最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
ラミアスとの戦いが終わったすぐ後に私はみんなを1階のリビングに集めた。最初はなんの事かと思ってたみんなも、ラミアスを見るなりすぐに理解してくれたようだった。戦いが終わったという事。それと新たな家族が増える事を。
「紹介するね。この娘は吸血鬼のラミアス。ラミアス。右から順にカノン、ディニエル、アリエル。そして、オルニス。みんな仲良くね」
「よ、よろしく⋯⋯」
ラミアスは苦虫を噛み潰したような笑顔で挨拶を交わす。私を除いたその場の全員が現状を理解できてないのか、それとも理解したくないのか。呆気に取られた顔で無言のまま突っ立っていた。
「やっぱり性に合わない! 普通に考えておかしいだろ!? さっきまで敵だった奴といきなり仲良くしろとか馬鹿げてる! できるはずがない!!」
ラミアスは無言の重圧に耐え切れず、怒りに任せて怒鳴り散らす。いや、正確に言えば恥ずかしさに耐え切れずに誤魔化してるように見える。眷属以外と接した事がないから、人見知りを発揮してるようだ。
「あの、ティラノスお姉様? 説明お願いします」
「えーっと⋯⋯その⋯⋯」
未来視を持ってない私でも分かる。殺していい事を条件に家族に手を出さないという契約をした、なんて言えば話が拗れる未来しか見えない。特にオルニス。彼女が知れば、また新たな火種が生まれる事になる。嘘はつけない。オルニスに下手な嘘をついても
「取り引きをしたのだ」
私が言い淀んでいると、ラミアスが口を開いた。
「取り引き?」
「ああ。貴様ら家族に手を出さん代わりに、償いをする。その1つとして、家を壊した責任を取って部屋を提供してくれたのだ」
「ふーん⋯⋯なるほどです。理解しました」
どうやら空気を読む力は私よりも強いらしく、その場しのぎの嘘のはずが、意外と整合性があったお陰でオルニスも納得してくれた。内心は半信半疑でも、最悪の事態に発展する事はないだろうから、一応は大丈夫だろう。⋯⋯多分。
「⋯⋯あのさ。ティラノスって結構ズレてるよね。倫理観とかその他諸々。殺したくないから、という結果なんだろうけど」
「それって良い奴じゃねーか。要はアタシらを助けてくれた時と同じだろ?」
「な、何が同じかは分かりませんけど⋯⋯その、優しいですよね、ティラノス様って⋯⋯」
「優しい? ⋯⋯私が?」
今まであまり言われた事がないから、なんだかくすぐったい気持ちになる。人間を、その他様々な種族を殺し尽くし、破壊し尽くした。そんな私が、今では優しいと言われるとは。時代も変わったものだ。数百年前なら、私の事を優しいなんて言えば、過激派に反逆者として打首の刑に処されてもおかしくなかった。
「オルニスもそう思いますよ!」
「⋯⋯私は思わんがな」
「むっ⋯⋯」
「オルニス、ステイステイ。怒りが顔に出てる。喧嘩しちゃダメだからね?」
ここで喧嘩されたら家が壊れかねない。ラミアスの契約にある『家族に危害を加えない』がどこまでの範囲なのか分からないけど、傷を加えなければいいという感覚で痛め付ける事は可能かもしれない。それに、最悪の場合家に八つ当たりする事はできるだろうから、そうするかもしれない。
「と、とりあえず部屋を見に行きませんか? ラミアス様もここに住むなら、じ、自分の部屋を確認した方が⋯⋯」
「ああ、そうだな。⋯⋯貴様は竜と違って良い奴みたいだな。ディニエル、と言ったか? 案内してくれ」
「え、ほへ? わ、分かりました⋯⋯っ」
「姉さんだけじゃ心配だからアタシも行くぞー! ラミアス! アタシに付いてこいー!」
「馴れ馴れしいなっ!? 私の事はラミアス様と呼べ!」
2人が一緒でよかった。この調子ならラミアスも意外と早く慣れてくれるかもしれない。ただ、今も尚不満を顔に出してるオルニスとの関係はどうなるか分かったものじゃないけど。
「⋯⋯ティラノスお姉様。オルニスはあいつの事好かないです」
ラミアスが2階に上がったと同時に、案の定オルニスがそう口にした。
「ごめんね、オルニス。⋯⋯でも、今回の最適化はこれしか思い付かなかった。誰も死なない最適化は⋯⋯」
「いえ。ティラノスお姉様の判断に口を出してるわけじゃないですよ。ただ、あいつが好かないだけです。傲慢で、偉そうですから。⋯⋯今はマシですけど、私の村にも似た人がいました。今はマシですけど」
余程重要な事なのか同じ言葉を二度も繰り返す。オルニスの村に居るとなれば、その人も竜なのだろう。私が言うのもなんだけど、竜なんて傲慢で偉そうな生き物なのに、オルニスにそう言われるとは余程の者なのか。地味に気になる。
「でも、ラミアスってティラノスの事相当嫌ってるよね。⋯⋯知ってる人と知らない人⋯⋯その違いなのかな。やっぱり」
「うん、そうだろうね。昔の私を知ってれば、多分カノンも考え方は違ってたと思う。最初出会った時みたいにね。だからこそ、今出会えて、一緒に居れてよかった。⋯⋯今言うのも少し違うかもしれない。けど、言うね。これからもよろしくね。もちろんオルニスも、ね」
私の言葉に、2人とも元気な声で頷いてくれた。昔の話を知ってる2人でも、私を受け入れてくれた。許してくれた。だからこそ、いつかラミアスとも⋯⋯。心のうちで、私は切実にそう願う。私の罪を、少しでも償いたいがために。
用語解説その25
『エウロパ大陸』
イデア大陸の南東に位置する巨大な大陸。人族と魔族と呼ばれる2つの種族が中心の、大きな国が対立していた。現在は和平条約を結び、平和を維持してるという。大陸のマナは少なく、魔術がイデアよりも劣り遅れている。人族、魔族共に皇帝が存在する。また、魔物が蔓延るとも。
ティラ「一度だけ、見に行った事がある。マナが薄すぎて、私には合わなかった」
カノン「教科書か何かで見た覚えがあるね。あんまり覚えてないけど⋯⋯」
ラミアス「魔族側の皇帝は吸血鬼が多いらしいぞ! やはり最強は吸血鬼だな!」
ティラ「また争いになるから一旦帰ろうね」