シールドユニットの事」

「うんうん。そうしなさい」

 

 にこやかに頷いた後、いつも通り食堂へ向かおうとしたルネがふと足を止めた。

 トレーニング棟の模擬戦フロアに、まだ灯りが点いている事に気付いたのだ。

 

「ウィル達、まだカイの訓練続けてるのかしら? もう終礼鳴った後なのに」

 

 不思議そうな彼女の言葉に、レン達も顔を見合わせる。

 

「どうせだし。ちょっと様子見て来るか?」

「そうだね。カイの訓練の進捗も少し気になるし」

「うん! 皆で見に行ってみようよ!」

 

 彼等の言葉に、ルネも何処か楽しげな笑みを浮かべた。

 

「じゃ! ちょっと様子見て、ついでに皆で夕飯食べましょ」

 

   ~*~

 

「うぉわぁぁぁ?!」

 

 トレーニング棟模擬戦フロア……その入り口のドアを開けた先でレン達が目にしたもの。

 それは、宙を舞うカイの姿であった。

 

「えぇ?!」

「わぁ……」

「きゃぁ?!」

「あらら~……」

 

 彼等がその様を見て真っ先に口から飛び出したのは、そんな短い言葉ばかりだ。

 何故ならカイが宙を舞っていたのは、自分の意思による身のこなしではなく、クルトに盛大に投げ飛ばされたせいだった為である。

 

「ポンポンポンポン人を空き缶みてーに投げてんじゃねぇ!! 馬鹿の一つ覚えかよ!!」

 

 受け身を取って床に着地したカイが、立ち上がってクルトに猛抗議するも、当のクルトは意地の悪い笑みを浮かべたまま、余裕たっぷりにカイを眺めた。

 

「貴様こそ、何度真正面から突っ込んで来る気だ? 馬鹿の一つ覚えはどっちの事やら」

 

 その言葉に、カイは悔しげにぐぬぬ! と押し黙る。

 そんな彼へ更に畳みかけるように、クルトは右手をひらりと振って見せた。

 

「ついでに言えば、俺、途中から右手一本しか使っていないんだがな?」

「ちっくしょー! 次こそ一発ぶん殴ってや――らぁぁぁぁぁ?!」

 

 助走を付けて飛び掛かったカイが、またしてもクルトに放り投げられる。

 その流れは近接格闘訓練というよりも、最早コントだ。一連のやり取りの全てが計算しつくされ、これまで何度もリハーサルを積んで来たのでは?と疑いたくなる程の見事な吹っ飛び具合で、カイがフロアの隅に積まれたマットの山に突っ込んだ。

 

「……なんで、クルトがカイの相手してんだ??」

 

 やっとの思いで発されたレンの呟きに、ウィルとシドがやって来て経緯を説明し始める。

 

「俺達が相手じゃ、あまりにも体格差があり過ぎるだろ? だからクルトにカイの訓練相手をしてもらおうと思ったんだが……ご覧の通りの有り様でな……」

 

 途方に暮れたように語ったウィルの隣で、酷く疲れた様子のシドが言葉を引き継いだ。

 

「こりゃ人選マズったかなぁ~? と思って止めに入ろうとはしたんだけどさ。こいつら全然止める気配が無いばかりか、クルトは煽りまくるわ、カイは頭に血ぃ昇らせてムキになるわで、もう手が付けられねぇんだよ……ルネ姉さんどうにか出来ない?」

「あんた達が止められない物をどう止めろってのよ。近接格闘はあんた達の方が得意でしょ?」

「ですよねぇ……」

 

 予想通りの反応に、シドがガックリと肩を落とす。

 そんな彼らの様子を見て、レンとエドガーが不思議そうに訊ねた。

 

「あれ? ウィル兄ちゃん達知らねーの??」

「クルト、カイとあんまり仲良くないんだ……」

 

 その言葉で、以前カイから聞いたとある一言がウィルの脳裏にようやく過った。

 

―実はさ、俺、クルトとすっげー仲悪いんだ―

 

 何故、今の今まで忘れていたのだろう?

 星を見ながら空を飛ぶ事について話した時に、確かにそう言ってたではないか。

 

「……忘れてた……」

「え?! お前知ってて連れて来たのかよ?! 馬鹿じゃねーの?!」

 

 驚きと呆れに満ちた声で大声を上げたシドに「すまん……」と言葉を返し、ウィルは止まる気配の無いカイとクルトを眺める。いい加減、無理矢理にでも止めに入った方が……

 しかし、マットの山から飛び出して蹴りを入れに掛かったカイの脚を、クルトが引っ掴んで再び放り投げた直後だった。

 

「クルト~」

 

 不意にシーナが小走りにクルトへと駆け寄る。

 そこでレン達が来ている事に気付いたのか、クルトは目を見開いて目の前に来たシーナを見つめた。

 

「シーナさん。お疲れ様です」

「うん。お疲れ様。お仕事の時間終わってるし、晩ご飯食べに行こ?」

 

 ほわほわとした優しい笑みを浮かべるシーナの姿に、じわりとクルトの頬が赤くなる。

 同じベースで生活しているのだから、入隊してからこれまで、何度も共に食堂で食事を摂ってはいるものの、やはり好きな女の子から食事に誘われるというのは、嬉しい反面照れてしまうものだ。

 

「そう……ですね。すっかり時間を忘れていました。行きま――」

 

 そこでクルトの言葉は途切れた。

 放り投げたまま存在そのものを忘れていたカイが、彼の背中に思いっ切り蹴りを入れたからだ。

 いくら犬猿の仲とはいえ、話している最中の相手の背中に蹴りを入れるとは流石に卑怯な気がするが……此処で一つ、カイの名誉の為に説明するならば、カイに見えていたのはクルトの後ろ姿だけであり、彼の目の前にシーナが居る事に微塵も気付いていなかった。つまり、訓練を中断して話し込んでいる真っ最中であるとは思いもしなかったのである。

 完全に油断していたクルト。何も気付かず渾身の蹴りを入れたカイ。そして小柄なシーナも、クルトの後ろからカイが走って来る足音こそ聞こえてはいたが、姿は全く見えていなかったとなれば……後はもうお察しだろう。

 

「うわぁ?!」

「きゃぁっ?!」

 

 普段なら受け身を取ってすぐに体勢を立て直せた筈だが、自分が倒れる方向。真正面にシーナが居る以上、クルトが取れた行動は彼女に怪我をさせまいという事だけだった。

 咄嗟に片腕でシーナを抱きしめつつ、彼女に覆いかぶさる形でもう片方の手を床に突き、倒れた衝撃を精一杯緩和させる……どうにか彼女を下敷きにせずに済んだが、こんなに至近距離で彼女を見たのは、幻影騎兵連隊(ファントムリッター)の襲撃事件後にキートの中で泣いていたのを見つけ、抱き着かれた時の1回だけだ。

 しかも、こんなに至近距離で顔を見つめ合ったのは初めてである。

 

「シーナさん。あの、お怪我は?……」

「んーん。平気」

 

 何処かぽかんとしたシーナの声にクルトは心底ホッとするも、その気の緩みこそが大敵だった。ふと、腕の中から微かに香る花のような良い香りに気付いてしまい、距離が近い事も相まってクルトは再び赤面する。

 シャンプーの香りなのだろうか?それとも柔軟剤か何かの香りなのだろうか?などと一瞬考えた自分を心底ぶん殴りたいと思いながら、クルトは恥ずかしさと気不味さに固まった。

 

「あ! シーナ居たのか?! 悪ぃ気付かなかった! ごめんな!」

 

 やっと異変に気付いた様子のカイが、2人の傍にしゃがみ込み声を掛ける。

 次の瞬間、やっとシーナを放したクルトがそのままガバッと起き上がり、カイの胸倉を掴みあげた。

 

「ごめんなで済むか! この馬鹿が!!」

 

 不意打ちの卑怯さと、シーナを巻き込んでいたかもしれない事に加え、先程までの気不味い恥ずかしさに対する照れ隠しなどなど、普段とは比べ物にならない剣幕で怒鳴るクルトに、流石のカイもビクッと肩を震わせる。

 すっかり眉を八の字にして、カイは降参だとでもいうように両手を上げながら、しどろもどろに呟いた。

 

「いや、あの、でもホントに気付かなくて……あの、つ、次はその、気を付けるから……」

「次があってたまるか!!」

 

 胸倉を掴みあげていただけの手が、そのままカイを持ち上げてぶん投げた。

 それでも、カイが再び派手に突っ込んだ先がフロアの隅に積まれたマットの山だったのは、それでもせめて怪我はさせまいと僅かばかり働いた彼の理性だったのだろう。

 崩れたマットの間から覗くカイの脚を心底忌々し気に眺め、静かに息を吐きだした後、クルトはシーナに向き直って手を差し出す。その顔にはもう、怒りの色は一切無かった。

 

「さぁ。馬鹿は放っておくとして、夕飯食べに行きましょう」

「え……あ、うん……」

 

 おずおずと差し出された手を取って立ち上がったシーナは、心配そうにカイを眺めた後、クルトを見上げる。

 

「カイ、大丈夫?」

「心配ありませんよ。アイツ頑丈ですから。ハーマン中尉、カイをお願いします」

「お、おう……」

 

 そのままシーナを連れてスタスタとフロアを出て行くクルトの背中を見送った後、不意にルネがにやにやと笑みを浮かべた。

 

「まぁ、いい加減クルトもそういうお年頃よねぇ……」

「とはいえやり過ぎだろ。いくらカイがチビとはいえ、17歳の男の子片手で持ち上げてぶん投げるとか……どんだけキレてんだよ。手加減下手くそ過ぎか」

 

 呆れた様子で振り返ったシドの視線の先には、マットの山から這い出て来たカイに、レンとエドガー、そしてウィルが駆け寄っていた。

 その様子を共に眺めながら、ルネはふと真顔に戻る。

 

「……ま、床に叩きつけなかっただけ、昔に比べれば随分マシになったんじゃない?」

「……それも、そうだけどさ……」

 

 キレたクルトが全く相手に手心を加えないのは、ルネ達もよく知っていた。

 特にルネの場合、そのお陰でクルトに救われた事もある。しかし、だからこそ彼のそういう部分がとにかく心配でならないのも、また事実だった。

 

「せめてクルトが戦闘員兼任じゃなくて、専属整備開発班一本での配属だったなら、そこまで心配も無かったような気もするんだけどな……」

「無理よ」

 

 短くぴしゃりと放たれたその一言に、シドがルネを見つめる。

 普段の陽気な彼女とは全く違う、物憂げな顔がそこにあった。

 

「あの子は自分の大切な人達を守る事しか……頭に無いもの……」

 

 天は二物を与えず。と言われるが、両親譲りの頭脳に加え、運動神経や頑丈さといった身体能力にも恵まれてしまったクルトは、それ故に苦しんでいるのかもしれない……少なくともルネにとっては、彼の持つ二物は天の祝福などではなく、一種の呪いのように思えてならなかった。

 

「恋愛や友情を通じて、少しは丸くなってくれると良いんだけどねぇ~……」

 

 苦笑に似た微笑みを浮かべるルネの黒い瞳には、謝罪したというのにぶん投げられて憤慨するカイと、そんな彼の愚痴に耳を傾けるレン。服に着いた埃を掃ってやっているエドガー、そして、小さい子供を相手にしているかのように頭を撫でてやっているウィルの姿が揺れていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。