最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
竜の生活その1「ゆったりした生活」
霧が漂う山に囲まれた静かな森。通称『魔霧の森』。そのほぼ中心には霧も森も開けた場所があり、そこには小さな湖と私の小さな家がある。小さいと言っても私の感覚の話で、人間達が見れば大きいと感じるかもしれない。それはともかく、私はそこで1人、数十年程静かに暮らしている。
「⋯⋯うん、美味しい」
水を掬い、喉を潤す。水面に映るその姿は角が生え、牙が生えている。そう、私は人にあらず。
私の名前はティラノス。種族は竜だが、容姿は人間に近い。人化という人間になれる種族的な特徴のお陰だ。長い金色の髪に赤い瞳。髪にはリボンを付けて申し訳程度のオシャレをしてる。よく着る服は白と黒の俗に言うゴスロリ。そして、竜の証である羊のような曲がった角に真っ白な大きな尻尾と翼。
人間に近いと言っても、最早この3つがあれば人間ではないか。まぁ、この世界には魔族とかいう今の私に似た姿の者が居るらしいから人で良いだろう。私からすれば、人間も魔族も大差ない。どちらも同じ小さな生き物だから。
小さいとは言っても、下等だから殺そうとかは思ったりしない。いや、正確には昔はイライラして殺したけど、今はそんな野蛮な事はしない。昔の事は今でも後悔してる。1000年以上──正確には1500くらい──生きてきたけど、20年ちょっと前までは本当に別人かと思うくらい酷い事をしていた。人を踏み潰したり、燃やしたり、食べたり。昔はその触感や快感、食感を楽しんでいた。
でも、今ではその全てに嫌気がさした。何故私は千年もそんな事を続けていたのか。何故私は何の目的も、何の理由も無く人を殺していたのか。今では分からない。所謂反省はしてないが、後悔してる、というやつだ。
だが、あの時は目に入る何もかもが気に入らなかったのだ。それもまた、若気の至りか。今となっては何とも思わない事も、昔は気に障ったのだ。もちろん今は違う。人を殺したいとか思わないし、ましてや食べたいとも思えない。今の時代、肉よりも野菜、ベジタリアンだ。
最近になってふとそう思うようになった。それからというもの、人を見ても殺してないし、食べてもない。私は変わった。何がきっかけか分からないけど変わったのだ。
「⋯⋯幸せだなぁ」
家の前に置いてある椅子に腰掛け、ゆっくりと背にもたれる。
戦いから逃げて、今は静かに、ゆったりと暮らしている。今はそれが私の幸せなのだ。これからもずっと、ゆったりまったりのんびりとした生活を送りたい。昔は散々暴れたけど、もう戦いとか戦争とかそんな事どうでもいいから、自由気ままに過ごさせてほしい。許されざる事とは思ってるが、私はそうしたいのだ。
「ふぁぁ⋯⋯ぁぁ。眠⋯⋯」
霧によって遮られる僅かな日光を浴びながら目を瞑る。こうして静かな森の中で日光浴をするのは穏やかな気持ちになれる。こんな日が、あと千年くらい続けば良いのに。
そう思いながら、私は眠りについた。
──これは、ゆったりとした生活を求める竜の話。そして、その生活が崩されながらも自由気ままに生きようと奮闘する少女の話でもある──
毎回後書きに書こうと思います、用語解説のお時間です。
ここでは知っても知らなくてもあまり支障の無い用語を解説していきます。要は小ネタのようなものなので、見る見ないはご自由にどうぞー。
『イデア大陸』
記念すべき1つ目の用語はこの物語の舞台の大陸名。名前の元ネタはプラトン哲学の同名のあれです。
大きさはこの世界で言うと、アフリカ大陸程。結構大きいです。この大陸では北に行くほど暑くなり、南に行くほど寒くなります。主に人間の住む王国に魔族の住む王国やエルフの国があり、様々な種族が共存しています。仲が良いとは言えませんが。
世界一神秘が豊富で、魔物や魔獣と呼ばれる種族が蔓延る大陸でもあり、それなりに強くなければ森で野宿などできません。イデア大陸は大陸名にもある『イデア』という神様が創ったとされ、大陸ができてからまだ二千年程度しか経ってないらしいです。それでも長いですね。
ちなみにこの小説の世界には他にも大陸がありますが、この物語では出てきません。
ティラ「私が棲む大陸。昔は色々な場所に行ったよ。今では隠居中だけど」