最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
吸血鬼との勝敗は10分にも満たない時間で決した。眷属達は身を滅ぼすような無鉄砲な攻撃を繰り返すも、それが私に届く事はなく、無傷で勝利を納めた。
天が霧と厚い黒雲で覆われる中、地面には燃え尽きた眷属の死体で溢れていた。その死体の山の上で、眷属達とは真逆で無傷のまま膝から崩れ落ちる女性がいた。
「なんで⋯⋯。こんなにも、竜でもない貴様と⋯⋯! こんなにも
青髪の吸血鬼、ラミアスは燃え落ちた眷属達を見つめて嘆く。私との力の差に唖然とし、愕然とし、先ほどの威勢もどこかへ消えてしまった。それほどの圧勝だった。
「⋯⋯眷属の手入れを怠っているから。それに数だけの死者に、私は倒せないし、倒されるつもりもない。残りはラミアス、貴女だけ。降伏するなら受け入れるし、それでも私を殺したいと思うなら、気が済むまで好きにすればいい。私は絶対に、貴女を殺さないから」
ラミアスと同じ場所に、地に降り立つ。降伏を願い、彼女に手を差し伸べた。
「⋯⋯眷属は殺して、か?」
「眷属は既に死に絶えた死者。生きてはいない。なら、安らかに眠らせるのが強き者の役目」
「ふんっ、屁理屈を言いおって。⋯⋯最早残ったのは私だけ、か。⋯⋯降伏するくらいなら、死ぬ覚悟で貴様を⋯⋯!」
未だにその目は諦めきれずに、復讐の炎で燃えている。手のつけようがないほど煮えたぎるそれは、一歩間違えたら恐ろしい事になるのは明白だ。全く関係ない人に手を出す、なんて事もするかもしれない。私が彼女の恨みの発端となったのだから、それだけは避けたい。私を理由に、誰かが傷付くのはもう見たくない。
「殺したいなら好きにしていい。でも、今の私は殺さないし、殺せないよ?」
「はぁ!? なら、私をどうすると言うのだ!? 殺さねば貴様を殺すぞ! もし生き地獄を味わえと言うのなら、私はここで死んだ方が──」
「そんな事言っちゃダメ。死んだら、貴女の家族は悲しむよ? 仇が目の前に居るのに。それに今まで頑張って生きていたのに、それじゃあ無駄死にになるよ?」
ラミアスは小馬鹿にするように鼻で笑う。私が言っちゃなんだけど、その気持ちはよく分かる。私のせいで家族が死んだのだから、どの口が言うのだと言いたくなるのもよく分かる。だけど、それでも無駄死にはダメだと思う。無意味だし、命が勿体ない。命は生きてるからこそ、今に意味を持てる。
「殺すか殺されるか、どちらかだ。貴様を殺せないなら私の命に意味は無い。貴様に殺る気がないなら、貴様の家族を⋯⋯!」
「それはダメ。そうしたら昔の私と同じになっちゃうよ? それでもいいの?」
「おまっ⋯⋯!? き、貴様がそれを言うか!?」
とうとう口にまで出されてしまった。相手は復讐者だけど、なんだか会話してるとそこまで悪い娘には思えない。⋯⋯あいや。復讐云々は全部私のせいか。
「というか、貴様⋯⋯さっきから話を聞いてればかなりわがままだな!?」
「竜は元来そういう種族。傲慢せずして竜に非ず。種族に誇りを持たない竜は竜じゃない」
「持ってるのは誇りではなく傲慢さだけだけどな!?」
失礼な。誰がどう聞こうと私に傲慢さなんて感じるはずがない。ただ自分の思い描いた結果にしたいだけだし、相手にも傷付いてほしくないだけなのに。風評被害にも程がある。
「ごほんっ。貴様と話すと乱されるぞ⋯⋯。で、結局どちらも納得する結果が出せぬなら、貴様の家族に手を出し、逆鱗に触れるしかあるまいなぁ?」
ラミアスは挑発じみた笑みを浮かべる。誘ってるかのような嘲笑の意を感じる。が、挑発と言ってもそれが嘘偽りがない事は容易に理解できた。
「それ私納得できないから」
「貴様の意見なんぞ聞いてないぞ」
「むぅ⋯⋯。なら、こうしよう。私を殺していい代わりに、家族には手を出さない。これなら文句無いよね?」
「⋯⋯はぁ?」
ラミアスはその赤い目をぱちぱちさせ、頭を傾ける。どうやら一度聞いただけでは納得も理解もできてないようだ。
「私を殺してもいい。代わりに家族には手を出さない。危害も加えちゃダメだし、迷惑をかけてもダメ。おーけー?」
「それは分かった。しかし、さっきまでと意見が一変してるぞ? まぁ、いいか。私に殺されると言うのなら、私は文句無い」
「なら、決まりだね。吸血鬼は約束事は破れないんだよね? 約束しよ? ほら、指切りげんまん」
そう言って改めて手を差し伸べるも、ラミアスはその手を払い除けた。まさか約束を反故にする気かと思ったが、ラミアスは首を振って否定の意を示す。
「貴様と手を重ねたくない。さっきの条件をもう一度口にしろ。それを承諾するだけでも私にとっては反故にできない
決意の篭った瞳だ。私と同じ色で妙な親近感が湧いてか、それとも素直に破る気がないのか、その瞳に嘘があるとは思えない。
「⋯⋯分かった。『私を殺していい。代わりに、私の家族には危害を加えず、迷惑をかけない』。それでいいね?」
「ああ、その契約、承諾しよう。これは一種の制約。破ろうとしても私には破れぬ契約だ。⋯⋯というわけだ。さて、私に殺され──」
「えっ? 誰も今すぐ殺されるとは言ってないけど?」
「はぁ? ⋯⋯あっ」
単純な娘でよかった。でも、私は悪くない。私への復讐という目先の目的に囚われ、内容をしっかり把握しなかったラミアスの落ち度だ。だから、私は騙してないし、むしろ殺される契約してあげたのだから、感謝してほしいくらいだ。
「と、取り消しだ! 今の約束は無かった事に⋯⋯!」
「できないでしょ? 契約は反故にできないから。でも、貴女が死ぬまでに、殺されてあげるよ。それまで精一杯生きて、その生を謳歌しようね。それと家がないなら私の家に空き部屋があるから使っていいよ」
「⋯⋯だ、騙された! こ、このペテン師め⋯⋯っ!」
目尻に涙が浮かんでる。よっぽど悔しかったらしい。10代半ばの少女という見た目相応の反応だ。何百年か生きていても、中身も外見もそう違いはないらしい。
「違うよ。私は偉大な竜。ペテン師なんかと一緒にしないで。で、部屋はどうするの? 一緒の家なら寝込みを襲えるかも」
「っ⋯⋯! くぅ⋯⋯っ!! し、仕方あるまい! 貴様を殺すためだ。その要望受けよう⋯⋯」
とてつもなく嫌々だけど、素直でよかった。これで彼女、ラミアスも──
「──これからは
「⋯⋯⋯⋯。も、もしやと思うが、また何か嵌めたな⋯⋯?」
流石にここまで来ればラミアスも察しがつくらしい。彼女の言う通りだけど、別に嵌めたつもりはない。大半を占めるのはただの善意であり、ちょっと少しだけしか嵌めたつもりはない。
「いいや。ただ、今は私がこの家を守り養ってるようなものだから、寝込みを襲い私の他の家族に『迷惑をかける事』はできない。そして、貴女は部屋を借りる事を承諾して無事家族入りしたわけだから、自害するという『私の家族に危害を加える行為』もできない。というわけだ。その寿命が尽きるまで。末永く、命を大切にしようね」
そこまで言って、ようやくと言っていいのだろうか。自分の境遇を、立場を、理解したようだ。ラミアスの恨めしそうな赤い目には涙を浮かべ、その口は悔しそうに歯ぎしりをしていた。
「もう家族が増えるのも逆に楽しくなってきた。ラミアス、無理矢理感はあるけど、よろしくね。これからみんなを紹介するから、一緒に来て」
「く、くぅー⋯⋯っ!」
だけど、今の私はラミアスのそんな顔を見ても、後悔も反省もしてない。1つの生きるべき命を救えたと考えれば、自分の行為も悪いとは思わなかったから。それこそ、傲慢かもしれないが。
用語解説その24
『ハーフ』
別種族間の子供を俗にハーフと呼ぶ。ハーフは親である両種族の種族特徴を一部、または全て受け継ぐと言われている。ハーフ同士で子を成せばかなりの低確率で全ての種族特徴を受け継ぐとも言われてる。しかし、その数は少なく、実例はまだ少ない。
ティラノス「まずハーフを見ない」
カノン「だよね。見た目じゃ分かりにくい人もいそうだし⋯⋯。人間とのハーフなら違いはなさそうだしねー」
オルニス「竜は純血が好まれるので、竜でハーフは酷い竜生を進むと思うのです⋯⋯。だから少ないのだと思います、竜に関しては」