最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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竜の生活その32「竜の古い友人」

 エルフ領土、その都市であるセリーナ王国。そこの大通りには商人が所狭しと店を構え、戦争や家の中とは違った賑わいを見せる。商人達が並ぶ通りは熱気で溢れ、それに応えるかのように客達が商店へ押し込んでいた。中には奪い合いにでもなったのか、喧嘩をしている者もいる。その間に衛兵が割って入り、更に激しさを増しているようだ。

 

 入り口ですらその光景。中心に近付けば、道すらも通れぬほど人や喧騒で溢れかえるだろう。そして、騒ぎや喧嘩でも。もしはぐれても入り口で集合すればいいが、今回は久しぶりの街だ。何かに巻き込まれた場合を想定して、できる限り分かれないようにしないと。もし別れるとしても、その時は私とラミアス、もしくはオルニスと戦える者を中心に分けるとしよう。

 

「綺麗な街ですね。でも、強そうな人は少ないです⋯⋯」

「いやここそんな街じゃないからね?」

 

 既に人へ姿を変えたオルニスは、まるで餞別するかのような目で街に住むエルフ達を見つめていた。ある意味捕食者側の目線だ。

 

「楽しそうだなー! 姉さん、あの店綺麗な服がいっぱい揃ってるぞー!」

「ほ、本当ですね⋯⋯! あっ、でも、いっぱい並んでる⋯⋯」

「そこ2人。店は後からだからね?」

 

 初めて来た自分達の種族の都市に浮かれる気待ちはよく分かる。でも、今はお金が無いも同然。どれだけ気になっても、お店は後回しにするしかない。

 

「この街は大通りを境に、商業や飲食店など、区画が幾つか分けられてる。今から行く場所はまた別の商業区画だから、そこを見てからでもいいかもね」

「⋯⋯時間はたっぷりあるのだろう? 素早く終わらせて、早く行こう」

「うん、そうだね」

 

 ラミアスに返事を返し、私達は古き友人の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 大通りと違い、そこは幾分か静かな場所だった。それでも商業区画であるそこは、いつも賑やかな我が家よりも騒々しい。その中でも、特に古びた二階建てのお店。見るからに古い店だが、今も相変わらず、壊れずにそこにあったというのは喜ばしい事だ。

 

「ここがそのお店? かなり古びてる気が⋯⋯」

「仕方ない。私の友人、記憶が正しければもうすぐ500歳になるから。会った時も300を超えていたからね」

 

 思えば懐かしい。一度別れた者と、また再び出会う事になるとは思わなかった。いや、この店に今も本当に居るなら、という話だけど。

 

「お邪魔するよ、メル!」

 

 鈴を鳴らして扉を開ける。と同時に、大声を出してその名前を呼んだ。

 

「うるさい客だ⋯⋯おぉ? おぉ! ティラノスか!? これは珍しい客だなぁ⋯⋯!」

「うん、久しぶり。みんな、紹介するね。こちら、メルカートル・ナーリウス。見ての通りエルフの商人だよ」

 

 店の奥から杖をついた白髪の老婆が姿を見せる。老婆と言ってもその種族故に容姿は整っており、御歳500というのに見た目だけならもう少し若く見える。

 

「ティラノスの知り合いと聞いてどんな人かなって思ってたけど⋯⋯凄く優しそうで物腰が柔らかそうな人だね」

 

 隣でカノンが小さく呟く。恐らくは失礼だと思い小声で話してるつもりなのだろう。しかし、私の友人メルには聞こえていたらしく、クスクスと口に手を当て笑っていた。エルフなのだから、人間よりもずっと耳はいい。

 

「信用されておる。昔とえらい違いよなぁ⋯⋯。変わったのぉ、ティラノス。儂は嬉しいぞ」

「むぅ⋯⋯前も言ったけど、私の嫌いな喋り方だよ。わざと?」

「いいや、慣れただけだ」

 

 いや、絶対にわざとだ。私が嫌いな事を知ってて。連想するだけで、鳥肌が立つとかそんな事はないんだけどさ。それでも、嫌なものは嫌だ。

 

「オルニスはティラノスお姉様の過去を伝説くらい知らないのですけど、そんなに今と違うのです?」

「ああ。昔はかなり違っておってなぁ⋯⋯。暴れまくっておったわ」

「あれ、伝説通り⋯⋯?」

「オルニス、信じちゃダメだからね? メルと会ったのは私が落ち着いてからだからね?」

 

 年月が経ち、歳を取っても性格は変わらないものだ。むしろ私のように変わる方が珍しいのだろう。私の場合、きっかけがあったから、という理由があるけど。

 

「して、今回はどうしたのだ? もちろん商売の話じゃろうなぁ?」

「もちろん。商売好きな貴女に取っておきの話。これ見て。私の財宝の一部。⋯⋯これを金に変えたい。もちろん、できるよね?」

「ほう⋯⋯本当に変わったのだな。昔はあれほど手放そうとしなかったティラノスが、財宝を金に変えようとするとは。通貨は何にする? やはりガネか?」

 

 私が「それで」と頼むと、渡された財宝を1つ1つ、丁寧に鑑定し始めた。先ほどまで散々喋っていたくせに、鑑定を始めると完全に黙り込んでしまった。昔からそういう商売に関する事はしっかりしている。それこそが、私が今日求めていた事なのだが。

 

「⋯⋯見てる間に、分けてしまおうか。街を見回る班をね」

 

 まだまだかかりそうなメルの鑑定を見て、私はみんなにそう持ちかけた。




用語解説その31
『魔術:変異属性』
六ではなく四大属性(火、水、風、土)に当てはめれる属性にはそれぞれ変異属性と呼ばれるものがある。生まれつき備わるもので、10人に1人程度で発現する。変異は詠唱なくとも魔法量によっては生まれた時から使うことができ、成長過程などで突然使えるようになる、なんて事はない。詠唱は通常と同じ文。なお、変異する前の属性は練習(違いを理解)すれば使えるようにもなる。逆に生まれつき使えない者は練習しても変異種は使うことはできない。土は木。水は氷。火は熱。風は雷。と、変異する。

ティラ「変異属性は私には使えないけど、基本属性である6つの属性を応用すれば似た魔術を使う事はできる」
オルニス「オルニスの魔法も水を極限まで冷やして氷のようにしていますからね!」
カノン「⋯⋯そう言えば、今まで見た事ないかも」
ティラ「それだけ珍しい。変異属性はね」
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