最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
太陽は地平線から私達を見つめていた。徐々に沈む行くそれは、最後まで輝かしく全てを照らしていた。また一日もすれば目にするはずのそれを、私はなんだか名残惜しく思ってた。
「姉さん達は何を買ったんだー?」
「た、食べ物だけだよ。他には何も⋯⋯。アリエルは何か買ったの?」
「姉さんが言ってた家具にー、オススメされた服とかとかー⋯⋯」
後ろから楽しそうな会話が聞こえてくる。初めて行った都市で浮かれているのだろう。それもまた良き事。昔と違い平和な日常だからこそ堪能できる些細な幸福。昔の事は知らずとも2人は元奴隷。今は自由になったからこそ、より一層、幸福を感じるのだろう。
『皆さん! 魔霧の森が見えてきましたよ!』
下から声がする。私達が今乗っている竜、オルニスの声だ。その銀色の身体は太陽の輝きを反射し、時折眩しい光が目に入る。それを一番鬱陶しがってるのはラミアスのようだ。彼女は日光が苦手だから仕方ないが。反射した光も身を削るのだろうか。度々当たる陽の光から身を守るように布を下に敷いていた。
「ようやく着いたのか。長い空路であったな」
当てつけのようなその言葉も、恐らくはそれが原因か。もしくは、傘を差すのも面倒になってきたからか。どちらにせよ、空の旅はラミアスには懲り懲りだろう。
「たった1日⋯⋯いや1日もないか。半日くらい家を空けただけなのに久しぶりな感じがするね。街に行くのが久しぶりだったからかなぁ」
「気軽に行けたらいいけど、そういう街がないからね。家がもう少しエルフの街に近ければよかったのだけど」
今更ここ以上に人目につかない安全な場所は探せない。それだけの時間と労力は今持ち合わせていないから。今時、私に手を貸すドワーフなんて居ないだろうし。機会があれば探してみるというのも手だけど。
「なぁ、カノンー! 帰ったら一緒にお風呂入ろうぜー! お風呂ー!」
「いいよー。ディニエルも一緒? 一緒に楽しもうねー」
「えぁ!? は、はい⋯⋯」
「⋯⋯大変そう。無茶しちゃダメだからね」
カノンとアリエル、2人は活発な方だから、風呂でもよく遊ぶ。普通は遊ぶ場所じゃなくて安らぎ、休む場所なのに。それに巻き込まれるディニエルの苦労が目に見える。本当に嫌なら断るだろうし、止めるつもりは無い。
『ティラノスお姉様、何か聞こえませんか?』
「ん? 何かって?」
『風の音のような、声のような⋯⋯とにかく普段聞かない音です』
オルニスに言われて耳を澄ます。もし王国の軍勢だったりすれば、家が危ないからすぐに行動する必要がある。が、聞こえてきたのは風が吹くような、すすり泣く声だった。少なくとも、王国の軍勢などではなさそうだ。
「⋯⋯本当だ。何か聞こえる」
『どうします? 粗方の位置は掴めましたので、すぐに行けますよ』
提案は有難いが、もし道に迷った人なら、全員で押しかけると怖がらせるかもしれない。そうした場合、より混乱が大きくなって面倒な事に発展してもおかしくない。
「いや、いい。オルニスは先にみんなを連れ帰って。私は正体を確かめたら、すぐ帰るから」
『了解です。すぐ帰ってきてくださいね!』
「⋯⋯ティラノス? どうかしたの?」
オルニスの背中で飛ぼうと翼を広げたその時、背後から声をかけられた。もちろん、カノンだ。
「困った人がいるかもしれない。だから、少し様子を見てくる」
「そっか。気を付けてね!」
「うん。行ってくる」
こうして声をかけて、送り出してくれる人が居て、私も幸せになったものだ。もしこれが全て神の思い通りなら⋯⋯私は許されたという事か。もしくは、弄ばれてるだけなのか。いずれにせよ、もう失うつもりは無い。奪われるつもりも──ない。
用語解説その33
『竜人』
獣人、竜種とは似て非なる種族。竜のような姿だが人型であり、竜のように人から竜、竜から人などの変身はできない。また胎卵生なのでおへそがない。小さな集落を作る事が多いらしいが、イデア大陸ではあまり見ない。基本は魔族の領土に住むらしい。寿命300年。
種族特徴→竜の身体(鱗、牙、尻尾等)、暗視、再生能力(中)
カノン「ティラノス達とは似てるようで似てない。そんな種族が竜人だね」
ティラ「ドラゴニュートという竜種の中でも二足歩行の、竜人に似てる竜がいる。だから、何かしらの関係はあるかもしれない。もちろん真相は創造主にでも聞かないと分からないけど」