最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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竜の生活その31「いざ行かん、エルフの街へ」

 心地よい風、見下ろす限り森と霧で覆われた真っ白な大地。遥か彼方の地平線から、太陽が顔を覗かせている。翼を動かす事を忘れそうなほど、その景色は私好みのものだった。昔から、自然は好きだった。理由は分からないが、魅了されるかのように心奪われる。それは今も変わらず。ただ昔と違い、今はそればかり見ているわけにもいかない。

 

「ティラノスー⋯⋯! もう準備できたよー⋯⋯!」

 

 目下に広がる霧の中から、カノンの声が聞こえた。視力がそこそこ良い私でさえ豆粒のように見えるのに、カノンは声がよく通る。もちろん、私の耳がいいというのもあるんだろうけど。

 

「ようやく降りてきた⋯⋯。ティラノス、何してたの?」

「待ってる間、景色を眺めてただけだよ。もう準備はいいの? 宝石は持った?」

「もちろん! まぁ、そこまで量は無いしね。重たいのは重たいけど⋯⋯」

 

 財宝が詰まった麻袋は既に荷造りを終えている。が、荷造りをしたのはカノンなのだろう。その麻袋を疲れ果てた目で見るその姿は、それなりに重たい物だった事が伺える。

 

「ラミアスも準備いい? 傘差しておかないで大丈夫?」

「飛んで行くのに先に傘を差す奴がいるか。心配せずとも大丈夫に決まっていよう?」

 

 ふてくされた表情で話すも、買い物が楽しみなのか口元は絶えずニヤついてる。なんだかんだ言っても、楽しみにしているようだ。それもこの中で一番。多分、元が貴族風の家だったかで、買い物が好きなのだろう。

 

「ディニエルとアリエルは⋯⋯大丈夫そうだね」

「もちろんだぞ!」

「アリエルとお、同じくですっ」

「よし、出発しよう。──それじゃあ、オルニス。頼んだよ」

 

 特注の鞍を付けた銀色の巨体──竜に戻ったオルニスの背に跨り、全員が乗った事を確認した後、その背の上で魔術を行使する準備を始める。

 

『はい! ティラノスお姉様もよろしくお願いします!』

「任せて。光は私が誤魔化す。貴女は何も気にせず、飛んでいいからね」

『分かりました! では、飛びますね!』

 

 オルニスの巨体が宙に浮く。それを感じたと同時に魔術を行使し、オルニスの周囲の光を屈折させた。中から見れば何も変わらないが、外から見れば透明で視認できない。今まで何度か使った手だから、バレる事はない。ただこれを飛びながら維持はできないため、飛ぶのはオルニスに任せてある。

 

「それにしても、よくこんな鞍を持っていたよね。それも伸縮自在だなんて。⋯⋯でも、どれだけ伸びてもティラノスのサイズには合ってないよね。小さくなれるとはいえ、どうして?」

「家を作ってもらった大工に作らせたんだけど、私が大きすぎた。私サイズになると、それほど大きな鞍作るだけの材料が足りなくなってね。要は、今オルニスが付けてるのは試作品として作った物」

「⋯⋯おっちょこちょいなんだね」

 

 呆れられてるのだろうか。そんな目線を背後から感じる。その大工がおっちょこちょいというのは否定しないが、よもや私の事ではあるまい。大工の方も実は最近会ってないからなんとも言えないのだが。

 

「暴竜ティラよ! 結局どの街に行くのだ!? まさか人間の街ではあるまいな!?」

 

 恐らくは風を受け、必死に傘を差してるであろうラミアスの声がする。声からも必死さが伝わるが、風魔術が得意ならそれを使えばいいのに、とは少し思う。

 

 人間の街はラミアスも嫌いなようだが、それ以前に行けない理由は沢山ある。まず容姿が魔族寄りの私は嫌われる。カノンは人間の貴族に喧嘩を売ったし、エルフ姉妹は元奴隷。人間の街に行くには危険が大きすぎるのだ。

 

「うん。行き先はオルニスには話してあるけど、まだみんなには言ってなかったね。エルフの王国、セリーナ。その都市だよ」

「エルフ!? 何故魔族ではないのだ!?」

「魔族も考えよ。でも、財宝を売るならエルフの街の方が都合がいい。それに、中立国だからね。人間と魔族が一緒に居ても気にされない唯一の大国」

 

 イデア大陸は人間、魔族、そしてエルフの三大国が中心となり、その他小国が存在する。が、安全面と資金面を考えれば、自ずと大国しか選択肢に残らない。そして、その中でもセリーナ王国は中立が故に、明らかに人間のカノンだろうと、吸血鬼であるラミアスだろうと、差別される事はない。もちろん非難を受ける事も。それにセリーナ王国には⋯⋯。

 

「都合? 一体なんの都合だー?」

「⋯⋯友達がいる。暴竜時代の数少ない友達。アリエル。貴女と同じ、エルフのね」




用語解説その30
『魔封石』
触れている者の魔術、魔法を封じる金属。石と書いても石じゃない。魔力を封じるわけではなく、魔力の流れによる行使、即ち魔術を封じる石。奴隷及び犯罪者の拘束具などで使われる。魔封石単体では脆く、加工しなければ使えないほど。なお、魔封石単体なら割と安価で売っている。お値段なんと1000G(ガネ)。

ティラ「加工してても割と腕力で何とかなる。人間でも壊せるらしいから、魔封石とは別に頑丈な拘束具を用意するのが一般的」
ディニエル「わ、私達の拘束具は魔封石だけだったのですけどぉ⋯⋯」
ラミアス「それは明らかに舐められているぞ」
ティラ「⋯⋯数が多いが故に見た目で判断する事が多いから仕方ない」
ディニエル「えぇ⋯⋯」
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