Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――兆し


Act97 Either nightmare Ⅲ

ダミー1と激しくぶつかる処刑人。時間稼ぎの為本体とダミー4と相対するフードゥル。大事なパートナーを守る為、圧倒的な技量でダミー3を屠るブレイク。

突如として始まった悪夢が次第に終わりの兆しを見せ始める中、シーナ達は無事MG5らと合流を果たしていた。彼女の指示の元、動き出す人形達。強固な防衛線が構築されていく中、今も基地正面入口で一人で奮闘しているノーネイムの事を耳にすると現場に急行し援護する様にと指示を飛ばした。

その指示を受けた途端、誰よりも早く動き出した者が一人。

 

「Spit-Fire!?」

 

誰かがその名を叫ぶ。

しかし彼女は止まる事をしない。指揮官と合流し強固な防衛線が展開されつつある今、一人で奮闘している友人を助ける為に廊下を駆け抜けていく。

 

(ノーネイム…!)

 

今はひたすらに走るのみ。後ろから誰かが追ってきている気もしなくもないが、彼女は足を止めない。

奥から漂ってくる硝煙の匂い。その先は基地正面入口。しかし妙な事に戦闘の音は聞こえない。

まさかとつい思ってしまうSpit-Fire。

 

「何を考えているのですか、私は…!」

 

頭を振って思考を切り替える。

駆け抜ける。そして基地正面入口へ到達した時、彼女はそこに広がっていた光景に啞然とした。

手脚や頭が無くなり、機能停止した鉄血の人形兵達。中には原型すら留めていない敵もいる。

その無数の亡骸がそこら中に転がっていた。

燃え盛る炎がその亡骸の山を包み込み、それを静かに見つめる友人の後ろ姿。

広がる光景にまるで火葬場のようだとSpit-Fireはそう思わずは居られなかった。

 

「弔いか、哀悼か…。何故か双方がまじりあっているような気が致しますわ」

 

「AUGさん…」

 

Spit-Fireの隣で黒い衣装に身を包み、その光景に見つめるはAUGだ。

一部から奇しくもノーネイムの本当の名と同じく『葬儀屋』の異名を持つ。

ノーネイムの後ろ姿を見て、何かを感じているのだろうか。AUGは静けさを保ち、無言を貫いた。

そこにAUGよりも遅れて95式が基地正面入口に現れる。

 

「どうやら終わっていたみたいですね…」

 

「ええ。葬儀の時間はとっくに過ぎてしまったみたいです」

 

「葬儀って…」

 

二人のやり取りを傍らにSpit-Fireはノーネイムの近くへと歩み寄る。

隣に並び立つSpit-Fireにノーネイムも気付き、静かに微笑んだ。

ふと微笑んだ事に不思議そうな表情を浮かべる友人に対し口を開いた。

 

「約束は果たしたぞ」

 

「!…まだ終わってないから、果たせていませんよ?」

 

「それもそうか…。ッ!」

 

何かを感じ取ったのか、ノーネイムは上空へ勢い良く向いた。

その行動にここに集まった者達も警戒を強める。

 

(何だ…何か迫ってきている?)

 

その時であった。

黒煙が上がり、空へと昇り上がっていく中人の様な姿をした何かが上空に姿を見せた。

羽に様なものを生やし片手剣を持った騎士の鎧を纏った何か。宙に留まりながら、それは彼女達を見下ろしていた。

そこに後方からまた騎士の鎧を纏った何かが二体現れた。似た様な外見を有しつつも、細部に異なっており手に持った武器も片手剣ではなく大型ランスを手にしていた。

 

「何ですか…あれ…」

 

「分からない。だが友好的な関係を築きに来たとは思えない」

 

それは誰しもが思った事であった。

攻撃を仕掛ける様子は今は見受けられないが、宙に佇む騎士達から発せられる殺気を感じ取っていた。

すると中央の騎士が何か命ずるように腕を突き出した。それに合わせて二体の騎士たちは地表へと降り立つと背に展開していた羽を盾の様に展開し、ゆっくりとノーネイム達へ迫っていく。

 

「どうやら大きな葬儀になりそうですわね」

 

「…一体どこの組織が」

 

「それを答えてくれる様な方々でないでしょう」

 

「分かっていますよ、AUG。…今はここを守り抜くだけです」

 

数は決して多くない。

だが未知の相手。油断は出来ない。

ここに集った者達は武器を構える。各々が迫りくる者達に銃を向ける中、AUGは静かに呟いた。

 

「…貴方達は涙を流せますか?」

 

弔いの雨が響き渡る。

 

 

 

基地正面入口に銃声が響き渡る一方で第二ロビーでも戦闘の音が響いていた。

最もその音は銃声ではなく、刃と刃が幾度となくぶつかる音であるが。

 

「…!」

 

薙ぎ払う様な一撃。首を狙った一撃を貰う前に処刑人は素早く後ろへと下がった。

外れる攻撃。

そこを見逃さずクイーンの柄へ手を伸ばし彼女は勢い良く踏み込む。

上体を捻りながら下から斜め上へと振いつつ、クイーンのスロットルを捻る。

一段階解放された事を知らせる音が鳴り、レバーを引く。

 

「っぜやあぁぁっ!!」

 

唸るエンジン音。噴き出す推進剤が炎を纏い、強化された斬撃が放たれる。

その一撃はダミーの右腕にへ喰らい付き、食い込んだ刃は内部骨格をいともたやすく切り裂き、一閃。

先程まで繋がっていたダミーの片腕が宙へ舞い上がる中、処刑人は止まらなかった。

流れるかの様に左腕を大きく回転させ、二度の攻撃を放つ。

だがそこまで攻撃を貰うつもりはダミーにはない。片腕を斬り落とされても決して表情を歪める事もなければ、痛みの声を上げる事すらないしない。

ただ淡々と攻撃が来る前にその場から飛び退き、後方へと後退する。

二撃目を回避された事に軽く舌打ちしながらも処刑人は敵を鋭い目つきで睨む。

 

(痛覚切ってるにしちゃ一言も発さねぇし…。…となりゃダミーか)

 

薄っすらと気付いていた事だった。

攻撃こそは激しいものの表情を変える事や言葉を発さない辺りでそれに気付くのも時間の問題であろう。しかし相手がダミーだからといって手を抜くという考えは処刑人にはなかった。

だが早いうちに相手を片付ける必要はあるという事だけは分かっていた。

クイーンを構えダミーへと仕掛けようとし接近した瞬間、別の方向から攻撃が飛んできた。

寸での所でガーベラで衝撃波を放ちその場から飛び退く処刑人。攻撃が飛んできた方へと顔を向けると、そこに居たのは錬金術士の指示によってここまでやってきたダミー2であった。

 

「ちぃっ!!」

 

ダミー同士が合流し、連携しながら攻撃をする暇を与えない。

防戦に徹しながらも舌打ちする処刑人。クイーンを振いつつ攻撃を受け流しながらも、反撃の隙を伺おうにも敵達はそれを許さない。ガーベラの衝撃波を放って一時的に後退したとしても着地した瞬間を突かれてやられかねない。動き回りながらもどうしようかと考えた時、ふと右腕を見た。

 

(…使うしかねぇか?)

 

本来の右腕とその腕に格納した太刀を。

あれは切り札とも言えるものだ。ここで使っていいのかと悩む。

しかしここで出し惜しみしている余裕はない。

 

「仕方ねぇ…」

 

相手は悪魔じゃない。でも敵対している以上は使わざるおえない。

 

「四の五の言っている暇はねぇよな!」

 

同時に刀身を振るうダミー達。

迫りくるそれに処刑人に不敵な笑みを浮かべた。

態と右腕を自身の前とかざした瞬間ガーベラが突如として爆発した。決して大規模な爆発でなくとも、相手を態勢を崩すには十分な爆発。

しかし何故爆発が起きたのか。デビルブレイカーには敵の囲まれた時の対策として、微量の炸薬を積んでおりいざという時に電気信号で起爆させ、緊急脱出をする事が可能となっている。

それにダミー達は爆発によって吹き飛ばされ地面へ転がっていくが直ぐに起き上がり、攻撃へ転じようとした瞬間、ダミー3の目の前に拳を作り右腕を振りかざす処刑人の姿があった。

先程の義手ではない。だが人間の腕ではない。異なる生物の腕。

言うなれば悪魔の腕だ。

 

「綺麗な顔に失礼するぜ!」

 

ダミー2の顔面に叩きつけられる右ストレート。

その一撃をまともに受けたダミー3は勢い良く吹き飛ばされ、地面に二度、三度叩きつけられた後に漸く慣性を失い止まった。

だがダミー2は立ち上がる。顔半分の人工皮膚が消し飛び、内部骨格が露わになったとしても決して取り乱さず、只々処刑人へ向かって行こうとするがこの場に現れた者によって阻止される事となる。

まるで砲撃にも似た銃声。放たれた弾丸が処刑人へ向かって行くダミー2の横腹に直撃。体がくの字に曲がるどころかその一発により体が上下二つにお別れする程。

ダミー2が無残な終わり方をする光景を見ていた処刑人はまさかと思い、銃声がした方向へと向いた。

靴が地面に当たる音を響かせ、通路の奥からゆっくりと姿を現す者。

メイド服。かつて纏めていた髪は今となっては長く伸ばし、ヘアゴムで一つにまとめていた。

そしてその姿とは裏腹に装備している武装は過剰火力とも言えるものばかりだ。

銀の弾丸と銘打たれた折り畳み式対物ライフルを手に持ち、背には霧雨の名を持つ複合兵器を背負い、ホルスターに悪魔と名付けた二連装ショットガンを差し込み、ガンベルトには相手を確実に仕留める為に杭の先端に成型炸薬を装着したパイルバンカーを吊り下げていた。

その者はかつては敵だった一人。

しかし今は違う。裏切り者になったとしても、彼女は構わなかった。

愛する人がいて、愛する娘がいる。只々命令され、人を殺すだけの人生を自ら袂を分かった元鉄血のハイエンドモデル。その名も…

 

「間に合いましたね」

 

代理人(エージェント)である。

状況を把握しながら彼女はシルヴァ・バレトの槓桿を操作。

薬室から飛び出る空薬莢。29mmという有り得ないものが音を立てながら地面へ転がっていく。

対化け物用として作られたライフルを肩に担ぎつつ、ホルスターに納めてあったショットガンを左手で引き抜くと残っているダミーへ向けた。

 

「やはり錬金術士でしたか。大方私達の始末が目的でしょう」

 

ダミーをよこして本体が姿を見せない辺り、如何にも錬金術士らしいやり方だと思わざるえなかった。

何処からか覗いているのかも知れない。だが心配は要らない。彼がこの悪夢を終わらせに動いているのだから。

ならばやるべき事は一つだ。

 

「二体一になっちまうが、文句は無しで頼むぜ?」

 

代理人が現れた事により戦況はガラリと変わる。

攻撃姿勢を解かずにいるダミーへ獰猛な笑みを浮かべ右手を開いたり閉じたりといって動作を繰り返しながら処刑人はそう言い放った。

それに続く様に代理人も言葉を発した。

 

「戦いに綺麗も汚いもありませんので」

 

その台詞を合図に処刑人はダミーと突進。代理人は誤射に注意しつつ処刑人に後方から援護を開始する。

二人の猛攻によってダミーが数十秒も経たぬ内に撃沈したのが言うまででもない。

 

 

「ちっ!狂犬がッ!」

 

錬金術士がフードゥルへ向かって苛立ちの声をあげた。

一階東通路で繰り広げられている戦いはフードゥルは優勢であった。それもその筈で雷を纏うフードゥルに迂闊に攻撃すれば幾らハイエンドモデルである錬金術士であっても一瞬で機能停止に陥るだろう。

相性の悪さが拍車をかけ自分通りの展開にならない状況に彼女らしからぬ苛立ちの声を上げる辺りフードゥルの術中にはまっていると言えた。

 

「ぬん!」

 

「くそっ!」

 

たかだが野良犬と侮ったのが尽きだった。

戦闘が始まった瞬間、フードゥルは随伴していたダミー4に落雷を叩きつけ一対一に持ち込んでいた。一対一ならば彼の得意とする所。魔界の精鋭部隊を率いた事のある実力は今の尚健在である。

まるで電光石火の如く動き回りながら攻撃を仕掛けるフードゥル。回避に徹する錬金術士。

攻防繰り広げられる中、突如としてフードゥルが後ろへと下がった。

その突然の行動に錬金術士は訝し気な表情を浮かべたその時であった。フードゥルが下がっていった通路の奥から誰かが歩み寄ってくる気配を感じ取った。

裏切り者である処刑人や代理人でない。だが戦術人形でもない。先程まで戦っていたフードゥルでもない。何か異質な何かを放ちながら静かに歩み寄ってきている。

肌を刺す様なピリピリとした感覚。殺気とはまた違う何かが錬金術士に纏わりつく。

 

(何だ…この感覚は?)

 

今まで感じた事のなかったそれに疑問を抱かずに居られなかった。

疑問を抱く中闇の奥からその者は彼女の前に現れる。

手に持ったその刀に銘は存在しない。敵対する者に名も無き死を与えるのみ。

愛する母から貰った青い刺繡が施された黒いコートが彼の象徴となる。

 

「…」

 

相対するも彼…ギルヴァは無言を貫いていた。

突然現れたその男に錬金術士は直ぐに攻撃できる様に身構えた。

相手は普通の人間だ。だと言うのに気を抜けば一瞬で葬られそうな感覚に陥っていた。

そしてそれは正解であった。身構えた瞬間、何処から現れたのか群青色に輝く刀が複数飛んできたのだ。

その力に驚きつつもジャマダハルで打ち払う。固くはないのか打ち払われたそれは硝子細工の様に砕け散っていくが、立て続けに攻撃は続く。

第一波を凌いだと思いきや、錬金術士の目の前に居合の態勢で技を繰り出そうするギルヴァが現れる。

 

「死ね」

 

「!」

 

疾走。

生み出される無数の真空刃が錬金術士を切り裂こうとするが寸での所で刃を回避。

すれ違う両者。背中合わせになったのも束の間、体を翻し獲物をぶつけた。刃同士がぶつかり、火花が散る。

鍔迫り合いへと発展し、一歩も引かない二人。そのまま一旦引いたの束の間、流れる様に剣戟を繰り広げられる。二人の間で凄まじい速さで繰り返される剣戟の嵐。しかし状況は錬金術士が押されている。

このまま押し切られば死ぬ。だと言うのに美しさの中に死を潜めた太刀筋にどこか魅了されていた。

自身と同じ様に接近戦を得意する処刑人でもここまでは至らないだろう。自身と対等どころか圧倒している男が何者か気になって仕方なかった。

だからだろうか。押されているにも関わらず彼女は笑みを浮かべていた。

 

「笑みを浮かべるとはな。変わった女だ」

 

「それは私も思っていた事だ。何故だろうな、笑みがこぼれて仕方ない」

 

「俺が知っていると思っていたら大間違いだぞ」

 

「分かっているさ。そんな事は…なッ!」

 

放たれる蹴り。それを軽々と躱すギルヴァ。

笑みを浮かべたまま錬金術士は彼へと告げた。

 

「さぁ楽しもうじゃないか。久しく出会えた強敵だ。簡単に死んでくれるなよ?」

 

その台詞にギルヴァも珍しいなまでに小さく笑みを浮かべた。

そう言うのであれば答えない訳には行かない。そんな中、蒼が彼へと話しかける。

 

―ダンスの相手をご所望だとよ?

 

(そうだな。折角の誘いだ。偶には悪くはなかろう)

 

「良いだろう。少しばかりお前に付き合ってやろう」

 

「ハハッ…それは嬉しくて仕方ないなッ!!」

 

同時に動き出す二人。

ぶつかる刀身。響き渡る甲高い音。

両者が織りなす剣戟。それが奏で響き渡る舞踏が開演する。

 

 

 

「あーあ、正面から行ったけど良いのかしら?」

 

S10地区の山中で錬金術士が襲撃した基地を遠くから見つめ、呆れたと言わんばかりの声を上げる者が一人。

何かを知っているのか、ある事を自身の隣に立つ男へ問いかける。

 

「あれはプロトタイプでね。例え壊されようとも全く問題ないさ。記録したデータは我が拠点に送られる様になっているのさ」

 

「ふぅーん…」

 

腕を広げ大袈裟な素振りを見せるその男に対し、彼女は何とも言えない表現を浮かべる。

 

「それは兎も角だ。君の仲間は良いのかい?送り込んだプロトタイプは誰かれ構わず攻撃する様に設定してあるのだが?」

 

「同じ趣味同士、切り捨てるのは惜しいけど仕方ないわ。後は彼女次第ね。死ぬのも生き残るのも、ね」

 

「ハハッ。鉄血は仲間意識が強いと思っていたのだがね。まぁ良いさ。私はここで失礼する。また会おうではないか、夢想家」

 

そう言い残して男はその場から去っていく。

去っていく男を見届ける事はせず、夢想家は静かにS10地区前線基地の方へ向いた。

未だに銃声は響いている辺り、戦いはまだ終わっていないと感じつつ去っていった男が属している組織の名を口にする。

 

「神を信仰する教団、ねぇ…。この荒れ狂った世界に神様なんて居るのかしら?」

 

ま、どうでも良いけど、と話を締めくくると夢想家は静かにその場から立ち会って行くのだった。




遅くなってしまい申し訳ない。
ん?別段待っていない?…そっかぁ…(涙)

騎士の様な格好で片手剣を持った奴と大型ランスを持った奴…分かる人は分かるよね?
そのプロトタイプ(オリジナル設定)がこの襲撃に乗じて登場です。

やっと終わりが見えつつあったこの事件。どうやら新たな悪夢が再来しそうです。
次回辺りがアルケミスト襲撃は終わりかなぁ…(未定)
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