最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
「⋯⋯隠し子か?」
家に帰った私に言い放たれた第一声は、ラミアスのその言葉だった。
「え? 本当に!? ティラノスって子供いたの!?」
開口一番の内容に驚き反応する暇もなく、彼女の声に反応し、情報が拡散していく。まるで湖に投げられた小石が、水面に波を発生させるかのように、素早く、大きく広がっていった。それも誤解が中心となって。
似ているのは否定しない。ただ鱗とか、身長の差異が小さすぎるとか、色々おかしな部分があるのだから、そこはもっと注意深く注目してほしい。
「ティラノスお姉様の番いはいないのですよね? もしや、処女懐胎です⋯⋯?」
「いや、別にそういうのじゃない⋯⋯」
「なんだ処女懐胎って?」
「あ、アリエルは気にしなくていいよ⋯⋯?」
話が入り乱れ、主に私とこの幼女の話題が飛び交い場が混沌に満ちる。これ以上ないほど混沌とした
「⋯⋯おかあさん?」
──追い討ちの
「ねえ、ティラノス、実は番いが居たの? それとも本当に処女懐胎? それに、今までこの娘は何処に預けてたの? さっきのすぐ戻る、って言ったのもこの娘を連れ帰るためで⋯⋯」
「うん、違うね。泣き声が聞こえて、行ってみたらこの娘を見つけた。彼女の母親と私が似てるらしいから、お母さんと呼ばれてるだけだよ。それに、見て。この娘の身体」
手を招いて幼女を近付けさせると、カノン達に先ほど見つけた痣を見せる。痛々しく赤に染ったそれを見た途端、カノンの顔が青ざめていくのが分かった。そして、思うところがあるのか、幼女を悲しげに見つめていた。
「っ⋯⋯!? え、こ、これって⋯⋯だ、大丈夫なの⋯⋯?」
心配は最も。だけど、私に聞かれても答えようがない。医者でなければ薬師でもない。私には、見て分かる傷を治す事しかできない。診断したり、再発を防いだりなんて事は不可能だ。だから、この娘の傷がどれほど深刻で、大丈夫なのかさえ⋯⋯。
「分からない。カノン。貴女とオルニスでこの娘の傷を治してあげて。恐らく⋯⋯すぐ治ると思う。もしダメなら、私の血を使う」
「⋯⋯ん? ティラの血なんか使ってなんかできるのか?」
唐突に話題に上がった竜血と聞いて、エルフのアリエルが首を傾げる。広く知られて竜を狙う者が未だに多い理由だと思ってたが、どうやらそうでもないらしい。
「竜血⋯⋯シナバルとも呼ばれるそれは、竜以外の者が浴びると竜のように不老不死になると言われてる。もちろん浴びただけで不老不死なんかならないけど、竜血は自分でも他人でも、どんな傷でも癒す力があるからそう言われてるんだと思う」
「つまり万能の薬なんだな!」
「もちろん痛いし、全部直すならそれなりに流さなきゃダメだから最終手段。普通に治せるならそれでいいしね」
それにもう1つ。使いすぎると、竜に近付いてしまう。それは力もそうだけど、物理的、より視覚的に。翼が生えたり、無いはずの牙が現れたり。性格も変わると聞くなら、私としては極力控えたい。
「それじゃあ、傷を治そうか。えーっと⋯⋯ティラノス、この娘の名前知ってる?」
「⋯⋯そう言えば聞いてなかった。名前、言える?」
「なま、え⋯⋯?」
名前すらも与えられなかったのか。それとも、ただ単に言えないだけか。どちらにせよ、名前がないのは不便極まりない。
「名前無いの? なら、アタシが付けてあげようか? ティラノスの子供だからティナとかどう?」
「いや、カノン。私の子供じゃないしそれややこしい。⋯⋯何処かの大陸の神の名前、貴女の髪のような色⋯⋯『紅色』という意味で、太陽の前に世界を照らしていたと言われる神。その名を『アルナ』。可愛い貴女には、明るい方が似合ってる。だから、アルナ。⋯⋯どうかな?」
こんな小さな娘に難しい話を理解できるとは思ってない。ただ話しておいた方がいい気がした。成長してから何言われるか分かったものじゃないし。⋯⋯なんて、単純な理由。
「ある、な⋯⋯あるな」
「⋯⋯気に入ってくれたのかな」
余程酷い経験でもしたのか。その顔は無表情のままだ。私はこの娘に感情を与える事ができるのだろうか。最悪の場合、孤児院か何処かに預けた方がいいかもしれない。ただ、母親と思われたのなら。この娘を拾ったのなら。それ相応の覚悟を持って、最低限の手助けをしなければならない。
「まぁ、嫌ならその時はその時か。⋯⋯その判別をしてもらうためにも、これから色々知ってもらわないとね。アルナ」
用語解説その35
『天神の弓エアー』
天を支配する神の弓。その神の正体は東洋の龍らしい。弦を引けば不透明な白い矢が放たれ、命中すれば雷を落とす。天を支配し、天候を変える力を持つ。空中に浮かぶ庭園にて安置されてるらしい。
形状→白い弓。木の枝のような装飾が何本も絡み合って弓のような形状になってる。弦は光のような白い何か。
ティラ「違う大陸の龍がやって来るというのはとても珍しい事。なんでも、今もその血族がこの大陸の何処かに住むとか。会ったことないから、今後も会わないだろうけど」
オルニス「もしかしたらオルニスの里に紛れてるかもしれないですけどね、その龍さん」
ティラ「龍は気難しいと聞くからやっぱり貴女の里には行きたくない」