ZOIDS-Unite-   作:kimaila

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第七辺境支部編
第32話-第七辺境支部-


 残り僅かだった訓練期間もあっという間。

 ライガーゼロとブレードイーグルの修復もすっかり終わったし、私達もあとは首都本部に帰還するだけ。

 ……なんだけど、レン達も何だかんだでまだまだ手の掛かる子達ばかりだから、少し心配ね。

 私達が帰った後も、お互い助け合って認め合って、成長してくれれば良いんだけど……

 [ルネ=ハーマン]

 

 [ZOIDS-Unite- 第32話:第七辺境支部]

 

 幻影騎兵連隊(ファントムリッター)による襲撃を受けた合同演習から10日。

 この日は、操縦訓練の教官として派遣されていたルネ達が任を終え、首都へと帰還する日だった。

 

「なんつーか、1ヵ月って何だかんだであっという間だったなぁ……」

 

 何でもなさそうに頭の後ろで手を組みながら、カイが声を上げる。

 しかし、何処か名残惜しそうなその声音に気付いたのか、ウィルは明るく笑った。

 

「まぁそんなもんだ。この1ヵ月の間に色々あったしな」

 

 その言葉に、カイはこの1か月間の出来事を思い起こす……

 クルトから“相手と向き合う事”を諭され、ウィルから“ゾイドと共に飛ぶとはどういう事か”を教わり、イーグルから“性能を最大限生かす戦い方”を教わり、気が付けば今まで殆ど会話も無かった整備スタッフ達からも声を掛けられるようになった。

 ガウス最先任が帝都から帰還した後、瓦礫街の任務に駆り出され、ずっと苦しんできたラシードとの過去を打ち明け、レンと親友になり、誕生日を迎えた。

 そして幻影騎兵連隊(ファントムリッター)との邂逅……この一件でほんの少しだが、長年いがみ合ってきた父と和解出来たのかもしれない。これが恐らく今までで一番凄い事のような気がする。

 その後の訓練では、工学博士であるクルトが実は滅茶苦茶強かった。という意外な一面を嫌という程思い知り、今日まで一度も勝つ事が出来ていない。という苦い思いもしたが、とにかく、此処まで沢山の事が僅か1ヵ月の間に起きていた事に改めて驚きながら、ふと納得する。短く感じるのも無理はないか。と。

 

「ゾイド戦と銃の扱いに関しては、もう俺達から特に言う事は無い。あとは更に腕を磨きながら、ついでに近接格闘訓練もしっかり励めよ?」

「あぁ。ありがと」

 

 苦笑しながらウィルと握手を交わす隣で、シドがクルトの頭をおもむろにわしゃわしゃと撫で回した。

 

「お前も、あんまりカイの事いじめてやるなよ~?」

「別にいじめてないですよ。ちゃんと手加減してるんですから」

 

 何処かムスッとしながら答えるクルトを、カイがジトリと睨み付ける。

 

「あれの何処が……」

「何処から見ても手加減だろ。大体、片手一本で事足りる奴相手に、これ以上どう手加減しろと?」

「だからポンポン投げんなっつー話だよ!」

「だったら投げられないように頭を使え頭を!」

 

 早速険悪ムードになり始めた2人に、ウィルとシドが苦笑を浮かべながら割って入った。

 

「こらこら。早速喧嘩するなお前ら」

「最後までこんな様子じゃ、俺ら安心して戻れねーじゃねーかよ」

 

 宥めに掛かるその姿は、最早実の兄のようである。

 そんな彼らの姿を見て可笑しそうに笑ったルネが、目の前のレンに向き直った。

 

「来週から研修に行くってのにホント元気ね。あの2人、ずっとあの調子だけど大丈夫?」

「多分……大丈夫じゃねーかな?」

 

 苦笑を浮かべた直後、レンが気不味そうにふいっと視線を逸らす。

 彼は何処か躊躇いがちにひっそりと言葉を続けた。

 

「どちらかというと、俺は研修先の方がちょっと……」

「うん……僕も」

 

 エドガーまで同様の表情でこくりと頷いた事に、ルネは首を傾げる。

 裏表の無い性格故に隠し事の出来ないレンと違い、普段あまりこういった事を素直に口にしないエドガーまでもが同様の反応を示すのは、かなり珍しい事だった。

 

「ちなみに何処なのよ。研修先の支部って」

 

 その問いかけに、レンとエドガーが躊躇うように視線を交わす。

 そんな2人に全く気付いていない様子で、きょとんとその問いに答えたのはシーナだった。

 

「共和国領第七辺境支部って、最先任が言ってたよ?」

 

 共和国領第七辺境支部……その名を聞いた瞬間、ルネは目を見開いてウィル、シドの2人と顔を見合わせた。

 水を打ったように静まり返った気不味い沈黙の中で、カイがそっと声を上げる。

 

「……なんか、ヤベぇの? その第七辺境支部って……」

 

 その言葉に盛大な溜息を吐いたのは、勿論ルネだ。

 彼女はシーナの両肩をガシッと掴み、顔を覗き込みながら真剣に言い聞かせる。

 

「良い? シーナ。セルウェイって名前のマッチョ野郎にだけは、絶ッ対に近付いちゃ駄目よ」

「どうして?」

「女の敵だからよ! 特にシーナは可愛いんだから! 自分の身は自分でしっかり守りなさい! 良いわね?!」

「う、うん……」

 

 すごい剣幕で詰め寄るルネに、流石のシーナもおずおずと頷く。

 その様子に何やら察した様子のカイが、精一杯背伸びをしながらウィルにひそひそと訊ねた。

 

「あそこまで言うって、よっぽど筋金入りなんだな? そのセルウェイとかいう奴。」

「まぁ……そうだな。だが正直な話、それさえ除けばあの支部で一番まともな人間がセルウェイ少佐だ。他の隊員はそれの比じゃないくらいヤバいからな……」

「マジかよ……」

 

 信じられない。といった様子でげっそりとした表情を浮かべたカイに、ふとウィルが向き直る。

 いつになく真剣な眼差しで真っ直ぐカイを見据えながら、彼は呟いた。

 

「俺からも一つ忠告しておこう。カイ。あの支部の――」

 

   ~*~

 

「やっほ~! たっだいまぁ~!」

 

 ヘリック共和国首都、ニューヘリックシティ。

 イヴポリス大戦後に復興したこの大都市に隣接する、共和国軍首都守備隊基地の本棟3階。隊員オフィスの扉を開け明るい声を上げたのは勿論ルネである。

 彼女の声に気付いた瞬間、1人の女性隊員が目を輝かせて椅子から立ち上がった。

 

「先輩! おかえりなさい!!」

 

 駆け寄って来たその女性隊員を豪快にハグしながら、ルネは可愛い物を見た時特有の緩んだ表情を浮かべる。

 

「リリア~! 良い子にしてた~?!」

「はい! 私もゴルちゃんも皆も良い子にしてました!」

 

 ハグされた衝撃でズレた眼鏡を直しながら、女性隊員……リリア=クイントン少尉が嬉しそうに笑う。

 その様子を呆れたように眺めた後、リリアの席を見据えながらシドがボソッと呟いた。

 

「ゴルちゃんって……まだぬいぐるみ持ち込んでんのかお前」

「ぬいぐるみじゃなくてクッション!!」

 

 むっとした顔で言い返すリリアに便乗し、ルネも彼女を放しながら同様の表情を浮かべる。

 

「そうそう。デスクワークの負担軽減を目的とした私物の持ち込みは可とする。ってちゃんと規定されてるんだし、クッションの一つや二つ持ち込んだって良いじゃないの。許可だって、私がきちんと正式に出したでしょ?」

「クッション……ねぇ……」

 

 再び、シドが呆れた視線をリリアの席へと向ける。彼女のデスクチェアの上には、座面の半分以上を占領するようにゴルドスのぬいぐるみが乗っていた。小脇に抱えるにも些か大きいくらいのサイズがあるこのぬいぐるみは、リリア曰く、あくまで“愛機を模したクッション”として作った物であって、断じてぬいぐるみではない。との事だったが……少なくともシドにとってはぬいぐるみ以外の何物にも見えなかった。

 

「先輩先輩! レン君達、元気にしてました?」

 

 物申したげなシドなど全く気にも留めず、リリアがルネへと訊ねる。

 次の瞬間、ルネはウィルやシドと気不味そうに視線を交わしあってから口を開いた。

 

「今の所は一応元気だけど、来週からの研修先がちょっとね……」

「研修先? へぇ~! レン君達来週から研修なんですね! 何処なんですか??」

 

 目を輝かせながら訊ねたリリアに答えたのは、ウィルだった。

 

「ガーディアンフォース共和国領第七辺境支部」

「えぇぇぇぇぇぇぇ?!」

 

 次の瞬間響き渡ったリリアの絶叫は、何も大袈裟な事ではなかった。

 オフィス内で事務処理に勤しんでいた他の隊員達も皆、周囲の者と顔を見合わせながら不安そうにどよめき、先程大声を上げたリリアは、縋り付くようにルネの軍服の裾を掴んで声を上げた。

 

「第七辺境支部って“あいつ”の居る所じゃないですか!! いくらなんでもあんまり過ぎですよ!!」

「いや……私達もそう思うけど、ガーディアンフォース側で決定されてる事だから、口が出せないというか……」

 

 困ったように答えながら、ルネは泣きそうな顔をしているリリアの肩をぽんぽんと優しく叩く。

 そんな彼女達を眺めて、シドがしみじみとした声で呟いた。

 

「まぁ俺達全員、あいつに関してはとにかく色々あったけど、リリアにとっちゃレベルが違うもんなぁ……」

「そうですよ! あいつのせいで私もゴルちゃんも“死に掛けた”んですから!! フィールドに居る奴は敵も味方も全部獲物としか思ってない殺戮サイコパス野郎ですよ?! いくらレン君達でも絶対無事じゃいられませんってば!」

 

 必死に抗議するリリアの頭に、ふと、大きな手がぽん。と置かれる。

 見上げた先には、穏やかな笑みを浮かべたウィルが居た。

 

「大丈夫だ。今はレン達も随分成長しているし、あいつと渡り合えそうな有望な飛行パイロットも居る。きっと、もっともっと成長して帰って来るさ」

「有望な飛行パイロット?……」

 

 きょとんとした声で呟いたリリアに、シドが何でもなさそうに呟いた。

 

「4月に世間を騒がせた、鷲型ゾイドとそのパイロットだよ」

「……えぇぇぇぇぇぇ?!」

 

 素っ頓狂なその声にルネ達がクスクスと笑いあった時、1人の若い男性がオフィスへと入って来た。彼は先程聞いたリリアの声と、ルネ達がクスクス笑っている姿から何やら察した様子で、陽気な笑みをニッと浮かべる。

 

「なんだなんだ? 楽しそうだな。お前ら」

「あ、ストライド中佐。只今戻りました」

「おう。おかえりルネ。ウィルとシドもお疲れさん」

 

 そう言ってルネ、ウィル、シドの肩を順にぽんぽんと叩いたこの男性こそ、首都守備隊を率いる若き隊長。ロナルド=ストライド中佐である。

 ストライドは手にしていたプリントの束を軽く振りながらオフィス内の隊員達に呼び掛けた。

 

「さぁお前ら! さっきの部隊長会議での伝達事項話すから資料配るぞ~! ルネ達もさっさと席に着け」

 

 その言葉に、ずっと立ち話をしていたルネ達もサッと席に着く。

 資料が全員に行き渡った所で、ストライドはふと真剣な面持ちで語りだした。

 

「ガーディアンフォース及び帝国軍から、先月末に起きた合同演習襲撃事件の犯人。幻影騎兵連隊(ファントムリッター)について、現段階における最新の調査結果が開示された。全員心して聞くように――」

 

   ~*~

 

「ネイト=アディンセル?」

「そう。そいつが第七辺境支部で一番ヤバい奴」

 

 午前訓練を終え、昼食休憩に入った頃。食堂で首を傾げたカイに、レンが神妙な面持ちで頷いていた。

 会話の発端は、別れ際にウィルから告げられた意味深な一言をカイが質問した事に始まる。

 

―俺からも一つ忠告しておこう。カイ。あの支部の飛行パイロットにだけは気を付けろ。―

 

 その飛行パイロットというのが、ネイト=アディンセルという人物で、レン曰く、第七辺境支部で一番ヤバいと言われる人物らしい。

 

「一番やばい? ってどういう事?怖い人なの?」

 

 きょとんと訊ねるシーナに、レンが頷く。

 

「まぁ……うん。分かり易く言えば怖い人になるかな。滅茶苦茶怖い超危険人物。元々は共和国軍の首都守備隊に配属されてた軍人で、操縦も白兵戦も飛び抜けのエリートなんだけど、とにかく筋金入りの戦闘狂っつーか、殺戮狂でさ。もう敵も味方も容赦無く攻撃しちまうタイプっつーか……」

「え? 何それヤバッ……サイコパスじゃん」

「そう! それ! サイコパス!」

 

 カイとレン口から飛び出した聞き慣れない言葉に、シーナは首を傾げた。

 

「さいこぱす??」

「反社会的異常者の事ですよ」

 

 クルトが優しく説明するが、彼女はその説明を自分なりに理解しようと一生懸命考えた後、不安と怪訝さを綯い交ぜにしたような表情で恐る恐る訊ねた。

 

「えっと……つまり悪い人。って事?」

「そう……ですね。少なくとも良い人では無いので、その認識で良いと思います」

 

 苦笑を浮かべるクルトの隣で、エドガーがそっと脱線した話を戻すように説明を再開した。

 

「とにかく、話ではそいつに病院送りにされた隊員が何人も居るらしい。ウィル兄さんの同期隊員も、任務中そいつに殺されかけて入院した事があるそうだ」

「うっわ……なんでそんなのがガーディアンフォースに居るんだよ。普通軍籍剥奪の一発除隊コースだろ?」

 

 怪訝そうな表情を浮かべたカイに、エドガーはただただ静かに問い掛ける。

 

「そんな危険人物を除隊してしまったら、どうなると思う?」

「あ~……なるほど。そういう事か……」

 

 意味深なその一言に、カイは思わず頭を抱えた。

 殺戮狂とまで評された超危険人物。しかも“飛び抜けのエリート”というレンの発言から、実力はかなりのものである筈だ。そんな人物を追放するという事は、軍にとっての厄介払いが出来る一方で、危険人物に対する監視の目が無くなってしまう。という事でもある。そうなれば、どんな事件を起こすか分かったものではない。

 

「手元に置いて監視してなきゃ不味い程の超弩級殺戮チートお化けなんて、聞いた事ねーよ……」

 

 ぐったりとした様子のカイの向かいで、クルトがボソッと呟いた。

 

「いっそ監獄にでもぶち込んでしまえば良いものを……上層部は何を考えているのやら」

 

 確かに……といった空気が漂うテーブルで、エドガーが溜息を吐く。

 

「殺戮狂である事を除けば、非凡な才能を持つ貴重な人材なんだ。監獄で腐らせておくのも勿体無いと思ったんだろう」

「勿体無いってだけでそんなのが入れるとか、基準ガバガバ過ぎんだろ……」

 

 思わずそんな声を上げたカイの前で、エドガーはふと表情を陰らせた。

 

「ガーディアンフォースとして十分な技能を持つ場合、平和維持に貢献する事によって必要最低限の衣食住を保証する……イヴポリス大戦後、僕の父さんと母さんの処遇を巡って議論が交わされた中で、この規約が新たに可決されたんだ。恐らく、アディンセル准尉にもそれが適用されたんだと思う」

 

 その言葉に、レンとクルトは心配そうな表情を浮かべ、カイはハッとしたように口を噤んだ。

 エドガーの両親であるレイヴンとリーゼは、プロイツェンの手先として、ヒルツの手下として、その人生を翻弄されてきた被害者であると同時に、多くの軍人を手に掛けた“犯罪者”でもある。そんな彼らが服役を免除され、ガーディアンフォースに所属している以上、規約条件に当てはまりさえするのならば、他の犯罪者や問題軍人についても同様に適用せざるを得ない。

 

「……ごめんな。別に、レイヴンさんやリーゼさんの事を悪く言うつもりじゃ……」

「それはちゃんと分かってる。それに、僕もそんなつもりで言った訳じゃないんだ。ただ、この規約が可決されて以降、有能な人材でありながら軍で問題を起こした軍人が、ガーディアンフォースに丸投げされるケースがたまにあって、それに少し思う所があるというか……」

 

 そう。実力さえあれば問題を起こしてもガーディアンフォースで食っていける。そう考える不届きな者達がこの世には一定数存在しており、軍上層部もまた、レイヴンとリーゼの例がある以上、そういった鼻つまみ者はさっさとガーディアンフォースに押し付けてしまえば良い。と考えている者達が一定数を占めている。

 当然、ガーディアンフォースとして任務に従事出来るだけの実力が伴う者はごく僅かであり、殆どの者は実力不足であると判断され処分を下されるが、この規約のせいで軍とガーディアンフォースの組織体系の一部に歪みが生じている事は事実であった。

 しかし、その歪みを正す為に規約が改訂、或いは取り消しとなった場合、レイヴンとリーゼが投獄される可能性は極めて高く、その子供であるエドガーと妹のルーラに関しても、どのような判断が下されるか……

 彼を取り巻く家庭環境は、そういった法や規約の絡みが大きい故にかなり複雑なのである。

 

「まぁ、そのアディンセル准尉というのがどういった人物であれ、俺達がやる事は訓練研修だ。むしろそういった危険人物を相手取る事が出来るようにならなければ、この先の任務などこなせはしない。幻影騎兵連隊(ファントムリッター)とも、到底まともに戦えはしないだろう」

 

 クルトの言葉に、その場の全員が気持ちを切り替え、真剣な面持ちで頷く中、カイだけがふと視線を落とした。

 

(つまり裏を返せば、この研修で成長出来ねぇ奴は、この先の任務で使い物にならない。って事か……)

 

 初邂逅となった合同演習襲撃事件において、自分達は結局小手先で遊ばれていただけ。途中で呆気無く姿を消しはしたが、帝国軍側の加勢が無ければ、その前に全員殺されていたであろう事は想像に難くない。

 だからこそ、中止となった合同演習に代わるスキルアップの機会として、この研修が急遽設けられたのだろう。その研修先に“札付きの危険人物が居る”という第七辺境支部が選ばれたのも、この程度の試練は乗り越えてもらわなければ困る。という上層部の焦りが垣間見えるような気がした。

 突然現れた、強大で底の計り知れない組織。それをこの先相手にしなければならない事が明確である以上、余裕のあるうちに有望な若手の育成を急ぐのは、流れとして妥当な所であろう。

 平和な時代に生まれ育ったが故に、極限の命のやり取りという物を自分達は知らない。何度も危険な目に遭ってきたカイですら、生きるか死ぬかの深淵を垣間見た事は無いのだ。レン達は尚更の筈である。

 

―ゾイド戦と銃の扱いに関しては、もう俺達から特に言う事は無い―

 

 今朝言われたウィルの言葉を、カイは無意識に思い起こしていた。

 その何気ない一言に背を押されるように、カイは胸の奥でそっと呟く。

 

(……上等だ。何処の誰が相手だろうが関係ねぇ。全力で喰らい付いていってやるぜ)

 

 薄紫色の瞳には、その決意の表れのように強い光が宿っていた。

 

   ~*~

 

「とうとう、着いちまったな……」

「あぁ」

 

 翌週の月曜。6月16日。

 ホエールキング-ヴァルフィッシュの窓から、レンとカイは眼下に広がる基地を見つめていた。

 ガーディアンフォース共和国領第七辺境支部……共和国南部に広がる荒野のど真ん中に存在するこの基地は、最も近いグランドコロニーに行くのすら高速ゾイドで片道2時間は掛かるという、なんとも不便な場所にある。

 荒野で頻発する傭兵やならず者達の小競り合い鎮圧が主な目的である為、このような場所に基地が設けられているという話ではあるが、それはあくまでも表向きの理由であり、本当の所はガーディアンフォースの中でも特に異端な問題隊員達を隔離する為に造られた“最終処分場”なのではないか?というのがもっぱらの噂であった。

 

「カイは、意外と緊張してねぇんだな?」

 

 不思議そうに訪ねて来たレンの顔をチラッと見て、カイはふと穏やかな笑みを浮かべると、再び第七辺境支部へと視線を戻しながら呟いた。

 

「まぁ……来ちまった以上、やるしかねーしな」

 

 カイはふとレンを見つめると、何処かからかうようにレンへと訊ねる。

 

「レンは? もしかして緊張してんの?」

「俺?! あ~……まぁ、た、多少? 多少はな??」

「いや、普通に滅茶苦茶緊張してんじゃねーか」

 

 そう言って笑い飛ばしてやれば、レンはムスッと面白くなさそうな表情を浮かべはしたものの、次の瞬間には大きな溜息を一つ吐いて、ゆっくりと迫る第七辺境支部を眺めた。

 

「カイもチラッと聞いただろ? この第七辺境支部が陰でなんて呼ばれてるか……」

「あ~……最終処分場とかなんとか呼ばれてんだっけ。此処」

 

 カイの言葉にゆっくりと一度だけ頷いて、レンは不安に表情を陰らせる。

 

「ただの噂ならそれに越した事はないけどさ。そんな噂が立つって事は、やっぱり何かあると思うんだ。だから、この支部の隊員ってのがどんな人達なのか、少し不安っつーかさ……」

「……確かに。選りすぐりのド屑ばっかとかだったら俺も流石に嫌だわ。やってらんねぇ」

 

 掌を返すかのようにきっぱりとそう言い放ったカイに、レンは思わずきょとんとカイを見つめる。

 しかし、カイはそんなレンを見つめ返してニヤッと笑った。

 

「けどさ。そんなド屑ばっかなら、こっちも遠慮する必要無くね?」

「……カイって、結構ものすっげー事サラッと言うよな」

 

 言葉ではそう言いながらも、レンは何処かホッとしたようにクスクスと笑い出す。

 そんな彼に、カイは至って不思議そうにきょとんと訊ねた。

 

「そっかぁ? 結構普通の事しか言ってねぇと思うけどな」

「いや、だって今めっちゃ悪い顔してたじゃん」

「マジで?」

「マジマジ」

 

 気が付けば、自然とお互いに笑い合っていた。

 先程までの緊張が嘘のように消えて無くなったレンが、ふと微笑んだ。

 

「ありがとな」

 

 その一言にカイは何を言うでもなく、いたずらっ子のようにニッと笑って見せる。

 そんな2人の元に、エドガーがやって来て静かに告げた。

 

「2人とも、そろそろ着陸だよ」

「あぁ」

「おう! わかった!」

 

   ~*~

 

「よく来たな! 若者諸君!!」

 

 滑走路に降り立った一行を出迎えたのは、1人の大柄な男性だった。

 蜂蜜のような濃い金髪に、真っ青な瞳。日差しに白い歯を輝かせながら明るく笑うその男性は、任務服越しにもハッキリと分かる程に鍛え上げられた肉体と、両手を腰に当て仁王立ちするその姿も相まって、まるでアメコミのヒーローのような印象を与える。

 どんな奇人変人が居るのやら……と身構えていた一同は、そんな彼の姿に拍子抜けしつつ挨拶を口にした。

 

「初めまして。ガーディアンフォース本部訓練部隊所属。前衛戦闘員レン=フライハイト少尉です。以下、前衛戦闘員エドガー。専属開発整備班所属・後方支援戦闘員クルト=リッヒ=シュバルツ一級工学博士。前衛戦闘員カイ=ハイドフェルド訓練生。そして前線オペレーターの――」

「おぉ?!」

 

 紹介の途中で、突如男性は大声を上げる。

 思わずビクッとした男子一同など気にも留めず、彼は真っ直ぐシーナの目の前に歩み寄り、まるで絵本の王子様宜しく手を取りながら膝を突いた。

 

「美しい……なんと美しく可憐な少女だ。まさに今、この荒野に咲いた一輪の撫子。いや! この辺境の地に舞い降りた天使だ! あぁ、天使よ。どうかこの私に、その尊い御名を聞かせておくれ」

「みな??」

「グオ??」

 

 きょとんと首を傾げるシーナとユナイトの隣で、すっかり呆れ返った様子のカイがボソッと囁く。

 

「名前聞かせてくれ。ってさ」

「あ。えっとね。私、シーナっていうの」

「シーナ! あぁ! なんと清らかな響きだ! このイーサン=セルウェイ少佐。君の為ならば何でも力になると此処に誓おう!」

 

 その言葉……いや、その名前を耳にした途端、カイ達の脳裏にルネの言葉が鮮やかに蘇った。

 

―セルウェイって名前のマッチョ野郎にだけは、絶ッ対に近付いちゃ駄目よ―

 

 まさかあの時の言葉の意味を、まだ出会って1分も経たない内に痛感する事になろうとは……

 そのあまりに強烈過ぎる口説き文句に、レンはただただポカンとしており、エドガーは片手で額を覆い隠すように頭を抱え、カイは呆れと警戒を含んだ眼差しでジトリとセルウェイを見つめている。シーナに絶賛片想い中であるクルトなど、殺意と嫉妬に満ちた眼光で、射殺さんばかりにセルウェイを睨みつけていた。

 

「もしかして、ハーマン少佐が言ってたセルウェイって、貴方の事?」

 

 相も変わらずきょとんとしたまま訊ねるシーナに、セルウェイは満面の笑みを浮かべる。

 

「そうか! 君達は先週までルネの指導を受けていたのだったな! 勿論彼女の事も知っているとも! 信念を胸に任務に就く姿は戦乙女の如く、仲間に対して明るく快活に接する姿は大輪の向日葵のようだった。だが、恋愛事に関しては随分と恥ずかしがり屋で、告白する度に頬を張り倒されてしまったものだ。まぁそんな恥ずかしがり屋な所がまたなんとも愛らしいのだがな! わっはっはっは!」

 

 その発言に、誰もが心の内でこう思った。それはただ単に鬱陶しがられていただけだ。と……

 しかし、張り倒され続けていたのを「相手の照れ隠し。」と捉える程のポジティブさは、ある意味凄い。

 

(こりゃ筋金入りどころか、死んでも治らねぇレベルだな……)

 

 そんな事を考えるカイの隣で、シーナは持ち前の天然を炸裂させていた。

 

「そっか。ハーマン少佐のお友達なんだね。私てっきり怖い人かと思ってた」

「はっはっは! 誤解が解けたようで何よりだ! 御覧の通り、私はちっとも怖い人ではないぞ!」

「うん。これからよろし――」

「ところで!! 失礼ですが他の隊員の方々は任務中なのでしょうか?!」

 

 とうとう、痺れを切らしたクルトがシーナとセルウェイの間に割って入る。

 シーナを背後に隠す形で強引に割って入ったにも関わらず、セルウェイはきょとんと目を瞬いた後、特に機嫌を損ねた様子もなく立ち上がった。

 

「他の隊員達なら、全員基地内に居るぞ」

「えっと、じゃぁもしかしてお忙しい……んですか?」

 

 恐る恐る訊ねたレンに、セルウェイは爽やかな笑顔でキッパリと驚愕の一言を放った。

 

「いや。ただ単に、君達に興味が無いそうだ」

 

 その言葉に、その場の全員が唖然とした表情で顔を見合わせる。

 興味が無いから出迎えもしない。という他の隊員達は、一体どのような人物なのだろう?……

 一行に、重苦しい不安がずしりとのしかかった。

 

   ~*~

 

 ひとまず、間借りさせてもらった予備格納庫にゾイド達を駐機した一行は、格納庫前に集まっていた。

 予備格納庫の向かいに建つメイン格納庫。そこに並んだ第七辺境支部のゾイド達に興味を惹かれたのである。

 

「すっげぇ! サラマンダーじゃん!」

 

 巨大な翼竜型ゾイドを見上げ、カイが目を輝かせる。

 共和国が開発した大型飛行ゾイド、サラマンダー。15000kmという航続距離に加え、最大限界高度30000m。圧倒的な爆弾積載能力も併せ持つこの新型ゾイドは、実は配備数のかなり少ない“不遇のゾイド”であった。

 ただでさえ生産コストが高い事に加え、その巨体と積載能力から、最高速度はどんなに頑張ってもマッハ2までしか出ない。これは旧式機の区分に落ちてしまったプテラスとほぼ同じであり、次々と高速戦闘型の飛行ゾイドが開発されている中、鈍足かつ巨体であるサラマンダーは正式配備前からかなりの不評であったのだ。

 更に此処に追い打ちをかけたのが、同時期にロールアウトしたレイノスの存在である。最高速度マッハ3.3という圧倒的なスピードと、小型故の高い機動力を兼ね備えたこのゾイドは、あっという間に共和国空軍でエース機の座を勝ち取り、人気を博した。つまり、華々しいデビューを果たしたレイノスの陰に埋没してしまったのだ。

 ……恐らく、カイのような飛行ゾイドマニアでもない限り、知る者も滅多にいないだろう。

 そんなサラマンダーの隣に駐機されているゾイドもまた、かなりインパクトのあるゾイドだ。

 

「凄いな……これだけの銃火器を搭載したゾイドを見たのは初めてだ……」

 

 独り言のように呟きながらクルトが見上げているのは、共和国軍で現在試験配備が進められている最新鋭の砲撃ゾイド。ガンブラスターであった。

 その背を埋め尽くすように装備された無数の砲門は“ハイパーローリングキャノン”と呼ばれており、13種類もの銃火器によって構成されている代物だ。まさに「全てのトリガーハッピーゾイド乗りに捧ぐ。」と言わんばかりの装備である。

 

「凄いね。いろんな種類の銃がいっぱい……」

「えぇ。パッと見でわかるだけでもブレーザーキャノンにサンダーキャノン、ビームキャノン、レールキャノン、電磁砲や3連速射砲まで搭載されてますからね……」

 

 シーナの呟きにザックリと説明をするクルトも、正直圧倒されていた。

 自身が乗るディバイソンも17連突撃砲を装備しているが、無数の銃火器をこれでもかとばかりに詰め込んだガンブラスターの迫力は、まさに圧巻の一言に尽きる。

 そんな彼らから少し離れた場所で、エドガーはレンと共にとあるゾイドを見上げて首を傾げていた。

 

「ステルスバイパーはともかく、このゾイドは一体なんだろう?……」

「珍しいカラーリングだけど、ベアファイターじゃないか?多分」

 

 2人が見上げていたのは、白黒に塗り分けられたベアファイター。

 しかし、その配色はまるで……

 

「失礼ね!」

 

 突如響き渡った鋭い女性の声に、レンとエドガーだけでなく、全員が声のした方向を向く。

 そこに立っていたのは、ノースリーブの赤いパイロットスーツに身を包んだ一人の女性であった。艶やかな深い紫色の長髪に、白い肌。身にまとったパイロットスーツもボディラインにフィットするようなタイプである為に、しなやかに引き締まった体がよくわかる……モデルのような美女だが、その赤みを帯びた茶色い目は鋭かった。

 

「ベアファイターじゃなくてパンダよ。パンダファイター。見て分からないの??」

「あ、えっと、すいません……」

 

 高圧的な態度と物言いにレンがおろおろと謝罪すれば、女性は冷たい眼差しで値踏みするようにレン達を一通り眺めると、呆れ返ったような溜息を一つ吐き、眼差し同様の冷たい声音で言い放った。

 

「全く、想像以上に愚図で甘ったれなお子様達ね。研修は遠足じゃないのよ。ゾイドの駐機が終わったなら、サッサと司令に挨拶しに行きなさいよ。」

 

 ふんっと鼻を鳴らして、彼女はピンヒールブーツをつかつかと鳴らしながら、愛機であるパンダファイターへと歩いて行く。その後ろ姿を眺めながら、エドガーは近くで作業していた整備スタッフの1人にそっと声を掛けた。

 

「すいません。あの女性は一体?……」

「あぁ、第七辺境支部(うち)の紅一点。メイシェン=リー大尉だよ」

 

 整備スタッフはそう言ってメイシェンを振り返る。

 

「普段の態度はあんな感じだが、あぁ見えて、実は面倒見良かったりするんだぜ? まぁ、第一印象最悪過ぎて、最初の内は到底信じられないだろうけどな」

「はぁ……」

 

 思わずぽかんと返事を返すエドガーの隣に、シーナがそっと歩いて来て格納庫から出て来たパンダファイターを見上げた。気合いに満ちたような咆哮を上げたパンダファイターは、四足形態のままで走り出し、あっという間に見えなくなって行く……恐らく単独任務に出たのだろう。

 

「あのリー大尉って人、多分怖い人じゃないと思うよ」

「そう?」

 

 不思議そうに訪ねたエドガーに、シーナは穏やかに笑う。

 

「うん。リー大尉が来た時、あのパンダファイターって子、凄く嬉しそうだったから。ゾイドに懐かれる人に、悪い人はいないよ」

「……うん。そうだね」

 

 確かにシーナの言う通り、パンダファイターはメイシェンが現れた時、何処かうきうきした様子だった。

 これから任務に出る事が分かって喜んでいたのだろうと思っていたが、自分よりもよりハッキリとゾイドの声を聞けるシーナがこう言うのならば、恐らくそうなのだろう。

 

「エドぉ~! シーナぁ~! そろそろ行くぞ~!」

 

 レンの呼びかけに振り向けば、レン、カイ、クルトの3人は既に先の方で立ち止まっていた。

 

「今行く!」

「皆待って~!」

 

 意外と、此処の隊員達も悪い人ばかりではないのかもしれない。

 そんな風に思いながら、エドガーとシーナはレン達の後を追いかけた。

 

   ~*~

 

 支部司令官の執務室へ向かう為、階段を上っていた一行はふと足を止めた。

 階段を下りて来た2人の若い男性……フィールドタイプの任務服の隊員と、パイロットスーツタイプの任務服の隊員が階段を下りて来たからだ。

 メイン格納庫に駐機されていた第七辺境支部のゾイドが、サラマンダー、ガンブラスター、ステルスバイパー、パンダファイターの計4機であったのに対し、出会った隊員はセルウェイとメイシェンの2人だけ。となると、残る2人が恐らく……

 

「あれ? もう来てたんだ」

 

 フィールドタイプの任務服を着ている方の男性隊員が、薄い笑みを浮かべて何でもなさそうに呟く。

 首の後ろで無造作に結った赤銅色(しゃくどういろ)の髪に、錆色の瞳。右頬に大きな三角形のフェイスマーク。容姿的には何処にでも居そうな普通の男性だが、身に纏ったその雰囲気は何処か薄気味が悪い……

 だが、カイ達が何か答えるよりも早く口を開いたのは、パイロットスーツタイプの任務服に身を包んだ男性隊員だった。

 

「ネイト。無駄口を叩くな」

 

 その名を聞いたレン達の表情が、微かに引き攣る。

 ネイト=アディンセル……殺戮狂のサイコパスと名高い超危険人物が目の前に居る事に、思わず緊張が奔った。

 しかし、当のネイトは至極気楽な様子で、パイロットスーツの隊員を振り返る。

 

「固い事言うなよセシル。ちょっと後輩に挨拶するだけじゃん」

 

 セシルと呼ばれた隊員は酷く不機嫌そうではあったが、露骨に警戒しながらも腕を組んで階段の壁に背を預け、サッサと済ませろ。と言わんばかりの冷たい眼差しをネイトに向けた。

 ネイトは軽く肩を竦めて見せると、緊張した様子のレン達の顔を見渡し、すぐに目当ての少年を見つける。

 

「ふ~ん……」

 

 含みのある声を上げながらネイトが顔を覗き込んだのは……カイだった。

 

「鷲型ゾイドのパイロットって、お前だろ?」

「だったらなんだよ」

 

 カイの瞳がスッと温度を下げる。その眼差しはガーディアンフォース隊員としてのカイではなく、危ない取引きに挑む際の情報屋としてのカイが顔を覗かせていた。

 ネイトはそんなカイの態度を面白がるかのように笑いながら答える。

 

「いや、思ってた以上に面白い奴だなと思ってさ。名前、なんていうの?」

 

 その言葉に、カイは口の端を歪めるような悪い笑みを浮かべて呟いた。

 

「教えてやっても良いけど、いくらで買う?」

「は?」

 

 唐突なカイの一言にポカンとしたのは、ネイトだけではなかった。レンも、エドガーも、クルトも。シーナやセシルまでもが驚きと戸惑いにカイを見つめる。

 そんな周囲の視線など全く気にも留めていない様子で、カイは言葉を続けた。

 

「悪いけど、これでも元情報屋でね。いくらあんたが先輩だろうと、ヤバいと判ってる奴相手にタダで個人情報を教えてやる気はない。払うもん払うか、支部司令官殿からの紹介を大人しく待つかするんだな」

 

 一拍の不穏な静寂の後、階段に響き渡ったのは愉快そうなネイトの笑い声だった。

 

「良いねぇ! 俺にビビらずにふっ掛けて来たのはお前が初めてだぜ! 気に入った!」

 

 ひとしきり笑ったネイトは、不意にカイの耳元に口を寄せる。

 ひっそりとした声で彼は薄気味の悪い笑みと共に囁いた。

 

「なぁ、今まで何人殺した?」

 

 その次の瞬間だった。

 壁に背を預けていたセシルが、素早く取り出した拳銃をネイトのこめかみに突き付けたのは……

 あまりに突然の出来事にレンとエドガーは凍り付き、クルトは咄嗟にシーナを背後に庇い、シーナはクルトの背後で、ユナイトはスペキュラーの背後で身を縮こまらせる。

 冷たく無機質な、それでいて殺気の込もった声でセシルは告げた。

 

「無駄口を叩くな。と言った筈だぞ」

 

 その場の空気ごと時間が凍り付いてしまったかのような修羅場と化した階段で、ネイトとカイだけが悪い笑みを浮かべたまま、互いの腹の内を探り合うように見つめ合っていた……

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