Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――狼煙を上げろ


Act96 Either nightmare Ⅱ

かつての味方との戦闘。裏切り者となった者(処刑人)裏切り者の始末に来た者(錬金術士)が戦闘を繰り広げていた。

アニマの引き金を引く。はじき出される二発の弾丸。

そこで弾切れとなり、処刑人は左手に構えているアニマの弾倉を取り出す。

左手で使用する事を前提に、彼女が持つリボルバーは弾倉が左側へと出るのではなく、右側へと出る仕組みとなっている。

右へと展開される弾倉。銃を縦に向けると12の薬室から薬莢が滑り落ち彼女は即座に予備弾倉を自身後方へ放り上げた。

今からやろうとしている事はギルヴァからやっていたあのリロード方法。直接本人に聞いた訳ではない。この方法は一度見た事があるUMP45から聞いた方法であった。完全な再現には至らない。だが出来ない訳にはない。

 

「真似事にはなるけどよ!」

 

放り投げたと同時に体を素早く回転。

落ちてくる12発の弾丸がまるでタイミングを見計らっていたかのようにシリンダーへと装填されていく。

振り向いた反動を活かして弾倉を元に戻しつアニマを構えつつ処刑人は正面へと向いた。

しかし向いた先に錬金術士の姿はいない。あの一瞬でどこに行ったと思えばまるで嘲笑うかのようにゆっくりと彼女の後ろから姿を見せた。

後ろに居る事を察知し少し錬金術士の方へと向いた後処刑人は軽く息を吐くと口を開いた。

 

「銃じゃ無理って事は分かってたがよ」

 

拳銃一つだけ倒せる様な相手ではない。それ位は処刑人も理解している。

持っていたアニマを軽く回転させながらホルスターに収めると、背負っていたクイーンの持ち手へと手を伸ばした。

そして勢い良く振りぬくと剣先を地面に突き立て、クイーンのスロットルを捻る。

推進剤噴射機構が赤く光り、バイクのエンジン音の様な音がロビーに響き渡り、処刑人は錬金術士へ言葉を投げかける。

 

「両手に持ったそれはお飾りでも玩具でもねぇんだろ?第二ラウンドは剣と行こうか!ドS女!」

 

攻撃を避けるばかりで一向に攻撃を仕掛けてこない錬金術士。

自身が手にしている獲物の事を指摘されると、わざと眺める素振りを見せた後処刑人に対して手首を動かして手招きする様な動きを見せた。ほら、来いよと言った意味を含めた挑発。確実に馬鹿にしていると理解した瞬間、処刑人はクイーンを地面から引き抜くと力強く地面を蹴り錬金術士へと突進するのだった。

 

 

基地内部一階東通路。襲撃によって電力は落ち薄っすらとした闇が辺りを支配していた。ブーツの底が当たる音が通路に響き渡り、その者はまるで獲物をじっくりと追い詰め恐怖を植え付けるかの様にわざと音をたてて歩いていた。

 

(ダミー1が処刑人と…。くくっ、思ったより早いな。ダミー2は1と合流しろ。ダミー3はゴミ共の相手をしてやれ。)

 

そんな中ダミーからもたらされた情報についぞ彼女…本体である錬金術士は口角を吊り上げる。

餌がかかった。見つけ出すにもう少しかかるで思っていた矢先の事だった為、笑わずにはいられなかった。

ダミー2と3に指示を飛ばし、残りのダミーは彼女と共にもう一人の裏切り者の始末へと動き出す。

足を動かしながら、ふと彼女は襲撃する前を思い返した。

 

(強力な援軍、か…)

 

それはS10地区を訪れる前の事。

処刑人が鉄血を裏切った事をきっかけにして命令された裏切り者の始末。それを命じてきた夢想家(ドリーマー)は錬金術士に強力な援軍を送ると伝えてきたのだ。しかしその援軍の正体までは教えてもらえずにいた。

 

(ふん…援軍に頼らずとも終わらせる)

 

「さぁ出でおいで…ゴミ共」

 

援軍など要らない。それまでに終わらせる。

そして彼女は今を楽しむ事にした。

本来の目的は裏切り者の始末であるが、だからといってグリフィンの人形を相手しない訳がない。

どんな悲鳴を聞かせてくれるのだろうか、どんな風な絶望的な表情を見せてくれるのか…それが楽しみで仕方なかった。

一歩、一歩と歩く音を響かせる。そして偶然にもこの通路にて錬金術士が居る事に気付き、壁際に身を隠している人形がいた。薄っすらとした暗闇の中、一歩ずつ迫ってくる恐怖に何とか耐えつつ、彼女は息をひそめる。

 

(ほんっと…最悪ったらありゃしないわ)

 

よりによってハイエンドモデルを遭遇するとは思わなかった。

味方とは分断されてしまい、あまつさえはこの状況。最悪の言葉以外思い付かない。

どうしたものかと、彼女は…WA2000は冷静になって思考を巡らせた。ライフルの弾は残り二発しかない。

これでどうにかしなくてはならないのだが、絶望的と言えた。

このまま身を隠していたとしても見つかるのも時間の問題。逃げたとしても撃たれるだろう。

覚悟は決めなくてはならない。それがすぐそこまで迫ってきている事は分かっている。

静かに彼女は目を伏せ、震える体を何とか押さえつけた。

 

(…一度は諦めた命)

 

思い出されるのはフェーンベルツの大聖堂地下の時の事。

諦めようとしていた命。出会って間もないというのに生きる様に諭して、武器を与えてくれた者がいた。

かつて居た基地が悪魔の巣靴になっていた事を知った時は絶望して再度諦めようとしていた。

それでも彼らやこの基地の仲間達は悪夢に立ち向かってくれた。

そしてまた訪れた悪夢。状況は絶望的。

 

(それでも…)

 

伏せていた彼女の目が上げられる。その瞳には迷いはない。あるのは覚悟のみ。

 

「っ!!」

 

身を隠していた壁から飛び出すWA2000。

姿を見せた彼女に狂気的な笑みを浮かべる錬金術士。そんな笑みを見てもWA2000は臆しない。

ライフルを構える。弾はたった二発。

 

(死ぬつもりはないんだからッ!!)

 

彼女の覚悟を上乗せした弾丸が放たれる。迫りくるそれについ錬金術士はたじろいだ。

 

(何だ…!?)

 

まさかと思った。

たかだが一発の弾丸だと言うのに、当たれば只では済まない…そんな威圧感に圧されている。

だがそれを押されているばかりの錬金術士ではない。まるでその覚悟を嘲笑うかの様に手にしている武器で弾丸を弾き飛ばすとWA2000へと突撃した。

 

「まだッ!!」

 

続いて放たれる二発目。

しかしそれは軽々と回避され、狂刃が彼女を仕留めんと迫った。

これで打ち止めだ。逃げようにももう間に合わないだろう。後は運の任せるほかない。

ぎゅっと目を伏せた時だった。運はWA2000に味方した。

 

 

 

「見事な一撃なり。力で負けていたとしてもその心では貴公が勝っていたぞ」

 

 

 

響き渡るはある者の声。その声を耳にしたWA2000は顔を上げ目を見開いた。

暗闇を、絶望をはねのけるかの様に輝く金色。それは何であろうと機能停止に追いやる鋭き雷光。

両者の間に割って入るは一匹の白狼であり造られし魔獣。かつて魔界の精鋭部隊を纏めた長は纏いし雷光の刃でその狂刃を受け止めていた。

突如として現れた白狼に一瞬だけ驚きつつも錬金術士は直ぐざまその場から飛び退き、距離を取った。

しかしそれを待っていたかのように暗闇の奥から叫ぶ声が響く。

 

「ハハハハハッ!パーティータイムッ!!」

 

明らかにはしゃいでる様な声と共に金色とはまた違う色が暗闇の奥から迫りくる。

二筋の電撃がWA2000とフードゥルの間を通り抜け、真っ直ぐと錬金術士とそのダミーへ向かって行く。距離を取った所に迫りくる電撃。後ろに飛び退きながら軽やかな動きで壁際へと退避すると電撃をやり過ごすとゆっくりと壁際から離れ、仕留める瞬間を邪魔してきた者達へ向いた。

WA2000を守る様にして錬金術士へ威嚇する声を上げる雷を纏った白狼に翼を羽ばたかせ滞空する猛禽類。

戦術人形以外の者が相手になるとは錬金術士も多少なりとも驚いていた。その様を見ていたグリフォンが早速挑発を仕掛ける。

 

「おうおう。ノックもなしに人様のお家に土足で踏み入れるなんざ教養が足りてないんじゃねぇの?それともその教養はそのデカい二つの山に蓄えられちまったのかい?」

 

「喋る鳥か。それも随分と減らず口を叩く鳥と来たか。…料理してやろうか、チキン野郎」

 

「お~、こわっ」

 

グリフォンが錬金術士へと挑発を吹っ掛けている間、フードゥルはWA2000の方へ向いた。

雷を纏っている為傍に寄る事は無理。少し距離を置いた上で彼は彼女へと口を開いた。

 

「ここは我が請け負う。貴公はグリフォンと共に他の者達と合流するがよい」

 

「…相手はあのハイエンドモデルなのよ?」

 

「分かっている。それに我の能力であれば奴らも迂闊に近づけまい。…時間稼ぎするだけでよいのでな」

 

「それって…」

 

もしかしてと彼女は思った。

フードゥルがここに残って時間稼ぎをする理由を何となく察すると、立ち上がりそのまま通路の奥へと走り出した。WA2000が走り出したのを確認するとグリフォンは錬金術士へ最後の挑発を仕掛ける。

 

「お料理教室を開くなら一人でやんな!俺はここに残るつもりはないんでな!」

 

そう言い残すと先へ行ったWA2000を護衛する為、グリフォンは方向転換し飛び去ってしまう。それを追いかけてようとした錬金術士であったが行かせんと前を塞ぐフードゥルによって阻まれる。

軽く舌打ちしながらも武器を構え、雷を纏う白狼を睨む。

 

「躾の時間だ、野良犬」

 

「躾が必要なのは貴様の方であろう。狂いし鉄血の人形よ」

 

雷の轟音が響き狼の遠吠えが基地全体に広がる。

まるでそれは反撃の狼煙だと示しているか様であった。

 

「参る!」

 

金色の雷を纏いし白狼は錬金術士へと牙をむいた。

 

 

 

基地内部一階ラウンジでは錬金術士のダミー一体とグローザが戦闘を繰り広げていた。幾らダミーとは言え油断は出来ない。攻撃を浴びせようにも難なく回避され、下手すれば接近され斬撃を貰いかねない。

近場にあった机やソファーなどを集めて防御壁を作り、そこから近づけまいと銃撃し防衛に徹していた。

 

「そろそろ不味くなってきたわね」

 

こういう不測の事態にも関わらず彼女は冷静であったが、少しばかり焦りの表情を見えていた。

弾が尽きかけてきたのだ。相手は光学兵器を用いているため弾数の概念が存在しない。だからこそ幾らでも撃ってくる。

あとどれだけ持つ?終わりが見えない状況がグローザを追いやる。でも彼女は諦めない。

 

「全くどこで油売っているやらか…」

 

脳裏に浮かぶはストロベリーサンデーとピザしか食べない偏食家で赤いコートの彼の姿。一度は別れを覚悟したものの今は違う。公私共にパートナーという間柄だ。

そんな彼は恐らくこっちへ向かって戻ってきている筈だ。その身に悪魔の血を流しながらも人を、人形を愛し、普段はめんどくさがる所があっても、その根は真面目なのだ。

必ず彼が来てくれる。それを信じて彼女は銃に新たな弾倉を差し込んだ。

これが最後の弾倉。弾が尽きるまでに助けが来なければ明日はないだろう。

防御壁から身を晒し、銃を構えるグローザ。

同時に姿を見せるダミー。お互いに持つ獲物の引き金が引かれる。

飛び交う銃弾と光弾。漂う硝煙。転げ落ちる薬莢。光弾が肩をかすり痛みが走ってもグローザは撃つのを止めない。

今は耐える時。あの基地に居た時と比べると今が断然マシだ。

 

「くっ…」

 

そろそろ弾が尽きる。助けは未だに来ない。相手も傷を負っているが、それでも倒すにはまだ至らない。

あと一手。その一手が今の彼女にはない。

 

(場は整えたわ。後は貴方だけよ、ブレイク!)

 

心の内で彼の名を叫ぶ。

それが届いたかの様に、どこからかバイクのエンジン音が響いた。

突如として響いたそれに両者共に攻撃を中断し、その音にグローザは静かに微笑んだ。

バイクの音を響かせてやって来る者など一人しか知らない。何よりも彼が来てくれたという事実がグローザにとって嬉しかった。段々と近づいてくるバイクのエンジン音。そしてそれは瞬く間に姿を現した。

窓を突き破り、飛び散る硝子の破片と共に姿を見せるは大剣を背に背負い、狂気、または気が狂ったの名を持つバイクに跨る赤いコートの男。

大胆に登場する彼を見て、グローザはやれやれと言った表情を浮かべた。助けに来てくれたのは嬉しいが、バイクごと突っ込む必要があったのだろうかと思いつつも、安堵する。

二度目のお別れをせずに済みそうだと。

手慣れた操縦技術により地へと着地し急ターンするとバイクは停止。

ブレイクはバイクから降りるとダミーと相対。そして何時もの調子で喋り出した。

 

「ピザLサイズを五分で食ったのは自己最高新記録だぜ。…ローザ、怪我はねぇか?」

 

「何とかね。それにしても遅いわよ。ブレイク」

 

「わりぃな。…ここは俺が受け持つ。早い内に引きな」

 

「ええ。そうさせてもらうわ。…気を付けて」

 

身を隠していた防御壁から飛び出しラウンジ出口へと走り出すグローザ。

部屋を出ていく直前に一度ブレイクの背を見つめてからラウンジを走り去った。グローザがラウンジを出ていく後ろ姿を見届けるとブレイクは静かに愛用のフォルテ&アレグロを引き抜き構えた。ダミーも手にしている武器の持ち手を握り直した途端、勢い良く地を蹴りブレイクに迫る。

振り下ろされる刃。刹那、ラウンジ全体に甲高い音が響き渡った。

 

「…」

 

ダミーの表情は変わらない。だが幾ら刃を押し込もうとしてもアレグロで攻撃を防いだブレイクの態勢を崩す事が出来ずにいた。

そんな様子を見て不敵な笑みを浮かべるブレイク。左手に持っていたフォルテでダミーの武装の一つに目掛けて銃弾を叩きつけた。

響いた銃声。その手から武装を離す事は出来ずとも、その一発によりダミーが仰け反らせる事に成功。

そして両者は素早く後方へと飛び退いた。

一瞬だけ発生する滞空時間。それすらも利用してブレイクはフォルテ&アレグロを連射しつつ後ろへと下がっていく。対するダミーも武装に内蔵されているサブマシンガンを用いて光弾をばら撒く。

飛び交う鉛弾と光。破壊される家具。舞い上がる綿毛と木片。

大惨事と化していくラウンジを気に留める事すらなく、ブレイクは愛銃をホルスターに収めリベリオンを引き抜くと剣幅を活かして光弾を弾きつつ、ラウンジにある簡易カウンター内に着地。即座にフォルテ&アレグロに抜くと横へ移動しつつ銃撃を再開する。

飛んでくる攻撃を回避しながら銃撃で牽制。そしてダミーを正面に捉えた瞬間、体を大きく回転させつつ飛び上がり回転の勢いを利用してダミーに接近しリベリオンを振り下ろした。

そして流石と言うべきか。しっかりと反応するダミー。ジャマダハルで攻撃を受け止めた直後に態勢を崩そうとするがそれは既に予測されているのか、態と自身の攻撃を受け流せつつ地に足を付けるブレイク。

お互いに刃が届く距離。

ぶつかる刃。剣戟が繰り広げられる。舞い散る火花。生み出される剣風。

ただ殺す為、守る為、両者は一歩も引かない。

ほんの一瞬だけの鍔迫り合いから二人は飛び退き、互いに銃を突き付けた。

 

「ふっ…」

 

相手は無表情を貫いているが、ブレイクは笑みを浮かべる。

今からしようとしている事。偶然にも二人は理解していた。

沈黙が訪れる。二人は動かない。その時不安定な位置にあったのか壊れかけの椅子が地面へと向かって落下し始めた。数秒も経たぬ内に地面へと激突する椅子。壊れる音が響いた瞬間、同時に二人は銃を連射し始めた。

銃声。硝煙。破砕音。

決して心地の良い音ではないもので奏でる雑音の協奏曲。

魔力を込めた弾丸が次々と放たれ、相手の武装から放たれる光弾とぶつかり合い、段々と二人は後退していく。

そしてピタリと止まる銃声。その瞬間、ラウンジ周囲の窓が全て同時に割れ、硝子の破片をまき散らし、ブレイクは笑みを浮かべた。

 

「やれやれ…飽きさせない、お嬢さんだな!」

 

そう口にしつつもその表情はいつになく真面目なブレイク。

これ以上時間をかけていては不味い。もう少し遊んでいたい気持ちを抑えつつリベリオンを引き抜き、剣先を突き立てると勢い良く踏み込んだ。

一瞬にして互いの距離は縮まり、放たれる強烈な突きによる一撃。

防ごうと武装を展開するダミー。しかしその一撃に武装をいとも簡単に破壊され、ダミーごと部屋の奥へと吹き飛ばした。

壁に叩きつけれるダミー。次の瞬間、響いた一発の銃声と共にダミーの頭部に風穴が空けられる。

基幹部を狙った一撃。その一撃によりダミーは機能停止し、全身の力が抜けたように地面に崩れ落ちた。

あっけない最期。それを静かに見届けたブレイクはフォルテをホルスターに収め、何も言わず荒れ果てたラウンジを出ていくのだった。




そろそろ次回か、その次で終了かな…。
さて…基地の修繕も考えないとねぇ…。修繕協力に軽いコラボ依頼でも出してみる…?
いや、それはないか。…大規模作戦じゃないからなぁ

まぁそれは追々という事で。

次回にノシノシ
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