Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――飛翔の時


Act94 leviathan

大型機動兵器「リヴァイアサン」の運用試験当日。天気にも恵まれ、風一つすら吹いていない。

S10地区前線基地から外へと大きく突き出したカタパルト。そして射出機の上ではラヴィーネを身に纏うノーネイム佇んていた。至る所に装着された白き装甲、ヒール状の脚部装甲、銃剣盾が一体化した複合兵装が両手に握られている。そして駆動音をたてながら両肩の大型砲を干渉しない様に取り付けられた大型ウイングバインダーを前へ向けると背部に装備された中距離用の連射砲を自身の腰の横に展開。

顔、耳を保護する為のヘッドギアに装備された目を保護する為のバイザーが展開され、同時にフェイスマスクも動き出し、ノーネイムの顔面は保護バイザーとフェイスマスクによって覆い隠される。

そして最後は背中の配置された変形機構を備えた大型ブースターも動き出し、まるでその翼をゆっくりと広げるかの様にその姿を変形させた。

この姿はラヴィーネがリヴァイアサンとドッキングする際に必要な形態である。

形態移行済ませたノーネイムは無線で管制室に居るマギーへと変形を済ませた事を伝える。

 

「変形終了」

 

『了解。第二フェイズへと移行。昇降エレベーター、動きます』

 

着々と準備を整えていくノーネイムの周囲では万が一鉄血の攻撃があった時に備えて武装した戦術人形達が立っており、射出機の上に立つノーネイムの後方では駆動音を響かせながら昇ってくる昇降エレベーターからは大型機動兵器「リヴァイアサン」がゆっくりとその姿を露わにする。

複座式のコックピットブロック。二門の主砲。その下部に取り付けられた二基のクローアーム。主砲後方側面に配置されたミサイルコンテナ。コンテナ同士に挟み込まれた副砲。

リヴァイアサンの脚となるメインブースター、重武装化による機動力低下防ぐ為にミサイルコンテナの下部両端には円柱型サブユニットスラスター四基を装備。

そしてコックピットブロック後方に配置された折り畳み式超大型レーザー砲。使う際にはサブアームを用いて操縦士へと手渡す。これはリヴァイアサンの主砲をそのまま操縦士でも利用できるように携行火器用に改造したものなのだが、余りにも大型、かつ重量がある為操縦士が武器を動かして狙いを定めるのではなく機体を回頭させて狙いを定める必要がある代物。

一度放てばリチャージに時間を要する、取り回しの劣悪性など問題点は上がるが威力、射程は携行武器としてはずば抜けた性能を有する。

そして空飛ぶ戦艦とも言っていい大型兵器が、晴天広がる空の元、堂々とその姿を晒した。

 

「これが…」

 

「…リヴァイアサン。何て大きいの…」

 

完成されたリヴァイアサンを初めて目にする者は決して少なくない。万が一鉄血の攻撃があった際に即座に対応できるようにカタパルトの周囲で武装し警戒していた人形達はその巨体に圧倒されていた。

しかし今はそれに圧倒されていては駄目だと判断したのか直ぐさま周囲の警戒へと入っていく。

 

『台座の移動開始。リヴァイアサン、コックピットブロック第一座席の変形開始。ドッキングまで2.5秒』

 

カタパルトデッキにその姿を晒したリヴァイアサン。それを乗せた台座がその先で立っているノーネイムへゆっくり動き出した。ノーネイムとの距離が縮まる中、コックピットブロック第一座席が変形を開始。シート部分が収納され、まるで口を広げるかの様に専用の足場、専用の操縦桿が現れ、ラヴィーネ装着時のコックピットへと変貌を遂げた。

ノーネイムとリヴァイアサンの距離がほぼ無いとなった瞬間、リヴァイアサンとラヴィーネを繋ぐコネクタ同士が繋がる。共に一体化し、無事ドッキングが完了したと判断するとノーネイムは小さくホッと息を吐くがすぐさま頭を切り替え、機体の起動準備へと入った。

 

「ラヴィーネ、リヴァイアサンとのドッキング完了。各部、全兵装、異常なし。反重力システム作動確認」

 

『ゲートオープン。隔壁展開します』

 

ノーネイムの周囲を囲む様に隔壁が現れた事により、そろそろ飛び出すのだと感じた警戒に当たっていた人形達は素早くその場から離れ安全な所まで退避。ブースターの勢いで吹き飛ばされない様に身をかがめ、リヴァイアサンが飛び出すのを今か今かと待った。

リヴァイアサンの全てのブースターが点火。微量の火が吹き出しはじめる。

準備は整った。あとは発進許可を待つだけ。

 

「ブースター起動。出撃準備完了。指示を待つ」

 

『了解。安全装置解除。カタパルト出力安定。…コースは既に教えた通りです。あちらの地区では余り高度を下げ過ぎない様に気を付けてください。近隣の方々を驚かせてしまいますので。それとあちらの地区ではギルヴァさんらがそちらが無事通過した事を私達の方に報告する為に地表で待機していますが、ノーネイムさんは気にせず指定のコースを辿って下さい』

 

「了解」

 

『では…射出タイミングは貴女に譲渡します。いつでもどうぞ』

 

「了解した」

 

一度目を伏せてノーネイムは軽く息を吐く。

操縦桿を力み過ぎない程度に握り直すと伏せていた目を開き、操縦桿を軽く押し込んだ。

それにより緩やかにカタパルトの上をすべっていく機体。そして反重力システムによって機体が浮かび上がり空へと舞い上がっていく。

まだブースターを全開にしない。十分な距離が取れるのを待つノーネイム。

そして機体とカタパルトデッキとの距離が十分に取れた時、彼女は思い切り操縦桿を押し込んだ。

その瞬間全てスラスターノズルから一斉に火が吹き出し、瞬く間に機体は最高速度まで加速。空高くへと飛翔する。

今この時を持って、悪魔がこの青い空に姿を現した。

 

 

 

S09 P地区では町から離れた場所で一台のバンが止まっていた。

バンには代理人とギルヴァが乗っており淹れたての紅茶を飲みながら、リヴァイアサンが訪れるその時を待っていた。シーナとマギーからの指示で、リヴァイアサンが無事通過した事を報告する為に二人はこちらへと赴いていたのだ。

 

「そろそろか」

 

「そうですね。先程飛び立ったと連絡がありましたから」

 

リヴァイアサンの運用試験が始まったという連絡は既に受けている。ギルヴァも代理人もそれを知っており紅茶を飲み干すと二人は共に車外と出た。

雲一つなく広がる青空。見晴らしのいい位置にいる事もあり、移動せずともリヴァイアサンの姿を捉える事は出来る。そしてギルヴァの耳には遠くから風を切る音が届いていた。

 

(思ったより早いな)

 

―まぁあんだけデカいもんだしな。ここに来るのが早くても可笑しくないさ

 

(そうだな…。しかしまたここに訪れるとはな。顔で出せば良かったか…)

 

討ち損ねた時は秘密裏に動いていた彼であったが、こういう時ぐらいは連絡でも取るべきかと思うギルヴァ。

しかし今更それをする暇なくリヴァイアサンがこの地区上空に姿を見せるのは待つ事にした。

車体を背を預け、腕を組みながらその時が来るのを待つギルヴァ。その隣に並び立つ代理人も静かに愛する娘が乗るリヴァイアサンを待った。

その時であった。高度を高く取りながら空を駆け抜ける白き装甲を纏う悪魔が姿を見せた。

スラスターの光によって青い空に光の筋が描かれていく。もし運用試験が夜に行われていれば、その姿は流星の様に見えるであろう。

リヴァイアサンは指定されたコースを辿っていきながら、その巨体から想像出来ない軽やかな機動でバレルロールを披露。まるでこの空を自由に飛び回れる事を喜んでいるかの様である。

するとリヴァイアサンの脚部ブースターが動き出し、後方から前へと向けられた。それにより急激に機体は減速しつつ、脚部ブースターを真下へと向ける。そのまま機体はその場で滞空を開始した。

先程までの形態は巡航形態と言われるもの。この形態はアサルトモードと言われるもので、行うべきテスト内容に含まれている内容の一つである。それがこのアサルトモードが確実に起動するかというものだ。

そしてこの形態を搭載した理由がコックピット後方に配置されたあの折り畳み式超大型レーザー砲を使う為だけと一つしかない。しかし他の行動にも転用できる辺りは決して理由が一つとは言い切れないのも事実であるが。

今回の運用試験では折り畳み式超大型レーザー砲は使用しない形となっている。アサルトモードが確実に起動した事を確認したのかリヴァイアサンは脚部ブースターを元の位置へ戻し巡航形態と姿を変えるとそのまま地区上空を飛び去って行った。

 

「行ったか」

 

「そうですね。基地の方に無事通過した事を連絡してきますね」

 

「ああ」

 

基地にリヴァイアサンが無事通過した事を伝える為、バンの中へと戻っていく代理人。

ギルヴァはリヴァイアサンが飛び去って行った方向を見つめつつ、小さく呟いた。

 

「あいつ一体どこに行ったのやらか」

 

この地区に訪れているのはギルヴァと代理人だけではない。ブレイクも訪れていたのだが、リヴァイアサンがこの地区上空に現れる前に暇だから少しうろついてくるという理由でこの場から離れている。

そしてそのブレイクは町中にある建物の屋上にいた。少し離れた先には魔界の覇王との戦い以降に世話になった基地が見えていた。

 

「全くすげぇもんだな。本当に空を飛んでやがった。俺も乗せてもらうべきだったか」

 

ブレイクもこの建物の屋上でリヴァイアサンを現れ、一連の動きを見せてから飛び去っていくのを見ていた。

特に問題なく進んだと判断するとジッとその先にある基地を眺めた。

その間、彼は一言も発さない。何を考えているのか彼だけにしか分からない。

暫く沈黙を続けた後、ブレイクは軽く口角を吊り上げた。そのまま背を向け歩き出すとまるで見られている事に気付いていたかのように腕を上げて、手を軽く振った。

そして建物から飛び下り、停めてあったヴァーン・ズィニヒに跨るとエンジン音を響かせながらギルヴァ達がいるバンへ走っていくのだった。

 

 

その頃、S09 P地区を後にし、ノーネイムを乗せたリヴァイアサンはS10地区前線基地のカタパルトデッキに向かってゆっくりと着地態勢へ移行していた。

機体を回頭させ、ライディングギアを展開。そのまま射出台の上まで来るとゆっくりと着陸。

無事着陸するとラヴィーネを纏っていたノーネイムがコックピットから降り立ち、出迎えに来ていたシーナとマギーが彼女の元に歩み寄ってきた。

 

「お疲れ様」

 

「ああ。無事運用試験完了した。飛行、変形にも異常が見られる事はなかった」

 

「うん。私としたらこのままこの基地の戦力として運用すべきと思うのだけど…どうかな、マギーさん」

 

シーナにそう尋ねられ、そうですねと答えつつ端末を操作していくマギー。

暫く睨めっこを続けた後に、小さく微笑みつつ納得がいったように頷くと二人の方へ顔を上げる。

 

「ええ。問題は見受けられませんでしたから運用しても問題ないでしょう」

 

「了解。じゃあ運用試験は無事パス出来たと言う事で。二人共本当にお疲れ様」

 

二人に労いの言葉をかけた後、解散となった。

リヴァイアサンは再度第二格納庫へと戻され、何時もの位置に置かれる事となる。

こうして運用試験は無事完了し、リヴァイアサンは正式にS1地区前線基地の新たな戦力になるのだった。

また余談であるが、ラヴィーネとリヴァイアサンが合体した際には、ある名前が付けられていた。

その名はレヴィアタンと名付けられており、それが知られるのは後々になるのだった。

 

 

 

運用試験を無事完了し、ギルヴァ達がS10地区へと戻っている頃。

シーナは執務室で今回の運用試験で協力してもらった基地宛にお礼の手紙を書いていた。

協力してくれた事に対するお礼と大型機動兵器リヴァイアサンの事など記し、最後はきちんと封筒に納めていく。

処理すべき書類は全て終わらせており、後はこの手紙を送るだけなのだが少し疲れていたのかシーナは紅茶でも淹れようと椅子から立ち上がった瞬間、突如として爆発音と地響きが響いた。

 

「ッ!?」

 

一体何事かと思いつつも、シーナは即座に状況確認へと動き出す。

その時、この事態を知らせる為にMG4が執務室に入ってきて、シーナに問われる前に告げた。

 

「鉄血の大部隊が攻めてきました!!」

 

 

 

S10地区前線基地正面では内部に乗り込ませまいと鉄血を迎え撃つ為に武装した戦術人形達が姿を見せていた。

防衛線は完全とは言い切れずとも迎え撃つ人形達。

そして迎撃に出ていたMGの戦術人形 MG5はここに攻めてきた相手を見て苦い表情を浮かべた。

 

「よりによって奴とはな…」

 

だがMG5は不思議と鉄血が攻めてきた事に納得がいっていた。

S10地区前線基地には自ら鉄血を離反した代理人や故意ではなくとも仲間を手にかけてしまい裏切り者として扱われている処刑人がいる。

奴らが攻めてきたのはその裏切り者の始末だろうと判断していた。だからといって二人を差し出す様な考えはMG5にはなかった。小さく息を吐き、ここを襲撃してきた者を睨みつける。

爆発による煙の中に浮かび上がる影。その中からゆっくりと姿を晒すのはジャマダハルの様な武器を両手に持ち、眼帯をした鉄血のハイエンドモデル。その者は不敵の笑みを浮かべながら、彼女達へ声を投げかけた。

 

「こんにちは、グリフィンのゴミ共」

 

姿を見せたのは鉄血のハイエンドモデル アルケミスト。

それも一体ではない。ダミーも連れてきているのか彼女の後方では四体のダミーが控えていた。

そしてアルケミストはS10地区前線基地所属の戦術人形達に告げた。

 

「今から殺すが良いよな?」

 

それはまるで悪夢の始まりを告げるかの様であった。




はい。今回はリヴァイアサン運用試験、そして+αを描かせてもらいました。
また今回使わせていただいた地区に関しては作者様から許可を頂いております。

もし地区の名や場所の利用を許可していただいた作者様以外に偶然にもリヴァイアサンを見かけ、その話を書きたいという方がおりましたら一言言ってください。喜んで許可しますので。

さてお次は…。悪夢を始めようか。
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