最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
濃い霧の中、空から目を凝らして森を見渡す。すると、森の中に一際目立つ褐色肌を持つ少女が魔猪と対峙してるのを見つけた。が、おかしい。あれだけ魔猪が近付き、暴れようとしているのに、その少女は気付いてないのか背後を向いて地面に伏せてる。
「──なるほど。オルニス、カノンを預ける」
「へっ!? 空中で受け渡しとかそん──なぁぁっ!?」
「カノン、落ち着いて! キャッチしてます! 大丈夫ですよー!」
オルニスにカノンを預けると、真っ直ぐ少女の元へ向かう。
少女が目をやる方向に倒れる誰かを見つけた事で、その理由と原因が理解できた。次にあまりにも興奮してる魔猪を見て、少女達の危険を感じたのだ。
「ぶふぉぉぉぉぉ!!」
魔猪は雄叫びを上げ、地面を蹴り、少女に向かって真っ直ぐ走り出す。その姿は猪突猛進そのものだった。
「止まって、魔猪」
「ぶふぉ!?」
間一髪で少女と魔猪の間に割って入り、その大きな角を掴んで突進を受け止める。突然の襲来に、魔猪は驚き狼狽え、抗おうと首を振る。が、純粋な力で
多少力を入れて傾けると、魔猪はされるがままにバランスを崩して転んだ。そこで力の差を知ったのか、慌てて足をばたつかせる。短い足のせいで思うように地面を蹴って立ち上がる事はできないようだが。
「⋯⋯目が怯えてるね。もしかして、私のせいかな。ごめんね? でも、人は襲わないで。今回は私も悪いから見逃すけど。次襲えば食べちゃうからね?」
「ぶふぉっ!? どぉぉぉぉ!」
私の目を見て真実と直感したのか、それとも恐怖の対象とでも思ったのか、無理矢理身体を捻り、急いで立ち上がると一目散に逃げていく。
ああいう私に怯えた生き物を見てると、軽率に竜になるのは自重しなければ、とつくづく思う。竜である事自体が戦争の引き金になるなんてざらにあるし、これからはもう少し控えた方がいいかもしれない。みんなを守る為にも。
「⋯⋯あ、あのっ! あ、あなたは⋯⋯?」
目に涙を浮かべた少女は、後ろで倒れる肌色が対照的な子供を守るようにして質問する。無理もない。こんな霧が深い場所に、見るからに魔族の私と、怪しさ満点なのは自覚がある。
「ティラノス。ここに住んでる者だよ」
「ティ、ラ⋯⋯あ、あの、もしかして──」
「ティラノスお姉様!」
エルフの少女が言いかけたと同時に、狙ったかのようなタイミングでカノンを背に担いだオルニスがやって来た。地面に降り立つと2人は私に近付いてくる。
「大丈夫そうですね! 流石です!」
「いや、そうでもない。白いエルフの方、怪我して気を失っている。⋯⋯まだ間に合いはするけど、少し危険な状態」
「あの⋯⋯」
「それって大変じゃない! は、早く連れて行って治さないと⋯⋯!」
「あのぉ⋯⋯!」
黒い肌のエルフが大きな声を発した事で、全員の注目が彼女へ集中する。
「どうしたの? あっ、私はカノン」
「オルニスはオルニスですよー」
「でぃ、ディニエル⋯⋯と、言います。この森に竜が棲むという噂はき、聞いた事があります⋯⋯。そ、その竜は、ティラノスさん⋯⋯あなたですか⋯⋯?」
不安なのか。無理もない。2人の事は知らないが、助けようとしている辺り、それなりに仲は良さそうだ。だから、見ず知らずの、それも昔暴れまくっていた竜に助けられるなんて、不安しか生まれない。嘘をつく事もできるが、それはプライドが許さないし、今更嘘を言ったところでバレた後が怖いから、真実だけを話そう。
「うん、私の事だよ。でも、安心して。その娘は傷付けないし、うちに来れば──」
「た、助けてください!」
「⋯⋯あれっ?」
「わ、私と、アリエルをあなたの家に⋯⋯連れて行ってください!」
予想だにしなかった答えに私は久しぶりに自分が驚き狼狽えてるのを実感する。
「お、お願いです⋯⋯! 私達を⋯⋯!」
白い肌のエルフの必死な姿に、理由は気にならず。ただ私はその答えに頷いた。
用語解説その17
『種族特徴:自然治癒』
自然の中に居れば自然治癒力が高まる種族特徴。水ならば水の中にいれば、炎ならば炎の中にいれば再生能力(大)並の再生能力を得る。なお、再生能力と重複するが、自然治癒がある種族は総じて再生能力のランクが低い。
オルニス「雛なオルニスに自然治癒はありませんが、竜の中には自然治癒を持つ者が居るらしいです!」
カノン「流石竜。チート過ぎだから人間にも何か欲しい」
ティラノス「ちなみに私も持ってない。けど、再生能力も自然治癒も持つ竜は、自分の身を疎かにする。だから、幾らどっちを持っていても、最終的には早死する」