最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
「自由なら、どこに行ってもいいなら⋯⋯ここに居てもいい?」
「⋯⋯え?」
カノンの言葉の意味を理解できず、私はもう一度聞き返した。
いや、正確に言うなら理解したくなかったから、もう一度聞き返したのだけど。
「いやだから、帰る家も無いし、しばらくここに住んでもいいかな、って⋯⋯」
「⋯⋯私は竜。人を喰らった事がある。それに、料理も作れないし、着替えも無い。あ、私のならあるけど」
「今は違うよね? 私を救ってくれたんだから。それと、料理ができない⋯⋯というか、家事ができないのは見て分かるよ。部屋が散らかり放題だし、キッチンはあるのに使ってる形跡無いし⋯⋯」
言われる程、汚くないはずだけど。そう思って見回すも、よくよく見れば本が開いた状態で落ちてたり、気まぐれで手に入れた魔杖が捨てられていたりと物が乱雑に置かれている。
今更だし、言われて気付いたけど⋯⋯私の部屋汚かったんだなぁ。
「⋯⋯正直に言うと帰りたくないというのが本音なの。家に帰りたくない。帰っても親戚達が庇ってくれると思えない。他の土地に住むにもお金が無い。だから、お願い。私をここに住まわせて。私にできることなら、何でもするから」
「はぁ⋯⋯。年頃の女の子が『何でも』とか簡単に言っちゃダメよ。私みたいに年増盛なら別だけど」
「え、年増盛? 文字通り盛ってない?」
「盛ってない。断じて盛ってない」
何を言ってるのか分からないなぁ。私、何かおかしな事言ったかな。既に童女と呼べる年頃を過ぎたけど、例外を除けば死ぬまで見た目は変わらない。だから、私は常に一番美しい時期をキープできてるんだし。
「あー、うん。それならいいけど。話を戻すけど、ここに住んでもいい? 服はティラノスのを借りるとして⋯⋯炊事や洗濯、掃除もするから⋯⋯ね? お願いっ」
「⋯⋯⋯⋯」
どうするべきだろう。この娘の主張も分かる。帰る家が無いから、住まわせてほしい。それは問題無い。だけど、私は竜だ。人間とは相見えない存在。それに、この娘は見るからにまだ幼い。幾ら本人の希望があるからとはいえ、私と一緒に居るのは⋯⋯私が育てるのは良いのだろうか。
──いや、違うか。私の基準で幼いと言っても、人間基準ならカノンも成人してる。なら、彼女の判断に委ねよう。平穏な日々を送りたいけど、静かなら同居人の1人や2人、居ても問題無い。流石に10人とかなれば困るけど、そこまでは流石に増えないだろうし。
「分かった。なら──っ!」
一瞬、ほんの一瞬だけ頭に鋭い痛みが走る。稀に起きる頭痛だ。あいつの呪いか何かだろう。全く以て問題は⋯⋯無い。
「ど、どうしたの?」
「⋯⋯ううん、大丈夫。カノン、いいよ。一緒に暮らしても」
「ほ、本当!? ありがとうっ!」
自分から住ませてほしいと言ったのに、改めて聞き返すのはなんでだろう。まぁ、嬉しそうだから何でもいっか。やっぱり、今の私は人の恐怖や悲しみの顔よりも、こうした嬉しそうな笑顔の方が心地良いらしい。とても和やかな気分になれる。
「あ、ティラノス! 改めてよろしくね!」
「改めて⋯⋯うん。私は閑竜ティラノス。カノン、これからよろしく」
「よろしくお願いしますっ! ⋯⋯ところで『閑』って何? 私が聞いた事あるの、暴竜なんだけど⋯⋯」
「暴竜の頃の事は黒歴史だから⋯⋯。だから、今は閑竜。名前通り、のどかに暮らしたいから」
「あー、なるほど。じゃあ、早速掃除するね! ティラノスはゆっくりしててねー」
カノンは私が何か言うよりも前に、近くにあった本を手に取り、それを境に散乱する物を片付け始めた。
少しばかりお節介だが、今の私にはちょうどいいのかもしれない。のんびりとし過ぎて、ろくに片付けもしなかったのだから。流石にゆっくりしてて言われても、この家の主は私なのだから、私が片付けない訳にもいかない。それに、自分と千歳も離れた人間にばかり頼るのも竜としての名が廃る。
そう思い、物を片付けるカノンの元へと向かい、同じように物を整理し始めた。
用語解説その6
『人間』
イデア大陸において最も数の多い種族。その数は総人口の7割を超える。力も知恵も魔法も特に得手不得手がないバランス型。平均寿命は100年程度。個々の力は弱いが、ずる賢いため、数で敵を制圧することが多い。
カノン「今回からはアタシも参戦! ティラノスと一緒に色々教えていくねっ!」
ティラ「教えるわけじゃない。ただ感想述べるだけ。⋯⋯数は力と言うけれど、それを種族で表してるのが彼らな気がする。過去の私に一番抵抗していたのも、人間だった」
カノン「多勢に無勢だね。多いからこそ、この国を長く統治できてるんじゃないかな。弱い人の気持ちが分かるって事だろうしね!」
ティラ「楽観的。でも、嫌いじゃない」