最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
遥かな空。雲が眼下に広がり、太陽が更なる高みで私達を照らす。心地よい風が身体中を這って吹き抜け、涼しくも温かな空気に包まれる。今現在、私は竜へ変化し、私の住み処がある『魔霧の森』上空を飛行していた。新たな家族の一員となった小さな竜人アルナを連れ、
「ティラノスお姉様ー! もう少しゆっくり飛んでください! 落ちちゃいます!」
『もう少しゆっくりね、了解』
一応、念の為にアルナを守る役としてオルニスも一緒に。カノンには食事の用意があるからと断られたが、オルニスは二つ返事で受け入れてくれた。彼女自身、アルナが妹のようで放ってはおけないのだろう。私も同じような気持ちだから何となく分かる。
オルニスは私の背の上で、アルナが落ちないように膝の上に座らせてるらしい。背中の感触が1人分しかないから、という理由でそう考えてるから違うかもしれないけど。まぁ、違う場合は肩車してるという有り得ない結論に至るから、やっぱり膝の上に座らせてるのだろう。
『アルナ、どう? 空は気持ちいいでしょう?』
空を飛ぶ最中、背中に乗るアルナに語りかける。流暢に話せるわけではないから、返事を期待してるわけじゃない。ただの独り言であり、自己満足。
「⋯⋯そ、ら?」
そう思っていたからこそ、同じ言葉を繰り返してくれた事に、ちょっぴりだけ嬉しかった。赤の他人なのに、何故か妹や娘へ捧げるような庇護欲が掻き立てられる。私に兄弟姉妹や娘なんかいないし、親の愛を受けて育った覚えは全くないのに。
『うん、空。世界を包み込む大いなる青い空。ああ、上は見ないでね。まだ太陽が出てる。目をやられるよ』
雲よりも上空を飛んでいるから、真上なんか見れば太陽に目をやられてしまう。とてつもなく高い高度を飛んでるわけじゃないから、多少なりとも上にまだ雲はあるが。それでも地上で見るよりは危険だろう。私でも眩しいし。
『竜は総じて空が好きな生き物。中にはそうじゃない竜もいるけど、空を愛する竜は多い。貴女は竜ではないみたいだけど、それでも空を好きになってほしい。こうして一緒に空を飛びたいしね』
見えてるわけじゃないが、頷いてくれた気がした。
「その時はオルニスも一緒に飛びたいですね。ね、アルナ。一緒に飛びたいですよねっ」
「⋯⋯うん。とび、たい」
「え!? す、凄いですね! 今日の昨日というのに、上達の速度早いです!」
『⋯⋯うん、私も驚いてる。竜人の成長が早いとは聞いた事がない。言葉を話せなかったわけじゃない⋯⋯? 話せる言葉を知らなかった、もしくは言葉は知ってるけど話せなかった?』
考えても分からない。原因や理由なんて幾らでも考えられるし⋯⋯。まぁ、話せる事が悪いわけじゃないから、そもそも考える必要はないか。逆に会話できるようになるまで、勉強してもらうのも手だ。意思疎通できるかできないかでは、便利さなどかなり違ってくる。
『一先ず、家に帰ろうか。カノン達がご飯を作って待ってくれてるだろうしね。その後、アルナに勉強を教えよう。会話のね。そうしたら、言葉を覚えるかもしれない』
「了解です。アルナ、帰りましょう!」
「⋯⋯うん、かえる」
言葉を徐々に覚えていく速度が早いのも気になるが、今は様子を見る事にしよう。こんな小さな娘が実は何かの差し金で危害に成り得る、とは思ってないが、少し奇妙でもある。⋯⋯なんて、気にする事もないか。今は私の家族なのだから。何かあった時はその時だ。
そんな悠長な事を考えながら宙を舞う。家へと目指して。
用語解説その37
『魔眼』
目に宿る魔法。魔術ではなく魔法の域。目を合わせる、視界に入れるなどすれば即時効果を発揮する魔法の瞳。持ち主の魔力を消費し、その魔法の種類は一つだけだが、効果は絶大。魔術による防壁を容易く突破すると言われている。ただ持ち主の数は少なく、本当にあるのか、噂ではないのか、と囁かれている。魔眼の持ち主は左右の瞳で魔力量が違うからか、オッドアイになる事が多いらしい。どちらにも持つ者は例外。
ちなみに魔眼の中でも有名なのが石化である。
ティラ「昔はよく見たけど、今では確かにあまり見ない。持つ人は貴重だからと王国に幽閉されてるのかもね。⋯⋯いや本当にそうかもしれない⋯⋯」
カノン「また一つ王国の闇を知ってしまった気がする⋯⋯」