Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――これ以上何を積むの?


Act101 Overloading

これはもう一つの雨の日の物語。

錬金術士が孤独な戦いへ身を投じ始める約数時間前の事。

代理人は珍しくカフェに訪れており、カウンターに腰掛けここのマスターであるスプリングフィールドが淹れた紅茶を飲んでいた。普段であればデビルメイクライの店内に居る筈なのだが、今回に限っては彼女一人で此処に訪れており、それが不思議だったのかスプリングフィールドが代理人へと話しかけた。

 

「今日はお一人なのですね」

 

「ええ。マギーに呼ばれまして。待ち合わせ場所として此処に」

 

雨のせいで暇になったから此処に訪れたのではなく、代理人はマギーにある件で呼ばれて此処に訪れていた。

しかしその呼び出した本人はまだ姿を見せていないのだが仕方ない事であろう。

マギーは魔工職人である一方でこの基地の後方幕僚なのだ。当然ながら後方幕僚としての仕事もこなさなければなれない。寧ろ魔工職人としての製作活動は飽くまでも彼女個人のよる趣味みたいなものだ。

後方幕僚としての仕事、魔工職人としての製作活動。どちらを優先するかなど言うまででもない。

それに今日は特に急ぐ用事はなく、代理人はマギーから来るまで紅茶を嗜みながらのんびりと待つ事にし、スプリングフィールドに今日の天気について話し始めた。

 

「ここからでは分かりませんが、今日一日中雨の様ですね」

 

「みたいですね。久しぶりに雨模様な気がします」

 

「そうですね…。ここもそれすら気にならない程に大変でしたから」

 

他の基地で起きた事件とと比べるとまだ生易しい方かも知れないが、大変だった事には違いなく。

スプリングフィールドも代理人もそれを痛感していた。

MG4の一件、モンスターの討伐、鉄血のハイエンドモデル 錬金術士の基地襲撃事件。どれしも一筋縄では行かない事件ばかり。

MG4の一件に関しては指揮官たるシーナまで武装して戦場に出た程であった。

 

「鉄血や過激派。そして悪魔…。意外ととは言いませんが、まだ見ぬ敵は多いですね」

 

「…悪魔は兎も角、鉄血や過激派に関しては全て人が始めた事。人間が犯した罪の尻拭いを私達はさせられていると言っても過言ではありません」

 

「…厳しい言い方をなされるのですね、代理人」

 

だがスプリングフィールドも代理人の言い分に対しては一定の理解を示していた。

鉄血工廠で作られた人形達の暴走。人の手によってこの世に生まれた人形達に対し職を奪われる事に恐怖し排除を謳う過激派。

前者は謎が多く全て分かっていないが、後者に関しては人間が引き起こした事である。その尻拭いを人間の代役として彼女達人形が起用される事が多い。強ち代理人が言っていた事は間違ってなどなかった。

 

「ですが崩壊液が全世界に広がった事やそれにより第三次世界大戦が起きなければ我々という存在が生まれなかったのも事実。貴女が今の様にカフェでマスターをしている事や私が彼に出会い好意を抱きそして結婚している事もなかった。そう思うと複雑な気分にもなりますね」

 

手にしていたカップを静かにソーサーの上へと置く代理人。

複雑な気分も相まってその表情は何処か切なそうでもあった。しかし折角美味しい紅茶が飲んでいたのにこんな悲しい話をしていては味も楽しめなくなる上にスプリングフィールドにも迷惑が掛かる。

暗い雰囲気から脱する為に別の話題へと切り替えようと考えるが如何せん良い話題が直ぐに出てこない。どうしたものかと悩んだ矢先、代理人を呼び出したマギーがカフェに姿を現した。

 

「すいません、代理人。遅れました」

 

「いえ。寧ろ良いタイミングで来てくれました。…スプリングフィールド、紅茶を一つお願い出来ますか?」

 

マギーの為にと思って代理人はスプリングフィールドに紅茶を注文。

それに対し畏まりましたと注文を請け負うとスプリングフィールドは紅茶を淹れ始め、マギーは代理人の隣に腰掛ける。

先程まで重い話をしていた事には気付かず、マギーは代理人を呼び出した理由を話し始めた。

 

「頼まれていた"アレ"、完了致しましたよ」

 

「早いですね…。頼んだのは今から二時間と三十三分四十五秒前と記憶しているのですが」

 

「細かい時間まで覚えている貴女も凄いですけどね。…まぁこの作業は以前にもしましたからね。あの一回で慣れましたから」

 

代理人は愛用している複合兵器『ニーゼル・レーゲン』の改造をマギーに依頼していた。

元からあったレールガンに加え三連ロケットランチャー、ガトリングガンを積み込んだこの兵器にこれ以上何を積むというのか思いたくなる所であるが代理人はある思いがあった。

口径29mm対化け物狙撃銃 シルヴァ・バレトや散弾銃 デビルと言った射撃武器を加えヒート・パイル、ニーゼル・レーゲンを操り基本的遠距離戦を主とした戦い方が特徴。一方でギルヴァやブレイクの様に接近戦を仕掛ける事は殆どない。接近戦をするとしても緊急時にヒート・パイルで撃退する位なのだが、重火器が生み出す力は敵を近づけさせる事ない。

そこで代理人が思った。ヒート・パイルをニーゼル・レーゲンに組み込む事が出来ないだろうかと。

装備していても使う事がないのであれば以降から装備しないという考え方もあるだろうが、どうせなら魔工の塊であるニーゼル・レーゲンに積んでしまえばいい。何かと必要になるかも知れないというのが彼女の考えでもあった。

 

「それでニーゼル・レーゲンはどちらに?」

 

「訓練場に置いてありますよ。早くどんな風になったか試してみたいでしょ?」

 

「ええ、まぁ」

 

何故訓練場にと思うが敢えて問う事はせず、代理人はマギーが紅茶を飲み終えまで待つ事にした。

そして代理人はこの場でどのよう改造を施したのか問うべきだったかも知れない。

魔工職人たるマギー・ハリスンがたった一つだけの改造だけで収まる訳がないのだから。

 

 

カフェを後にし、代理人はマギーと共に訓練場へと訪れた。

だだっ広い室内の中央に台座。そしてその上にはニーゼル・レーゲンが置かれていた。スリング部分は以前からあったものであったが、それとは別に外装部分には持ち手らしきものが取り付けられていた。

それが何の意味を現すのかは代理人には分からない。それを気にしつつも彼女はニーゼル・レーゲンを手に取り、どうなったか武器を変形させていく。

驚異的な変形で姿を変えていくニーゼル・レーゲン。三連ロケットランチャー、ガトリングガンへと姿を変えた後、そしてヒート・パイルを積んだであろう新たな姿、第四形態へと変えた時代理人はその姿に目を疑った。

回転弾倉が装備された大砲と砲身下部には鋭い槍。槍の下部には大型化され円柱型弾倉を装備したヒート・パイル。柄には『和』を意識したのか日本刀の柄巻を似せられて作られていた。握り手に当たる部分にはトリガーガードに引き金。銃と槍が組み合わさった何かがそこにあった。

 

「…」

 

「これが一つ目改良点ですよ」

 

想像していたのと違う事に只々啞然とする代理人の後ろからマギーから歩み寄り声を掛けた。

その声に反応して現実へと戻ってきた代理人はゆっくりと後ろへと向き、静かに口を開いた。

 

「注文と違う気がするのですが…?」

 

注文内容はニーゼル・レーゲンにヒート・パイルを組み込んでほしいというものであった。

所がどうだ。今彼女の手にはあるのはまるで大砲と槍とヒート・パイルが組み合わさった何か。あからさまに注文内容には無い改造をマギーはやっているのだから流石に問わずにはいられない。

対するマギーは笑みを浮かべたまま、説明は始めた。

 

「いやー、以前作った回転弾倉型のバズーカと大型ランスをを改造している最中に見つけまして。何ならいっそのこと積もうと思いましてね?渡されたヒート・パイルと見つけたそれらを組み合わせて施したのかそれです」

 

そこで代理人は問い詰める事を諦めた。

今更どうこう言う気もなく作り直せとも言える訳がない。恐らくこれ以外にも何か施していると感じていた。

それにだ。代理人にとっては近接武器を得られた事は大きかった。これならば自身も近接戦闘を行う事が出来るといった喜びもない訳ではなかった。

 

「さてその新たな武装ですが、ヒート・パイルによる一点突破の能力に槍術と砲撃機能を追加したものとなっています。また砲撃には解放機能が備わっており、レールガン形態で行う最大出力モード時とほぼ同等のものと思って頂ければ幸いです」

 

「ふむ」

 

説明を聞くと試しにと大型銃槍を振るい始める代理人。

重量はあるが決して重いとも言い切れない。

ただ突くだけではなく軽やか且つ華麗な動きで振り下ろし、薙ぎ払いつつ後方へ一回転しながら下がるなど彼女の技が繰り出される。

ギルヴァやブレイク、処刑人が繰り出す技とは違う代理人だけの技。着ている服と相まって白銀に輝く銃槍を振るう彼女の姿はとても美しいと言えよう。

 

「成程。最初こそは戸惑いましたが、悪くありませんね」

 

「そう言って頂けると嬉しいですね。ですがこれだけではありませんよ」

 

「えっ?」

 

「ふふん。ニーゼル・レーゲンを変形させてみて下さい。面白いのが見れますよ」

 

軽く動いた後に素直な感想の後に施された改造がこれだけではないと聞かされる代理人。

少し驚いた様な表情を浮かべている所にマギーに促され、指示通りに彼女はニーゼル・レーゲンを変形させた。

銃槍形態から次に現れたのに代理人は固まった。

まるでシルヴァ・バレトを模った様な二つの機関砲。代理人の腰に装着されたアームを介して大型弾倉が装備。機関砲の機関部から大型弾倉へと繋がった弾帯。弾倉を支える為の支柱。

まるでそれはノーネイムの専用装備「パトローネ」を簡易化した様なものであった。

簡易化したといっても二つの機関砲に使用される弾丸は固い装甲で身を纏った敵でも重装甲もチーズ同然と言わんばかりに貫く威力を誇る。それもその筈でこの形態で使用される弾丸はシルヴァ・バレトに使用される弾丸と同じ物を使用しているのだ。それを連射するという機能を備えているとなれば最早笑いたくなる所である。

下手すれば固い肉質で覆われた悪魔ですら無残な亡骸へ変貌させる事の出来るニーゼル・レーゲンの新たな形態がそこにあった。

 

「マ、マギー?これは…?」

 

「29mm対化け物連射砲"レクイエム"。私がデストロイヤーでしたか?その者が装備していた武装を参考に作り上げたものですよ。迎撃、対空、掃射…ご自由にお使いください」

 

「説明は有り難いですが、何でこんなものを積もうと考えたのです!?幾ら何でもやりすぎでは!?」

 

三連ロケットランチャー、ガトリングガンを積んだ時点でやり過ぎないのではだろうかと思いたくなる様な発言であるが残念ながらそれを問う者はここには居ない。

そしてマギーは代理人の問いに対し何処か自慢げ顔を浮かべながら返答した。

 

「逆に聞きますがやり過ぎてはいけないと誰が決めたのです?」

 

「…アーキテクトですか、貴女は」

 

創作意欲がある事は十分良い事なのだがここまでとなればやり過ぎと言わざるを得ない。

だがそれを作った本人がこうなのだから追及する事も馬鹿らしく思えるだろう。

マギーの返答に対し代理人は鉄血のハイエンドモデルの名を口にした。

最も彼女ですらここまでやってのけるかどうかすら分からないのだが。

 

(今彼女がどうしているかは分かりませんが、マギーと会う事があればどうなる事か)

 

会話する事は指の数程度。

しかし彼女は自分達鉄血が暴走した以降もグリフィンに対し敵対心を抱いている様子はなかった。

命令に関しては最低限従っていた。自身が鉄血を離反した今、彼女がどうしているか知りようがなかった。

だが彼女がマギーと会う事があれば何か起きるであろうと予想していた。最もそれがいつ現実に分かる訳ではないが。

 

「その方がどの様な方かは存じ上げませんが、そこまで怒らないで下さいな。それに悪魔と戦う事となれば必要になるでしょうし。まぁその話は横に置いといて、積んだ機能はもう一つありますよ」

 

「はぁっ…これ以上は驚きませんよ。それで何を積んだのです?」

 

「それは見てからのお楽しみというやつです。ニーゼル・レーゲンを待機形態に戻してみて下さい」

 

これ以上驚けば疲れる事は目に見えている。

マギーの指示通り、代理人はニーゼル・レーゲンを待機形態へと戻した。

初めて手にした時から変わらぬ六角柱型の外装。当初こそは白銀に染まっていたが、一度目の改造を受けて全体に水色に輝く光線が緩やかに流れる様になっていた。

そして今、大型銃槍形態に加え、愛用している狙撃銃と同等の弾丸を連射しまくるとち狂った連射砲形態が加えられ、もう一つ加えたと来た。

寧ろこれ以上何を積むのかと言いたくもなるが敢えてそれを口にする事はしなかった。

 

「戻しましたよ。普段の形態ですが…特に変わりがない気も致しますが?」

 

「いえ、しっかりと私が加えた形態になっていますよ。外装の底面を見て下さい」

 

「底面?」

 

ニーゼル・レーゲンを上下反転させ底面部分を覗く代理人。

そこにあったのは何らかの噴射口であった。確かに以前の姿ではなかったものだが、これが一体何を意味するのか代理人は検討すらも付かなかった。

 

「何ですかこれ?噴射口なのは分かりますが」

 

「まぁそこだけでは分かりませんよね。先に答えを言っておきますと外装を鈍器として使用可能出来る様に致しました」

 

外装を鈍器として使える様にした。

つまりそれは待機形態ですら武器にしたという事。代理人がそれを理解するにさほど時間は掛からなかった。そして二度目の改造を受けたニーゼル・レーゲンを見た時に外装を付いていた持ち手の事を思い出した。

まさかと思った。あの謎の持ち手は外装をぶん回す為にあったのだと。

 

「…身近なもので言えばクイーンと似た機構を持った物を積みましたね?」

 

「はい。流石にスロットルなどは搭載していませんが、攻撃時にそこから推進剤が自動的に噴射して打撃の威力、速度を強化。分かりやすく言えばハンマーにジェットエンジンを取り付けたものです」

 

銃槍、連射砲、最後は推進機構を搭載した鈍器。それも待機形態が武器と化した。

もう驚く事はしない。手数が増えたのだ。どうせなら使いこなしてやろうではないか。

若干自棄になりかけそうになりつつあった代理人は自身の胸の中でそう呟くのであった。

 

 

マギーから強化されたニーゼル・レーゲンを受け取った後、一度愛用の武器を取りに戻ってから代理人は一人訓練場で鍛錬していた。

武装が追加されたのだ。そのまま終わりという訳には行かず彼女がニーゼル・レーゲンを振いながら軽やか且つ華麗な動きで投影されたダミーエネミーを次々と薙ぎ払っていた。

底面から推進剤が噴射し、その勢いを利用して一撃を叩きつける。槌と化したその一撃にダミーエネミーが耐えられるはずもなく、一体、また一体と吹き飛ばされていく。

 

「ふっ…!」

 

跳躍し一回転。反動を付けて地面へと槌を叩きつけ、周囲のダミーエネミー達を宙へと舞い上がらせる。そのままニーゼル・レーゲンを上へと放り投げるとホルスターから水平二連装ショットガン Devilを引き抜くとまるでヌンチャクで振り回すかの様にDevilを高速で振り回しながら周囲に向かって散弾を乱射し始めた。

宙へと舞い上げられ無防備な状態を晒すダミーエネミー達に突き刺さる散弾。その中に混ざって飛び交うシェル。

漂う硝煙に混じって代理人は口を開く。

 

「少しやり過ぎましたかね?」

 

そんな冗談を言いながら彼女がデビルをスピンさせながらホルスターへと納め、タイミング良く落ちてきたニーゼル・レーゲンを片手で受け止め、そのまま銃槍形態へ変形させる。正面にいたダミーイージスに向かって突進し盾で防ごうとする所を強引に砲撃で弾き飛ばす。

そこにイージスの獲物が代理人へと迫るが、彼女は上体を逸らして攻撃を回避。後方へ回転しながらイージスが持っていた武器を蹴り飛ばし体勢を立て直すと一気に距離を詰めた。

懐に潜り込み、銃槍を突き当てながらヒート・パイルで装甲を砕き内部に成型炸薬を打ち込み、続けざまに槍をねじ込むと止めの一撃として砲撃を叩き込んだ。それにダミーイージスを吹き飛ばされ消失し、代理人は息を吐きつつニーゼル・レーゲンを待機形態へと戻す。

そこに残っていたダミーエネミーが代理人の後方から迫っていた。当然彼女はそれに気づいており、体を翻してつつ攻撃を回避しながらニーゼル・レーゲンを宙へと放り投げた。

相手の後方へと回り込むとデビルを引き抜き足へと目掛けて散弾を発砲。足を破壊され地面へと倒れるダミーエネミー。その真上からはニーゼル・レーゲンが落下してきている。

 

「沈め」

 

ニーゼル・レーゲンがダミーエネミーの直撃する寸前に代理人は体を一回転させ、回転の勢いを利用してニーゼル・レーゲンの底面に当たる部分に強烈な踵落としを叩きつけた。

その一撃で急激に加速したニーゼル・レーゲンはダミーエネミーを押し潰した。

押し潰した敵が最後となり、敵の全滅を確認したのか模擬戦闘の終了を知らせるブザーが鳴り響き、彼女は再度軽く息を吐いた。

立ったままのニーゼル・レーゲンを手に取り背負い、しっかりと後片付けをしてから訓練場を後にし、店へと戻る廊下を歩きながら彼女は呟いた。

 

「良くここまでのものを思いつくものです。…流石は伝説の魔工職人。その名は伊達ではないということですか」

 

やり過ぎなんですけどね、と最後に締めくくり代理人は歩き去っていく。

この後に彼女の戦い振りを偶然にも見ていた人形達にどうやったらあんな風に戦えるのかと質問攻めを受け、あたふたする代理人の姿があったという。




はい。ニーゼル・レーゲンがとんでもない武器へ昇華致しました。
ショットガンをヌンチャクの様に振り回して散弾を周囲に乱射出来る様になりました。
これによりスタイリッシュなメイドさんが今後見られるかもです。


そして今回はちょっとばかりぼのぼのという感じです。
またタイトルは過重積載という意味。ホント積み過ぎである。
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