最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活   作:百合好きなmerrick

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竜の生活その5「転機が訪れた人間」

「落ち着いた?」

「⋯⋯ぐすっ、情けない姿を見せちゃった。人に優しくされたの、初めてだったから⋯⋯。もう大丈夫」

 

 元々赤い目が余計に赤く染まって大丈夫そうに見えない。今は落ち着いてゆったりとソファーにもたれかかってるけど。

 

「大丈夫⋯⋯ね。ならいっか。あ。この森に入った時点で、私を狩るまで帰れないらしいけど、どうする? 狩る?」

「⋯⋯絶対無理。魔獣にも負けたのに、私が勝てるはずない。はぁ、せっかく5年も魔術を習ったのに、何の意味があったんだろ」

「人には得手不得手がある。そう悲観するのはダメ。むしろ、生き残った事を誇るべき。後で誰にも気付かれないように返してあげるから、ね?」

「⋯⋯そ、か。まだ何度でもやり直すチャンスがあるんだから⋯⋯死んだみんなの分も頑張らないとね」

 

 そうは言っても、カノンの表情は暗いままだった。

 

 できるなら、私もみんなを救いたかった。平穏な生活を送りたいとは思ってるが、目の前に居る人間を死なせたくないとも思ってる。多分、それは黒歴史から来る後悔から。繰り返したくないから、人を救いたい。本当に身勝手な理由だけど、私はそれを贖罪として割り切ってる。何度も言うけど、これであの神が許すはず無いが。

 

「カノン、あまり難しく考えるのはいけない。人は皆いつか死ぬ。早いか遅いかだけ。⋯⋯なんて、私が言えた事じゃないけど」

「え、どうして?」

 

 カノンは首を傾げる。頭にハテナが浮かんでるように見えた。

 

「貴女がさっき言った通り。私は昔、人を喰らった。それは事実。その罪が消える事は無い。謝っても、泣いても、身を削っても⋯⋯神は許してくれなかった。だから、私は後悔しないように今を生きたい。代わりに死んだ後はどんな傷も、陵辱も⋯⋯罰も受け入れるつもりだから」

「え? でも、ティラノスさんって⋯⋯」

「ティラノスでいいよ。今更変えても仕方無い」

 

 最初ティラノスって呼び捨てにしたんだから、今更それを曲げる必要無いのに。さては信念が弱いのかな。ここから返した後、少し心配だ。

 

「え、ええ。ティラノスって⋯⋯人を、私を助けたよね? 口ぶりから察するに、今までも助けてきたんでしょ?」

「ゆったりとした生活を送るため。下手に殺して、余計に人を来させる道理は無い、でしょ?」

「森の中だと魔獣に殺されたか竜に殺されたか分からない。それに、気付かれないように返すなら、結局アナタのせいになるんじゃないの?」

 

 変なところで鋭い少女だ。確かに実際は黒歴史を繰り返したくないからだ。ゆったりとした生活を送るためだけなら、誰も助けないだろう。ただ、それは許せない。竜として、一度決めた事を曲げて、またあの生活に逆戻りなんてしたくない。これ以上死んだ後も大変になるしね。

 

「⋯⋯気にするな」

「いや、それ言われるとめちゃくちゃ気になる⋯⋯」

「私がお人好しだから。そう勘違いして。ところで、どこに返せば良い? 親の元? もちろん案内は必要になるけど」

「あ⋯⋯。親は、居ないの⋯⋯」

 

 予期せぬ地雷を踏んだようだ。その話をした途端、明るさを取り戻そうとしていたカノンの表情が再び曇り始めた。

 

「ご、ごめん。言葉を慎重に選ぶべきだった」

「ううん、いいの。父親は私が産まれる前に魔獣に食べられた。母親も私を産んだ時に死んだ。⋯⋯残った私は、親戚の家に引き取られたの。でも、その途中に子供を守って、結果的に貴族に喧嘩を売る事になって⋯⋯」

 

 カノンの顔がより暗く、悲しいものへと変わった。

 

 ここまで言われたら、人に詳しくない私でも、どうなったのかは予想がつく。

 

「誰も助けてくれなかった。その子供も逃げたけど、無事なのか分からないし⋯⋯。改めて『ああ、私は1人なんだな』って思ったよ⋯⋯」

 

 言葉を濁してるのは、それほど辛い記憶があるからだろう。これ以上何かを聞くのはやめた方が良いかもしれない。後で楽しい話を聞こうと思ったのに⋯⋯失敗した。

 

「あ、気にしないで! 今は何とも思ってないから! ⋯⋯まぁ、そういうわけだから、帰る家は無いの。親戚の家に帰っても⋯⋯どうせ⋯⋯」

「⋯⋯私はこの大陸なら、どこへだって飛べる。貴女は自由なの。だから、好きな場所に連れて行ってあげる」

 

 本来は必要以上の干渉は自重してる。下手に干渉すれば、感情移入し過ぎてしまう。そうなれば、離れる時の喪失感や哀惜を感じる事になる。平穏で安心できる日々を暮らしたいのに、そうなるのは⋯⋯できれば避けたい。

 

「自由なら、どこに行ってもいいなら⋯⋯ここに居てもいい?」

「⋯⋯え?」

 

 カノンの言葉の意味を理解できず、私はもう一度聞き返した。




用語解説その5
『魔術』
神秘を操る魔の術。即ち魔術。これには属性が存在する。魔法に必要なのは詠唱と魔力量。また、詠唱の代用として様々な方法があるらしい。
属性には大きく分けると六大属性と呼ばれる土、水、火、風、光、闇。そして何にも属さない無に分けられる。属性は人によって得手不得手があるものの、行使するには大した問題ではない。ただ威力が高いか低いかの違いである。そして、水は火に、火は風に、風は土に、土は水にと相性がある。闇と光は相反する。無は何にも属さない。その代わり無には種類があるのだが、これはまた別の機会に。

ティラ「全てを支える創造の土。全てに潤いを与える恵みの水。全てを浄化させる猛攻の火。全てを養う助力の風。全てを癒す癒しの光。全てを染める混沌の闇。全てになり得る万能の無。私はこう教えられた。だから、私は火を主に使う。昔は人を、今は罪を浄化するために」
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