最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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竜の生活その4「見捨てられた人間」

 赤髪の少女を家に連れて帰った後の事。

 

「うぅっ⋯⋯ここは⋯⋯? 汚い部屋⋯⋯」

 

 少女をソファーに寝かせたすぐ後、少女の目が開いた。目だけを動かして辺りをキョロキョロと見回した後、私の目を見てそう言った。

 

 て、誰の部屋が汚いだ。助けてもらったくせに、生意気な小娘だ。

 

「目が覚めた? 記憶はどこまである?」

「記憶⋯⋯確か、猪に追われて⋯⋯あっ! 他のみんなは!?」

 

 大きな声を上げてソファーから飛び起きた。

 

 隠してもいつかは分かる事。それに、ここで言わなければ言う機会が無くなる。

 

「多分、みんな死んだ。死体も持ってきてないから、魔獣が食べたと思う」

「そ、そんな⋯⋯。見たところ、魔族の方? 助けてくれてあり──」

「違う。私は竜。暴⋯⋯閑竜(かんりゅう)ティラノス」

「てぃ⋯⋯!? アナタみたいな小さい娘が⋯⋯!」

 

 立ち上がって瞬時に距離を取り、まるで親の仇を見るような目で睨みつけられた。

 

 最近は人間に手を出してないはずなのに。何か勘違いしてるらしい。風評被害が多くて困るのも、昔暴れたせいなのだけど。

 

「わ、私はカノン・ソウェル! ティラノス、アナタを退治しに来た者よ!」

 

 カノンと名乗る少女は、右手に魔力を集中させ、今にも魔術を放とうとしていた。

 

 私が死ぬような魔力では無いが、感じる魔力からして私と似た得意属性──炎だろう。家の中の物が燃やされるのは御免こうむる。

 

「あ、うん。ご丁寧にどうも。でも、私は最近人間を襲ってないよ? 現に貴女を救ったのも私だから。多分、これからもずっと襲わない」

「なっ⋯⋯!? あの暴竜が!? い、一体どうして?」

 

 暴竜って言うな。あの時の事、本当に黒歴史になってるんだから。それはともかく、凄い驚きようだ。まだ10代後半に見えるのに、私の何を知ってるんだろう。私の暴虐を見てるわけじゃないのに。私の残虐さを体感してるわけじゃないのに。

 

 伝聞を盲信し、見る事を否定する。いや、見れないからこそ、盲信するのかな。

 

「まぁ⋯⋯話そうかな。その代わり、楽しい話を聞かせて。私の最近の楽しみはそれだから。⋯⋯ところで、私についてどういう風に聞いてる?」

 

 カノンは右手を下ろし、顎に手を触れ悩む仕草を見せる。

 

 争う気は無くなったらしい。こちらにその気が無いと分かったからだろう。

 

「よく聞くのは全てを喰らい尽くす竜。または、神イデア様に挑んで唯一生き残った暴竜とも⋯⋯。神に挑むだけでも恐れ多いのに、神の宣告から逃げるなんて、罪深い竜だ。だから⋯⋯お前達には、その罪深き竜を殺す権利を与えよう、と教えられたわ」

「変わってないんだ」

 

 人間の教えは相変わらずだ。私が手にかけた他の人間達の話よりも、神の話を優先する。あのイデアに何の価値があるのか。イデア本人を見れば幻滅するだろうに。少なくとも、私はイデアを見て幻滅した。

 

「⋯⋯でも、可哀想ね」

「な、何を言って⋯⋯」

「実は知ってるんじゃないの? 今までここに()()()人も知ってたよ。本当は、自分の手を汚さずに、邪魔者を排するための狂言だって。本当はこう言われたんじゃない? 『だから、似たもの同士である罪深いお前達には⋯⋯』って」

「ち、違うっ!」

 

 少女の身体は震え、拳を強く握っていた。慌てて否定する姿で、私が言った言葉はより真実味を帯びる。

 

「私は⋯⋯間違った事してないっ! ただ、あの子を⋯⋯子供を庇っただけで⋯⋯」

「相手は貴族か何か? ⋯⋯本当に、大変だったね。頑張ったんだね。カノン」

「何、を⋯⋯分かったような⋯⋯っ」

 

 カノンに近付き、自分より少し高いカノンの頭を背伸びをして撫でる。すると、緊張の糸が切れたのか、カノンの目からは大量の涙が溢れてた。

 

 私を討伐しに来る人間達はいつも、みんなどこか不安定だ。弱いからこその不条理な生活を送ってるから仕方無いと思う。許せないのは、それを平気で実行する人間達の王や貴族だ。昔の私ならそんな事気にせずに全部燃やしてたけど、今は違う。思えば、昔から人間の暗い部分だけを見てきて、勝手な思い込みを作っていた。

 

 それが今となっては、討伐しに来る人間達をなだめ、落ち着かせ、家に返すの繰り返し。私は本当に、変わってしまった。昔の事が黒歴史になるくらいに。人間を好きにはなってないけど、気にはなった。この心象の変化は何故なのか。切っ掛けは思い出せない。

 

 でも、それを考えるよりも⋯⋯とりあえず、泣き喚くこの娘をどうにかしようか。




用語解説その4
『竜』
魔物の中でも最強の種族。寿命は不明。一説によると、老化では死なないとも。姿によって名前が違い、主に、四足歩行のドラゴン、翼が手と一体化したワイバーン、蛇のように細長いワーム、二足歩行で人型のドラゴニュートがいる。
変身能力を持っているが、人に化けることしかできず、決まった姿にしかならない為、人化とも言う。そのきまった姿は本来の姿と同様に徐々に成長するが種類によって様々であり、同一のものは存在しない。また本来は翼と尻尾以外には鱗など付かず、完全な人となる。基本、子供は放任主義だとか。 そして成人になると人の姿もかなり成長するらしい。成人のタイミングは人それぞれ。反抗期を終えたり、子どもを産む直前などが多い。竜の血は不老不死になるための素材とされる。しかし、その血は大抵の種族が抗えるようなものではなく、運が悪ければ死に絶える。生き残ったとしても、どこかしらに竜の特徴が現れるのだとか。
それぞれ魔法とは異なる固有の能力を持っているが、魔力を使うため似て非なるものでもない。五感が優れ、特に視覚、嗅覚、聴覚が極めて優秀とも。
年に一度、鱗が生え変わる。要は脱皮する。その時の鱗はドラゴンスケイルと呼ばれ、とても希少な物で高価で取引される。主に防具などで使用される。

種族特徴→高知能、高魔力(オド)、再生能力(大)、変身能力(人化)、暗視、竜の身体(鱗、翼、尻尾)、個体特徴(個体によって色々変わる特徴的な能力)

ティラ「竜の情報量多いね。ちなみにここには載ってないけど、東洋では龍とされ、ワームが多いらしいよ。私はドラゴンの姿だね。並大抵のドラゴンとは力も大きさも違うだろうけど」
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