Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――例えそれが故意でなかったとしても、もう戻れない


Act81 Betrayal certification

ギルヴァによってS10地区前線基地に運ばれてきた鉄血のハイエンドモデル 処刑人は念の為に基地にある隔離用の病室に運ばれていた。運ばれてきた当初は目覚めはしなかったものの、ギルヴァがやり残した仕事を終えて、マギーと共にS10地区へと戻りだしているには既に目を覚ましていた。

その事は病室で彼女の看病をしていた代理人によってシーナへと伝えられたのだが、何らかの考えを持っていての判断か、その処刑人がいる病室に顔を出しに行くと言い出したのだ。

流石に基地の指揮官が現状敵か味方すら分からない相手に顔を出すのは不味い上に何かあってからでは遅い。代理人は反対したのだが、シーナはそれでも、と代理人の反対を押し切ろうとしていた。

このままではお互いに譲らない状況が続くと判断した代理人はノーネイムを呼び出し、彼女にシーナの護衛をするように命じた。ノーネイムと一緒なら良いという条件を出し、シーナはそれを了承。

そして今隔離された病室では、処刑人の他、シーナ、代理人、ノーネイムがこの病室にいた。

沈黙が支配する中、状況に耐えかねたのか処刑人がシーナへと話しかける。

 

「で?基地の指揮官が俺に何の用だよ。恨みでも晴らしに来たのか?」

 

「そう見える?」

 

「…」

 

質問に質問で返された事により、シーナへと睨みを利かせる処刑人。

処刑人の睨みより、悪魔の方がずっと恐ろしい。

悪魔という恐ろしさを知っているからこそシーナは臆する事なく、処刑人へと微笑み返す。

 

「ちっ…」

 

それを見て処刑人は小さく舌打ちをした。

敵である自分を保護し、あまつさえこうやって顔まで見せにきた。それどころか自身が気付かぬ内に、斬り落とされた右腕部分には何かのアタッチメントまで取り付けられているしまつ。

最早何を考えているのか分からない。

対面しているシーナに処刑人はそう思わざるえなかった。

 

「さて…」

 

微笑みから一転。

シーナの表情が真剣な面持ちですり変わる。

 

「自分がどうしてここにいるのか。そうなってしまった原因は覚えている?」

 

「…一部だけならな。アイツと戦った事。…そして」

 

その先を言おうとして処刑人の表情に影が落ちる。

だが数秒も経たず内に彼女は口を開いた。

 

「俺が暴走して、あいつを…狩人を殺しちまった事はな」

 

魔に飲まれていた時ははっきりと思い出せなかった事も、今となっては処刑人にも覚えていた。

そして暴走して大事な戦友を殺してしまった自分自身が何よりも許せなかった。

戦友を殺しておきながらのうのうと生きている自分に殺意を抱かずに入れなかった。

 

「どうして俺を救った?お前らからすれば俺は敵だぞ?助けずに殺してくれた方が幾分かマシだ」

 

何故生かされたのか。

本来であればそれを知る本人(ギルヴァ)が語るべきなのだが、この場に彼はいない。

そして事情を知る代理人が処刑人へと告げた。

 

「…狩人が暴走する貴女を救ってやって欲しいと依頼したから、と言えば分かりますか?」

 

「ッ…!?」

 

代理人にそう告げられた瞬間、伏せていた顔を勢い良く上げる処刑人。

有り得ないと言わんばかりの表情で見せ、代理人の方を見た。

目で本当かと伝えてくる処刑人に代理人は静かに頷いた。

 

「ほぼ瀕死だった狩人がギルヴァに貴女を救ってほしいと依頼したのです」

 

「あいつは…狩人はどうなったんだ!?」

 

「依頼したの後…全身が氷に包まれ砕け散り…そのまま先に逝きました」

 

「…ッ」

 

「…力尽きそうになる最後の最期まで暴走する貴女の事を心配していたと彼からそう聞きました。例えそれが裏切り行為だとしても狩人は貴女の事を思っていた。…彼女にとって貴女は大事な友なのだから」

 

どうしてそうなってまで狩人が自身を救ってほしいと言ったのか処刑人には理解できなかった。

しかし代理人の真実を伝えられ彼女は理解した。

 

「狩人…」

 

そっと処刑人の瞳から一筋の涙が流れる。

自分を救ってほしいなんて依頼しなくても良かった。自分なんか放って戦場から離脱すればいい。

だと言うのに自分を心配くれた彼女に何て言えばいいのか分からずにいた。

 

「すまねぇ…俺なんかの為に…」

 

だから彼女は最初に謝罪の言葉を口にした。

そしてこんな自分の安否を最後の最期まで気に掛けてくれた狩人に…

 

「……ありがとう…」

 

心からの感謝を告げるのだった。

 

 

何故生かされたのか。その事実が明らかになった事で話は別の話へと切り替わっていった。

シーナは一番に気になっていた事を処刑人へと尋ねる。

 

「…それで今でも貴女は鉄血に属したままなのかな」

 

「いや、暴走してたとは言え俺はあいつを手にかけちまったからな。…寝ている際に権限とか色々切られちまっているからな。向こうは確実にこっちを裏切り者扱いだぜ」

 

「となると…今は完全なフリー?」

 

「まぁ…そうなるんじゃねぇか?」

 

それを聞き、シーナは指を顎に当てつつ考える素振りを見せる。

すると処刑人も気になっていた事があったのか、シーナにではなく代理人へと尋ねた。

 

「なぁ、そいつは誰なんだ?」

 

処刑人が見ている先にいるのはノーネイムだった。

彼女はシーナの一歩後ろで控えて佇んでおり、処刑人が自分の事を聞いているのだと理解すると軽く自己紹介をする。

 

「ノーネイムだ。色々あって此処にいる」

 

「いや…そりゃそうだろうけどよ…」

 

(流石にそれだけじゃ分からねぇよ…)

 

そこに代理人が補足を入れる。

 

「彼女は私ですら知らなかったハイエンドモデルです。ノーネイムという名前は本当の名前ではありませんが、それは事情があって今の名前を使っています。パワーは私以上で、そして私の大事な愛娘です」

 

「へぇ…パワーが代理人以上なのは驚きだがよ…娘ってどういう事だよ!?お前結婚でもしたのか!?」

 

代理人の説明を受けて、処刑人はノーネイムが大事な愛娘だという事に驚かずいられなかった。

その事に代理人は頷き、彼女は啞然とするしかなかった。

 

「マジかよ…。俺の中で鉄血のハイエンドモデルで、絶対独身になるよな、こいつ…ランキングで一位だった代理人が誰よりも先に結婚!?結婚詐欺とかじゃねぇよな?!」

 

「後で覚えていなさい、処刑人。軽くぶちのめしてあげますので。…兎も角、私は結婚しています。結婚相手は貴女が戦った黒コートの悪魔ですよ」

 

「はあっ!?あいつだとぉ!?」

 

自分が知らない内で代理人が一歩どころか数百歩先を行っている事に処刑人は最早驚かずに居られなかった。

それどころか代理人の結婚相手がギルヴァとか想像の域を超えていた。

最早頭を抱える事しか出来ない処刑人。そこに拍車をかけるかの様にシーナが口を開いた。

 

「フリーだし、鉄血のハイエンドモデルなら代理人やノーネイムもいるからねぇ…このまま貴女も此処に置いておきましょうか」

 

「えっ!?」

 

敵だったというのに、シーナの発言に処刑人は驚かずにいられなかった。

もうどう反応すればいいのか分からない処刑人にシーナは微笑みながら答えた。

 

「色々あるけど…まぁ放っておけないからね。うちで良ければ過ごしていって。その分、貴女の力を貸して?私一人じゃ何にも出来ないからね」

 

「…敵だった奴でもか」

 

「今は違うでしょ?それなら問題ないじゃない」

 

例えそれが敵対していた者であろうと受け入れるシーナ。

最早悪魔という存在を受け入れてしまっている時点で相手が鉄血のハイエンドモデルだろうと気にしてはいなかった。ある種それは彼女の強さかも知れない。シーナ本人が気付かずとも、周りにいた代理人やノーネイム、そして初めて会ったばかりだと言うのに処刑人もそう思った。

 

「それなら…まぁ、えっと……世話になる」

 

だからこそ処刑人は律儀に頭を軽く下げてシーナの提案に乗る事にした。

その事にシーナは微笑み、頷く。

彼女が見せるその微笑みは聖母の様で、優しく美しい笑みであった。

 

 

処刑人がここに残る事が決定し、シーナは溜まっている執務を片付ける為に病室を出て、今居るのは処刑人、代理人とノーネイムがいた。

すると代理人は処刑人に言っていた事に気になる事があったのか、その事について言及した。

 

「裏切り者扱いですか…。そうなると裏切り者を始末する者を送ってきそうですね」

 

「いや…もう動いているかも知れねぇ。俺が知る限りじゃあ恐らくな」

 

それを聞き、代理人の表情が険しくなる。

その様な動きが起きていても可笑しくないとは思っていた。そして送られてくる刺客にもある程度は予想していた。

すると代理人の隣でいたノーネイムが処刑人へと問う。

 

「その刺客…誰か分かっているのか?」

 

「いや、分からねぇ。そう言った事は知らされねぇからな」

 

「そうか」

 

沈黙が訪れる。

そこに病室のドアをノックする音が室内に響いた。

ノーネイムがドアへと向かい開くとそこに立っていたの後方幕僚のマギーだった。

彼女の手にはあるものが握られていた。

 

「マギー、戻ってきていたのか」

 

「はい、先程。彼女は目覚めたと聞いて飛んできました。ある物を渡したいんですが…良いですか?」

 

「?…まぁ分かった。入ってくれ」

 

ノーネイムの許可を受けて、病室内へと入るマギー。

そのまま彼女は処刑人の前へと立ち、軽く一礼する。

ここの基地の一人だと判断した処刑人はマギーへと声をかける。

 

「あんたは?」

 

「マギー・ハリスン。ここの後方幕僚を務めさせて貰っています」

 

「そうかい。で?その後方幕僚が何の用だよ」

 

「大したことではないですよ。只、これを渡しに来たのです」

 

「それは…義手?」

 

マギーの手には握られていたのは、義手であった。

一見少し見た目をかっこよくした義手にしか見えない。しかしそれが普通の義手ではないだが処刑人がそれを知る筈もない。

不思議そうな顔を浮かべる処刑人にマギーは笑みを浮かべたまま彼女の右腕部分に取り付けられているアタッチメントを指さした。指を指され、漸く自身の右腕に取り付けられていたそれに理解がいった処刑人。

しかしある疑問がよぎった。

 

(後方幕僚が何で義手なんか作ってんだ…?)

 

だが敢えてそれは問わず、マギーの作業の元、処刑人の右腕に義手が装着される。

試しに義手を動かす処刑人。何ら違和感なく動作し、処刑人自身も違和感を感じる事はなかった。

それどころかよく馴染む程であった。

礼を伝えようとした時、代理人がマギーへと尋ねた。

 

「何か積んでますね?」

 

「あ、分かりますか?えぇ、積んでいますよ。敵に向かって強烈な電撃は放つ機能が搭載されていますよ」

 

やっぱり…と呆れた表情を浮かべる代理人。

それを聞いていた処刑人は目を丸くし、マギーを見つめ、問う。

 

「あんた…マジで何者だよ…?」

 

この後にマギーの正体、悪魔の事、魔工職人の事について、目覚めたばかりの処刑人の為にマギー主催による勉強会が開かれたのは言うまでもない。

 

 

 

―おまけ―

 

 

「だぁぁ~…」

 

勉強会を終えて、やつれた表情でベットへと倒れ込む処刑人。

この場には代理人やノーネイムはいない。勉強会に参加せずとも一度は説明は受けているので不要だからである。

 

「色々分かったけどよ…ぶっ飛んでやがるぜ…」

 

「まぁこれくらいしないと後々が厄介ですよ?」

 

椅子に腰掛けつつ、微笑むマギー。

そうこれくらいしないと、ここではやっていけないのだ。悪魔という存在と深く関わっているのは間違いなくこのS10地区前線基地なのだから。

 

「分かっているよ…」

 

ここに身を置く事になった以上、受け入れるしないと判断する処刑人。

後は時間をかけて理解するほかないのだ。

 

「さて、私は行きますね。先程勉強会の内容の他、義手について聞きたい事があれば何時でも。義手も色々なタイプがありますので」

 

「例えば?」

 

指を顎に当てつつ、面白い物があっただろうかと記憶の棚から引っ張り出していくマギー。

そして面白いのがあったのか、笑みを浮かべながらその義手の詳細を話した。

 

「そうですねぇ…。青い筒の形をしていて、砲口からエネルギー弾を放つ様な義手とか?」

 

「おい、それって装着した途端挙動が変化したりしないか!?俺の気のせいであって欲しいんだが!?」




悪魔であろうと鉄血のハイエンドモデルだろうと受け入れるナギサちゃん。

そして故意では無いにしろ、裏切り者扱いになってしまった処刑人はこのままS10地区前線基地におきます。
そして処刑人の魔改造はまだまだ続くよぉ~!


それとこれはまだ先の話でございますが、大型コラボ作戦第二弾を考えております。
どの様な内容になるかは未定です。…参加してくれる人おるんかなぁ
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