最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
暗闇の中、階段を下って着いた先は、大の大人が10人くらいしか入れない小さな広間。そこに一切の灯火はなく、私が行使する魔術『
目の前にある
「ねぇ、ティラノス。この壮大な扉⋯⋯なに?」
カノンは自分よりも大きな青銅色の両開き扉を見つめ、呆気に取られていた。
「オルニスもあまり見た事ないです。特にこの家の中では」
オルニスも同じく、表情には見せなくとも驚いてはいるようだった。そして、少しばかりの嫉妬心も感じる。オルニスの宝物は部屋の中とはいえ錠前1つ付けてるだけだから、妬む気持ちも分かる。
「見た目はこれでも鉄製。それもただの鉄じゃなく、酸化や脆弱、衝撃などのあらゆる対策をしてる。そして、極めつけは⋯⋯」
私の2倍近くある扉に手を触れ、魔力を流し込む。途端に重たい扉が大きな音を立てて独りでに開く。開いた先は暗闇に包まれていた。
「私の魔力の流れに反応して、開くようになってる事。簡単に言えば、鍵が私」
「ハイテクだね。家には付けないの?」
「付けられない。鍵の後付け、つまり認証者は追加できないから。さて、私の宝物庫だよ。⋯⋯私が許可する物以外は持ち出さないでよ?」
そう言って、手を胸の前で動かし、動作による魔術を行使する。その刹那、暗闇が消え去り、天井が眩いほどの光で満ち溢れた。光は地面に山積みになった金銀財宝に反射し、キラキラと光が反射する。その部屋は地上の森の広場よりも広く、正確に奥までは確認できない。が、光る物は見えるので、そこまで財宝がキチンとある事は分かる。
「おぉ⋯⋯! てぃ、ティラノスお姉様⋯⋯これ少し貰ってもいいですかっ!?」
「言ったそばから迷いないね。⋯⋯まぁ、少しなら考える。昔よりは執着がないからね。カノンも何か欲しい物があれば言って。物によってはあげる」
「いいの? 竜って宝のためなら相手を殺すとか普通に⋯⋯」
「暴竜のイメージ強過ぎない?」
とは言ったものの、1つの宝石が原因で殺し合いをした竜達を知ってるからあながち間違いもない。かく言う私も、昔は財宝のために何匹もの竜と戦ったものだ。
「うわぁ⋯⋯! ティラノスお姉様! これって純金ですか!?」
「分からない。けど、高値で売れそうなのを選んでから、欲しい物を選んでよ」
「もちろんですっ! ⋯⋯あ、これとかどうです!? 高そうですよー!」
財宝に目を輝かせ、オルニスは嬉しそうにはしゃぐ。私は何も分からないと言ってるのに、全く話を聞いてないようだ。それほどに、熱中してるのだろう。もちろん財宝に。しかし、目的はキッチリ覚えてるらしく、高価そうな宝石を選んでは持ち込んだ袋へ入れていた。
「⋯⋯ねえ、ティラノス。これは何? なんて言うか⋯⋯凄く、綺麗⋯⋯」
価値ある物を探してる最中、カノンが目を付けたのは青白く輝く石が装飾された金色の指輪。一見すると何の変哲もないただの青い石だ。だが、その石からは微かな魔力を感じる。恐らくは、魔力が少ないからこそ、魅了されるかの如く引き寄せられたのだろう。
「それは⋯⋯ああ。それは分かる。魔石だよ。欲しいなら、あげる。いつも料理を作ってくれたりと、世話になってるしね」
「ほ、本当?」
「うん、もちろん。いいよ」
「ありがとう、ティラノス! 大事にするね!」
嬉しそうな笑顔だ。私が財宝に固執しなくなった原因の1つだからこそ、私も嬉しく思う。彼女達の笑顔は、昔と違って何も代わりがないから。
「カノン! オルニスを手伝ってください! カノンの方が分かるのですから!」
「あ、ごめん! 今行くね!」
ここへ連れてきた事はあながち間違いでもなかったようだ。嬉しそうで、楽しそうな2人を見ているとそう思う事ができた。だけど、財宝の魅力は怖い。これに固執すれば、昔の私みたいになってしまう。それは、絶対に避けたい。
だからこそ、ここへあまり来れない事を思うと、私は少し残念でもあった。
用語解説その29
『竜石』
竜が魅了され、大事にするという赤色の宝石。実際には魅了の効果はないが、元から宝石好きという事、そして本能的にも竜は欲しがる。竜が手にすると赤く輝き、竜石の中に秘められた魔力が尽きるまで(直径5cmで大体1分程度)強制的に供給し続ける。使い切ると砕け散る。竜以外では使えないという。
ティラ「竜なら誰でも、必ず1つは持ってる。もちろん私もね」
オルニス「オルニスもですよー!」
カノン「そんなに好きなんだ。⋯⋯もし奪われたら、って聞くのは野暮だね」
ティラ「絶対我を忘れて怒り狂う」
オルニス「凍らせます」
カノン「えぇ⋯⋯竜怖いなぁ⋯⋯」