最強竜っ娘の自由気ままなゆったり生活 作:百合好きなmerrick
「さぁ、ティラノス先生の魔術講座! 始まるよ!」
「⋯⋯カノン、やめて。見てるこっちが恥ずかしい」
私達は今、家の前の庭で魔術講座と称した魔術の勉強をしている。カノンが若干ふざけてるけど、これは厳しくしても良いという事で良いのだろうか。
「⋯⋯まずは魔術を知る事から始める。魔術とは知識の力。知ってるだけでも強くなる。もちろん魔力という大前提があるけど」
「うん。⋯⋯でも、ティラノス。私もそれなりに知ってるよ? 一応、
「使えても自慢にならないよ、下級魔術は」
ぶっちゃけると、下級魔術なんて誰でも使える。そこら辺の魔物でも使うのを見た事がある。もちろん、私が使う下級魔術と名も無き魔物が使う下級魔術では別物だけど。
「うっ⋯⋯。そ、そうかなぁ」
「そうだよ。まぁ、魔力さえあれば下級魔術も上級に匹敵する程になるけど。ちなみに私も下級魔術の
説明しやすいように用意していた黒板に、文字を書く。
「まず、魔術とは何か。ある大陸では奇跡とも呼ばれるそれは、魔力を消費する事で文字通り神秘を引き起こす事ができる
「うん、私も詠唱をよくするよ。動作って覚えにくいしね」
基本がそうであって、私は詠唱よりも動作でよく魔術を行使する。何故かと言えば音を出して魔獣に気付かせないため、というだけなのだけど。
「それで、魔術には属性があって⋯⋯」
「基本は火、水、風、土、闇、光。それと無属性だよね!」
「私のセリフ取らないで。まぁ、合ってるけど。魔術は全て人には得手不得手があって、使いやすいのと使いにくい属性があるよ。ちなみに私は光と火が得意。カノンは?」
「あ、私も同じだよ! というか、火と光以外、ろくに使えないんだけど⋯⋯」
カノンの顔が僅かに残念そうな表情へと変わる。でも、私は少し嬉しかった。初めて一緒に住む人間が、私の得意属性と全く同じだったなんて。何か運命的なものも感じる。──あまり深入りしては別れが寂しくなるだけなのに、嬉しいと感じてしまう。
「ううん、そう悲観する事ない。1つの属性を極める事で、英雄になる人も居る。逆に多く使えても、極めなければ意味が無い。だから、魔術を習うなら少ない方が都合が良い。覚えやすいしね」
「⋯⋯そっか。うん、分かった。頑張るね」
笑顔に戻ったその顔を見て、安心した私は更に黒板に文字を書き込んでいく。
「その心意気、大切にね。さて、同じ魔術でも階級がある。下級、中級、上級。基本的に上になる程強力で覚えるのも大変。経験を積めば誰でも使えるようになるし、
「え? それって気にしないとダメじゃない? 魔力下がっちゃうなら⋯⋯」
カノンがそう言うも、私はそれを首を横に振って否定の意を伝える。
「ここに住むならという話。この霧に慣れれば、外に行けば大抵の人には勝てる。話戻すけど⋯⋯要は、大切なのは何を覚えるかよりも魔力の量と質を高める事。量が多くなれば使える量が増え、質が高まれば魔術の質が高まる」
カノンに見せるようにして、カノンが先ほど使った下級の炎の魔術を使う。手のひらで燃える炎は、カノンの魔術と比にならない程、荒々しくも力強い。
それも当たり前で、千年以上生きる私が、カノンよりも劣るなんて事があってはいけないのだけど。
「そういうわけで、今日からは魔術を覚えるよりも
「100回⋯⋯。ティラノス、私そんなに魔力多くない⋯⋯」
「あくまでも例え。毎日100回を目指して続ければ、いずれ100回くらい余裕になる。でも、無茶はダメ。魔力切れを起こして気絶なんかされたら、こっちも困るから」
それに、私は回復魔術も、回復魔法も使えない。回復魔術が多く分類されてる光属性が得意なのに。だから、カノンが気絶すればどうすれば良いのか分からないのだ。今まで散々暴れてきた結果だ。今更覚えようとしても、自己回復以外に回復手段は覚える事ができなかった。その自己回復も種族特徴の力だから、結局私には回復魔術は使えない事になる。
「⋯⋯うん、分かった。ティラノスって優しいね。暴竜と呼ばれてたのが嘘みたい」
「本当だよ。あ、そういう事じゃないか。まぁ、私でも反省した、って事だよ。それよりさ、昼ご飯食べよ? お腹空いた」
「ははっ。さっき食べたばかりなのに、食いしん坊だねー、ティラノスは」
「普通だよ。竜だから。じゃあ、お願いね」
そう言うと、カノンは「了解!」と元気よく言って家に戻った。それを見届けた後、私は1人で黒板に書いた文字を消し──
「第一村人発見! あ、村じゃないし、人じゃないか。初めまして。ねぇ、ここに暴竜が棲んでるって聞いたんだけど⋯⋯知らないかな?」
突如空から、1人の銀髪の少女が舞い降りる。明らかに人の見た目をした少女は、ニッコリと笑い、人ならざる牙を見せる。それを見た私は、改めて自分が暴竜だったという事を思い知らされるのだった。
用語解説その9
『イデア神話』
イデア大陸に伝わる神話。主たる神の名前をイデアと言い、大陸の主たる信仰はイデアへ捧げられる。この神話は主にイデアに纏わる話である。明確な容姿は存在せず、彼(もしくは彼女)が何処に居るのか、そもそも本当に存在するのかは不明。しかし、それでも大陸の者達はその神に信仰を捧げる。
カノン「イデア様はもちろん知ってるよー。なんたって私達の御先祖様を創造した神様だからね!」
ティラ「イデアは所謂創造主。別名母なる神。人間達も千年経てばあいつを忘れる。いい気味だ」
カノン「ティラー? 顔怖いよー⋯⋯?」