最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
ラミアスが来てからうちは賑やかに──いや違うな。騒がしくなった。最初は口数も少なく怒ってばかりいたラミアスは2、3日もすれば家族に馴染んでいた。というかマイペースな私達に感化されてるようだった。1日に1回か2回はオルニスと衝突し、喧嘩してるけど、それ以外は思った以上に大人しい。私の事を恨んでも嫌ってる節はなく、比較的友好的に接してくれてる。
「おい暴竜ティラ! 紅茶はないのか! 紅茶はぁ!」
高圧的でうるさいし、偉そうだけど、野蛮な事は全くしないからまだ良い方だと思う。私を恨んでるのにあまりにも良すぎたから、私の知らない場所で家族に陰湿なイジメでもしてるのではと考えた時もあった。しかし、その節もないから根っからの真面目なのだろう。その根が、偉そうでうるさい性格を形作ってるみたいだけど。
「昨日貴様が飲んでいたから確実にあるだろう?」
「はぁ⋯⋯朝からうるさいよ。紅茶の葉は棚にある。でも、自分で取りなよ。あと今は閑竜ね」
リビングでくつろいでるところに、突然2階から降りてきて紅茶を出せと言われても困るし、面倒だから出したいとも思えない。
「むぅ⋯⋯ディニエルよ! 紅茶を頼む! この竜は私の言う事を聞いてくれないのだ!」
「は、はい!」
早起きしてみんなの分の料理を作っていたディニエルに呼びかける。ディニエルは頼まれると断れない性格なのか、すぐさま棚へと向かった。元奴隷だから命令されるのに慣れてしまってるのかもしれない。もしくは、元からそんな性格なのか。前者ならあまり頼み事をしない方がいい気がする。奴隷時代の記憶を甦させる事になるかもしれないからだ、逆に後者なら、それは仕方ないと割り切るしかない。それがその人の、ディニエルの性格なのだから。
「むしろなんで聞くと思った。⋯⋯ラミアス、もう慣れたみたいだね。この暮らしに」
「ん? ああ、まあな⋯⋯」
ディニエルが行き、まだ他の3人が起きず2人っきりになった時に話しかけると、ラミアスは気恥しそうに目を逸らした。最初は嫌われていたが、今では普通に会話できるほど仲良くなった。
「貴様が居なければより良い生活だったのだがなぁ⋯⋯」
仲良く、の基準が他人よりも低いのは致し方あるまい。私は吸血鬼一族の仇だから。
「⋯⋯生きてて良かったでしょ? 生きてる方が絶対に楽しい。私は一度だけ死のうとして、今はそれを後悔してるから」
「なっ!? は、初めて聞いたぞ、そんな話! 面白そうだ! く、詳しく聞きたい⋯⋯!」
「変なところに興味持つんだね、ラミアスって⋯⋯。楽しい話じゃないよ」
もちろん、それは聞く人にとっても、私にとっても、だ。
「⋯⋯はぁ。ただあまりにもウザすぎる相手がいて、そいつと会わないために、ね。でも、無理だった」
「ほほぅ⋯⋯。竜でもやはり死は怖いという事か。だから、私と契約した時も──」
「ううん、そうじゃない。死ねばその相手とずっと一緒にいるハメになると知ったから」
何もかも、相手に捧げる事になってしまう。私が何百、何千年生きるかは知らないが、アイツにだけはこの命を捧げたくない。戦闘も戦争も嫌いになった今は特に。もし死ねば、それこそ文字通り戦いに身を投じる事になる。相手が常に決まっていて、終わりのない戦いに。
「⋯⋯? なんだ、その相手は。ふっ、神か何かか?」
冗談だと思われてるのだろう。ラミアスは鼻で笑って、冗談交じりにそう口にする。
「ふふん。まあね」
「ら、ラミアス様っ、お持ちしましたっ!」
「おぉ! いい香りの紅茶だ! 流石ディニエル! 他の奴とは違うなっ! 使える奴だっ!!」
私との会話も何のその。ディニエルが紅茶を持ってきたと同時に、嬉しそうに喜び、10代半ばという見た目相応のはしゃぎ方をする。
「⋯⋯昔の事は、もういいか」
今のその状況を見ていると、昔の事なんかどうでもよくなってくる。平和で平穏な、ゆっくりゆったりできる日々。もうあの存在が現れる事はないはずだから、私は死ぬまで⋯⋯必死に行き続けよう。今日改めて、私はそう決心した。
用語解説その26
『神話の武具』
イデアの神話に登場する七つの武具。どれも危険な力を持ち、どれか一つでも手にした者は国一つを支配できると言われてる。ただし、どれ一つとして一緒に使われた事はなく、それぞれが一つの伝説を残す。
ティラ「どれか1つでも手にすれば国1つを落とす事ができる。だから、これらの武具はいずれもどこかに封印されてるらしい」
ラミアス「ほぅ⋯⋯欲しいな、それ」
オルニス「ティラノスお姉様に手を出すつもりですね? 絶対に許しませんから」
ティラ「頼むからここで喧嘩しないで」