最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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第7章 閑竜達の日常──ショッピング編
竜の生活その28「竜のお遊び」


『はぁ、はぁ⋯⋯っ』

 

 有翼二足の銀竜が目の前で、肩で息をする。身体中あちこちに引っかき傷を付け、その銀色の身体は所々赤く染まる。対するこちらは元々赤い鱗だったお陰もあり、恐らくはオルニスほど目立つ傷はないだろう。微妙に痛む箇所は幾つかあるけど。

 

 私とオルニスは竜化して竜特有の『お遊び』をしていた。遊びと言ってもじゃれ合いの延長、殴り合いとかに近い。要はただの喧嘩だ。喧嘩と言っても争ってるわけでなく、本当にただのじゃれ合いである。それが竜になって、ちょっと暴力的になっただけ。と言えば、やはり喧嘩か。

 

『もうやめない? この姿だと手加減できないし⋯⋯するつもりもないよ。竜として、自分より弱い竜に負けてあげるつもりはないから』

 

 何故こんな危ない遊びをしてるか。何故反省して自重してるはずの竜の姿に変わってるのか。それは以前交わした約束を果たすためだった。ラミアスが襲撃した時にオルニスと約束した『お遊び』が、今のこれだ。しばらくは掃除やら狩りやらで忙しかったが、ようやく時間ができたので遊んでいる。

 

 もちろん、普通だと大きさが違いすぎて話にならないから、公平性を保つためにわざわざ魔術まで使いオルニスと同程度の大きさになってる。詳しく言えば体長40mくらいか。いつもより小さいから、新鮮さがある。

 

『や、やめなくて⋯⋯いいですよっ! もっと遊びたいですからっ!』

『好きだね。やっぱり竜だから?』

『ティラノスお姉様の弟子だからですっ!』

 

 オルニスは勢いに身を任せ、ふらふらになりながらも脚を突き出し突進する。敢えて受ける事もできるが、遊びでも戦いなら容赦しない。それが竜の流儀であり、破れない信条だ。

 

『なるほど。じゃあ、落ちよう』

『へ? あ、待っ──』

 

 突き出された脚を腕で受け止め、そのまま掴むと地に投げ飛ばす。すかさず仰向けになったオルニスの肩を押さえ付け、全体重をかけてのしかかる。その後、威圧しようと文字通り目と鼻の先まで顔を近付けた。

 

『待ったはなし。竜ならこれくらいで文句言わない』

『ぐるぅぅぅ⋯⋯オルニスを問答無用で投げ飛ばしたのはティラノスお姉様で3人目です⋯⋯』

『普通は問答無用。さて、降伏する?』

『⋯⋯この状況を覆すには、本気でやり合うしかないのでやめときます。それに本気でやってもまだティラノスお姉様には敵いませんから』

 

 悔しそうに、それでもやり切ったという達成感を感じるその声に、私は人へと変わる事で応えた。むしろ本気でやって負けたら面目がつかないし、私が生きてきた年月はなんだったのかと疑問になる。だからこそ、今ここで終わる事が最適だ。それをオルニスも理解してるようで、彼女も人へと変わり私に応答を返してくれた。

 

「⋯⋯遠くから見てて、って言われたから家で見てたけど、竜の遊びって過激だね。オルニスは怪我大丈夫? 竜の時はいっぱい怪我してたのに、今はそうでもないみたいだけど⋯⋯治した方がいいなら、私がするよ?」

「大丈夫です! 本気じゃないので軽傷ですし、軽い傷はすぐ治せますから。ご心配ありがとうございますっ!」

「飽くまでも遊び。じゃれ合いの延長だからそこまで心配しなくていいよ」

 

 とは言ったものの、このじゃれ合いがいつしか本気になって、殺し合いのような喧嘩に発展した竜達を何度か見た事があるから、一概に大丈夫とは言えないけど。私とオルニスくらい年の差が離れてたら、そんな心配もないと思うが。

 

「そう⋯⋯? 見るからに過激で血を流してた気がするけど」

「オルニスなら凍らせて出血を止めるくらいできるから大丈夫。⋯⋯だよね?」

 

 言ってから心配になって確認する。と、頷きながら「大丈夫です!」という声が返ってきた。傍から見れば言わせてるように見られるかもしれないけど、彼女が大丈夫と言うなら大丈夫だ。そもそもオルニスは竜なのだから、これくらいで大事に至るわけがない。

 

「ほう、やはり暴竜ティラノスの方が強いか。私よりもオルニスの方が劣るから当然であろうがなぁ?」

 

 家から出てくるなり、ラミアスは尊大な態度でオルニスを煽る。でも、正直な話。今はラミアスの方が強くても、数十年も経てばオルニスの方が強くなると思う。それくらいのポテンシャルは秘めてるし、私に弟子入りするほど向上心も強い。

 

「ラミアス、それティラノスよりも自分の方が弱いって認めちゃってる⋯⋯」

「それ言っちゃダメですよ。滑稽で面白かったですのに」

「煽らない煽らない」

 

 煽れば喧嘩になると知ってか知らずか煽り返す。この子達、年齢が数百も違うのに精神年齢は同じくらいなのか。それとも、ある一定まで行けば精神年齢が上がらないのか。

 

「み、皆さん! ご飯ができましたっ!」

「今日はアタシ姉さんを手伝ったんだぜー!」

「おぉ! 丁度腹が空いてたところだ!」

 

 ラミアスの言う通り、丁度いいタイミングで夕食を作っていた2人が家から出てきた。腹も膨れば少しは2人の仲もマシになるだろう。

 

「さ、オルニスも戦い疲れてお腹空いたでしょ? 行こ?」

「はい、分かりました!」

「⋯⋯ティラノスには従順だね、オルニスは」

 

 カノンの呆れた声が背後から聞こえる。私も「そうだね」と半ば諦めた声で返し、家へと帰った。




用語解説その29
『多重詠唱』
同じ魔術を幾つも同時に発動し、重ねる事で威力や効力を増す詠唱。名称は二重から十までで「ドゥエット→トリオ→カルテット→クインテット→セクステット→セプテット→オクテット→ノネット→デクテット」。名称が地域によって変わるらしい。

ラミアス「我が一族はセプテット⋯⋯つまりは七重を使えれば一流だという風潮があったな。もちろん私は使えるぞ」
ディニエル「だ、誰でも使えるものなんですか⋯⋯?」
ティラ「そうでもないよ。人によって得意不得意はあるし、そもそも魔力の消費が激しいからこれ使うよりは普通に使った方が効率いい、なんて人も多いから」
カノン「ちなみに私は普通に使う派だね!!」
ティラ「悲しいカミングアウトだね⋯⋯」
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