最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
朝食を食べた後、私達は魔術の練習のために森の中に移動した。朝なのに太陽は霧に遮られ、まだ若干暗いらしい。私は暗視があるから安し⋯⋯問題無いけど、カノンはそのせいで時々木の枝に当たってる。地味に痛そうだ。
「⋯⋯カノン、この先に魔猪が見えた。戦闘準備して」
十数m程の前方に見えた魔猪を見据えながら、カノンを手で制してその場に止まる。幸いにも、まだ相手は気付いてない様子で、植物を食べているようだ。
この魔霧の森に棲む魔獣は主に魔猪。稀に植物の魔獣やスライムも見るが、食べれないので狩る必要性は感じない。ただ、今回ばかりは練習だから、見つけるならスライムの方が良かったのだけど。
「あ、あれだね。⋯⋯最初から実戦って大丈夫かな⋯⋯」
「まずは今の力を見たい。危なくなったら私が守るから安心して」
「う、うん⋯⋯! すぅー、ふぅー⋯⋯」
カノンは深呼吸して呼吸を整え、手に魔力を集中させる。
私と比べて微々たる魔力だが、マナが遮られるこの森の中で、それなりに溜めれてるのは素直に凄いと思う。もちろん、人間にしては、という前提があるけど。
「よ、よし、行くよ⋯⋯
詠唱とともに、カノンの右手に集中された魔力が、炎の塊として放出される。それは弧を描いて食事中の魔猪の背中へと命中した。
「ぶふぉぉぉぉ!」
「あっ⋯⋯」
が、それは大した効果にはならず、魔猪の背中に少しの火傷を残すだけとなる。魔猪も流石に私達に気付き、叫び声のような声を出しながら真っ直ぐと向かってきた。それを目指できたカノンは慌てて逃げ出す。
「や、やっぱり効かないよー!」
「うん、魔猪にやられてたから、もしもとは思ってた。だけど、これ程効かないとは。でも、逃げ足速いのは良い点。命があれば、何度でもやり直せる」
「て、ティラノス! 前! 前見て!」
カノンに言われて前を見る。と、目前にまで魔猪が迫っていた。私は落ち着いて右手を前に出し、魔猪の突進を受け止める。そのまま逃げられないよう、頭を強く握る。
やんわりと右手に衝撃が来たけど、文字通り痛くも痒くもない。魔猪は手を振り解こうと必死にもがいてるけど、私の力からは逃げられないようだ。
「んっ。⋯⋯軽い。実戦終了、もう落ちていいよ」
「ぶふぉ──っ!?」
頭を離してすぐに体を捻り、尻尾で勢いよく頭を殴って脳を揺らす。衝撃に耐え切れなかった魔猪はしばらくそのまま立っていた後、泡を吹いて気絶した。
「す、すご⋯⋯。流石暴竜⋯⋯」
「だから暴竜じゃなくて閑竜ね? 暴れないからね?」
「あ、ごめん。で、この後どうするの? その猪は持って帰る?」
「絶対『ごめん』とか思ってない。⋯⋯カノン、ちょっとこっち来て」
「え? 何──きゃっ!?」
そう呟きながらも尻尾で猪を掴み取る。そして、カノンを呼んで両手で抱え上げた。落ちないように右手に座ってもらうように抱え、もう片方の手で腰を支える。何故か頬を赤くしてるけど、大丈夫だろうか。
「こ、この抱き方恥ずかしいんだけど⋯⋯っ」
「あぁー。そうかな? 誰も居ないし大丈夫と思うよ。さぁ、一旦帰ろ。家で魔術練習の続きをしよう。猪は私が持って帰るね」
そう言って、翼を動かし宙に浮く。
「え、えっ!? このまま飛ぶの!?」
「心配無用。絶対に落とさないから」
「そ、それは心配して──なぁいっ!? わ、私⋯⋯飛んでる!?」
「カノン、落ち着いて。それと飛んでるよ」
濃い霧の中、私は家を目指して真っ直ぐと飛ぶ。抱えてるカノンが騒がしいけど、こうして飛ぶのも悪くないと感じる私がいる。本当に、私は変わってしまったらしい。昔なら、思うはずの無い感情が芽生えていたから。──この騒がしいのが、楽しいという感情が。
用語解説その8
『魔術と魔法』
5にて解説した魔術とは別に魔法と呼ばれるものも存在する。魔法は魔術とは違い、詠唱も必要なければその代用も必要ない。文字通り思い描いたありとあらゆる事を可能とする。ただし魔力だけは必要で行使した魔法の力に伴いその分消費する。
ちなみに、魔術の名前の元ネタは下級→英語。中級→ラテン語。上級→ギリシャ語
カノン「魔法は昔からおとぎ話みたいに聞かされてたけど、王族の一部は使えるらしいね」
ティラ「見た目だけじゃ何も分からないから実際は知らないけど。王族なんて噂の1つや2つ、自由に改変しそうだから」
カノン「うーん⋯⋯それは言えてるね!」