最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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竜の生活その27「吸血鬼と魔術」

「なー、カノンー。それって楽しいのか?」

 

 火の玉を手のひらで転がすカノンに、アリエルはそう尋ねる。今までそれを見た事がないのか、興味津々に目を光らせていた。思えばカノンも最初に比べて上達したものだ。最初こそ炎を魔術を真っ直ぐに飛ばす事しかできなかった。それが今では、拳サイズの火を操るまでに成長したのだから。人間は真似る事が得意と聞くけど、本当にそうらしい。もちろん相性もあったんだろうけど。

 

「これ魔術の訓練だよ? でも、楽しいかどうかなら⋯⋯楽しいかな。ティラノスに何かを教えてもらう事って、魔術訓練くらいしかないからね。ティラノスってば誰よりも長生きしてるくせに、世間知らずだし、家事も適当だし」

「それは本人が居ないところで話してくれないかな。心にくる」

 

 事実なのは間違いないけど、私としてもずっと戦ってたからという理由がある。戦いの最中に家事をしようとは思わなかった。それに、今でこそ家があるが、その時は家なんて持ってなかった。

 

「ああ、魔術かー⋯⋯。アタシ1つ学んだ事ないから全く分かんないだよなー」

「えっ、そうなの? エルフって魔術が得意だから、色々魔術を使うイメージがあった」

「アタシらの村は習いたいヤツだけが街に行って習ってたからな。それに、興味はあっても村に働き手が必要だったし⋯⋯。なー、ティラ。アタシにも教えてくれないかー?」

 

 いい機会だ。この機会に護身術として、魔術の1つや2つ、教えた方がいいだろう。この森も全く危険があるというわけでもないしね。というか、意外と危険な部類に入るのではないだろうか、この森も。魔猪は竜なら狩りの対象だが、人間なら捕食者と、全く逆の対象になる。

 

「いいよ。身を守る術くらいは教えてあげる。どうせならディニエルも⋯⋯」

「ちょっと待ったぁ!」

「⋯⋯あの、ラミアス? 急にどうしたの?」

 

 一体いつから聞いてたのか、ラミアスが突然家の中から出て叫ぶ。どうしてこうも横から入るのが好きなのか。殺せない私への嫌がらせか、そうなのか。

 

「エルフといえば風だろう! 火なんか似合わんぞ!」

「いや、火を使うエルフも居ると思うから、似合う似合わないで⋯⋯」

「そうですよ! 使うなら水です! エルフなら断固水を使うべきです! エルフと竜のハーフの子も水を使ってました!」

「オルニスまで⋯⋯」

 

 仲が決して良いとは言えない2人が揃った。これは波乱の予感。口喧嘩程度なら「喧嘩するほど仲がいい」理論で仲裁する気はないけど、もし殴り合いとかになれば、私が仲裁する事になる。それは面倒だ。とても面倒。まぁ、危害を加える事ができなわけだし、流石に殴り合いの喧嘩に発展する事はないと思うけど。

 

「オルニスよ、風と水なら風の方が汎用性に長けてるぞ?」

「どっちも使えるオルニスが言いますけど、防衛なら水が一番です。風は冷たくするしかできません」

「それは貴様限定であろう? 水なんかよりも風の方が使いやすいし強い。風を使えば雲を動かしたり、他人を浮かせる事も可能だ」

 

 ラミアスが来た時、黒雲が天を覆ったり、翼がない眷属が浮いたりしてたのはその魔術のせいか。ずっと疑問に思ってたのに聞き忘れていたから、今知れてよかった。

 

「⋯⋯へぇ、試してみますか?」

「いいぞ。怪我したいならなぁ?」

「ストーップ!」

 

 険悪な空気になりつつあった。その2人の間に、慌てて私が間に入るよりも早く、カノンが割って入った。

 

「ここで喧嘩されたらみんな困るからやめてー。それに2人が傷付く姿も見たくないからね?」

「⋯⋯ふん。心配せずとも危害を加える事はできん。それで、アリエルよ。どちらを使いたいのだ?」

「もちろん水ですよね!」

「あのさ、どっちも使うという選択肢はないのか?」

 

 その一言で全員が黙り込む。いや、当たり前っちゃ当たり前な選択肢だが、今求められてるのはそういう事じゃない。と言っても、それを強制する事はできない。それを理解してるからこそ、2人は黙ってしまったのだろう。

 

「そ、それでもいいが⋯⋯」

「オルニスもいいですよ! どちらも使えるオルニスが教えた方がいいですよね!」

「こらこら。また喧嘩になるからそこまでだよ。とりあえずディニエル呼んできて。どうせ教えるなら、彼女も一緒がいい。それから、色々決めていこうか」

 

 そう言って2人を丸め込ませ、その場を静める。これからは魔術訓練もより一層、忙しく大変になりそうだ。心の中で若干後悔しながら、そう思った。




用語解説その27
『深層魔力』
別名イド。例えるなら魔力の潜在能力。普段、無意識に使わない魔力。無意識ゆえに知覚しても行使することは難しい。例え使えたとしても、無意識に使わない理由が生命活動維持のためなので危険極まりない。

ティラ「戦時中は使う人も珍しくなかった。もちろん、使った人は例外なく死んでしまったけど」
カノン「それほど必死だったんだね、みんな⋯⋯。ん? ところで戦時中って?」
ティラ「それはまた、いつか話すね」
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