車内でグローザが選曲した曲が流れており、車両はS10地区へ向かって走っていた。
今回の元凶であったモンスターは無事討伐され、勝利を納めた事により歓声があがっている最中にも関わらず、静かにギルヴァらは早々にその場から離れていた。
自分達は飽くまでも討伐の協力しただけ。事後処理は向こうの仕事。残っていても意味がないと判断した上での行動であった。去ろうとした際にvectorに声をかけられたがギルヴァは「別の依頼がある」と伝えた上で、「今回の様にモンスター、または悪魔、幽霊…そういう依頼があればうちに連絡してくれ」と店の連絡先を教え、そして今回の作戦で亡くなった者達へのお供え物として、自身の魔力で生み出した群青色に輝く花を渡したのち、その場を去った。
「しっかしとんでもない戦いだったな。元凶も馬鹿みてぇにデカいし、あまつさえは竜にロボット、俺達と似ている様で違う狩人も出てくるし…隣の地区の基地やS13地区の指揮官に…EA小隊か?そこも来てたんだろ?もうカオスってレベルじゃねぇだろ」
あの戦いで起きた事を思い出しながら口を開くのは座席に腰掛け、背凭れに体を預ける処刑人。
今まで彼女が経験した戦いの中で今回の一件は体験した事のない戦いだった。悪魔どもを相手取る前にこの様な戦いに経験するとはなぁと彼女は心の中で思っていた。
「だが中々に刺激のあるパーティーだったがな」
ソファーに寝転がり雑誌に読みながら戦いの感想を述べるブレイクに処刑人はどこか呆れた表情を浮かべながら言葉を投げかける。
「そう思えるのはお前だけだって、ブレイク」
「そうかい?」
どこまで余裕のある態度を崩さないブレイク。
二人の話を聞いていたグローザも少し呆れた表情を浮かべながら、処刑人の隣に腰掛ける。
そんな中、ノーネイムが何か気付いたかの様に助手席に座り45を膝の上に乗せたギルヴァへと疑問を投げかけた。
「しかし戦いが終わってすぐにあの場を後にしている訳だが…何か考えがあっての行動なのか、父よ」
「…大したことではない」
どこかその声は知られたくない様な感じであり、ノーネイムは不思議そうな表情を浮かべる。
だが深く追求するつもりなかったノーネイムだったが、聞いていたブレイクが暴露した。
「あっちのFALにしつこく付きまとわれていたのさ。おまけに個人の電話番号を教えられそうになってたぜ」
その瞬間バンが急停止した。
突然の急停止に誰もが態勢を崩し、ギルヴァとブレイク以外の者達が代理人の方を見つめた。
運転手である代理人は何故か下へと俯いており、UMP45も顔を下へと向けていた。
この絶対零度と化した空間で元凶たるブレイクは何食わぬ顔で周りを見回したのち、そのまま広げていた雑誌を自分の顔を隠す。
「代理人…」
「…分かっていますよ、UMP45」
ギルヴァの妻だからこそ分かるのだろう。
二人が今からしようとしている考えは同じであった。
「「少しそいつにオハナシしないと」」
「やめろ」
制止の声を聞かずに行動しようとする二人を止めるのにギルヴァが説得したのは言うまでもない。
何とか説得して30分後。
全員を乗せたバンはS10地区へと向けて走り出していた。
助手席に45を置き、ギルヴァは後ろの座席に腰掛けていた。対面には処刑人が腰掛けている。
「そういや、隣の地区に二代目クイーンを送ったとシーナから聞いたけどよ。今誰が使ってんだ?」
「さぁな。だが大体は予想がつく。いずれは模擬戦の相手に俺が出向いても良いかも知れん。最もそういう依頼があればの話だがな」
「ふーん…まぁ今は聞かずにしておくぜ。そういう楽しみは後に取っておくのがいいからな」
その時がいつにはなるかは誰にも分からない。
しかしその様な依頼があればギルヴァは出向くつもりでいた。最も彼は加減を知らない為か地獄の模擬戦になるかも知れないが。
対して処刑人は二代目クイーンを使っているその者と今の自分の力、技量がどこまで通用するのだろうかと思っていた。彼女もまたクイーンを使う者の一人。推進剤噴射機構の扱い方を理解し、今は「Max.Act」の練習に励んでいる。判定がシビアな為か発動させる回数は少ない事もあってか、最近では自身で生み出したのか全開放に至らずとも一段だけ解放する技術「Ex.Act」を生み出したりしている。
「もしそういう依頼があったなら俺も同行する。俺の相棒を参考に作られた銃を扱っているそいつに会ってみたいからな」
「…勝手にしろ」
(…こいつの銃の扱い方を見ればどうなる事か)
レインストームやハニカムファイアなど現実離れした技を良く使うブレイク。
彼の技術を見れば相手がどのよう反応を見せるかギルヴァは何となく察しがついていた。
恐らく銃やクイーンは二人に任せ、自分に教えを乞う者はいないだろうとも判断していた。何故なら空間を切ったりといった芸当は愛刀である「無銘」だからこそ出来る事なのだから。
だがそれでも相手して欲しいと言うのであれば受けるつもりでいるのだが。
「そう言えばこれって報酬出んのか?」
ふと気になったのだろう。ブレイクが今回の報酬について声を上げた。
それへと答えるのは誰一人もいない。飽くまでも今回の一件は要請であり、便利屋に依頼された案件ではない。
報酬が出るかどうかすらこの場に全員ですら分からなかったのだ。
「どうだろうな。出るならそれで良し。でなくてもそれは仕方ないと判断すべきだろう」
「ま、そうだろうな。悪魔がらみじゃねぇが、置いといたら厄介な話だったしな。そもそも報酬目当てで動くつもりなんてなかったからな」
ブレイクとて報酬の件に関しては単に気になっていただけに過ぎないので深く追求するつもりはなかった。
「さぁて、帰ったらストロベリーサンデーでも食べたいぜ。ローザ、戻ったら作ってくれ」
「昨日も食べたでしょうに…。まぁ今回は色々大変だったから特別に作ってあげるわ」
よし!とガッツポーズを決めるブレイク。やれやれと言いながらもグローザは優しく微笑むのだった。
S10地区へと戻っていく車両。
それを遠くから見つめる者がいた。それはかつてS10地区を目指していたブレイクを遠くから見つめていたあの少女だ。
長く伸ばされた赤き髪は何かの影響があったのか大半が白く染まっているが、かつての赤色もまだ残っていた。その事によりグラデーションがかかった様な色合いへと変化していた。かつて着ていたドレスは何処へ行ったのか、今はまるでコートを羽織り、ホットパンツを穿いていた。頭に生えていた角部分には偽装のヘッドパーツと取り付けれており、何よりも戦闘服らしきものを身につけていた。手には何処で手にしたのか、S11地区後方支援基地での作戦にてグリフィン側を苦しめてきたヘル達の上位種「ヘル=バンガード」が持っていた大鎌を持っていた。
走り去っていくバンを見つめながら、彼女は口を開く。
「この感覚…やはり彼ですね」
片言だった口調は見違えたかの様に流暢な口調へと変わっていた。
そして彼女はあのバンに、かつて醜悪な姿をしていた自身と激闘を繰り広げた彼が乗っている事を確信した。
今からあのバンを追って姿を晒そうかと思いつつも今はそれをする必要ないと判断。その時、コートの懐に入れていた通信機のコール音が響いた。
彼女はそれを取り出し、通話できる状態にした後、それを耳に当てる。
『やっと出おった。…頼んだ調べ事は済んだかの、ルージュ』
「はい。どうやら彼女たちが送られた先は貴女が予想していた通りでした」
『やはりか…』
彼女…ルージュからの報告を聞き、真剣みが帯びた声を聞かせる相手。
そんな声を聞きながらも彼女は報告を続ける。
「グリフィンの指揮官でありながら人権保護団体過激派との繋がりがあったあの悪魔、そしてS11地区後方支援基地の指揮官であったあの男も、秘密裏に"そこ"とつるんでいたみたいです。…グリフィン側が知らないのは、今時の最先端技術ではなく、アナログな方法で連絡を取っていた様です」
『成程の…。S10地区前線基地が行動起こした事により、存在が知られる前に手を引いたという訳か』
「そう見ていいでしょう」
『…そうか、分かった。戻ってきてよいぞ』
「分かりました。…帰りに何か美味しい物買って帰りますからね、"ダンタリオン"」
『うむ!楽しみに待っておるぞ』
それを最後に通信を切るルージュ。
もう見えない所まで走っていったバンの方を向き、"彼"へと言葉を投げかける。
「また会いましょう」
そう残して彼女はその場から去っていくのだった。
果たしてルージュと呼ばれる彼女と通信相手のダンタリオンが調べている事は一体何なのか。
それが明かされる日は決して遠くない。
決戦時はうちの面々は地道に戦っていたという事で許してね。
さて…模擬戦は依頼があれば動くとしましょうかね。
兎も角コラボの参加していた皆さま、お疲れ様でした。
そして今回のコラボの主催者である犬もどき様!参加させて頂いてありがとうございました!
今回の作戦で命を落とした方もいるので、ギルヴァからそちら所属のvectorにお供え用の魔力で錬成した群青色に輝く花を渡しましたので、ご自由にお使い下さい!
因みに最後の部分ですが、これ…実は大型コラボ作戦の第二弾の伏線でもあります。