最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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第6章 襲撃者の吸血鬼
竜の生活その22「吸血鬼の襲撃者」


 まだ朝だと言うのに、明らかに不自然な真っ黒な雲が天を覆う。霧も相まって、私の家周辺は闇に覆われる。暗視持ちの私でさえ、霧に包まれた外側を視認する事は難しいほどだ。

 

 そんな中、上空に僅かな群れを見つけた。何かがこっちに向かって飛んできてる。得体の知れない何か⋯⋯いや。何かは分からなくとも、あの統率の取れた動き方。それに、こちらに来るという事で意志を持ってる事は分かる。なら、魔獣の類ではない、明らかな意志を持った群れ。こんな辺鄙(へんぴ)な場所に来る理由なんて1つしか考えられない。

 

 ──狙いは私か。

 

「⋯⋯オルニス。カノン達をお願い。家の中に案内してあげて」

「ティラノスお姉様はどうするのです!?」

「見てくる。多分⋯⋯私の客だから」

「ま、待ってください!」

 

 そう言って飛び立とうとしたその時、オルニスに腕を掴まれた。振り返って見たその顔は、私の事を心配してるように見えた。それと本能的な部分からか、戦いたくてうずうずしてるようにも。

 

「オルニスも行きたいです! 暴れたいですっ!」

「だーめ。私もオルニスも行ったら、誰もこの家を守れない。だから、戦力は分散した方がいい。家に近付く敵が居たら、追い払っていいから。⋯⋯もちろん、その時は竜化してね?」

「むぅ⋯⋯分かりました。そうします⋯⋯。けど、絶対暴れ足りないと思います。これが終わったら一緒に遊んでくださいねっ!」

「⋯⋯分かった」

 

 半ば諦めた口調で言い放つ。竜が「遊ぶ」と口にすれば、その大半は過激な遊びだ。オルニスの場合まだ若いからどの遊びなのかは分からないが、怪我をする覚悟はしておこう。いや、するのはさせる方の覚悟か。

 

「オルニス、頼んだよ」

「はいはい、分かってますよー!」

 

 若干怒った口調で返すも、オルニスはしっかりと行動してくれた。すぐさま竜となって湖に飛んで近付くと、カノン達を摘み取り、その背に乗せて家へと向かった。それを見送るとすぐに私も人の姿のまま飛び立ち、群れへと向かう。

 

 

 

 

 

 群れに近付くにつれてその姿が鮮明に映る。群れを率いるリーダー的な人物は青い髪の可憐な少女に見える。が、それ以外の全ては生き物とは思えないほどやつれ、最早、人の形をした何かと言っても差し支えない。それらは人間の形をしてはいるものの、どれもが腐食し、肉は爛れ、骨が見え隠れしてる。

 

「久しいなぁ、暴竜⋯⋯! 殺しに来てやったぞ! 数百年の恨みを持ってなぁ!」

 

 観察してると、一歩前にリーダーらしき少女が出てきた。そのウェーブがかかった青い髪はまるで深い海のようだが、真っ赤な瞳は燃え盛る炎のようで髪とは対照的。人間でない事を表す大きな蝙蝠の翼。貴族なのか様々な宝石の装飾を施された黒っぽいドレスを身に纏う。そして、どんな意図があるのか白いヒラヒラが多く付いてる。

 

 全く知らない顔なのに、とても憎々しげに名前を呼ばれた。今でこそ平和で無害に暮らしてても、昔は暴虐の限りを尽くした。家を破壊したり、村を潰したり、国を壊滅させたり。とりあえず壊すのが好きな歳だったから、いつどこで恨みを買っていてもおかしくない。

 

「⋯⋯貴女は?」

「なっ!? わ、忘れたというのか!? この吸血鬼、ラミアス様の事を!?」

 

 やばい、名前を聞いても思い出せない。吸血鬼に喧嘩を売った覚えもないし、暴竜なんて称号は名乗れば幾らでも居るだろうし、本格的に人違い案件が出始めてる。もし人違いなら早めに帰ってもらった方がいいかな。相手も暇じゃないと思うから。

 

「ごめん、知らない。多分、人違いだろうから、もう帰ってくれない? 私も暇じゃないし」

「なっ!? き、貴様、その尻尾と翼は見間違えないからな! ティラノスだろ!? というかそうであってくれ! わざわざここまで来るのにも時間と魔力を浪費してるんだからな!?」

 

 半ば願いにも聞こえる。哀れみやら同情をしてしまうが、そこは私が感知する必要はない部分だ。このまま勘違いだった、という事で帰そう。私の平穏のためにも。

 

「私はファフニールだよ。ティラノスなんて名前は知らないし、私は竜じゃなくてただの魔族。偶然その竜と似てるんだね。たまにこういう事あるから、気病む事はないよ」

「⋯⋯そうか。ティラノスじゃないのか⋯⋯。なら、ついでだ。さっきお前以外にも人が居たな? お前諸共吸血して、我が軍の贄としよう!」

 

 どっちにせよこうなるのかよ。内心、素直にそう思った私であった。




用語解説その22
『神話』
神イデアとその使いやイデアが生み出したとされる人間の伝承。幾つもの神話が語り継がれるが、一貫してその内容は様々な習慣や禁忌の成り立ちである。中にはヒーロー的存在や、神話の武器と称される七つの道具が出てきたりと、真相が謎のものも多い。

カノン「ティラノスも神話に出てくるよね? イデア様とよく戦っては負けてるけど⋯⋯」
ティラ「本当はいつも勝ってた。人間達が都合のいいように改変してるだけ。というかあんな変態に負けるわけないし」
オルニス「イデアの話になるといつも怒りますよね、ティラノスお姉様って」
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