最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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竜の生活その37「幼ない娘の話」

「はい、これで終わり。ティラノス、アルナの傷は完治したよ。呪いの類は受けてなかったみたい」

 

 元の白い肌になったアルナを前にして、カノンは私にそう告げる。完全に治療されたアルナは相変わらず無表情ながらも、どこか嬉しそうにも見えた。表情は全く変わらないけど。

 

「もし呪術か何か受けてたらアタシじゃ治せないからよかったよ。というか、この家に解呪使える人いるの?」

 

 カノンの些細な質問に首を横に振る。呪術による攻撃を受ける事はあっても、アレは相手よりも自分の魔力が高ければ効かない事が多い。つまりは解呪なんて必要無かった。だから、使う事も覚えようと思う事もなかった。

 

「オルニスもできないので、誰もできないと思います」

「基準の目線高いなぁ。まあ、それなら気を付けないとね、呪いには。⋯⋯それにしても白い肌と鱗。ティラノスみたいだね」

「そう? 竜になれば金色だよ?」

 

 何を言い出したんだ、この娘は。そう思ってると、カノンは「違う違う」と首を振る。

 

「人の話ね。⋯⋯ん? そう言えば、ティラノスってどうして人と竜の姿で色が違うの?」

「急にどうしたの?」

「いや、ほら。だって色違うじゃん。最初なんとも思わなかったけど、どうしてかな、って」

 

 カノンとオルニスには竜の姿も見せていたか。だからこそ、少し困る質問だ。何故、と聞かれると正直私にも分からない。つまり答えようがない。だから、困る。飽くまでも、私が話せる事は憶測の域を出ないのだから。

 

「人間の身体がまだ幼いから、かな。昔は竜の姿も白だったけど、徐々に金色に染まり始めた。理由は分からない。他の竜は色が変わるなんてなかったから」

「オルニスも聞いた事ないですね、色が変わる竜は。やっぱりティラノスお姉様は格別ですね!」

「そうかな。普通の方がいいよ、何でもね」

 

 はしゃぐオルニスとは真逆に、カノンは神妙な面持ちで聞いていた。特段何か思うところがあるわけではなく、ただ単に不思議がってるだけのようだ。

 

「ふーん⋯⋯あ、そうだ。ねえ、アルナちゃん。今何歳とか言える?」

 

 突拍子もなく、カノンが年齢を確認する。身長差の大きい相手が近付いてもアルナは眉一つ動かさない。ここまで疎いと心配になってくるが、専門的知識など持ち合わせてないから、大丈夫なのかどうかは正確には分からない。

 

「⋯⋯?」

「そっか、分かんないかぁ⋯⋯。あ、別に分からなかったらダメとかじゃないからねー」

 

 首を傾ける彼女に、気を悪くしたと思ったのか慌てて訂正するも、私が見る限り何も思ってないように見える。いや、ただ分かってないだけか。

 

「⋯⋯アルナ、何か喋れる? 言葉は分かるよね?」

 

 私が話すとアルナは大きく頷く。そして、口を開いたかと思うと⋯⋯。

 

「おかあさん」

 

 一言。たった一言だけ、そう呟いた。どうしてその言葉に固執するのか。どうしてそれだけ喋るのかは分からない。ただ、その言葉を聞いた私は無性に庇護欲を掻き立てられる。狩る側だったはずの私が、真っ赤に染まった手を持つ私が、無性に守りたくなる。

 

「⋯⋯うん、偉い偉い。それだけ喋れれば充分。これからどんどん、言葉を覚えていこうね」

 

 そう言って、アルナの頭を撫でてみる。すると、初めは驚いたのか身体を僅かに震わせるも、徐々に頬を緩め、表情が和らいだ。そうされる事が心地よいのか、僅かに嬉しそうな顔を見せる。

 

「なんかアルナちゃんに甘くなーい?」

「そうですね。オルニスにはそんな事してくれた事ないです。あ、いえ。別にしてほしいわけじゃないですけど⋯⋯」

「オルニスも後でしてあげるからアルナの前で不貞腐れないの。⋯⋯アルナ、一緒に飛んでみる?」

 

 子供が全員外に興味を持ってるとは思わない。だけど、興味は持ってほしい。そう思い話すと、アルナはしばしの沈黙の後、ゆっくりと頷いた。

 

「よし、行こうか。安心して。絶対に守るからね」

 

 アルナは私の言葉に、僅かに嬉しそうな笑みを浮かべた。




用語解説その36
『呪術』
名前通り呪いの魔術。再生能力、自然治癒などの種族特徴による回復、魔術による回復などを阻害するなど、主に回復阻害のために使われるがその限りではない。これに対抗し、抵抗して回復するには単純な治療魔術ではなく、その前に何かしらの解呪が必要。

ティラ「うちに解呪の使い手いないから、今後の事も考えて誰か覚えた方がいいかもね」
カノン「下級魔術覚えるだけでかなりの時間を使ってるアタシには無縁の話かなあ」
ティラ「それはそのうち慣れると思うから、解呪も頑張ろう」
カノン「スパルタになりそうなんでお断りしとくね」
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