最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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竜の生活その11「雛竜の願い」

 オルニスを家に連れ帰った後、彼女は私以上に物を食べた。保存してあった食料すらも残さず食べ尽くしたらしく、料理を任されたカノンは疲れ切った顔を見せていた。

 

「あー、美味しかったー。カノン? だっけ?」

「合ってるよ。どうしたの?」

「美味しい料理をありがとう! 感謝するー!」

 

 だけど、腹が膨れて機嫌も良くなったオルニスを見て、カノンも自然と笑みが零れる。

 

「そっか、嬉しそうで良かった。⋯⋯それにしても、なんだか不思議な感じ。私よりも背が高いのに、私よりも子供っぽいね。オルニスちゃんって」

「そうかなー?」

「うん、馴染んでるのはいいとして、そろそろ話をしようか。カノンも。この娘、私に攻撃してきたんだからね? あまり甘やかしたらダメだよ」

 

 カノンはそれを聞いて「はーい」とぶっきらぼうに答え、食事の片付けを始めた。私の言葉をあまり本気にはしてないらしい。

 

「改めて、オルニスはオルニスだよ。年齢は100歳で、水を風の冷気で極限まで冷やして攻撃するから冷竜だよ。みんなからは雛竜(すうりゅう)とも呼ばれるかな。よろしくねー。暴竜様、カノン」

 

 私よりも背が高くて100歳とは。傍から見れば身長は逆だろうに。いや、傍から見れば10代程度になるのか。この世界に最も多い人間基準になるし。それにしても、氷竜じゃなくて冷竜というのは珍しい。言わば下位互換のはずなのに、冷気をかなり使いこなしている。成長すれば面白い⋯⋯じゃなかった。強い竜になりそうだ。

 

「そう言えば、言い忘れてた。今は暴竜じゃなくて閑竜(かんりゅう)。昔の事は黒歴史だから。それに、その名で呼ばれるのはムズ痒い」

「そうなの? なら、うーん⋯⋯オルニスの中では暴竜様は暴竜様だからなぁ⋯⋯」

 

 しばらく考え込んだ後、オルニスは何か閃いたらしく、顔をぱっと上げる。その時の顔は、凄く生き生きとした表情だった。

 

「ティラノスお姉様で! よろしくね、ティラノスお姉様!」

「⋯⋯まぁ、それならいいや。ところで、どうして私の縄張りに入った? まさか、竜の掟を知らないわけじゃないよね?」

 

 竜の掟とは、他の竜の縄張りに入った時の暗黙のルールを指し示す。竜は他の竜の縄張りに入る時、それが意味するのは略奪か求婚か従属かのどれか。そのどれもできなければ死あるのみ。竜の掟はとても厳しく、昔は私も私の元に来た竜を殺していた。略奪はともかく、求婚は私以上に強い者しか受け付けてないし、そもそも従属で来る竜は居なかった。

 

 でも、この娘も雌だからまず求婚は無い。略奪でも最初から竜で来るだろうから有り得ない。というわけで、答えは1つしか無いのだけど、敢えて聞いてみた。できれば違ってほしいと祈りながら。

 

「⋯⋯知ってます。オルニスはそのつもりで来ましたから」

 

 突然真面目な顔になり、丁寧な話し方に変わる。

 

 先ほどまでのふざけた言動とはまるで別人だ。それ程、この娘も真剣という事なんだろう。

 

「ティラノスお姉様、オルニスの師匠になってください! オルニスは昔から、暴竜様の偉大な伝説を聞いて育ちました。オルニスはティラノスお姉様に憧れています。ティラノスお姉様のような立派な竜になりたいです。そのために、里から出て、何年もかけて探しました。自分で修行もしましたが、やはり、暴竜様には敵いません。ですから、オルニスを立派な竜にしてください!」

「やっぱり、そう来るか⋯⋯」

 

 従属とは即ち、人間でいう弟子入りに当たる。そもそも、竜の従属なんてなかなか無い。あるとすれば、自ら相手の竜の縄張りに行き、略奪するくらいだ。この娘の例はなかなか無いだろう。竜は誰しも自分が最強だと思ってるし、他の竜に従属するなど屈辱以外の何ものでも無いからだ。

 

「竜のルールは破れません。暴竜様の縄張りに入った以上、死ぬか従属するかです。⋯⋯でも、せめて最後は暴竜様の手で殺してください。そうすれば、死すらも名誉になります」

「へぇー、竜の世界って厳しいんだねー」

 

 カノンは冗談半分として受け取ってるのか、本気で話を聞いてない。

 

 いや、むしろ、こんな話を本気として受け取る()の方がおかしいのかもしれない。だが、掟は掟。私が生まれるずっと前から、この掟は続いてる。訳も分からず、竜達はそれに従い生きてきた。故に、竜は最強という地位を確立している。正確には弱い者は淘汰されてるだけなのだが。

 

「ちなみに、できれば殺す時は一思いにお願いします⋯⋯」

「⋯⋯あぁ、もう! 重い! めちゃくちゃ重い! 私はもう戦いはやめたの。それに、弟子も取りたくないし、私の縄張りで死なれるのも困る! だから、普通に帰ってもいいよ」

「それは困ります。暴竜様に従属できず、里に生きて帰るのは恥です。せめて、首だけでもスっと切っていただければ⋯⋯」

「死への感情薄すぎない? もっと怖いとか、そういうのって普通無い?」

 

 オルニスは自分の首を掻っ切るような仕草を見せたが、すぐさま首を振って否定する。

 

 穏やかに暮らしたいし、修行とかどうすれば良いのか分からないから、弟子にするのは嫌だ。殺しても昔の自分に逆戻りするから、絶対にしてはいけない。だから、帰すしかないのだが、それも聞いてくれそうにない。

 

「ティラノス、別にいいんじゃない? だってこんなにも必死に頼んでるんだし、1人くらい同居人が増えても問題無いと思うよ?」

「そういう問題じゃない」

「ティラノスお姉様! オルニスにできる事なら何でもします! ⋯⋯オルニスも、まだ死にたくないですから」

 

 やはり重い。それに、それを言われると、私に選択肢なんて無いようなものじゃないか。さては、敢えて話してるな、この小竜。私よりも年下のくせに、あざといし、身長高いし、地味に胸も大きいし⋯⋯羨ましいなぁ。なんで私ってこんなに小さい姿なんだろう。長年竜の姿でいたせいかな。

 

「はぁー⋯⋯分かった。弟子にしても良い。代わりに、食料は自分で集めて。料理はカノンがしてくれるし、部屋は上の空き部屋を貸してあげるから」

「ティラノスお姉様⋯⋯! ありがとう! オルニスはこれから、一生付き従います!」

「やめて、暑苦しい」

 

 オルニスは感激のあまり、座っている私に抱き着いてきた。すぐさま払い除け、後ろに下がらせる。

 

 雄竜にもされた事が無かった私の初めての抱擁が、年下の雌竜だとは誰も思わなかっただろう。いや、抱擁だけで言えば、アイツが居たか。あれは俗に言う抱擁とは微妙に種類が違うだろうけど。

 

「では早速、里から自分の家具や所持品を持ってきますね! 1時間くらいで帰ってきます!」

「⋯⋯他の竜連れてきたら、さっきの話無かった事にするからね?」

「大丈夫です! バレないように帰りますので!」

 

 なら先ほどの帰れば恥云々も何とかなったのでは無いか。

 

 そんな事を思いながらも、嬉しそうに帰るオルニスの背中を見送った。




用語解説その11
『マナとオド』
別名『体外魔力(マナ)』『体内魔力(オド)』。
マナは自然に溢れ、空気中に満ちている。普段は視認する事ができないが、高密度になれば霧のように見えるらしい。魔霧の森も高密度のマナが溢れてるせいで霧が発生してるとか。また、ありとあらゆる予測不可能な現象を起こす事でも有名。稀に例外があるが、マナは通常、人間やエルフなどは取り込めない。対して魔物や魔獣などは取り込めるらしく、文字通り自然から力を得てる。

ティラ「私の魔力が強いのはここにマナが溢れてるお陰でもある」
オルニス「オルニスもここに居れば強くなれそうですね!」
カノン「しれっと参加してる⋯⋯」
ティラ「それもそうだけど、なんか理由作りを手伝ってしまった気がする」
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