最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
「魔術は周りに満ちるマナに多少左右されるけど、結局はオド⋯⋯つまりは体内魔力次第で魔術の力が変わる。アタシとティラノスの魔術に力の差があるのはそのせいね。力っていうのは持続性だったり威力だったり、総合的なものだよ」
黒板に文字を書き込み、何を思ってか伊達メガネをかけたカノンがアルナにそう説明する。カノンは先生のように振舞うのが嬉しいのか、楽しそうにしている。
「アルナ、分かった?」
「⋯⋯うん」
そのカノンとは対照的に、アルナは始終、顔を変えない。真面目なのかボーッとしてるのか見分けづらい顔で説明を聞いていた。言葉の勉強を教えてる今でも、未だに会話は不慣れなようで、短い言葉しか発しない。
「じゃあ、次だね。魔術には属性というものがあってね⋯⋯」
アルナが家に来て数日。未だに言葉を覚えないアルナ相手に、カノンは魔術関連の勉強を教えていた。王国などにある学び舎の教師に言わせれば、これに何の意味があるのかと聞かれるかもしれない。だけど、この危険いっぱいな森で生きていくには何よりも先に、対抗する術を身につける必要がある。それが竜なら──竜と言っても竜人だけど──尚更戦う力を持つべきだ、と私は考えてる。
「おい暴竜。魔術ならこんな勉強よりも実戦の方がいいんじゃないか?」
エルフ姉妹が料理を作ってる間、横で暇そうにしてるラミアスが呆れた口調でそう話す。私もやる事がないから人のこと言えないけど。
「一見は百聞にしかず?」
「見るより慣れろ、だ。お前の娘なら実戦を積んだ方が早いと思うが?」
「血縁はないし、そもそも竜じゃないから身体が壊れないか心配。私がやると、手加減できない」
「なら、カノンにでも頼めばいいだろ」
いつも通りの素っ気ない返し。ただ最近は言葉の端々にあった棘は消えている。この生活に慣れて毒気が抜けたのか、それとも私がそう錯覚してるだけなのか。何れにせよ──
「変わったね、ラミアス。最初出会った時とは大違い」
「私と貴様で最初というものはかなり変わるがな。忘れてるようだから」
「⋯⋯それについてはごめん」
「はあ⋯⋯」
素直に謝るとため息をつかれた。どうやら謝ってほしいわけじゃなかったみたいだ。本当に、この吸血鬼は何を考え思ってるのか分からない。いや⋯⋯私には、理解することはできないのかな。略奪した側の私には。
「調子が狂うな、貴様と話していたら。まあ、私としては最終的に一族の復讐が果たせればそれでいい。今まで数百年待ったのだ。力に歴然の差がある以上、私にできる復讐は限られてる。その中で、最も直接的で、実感が残る
その口元がニヤリと笑う。ラミアスは
「私は喜んでもう一度、数百年の時を待とう。それまで精々長生きしろよ、暴竜」
「⋯⋯ラミアスもね。永遠は嫌だけど、生きるなら時間は長い方がいい」
「ふんっ。敵の生を願うとは、変わり者め。では、私はディニエル達の様子を見てくるとしよう。夕食まで精々愛娘の様子を見てるのだな」
「だから、娘じゃないって」
私が否定しても小馬鹿にしたように笑うだけで、本心からは信じてないようだ。私の否定も聞かずにディニエル達の居るキッチンへと向かってしまった。
いくら似てるとは言っても、種族が根本的に違うのだから親子じゃないと分かるはずなのに。見た目の違いがほとんどないのは⋯⋯何も言えないけど。普通はひと目でわかる違いがあるけど、私は中途半端にしか人になれない。そして、
「ティラノスー! アルナと外で魔術の練習するから、手伝ってー」
「分かった。すぐ行く」
カノンの言葉を受けて、私は外へ向かった。
用語解説その39
『竜の里』
基本群れをなさず、子すら放置する放任主義の竜だが、稀に群れをなすことがある。それが拡大して村のように形成された場所を竜の里と呼ぶ。争いを好まない竜、仲間意識の高い竜、一匹では生きられない竜などなど。少し変わった竜が集まるので、他の竜からは迫害の対象になることも。そんな時は数の利を活かして一致団結するらしい。
ティラ「私は里に訪れたことがない。昔から竜は仲間だと思ってるし、行く必要性すらなかったから。それに、敵対しない限りは襲う必要もないからね」
オルニス「だからですかね。ティラノスお姉様が里では英雄扱いされてるのは。もちろん、オルニスの中でも英雄です!」
ティラ「そう言えば、オルニスは里出身だったね」
オルニス「ですね。親と別れ、見知らぬ場所で何処にも行くあてのない私が辿り着いた先が里だったのです。今はここがあるので、里に捨てられても安心ですね!」
ティラ「いやそれは安心しちゃダメだと思う」