最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
竜の生活その3「人間との出会い」
「⋯⋯酷いね。
私が着いた頃には時すでに遅し。叫び声が上がった場所は、人間の無残な死体が複数転がってた。
見る限りだと、刃物や魔法の傷跡は無い。腹が潰れてたり、手足や首が変な方向に曲がってるから、多分魔猪に殺られたのかな。私を狩ろうと森に入ったのはいいものの、その途中で森に棲む魔獣に殺される。因果応報だけど、この子達は本当に可哀想だ。
みんなこうなる事は分かってるはずなのに、こうして人を送り込む。ある意味ただ処刑するよりも酷い。人間達は残虐な奴らが多いのかな。
人間達は自分達が邪魔だと感じた者を、自分の手を汚さずに殺すため、私が棲む森に送るのだ。こんな事を何年も何十年も⋯⋯飽きずにするから恐ろしい。と言っても、私が昔暴れたせいで悪名が広まって、それを口実にされてるからなのだが。だから、少なからず原因は私にもあるという事だ。
「イヤァァァァ!」
再び大きな声が森の中に響き渡る。先ほどとは違い、女性の声のようだ。
本当は面倒事に巻き込まれたくない。それでも救える命があるなら、贖罪として助けるのもたまには良いだろう。別に神が見てるわけでもないし、これだけの事で神は私を許してくれないだろうけど。それこそ、神と戦って勝たない限りは。
そんな事を考えながらも、私は再び声の聞こえた方角へと向かう。
「だ、だめ⋯⋯。魔力が⋯⋯」
「ぶふぉぉぉぉ!」
「⋯⋯うわぉ」
私が来た時、一際大きな魔猪に襲われてる赤い髪の少女の姿があった。魔力切れを起こして慌て、恐れ戦き、木を背に追い詰められている。
凄い光景に思わず声が出ちゃった。あの少女もまだまだ小さいというのに、こんな森に来るなんて。いや、背は私より高いけど。さて、魔猪が土を蹴って突進しようとしてるし、急いで止める必要がありそうだ。
「5匹目、ね」
魔術の図形を描き、魔猪に向けた指から光線を放つ。光線は横から魔猪の頭を貫き、遥か彼方へと消えていった。そして、貫かれた魔猪は音を立ててその場に倒れ込んだ。
「お終い。ねぇ、人間だよね? 大丈夫?」
「あ、あっ⋯⋯あぁ⋯⋯」
「⋯⋯あら」
私を見て安心したのか、少女はそのまま気絶してしまった。
見る限りだと傷らしいものは腹部に刺さった木の枝くらいだ。これだけで気絶する程弱い生き物でもないだろうし、魔力切れによる疲労か何かか。何れにせよ、このままここに置いてると、他の魔獣に食べられる。私が置いてきた魔猪の死骸も食べられてるかもしれないし、早く連れて帰るか。
「よいしょ、っと」
少女を背負い、尻尾で魔猪の死骸を掴み上げる。そのまま少女を当たらないよう、翼を広げて宙に浮くと、あまりの重さにバランスを崩しそうになった。が、すぐさま立て直して羽ばたく。
かなり重たいが、家までなら何とか運べそうだ。もちろん竜に戻ればこんな重さ、どうってことないけど。竜になれば、必要以上にこの人間を驚かせる事になる。多分、ほぼ確実に私を殺しに来た人間だろう。だから、あまり驚かすような真似はしたくない。まぁ、今こうして翼で飛んでるから、多少は驚かす事になるけど。
「⋯⋯それにしても、人間か。久しぶりに楽しい話が聞ければいいな」
思いを胸に、霧の蔓延る森を進んで家へと向かった。
用語解説その3
『魔霧の森』
大陸東側にある無名の山に囲まれた森の名前。山はそれ程険しくないが、魔獣と呼ばれるモノが多く棲み、尚且つ暴竜が棲むとされる故に、人間達がこの山や森に立ち入る事は無い。ティラノスが住む家付近を除けば常に高密度の魔力が漂い、霧のように見えるからこの名が付いた。高密度の魔力によって魔術が遮られるらしく、威力が低減するんだとか。
ちなみにティラノス家の周辺だけ木が無いのは、彼女が文字通り薙ぎ倒したせいらしい。
ティラ「この森に来たのは確か、2、300年くらい前だった。森の中心の木を一掃し、家を建てやすくして⋯⋯私だけの家を造らせた。たまに人間が来るけど、暮らしやすい森」