最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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竜の生活その12「雛竜と成竜」

 家に新たな同居人がやって来たその次の日。

 

 オルニスは昨日、本当に1時間程で帰ってきて、即座に部屋に戻って部屋をリフォームしていたらしい。その日は1日中部屋に篭っていた。稀に部屋から出てはご飯を食べたり、風呂に入ったりしていたが。

 

「ティラノスお姉様ー。おはようございます!」

 

 そして、今日。朝から騒がしい声が耳元で聞こえる。このまま放っておいても、うるさいのが続くだけ。それにもう朝だし、起きるしかないか。

 

「ぐるぁ⋯⋯もう、朝⋯⋯ね」

「そう! ティラノスお姉様、稽古をつけてください!」

 

 昨日に続いて丁寧な口調だが、カノンに対しては砕けた口調になるらしい。稀に私にも砕けた口調になる辺り、それが素だろう。竜なのに猫被りが好きなようだ。それに昨日「戦いはやめた」と言ったばかりなのにオルニスは血気盛んだ。どうしてこんなに竜というのは好戦的なのだろう。歳を取れば、戦いも飽きるものなのに。

 

「だから、私は自衛以外で戦いたくないし、稽古も嫌だ」

「せっかく一緒に住むんだし、ちょっとくらい良いと思いますよー」

「⋯⋯はぁ。分かった。カノンに魔術を教える片手間に、教えるだけなら良い」

「本当!? ありがとう! 流石、ティラノスお姉様!」

 

 オルニスは飛び上がり、嬉しそうにはしゃぐ。

 

 とてもうるさいけど、見ていて微笑ましい。まるで本当に妹ができたみたいだ。年齢で言えば、親子と言った方が近いが。

 

「本当に教えるだけだから。何が知りたい? 魔法? それとも竜での戦い方?」

「全部! ティラノスお姉様の力を全て知りたい!」

「⋯⋯強欲な小竜。私も100歳の時はそんな感じだったのかな」

 

 千年以上も昔の事はあまり覚えてない。幾ら記憶力が良い種族とはいえ、そこまで昔になれば薄れるものだ。だから、オルニスを見てると、まるで自分の幼少期だったかのように錯覚していた。力に貪欲で強欲な竜。子供の時、私もこれくらい欲深かったから、強くなれたんだと思うし。

 

「あ、そうだ。ティラノスお姉様、オルニスの部屋を見てください! そして、可能なら感想を! ささ、ご飯で呼ばれる前に、行きましょう!」

「自分で歩けるから、手を引っ張らな⋯⋯はぁ⋯⋯」

 

 オルニスに手を引っ張られ、されるがままにベッドから立ち上がる。そして、オルニスの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 案内された部屋は私やカノンの部屋とはまた一風違っていた。

 

 壁には魔力を感じる剣や杖が飾られ、反対側の壁には魔術書等の書物が敷き詰められた本棚が部屋を圧迫している。また、壁紙も一新されており、白い壁紙だったはずが、レンガ風の茶色い壁紙に変わっている。そして、窓際には可愛らしい柄の白いシングルベッドが置かれ、その頭には大きな宝箱が置かれている。

 

「どう? 頑張りましたよね!」

「⋯⋯うん。凄いね。本当に頑張ったのが分かる」

「ふふんっ! ティラノスお姉様に褒められたっ!」

 

 オルニスは達成感からか、褒めたからか、とても嬉しそうに笑っている。

 

 師匠として、なんだか嬉しい気持ちだ。⋯⋯いや、師匠じゃないけど。それにしても、あの宝箱が気になる。私の家の地下にも宝物庫があるけど、あんな如何にもと言った感じの宝箱は置いてない。それに私自身、金銀財宝には興味がある。これも竜の(さが)だろうか。

 

「ところで、あの宝箱って何?」

「あれはオルニスの宝石箱です。人間や魔族から奪⋯⋯貰った物なので、大切にしてます」

 

 凄く不穏な言葉が聞こえた。この娘を家に置いて、いつか人間達に襲撃されないかが気がかりだ。私としては血塗れた戦いを避けたいから、逃げるしか無い。それもほぼ戦えないカノンを守りながらだから、かなりしんどい。

 

「⋯⋯ティラノスお姉様。幾らティラノスお姉様でも、オルニスの宝箱に手を出せば怒りますからね?」

「⋯⋯見るのもダメ?」

「遠くから見るだけなら⋯⋯良いです。ただ、ちょっとでも触れたら本気で怒ります。竜になって暴れます」

「⋯⋯やっぱりいいや。何か手違いがあったら大変な事になる」

 

 この娘の宝石愛は相当なものらしい。私に従属を示したはずなのに、その私に怒るとは。それは要するに自分の死を意味する行為だから、この娘にとって宝石とはそれ程な物なのだろう。

 

「あ、そう言えばティラノスお姉様。どうして人の姿じゃなく、魔族のような出で立ちなんです?」

「さあ、私にも分から──」

「あ、さては人間達にティラノスお姉様の偉大な姿を見せるためですね! 人間とは神なる者にすら畏怖を抱く種族。その種族に敢えて畏れ多い姿をわざと見せ、相手に畏怖の念を与えて戦わずして勝ちの目を上げる⋯⋯。姿で圧倒するなんて、正しく竜です! 流石、ティラノスお姉様ですね!」

 

 凄く早口で何か言ったけど、半分以上聞き取れなかったから「そうだね」と曖昧に答えた。

 

 2人目の同居人も癖が強い。ここの家主として、これからも苦労が増えそうだ。それでも1人で居るよりは楽しいし、和やかな気持ちになれる。こういったゆったりとした生活を悪くないと思いながら、オルニスを連れて1階へと降りた。




用語解説その12
『魔猪』
みんな大好き(意味深)魔獣の猪。その厚い皮膚の恩恵を受けてか、寒暑問わず様々な地域に広く分布する。ティラノス達が住む付近、魔霧の森にも多く棲む。食物や水のある場所、茂みなど隠れるところがある場所を好む傾向があるが、例外も割と多い。
その肉は種族問わず好まれ、親しまれてる(もちろん魔猪からしてみれば迷惑でしかない)。

ティラ「主な食料。でも、乱獲はできない。彼らも自然の一部だから。それに大きすぎて冷蔵庫に入らなければ、保存が効く事もないし」
カノン「後者が本音かなぁ⋯⋯」
オルニス「元は突然変異か何かで生まれた種らしく、美味しいのは仕方ないのです! だから、オルニスは好んでます!」
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