Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――それは恩返しの為


Act105-Extra Repayment Ⅰ

それは基地隣接店 便利屋「デビルメイクライ」に掛かってきた一本の電話によるもの。

時刻は午前10時。天気は良好。雲一つなく青い空が広がっていた。

404小隊が緊急任務でAR小隊の三名と共に基地を出ており、店の中ではギルヴァが次に読む本を何にしようかと本棚の前で選んでいた時であった。

書斎上に置かれておる電話機が久しぶりに鳴り響いたのだ。依頼かどうか分からないが出ない訳には行かない。

本を選ぶのを中断し、ギルヴァは書斎に近づくと受話器を手に取り、久しぶりに店の名前を口にした。

 

「デビルメイクライ」

 

『よっ。元気か、ギルヴァ』

 

女性の声。

そしてその声にギルヴァは心当たりがあった。何故彼女がと疑問を抱きながらも彼は電話相手の名を口にした。

 

「その声…ノアか。久しいな」

 

『ああ。久しぶりだな。最後に会ったのはS11地区の事件の時だったか?』

 

「そうだな」

 

相手はS09P基地所属のノア。

珍しい人物が連絡してきたものだと彼は感じた。向こうで何かあったのかとも予想するが、相手の様子から察するに事件が起きた訳ではないと判断し、本題へと切り出した。

 

「それで連絡してきた理由を聞こうか」

 

『おっとそうだった。実はシュトイアークリンゲ…ああ、違った。クイーンの扱いを教えてほしいと思って』

 

「ほう?」

 

確かにクイーンに搭載されている推進剤噴射機構の出力に慣れないと確実に振り回される。

ただただ振るうだけでも駄目。相当の鍛錬が必要になる事はギルヴァも理解していた。

 

『全く使えないって訳じゃねぇぞ。もっと上手く使いこなせたらと思って。それにギルヴァはあの時の戦いで使いこなしている様子だったし』

 

「ふむ」

 

あの時に初めてクイーンを使用したとは彼は言わなかった。

それが今後自身に何らかの影響を及ぼす訳ではないのだ。それにいちいち訂正を入れていては本題が遠ざかっていく。それを踏まえて訂正を入れる事はせず、ギルヴァはノアからの依頼内容を確認する様に尋ねる。

 

「依頼内容はクイーン…いや、そちらではシュトイアークリンゲだったか。それを扱い方の指南するという名目で良いのか?」

 

『いや、もう一つあるんだ。仲間の一人にブレイクと同じ様に二丁拳銃を扱う奴が居てさ。良かったらそいつに二丁拳銃の扱い方…いや、撃ち方?まぁそれを教えてやって欲しいんだ。あとは剣術指導かな』

 

「となるとブレイクを呼ぶ必要があるか」

 

『流石にあっちにも都合があると思うしよ。無理にとは言わねぇさ』

 

「問題ない。奴の事だ、暇しているに違いないのでな」

 

少しだけ騒がしくなるが、とギルヴァは心の内で呟いた。

とは言え彼もブレイクもあちらの基地には世話になった身。何もしないという考えは二人の頭の中にはない。

寧ろ訪れた機会。恩返しには丁度良いだろうと判断し、彼は次の話へと切り出した。

 

「では日程の話へと移ろうか。先に聞くがこの事はユノ指揮官、副官は承認しているのか?」

 

それは確認しなくてはならない事であった。

流石にノア単独で依頼してきた訳ではないと分かっていながらも彼はそれを尋ねた。

その問いにノアは大丈夫だと伝え言葉を続けた。

 

『ちゃんと許可を取ってる。後はそっちが受けてくれるかと言った所だが…その感じだと受けてくれるで良いんだよな?』

 

「ああ。この際言っておくが、この依頼は報酬無しで受けよう」

 

『良いのか?』

 

「二度も世話になったのだ。恩返しぐらいはさせて貰わんと此方の気が済まん」

 

『そう言うなら甘えさせて貰うぜ。んじゃ日程だが…明日でも行けるぜ』

 

悪魔が絡む案件は最近は発生していない。

特に問題ないと判断し、ギルヴァはそれを了承。連れていくメンバーを何人か連れていくと伝えた後、ある事を思い付き、彼はノアに一つ尋ねた。

 

「そちらの基地の敷地外で何も無くただ広いだけの場所はあるか?」

 

『あると思うが…それがどうしたんだ?』

 

「気になっただけだ。あるなら問題ない。当日を楽しみにしていてくれ」

 

『良く分かんねぇが、まぁ分かった。んじゃ明日宜しく頼むぜ』

 

「ああ」

 

それを最後に受話器を戻すギルヴァ。

便利屋が受けた依頼なので報告義務はない。しかしある事を実行するにはシーナの許可が必要になる。

その許可を得る為に彼は店の裏口から外へと出ると基地へ向かうのだった。

 

 

一方でシーナは射撃訓練場にてゲリュオンが姿を変えた魔具「quick silver(クイックシルバー)」を下げて、練習に励んでいた。

初めて扱う事となる魔具。それも時を操る能力を持ち合わせたものであり、シーナ自身も上手く扱えるか不安で仕方なかった。

それに加えてどう扱えば良いのかすら分からない。説明書がついている訳ではないのだ、直感でやってみる他ない。付き添いでMG4がいるのだが彼女も扱い方が分かる訳ではなかった。

何度も試行錯誤し、練習しては発動しない。どうしたものかと思い悩むシーナを見て、MG4はある事を提案してみた。

 

「私が物を一つ投げてみます。そこに向かって必ず捉えると言う様な気持ちでやってみたらどうでしょう」

 

「そうだね…次はそれをやってみよっか」

 

MG4の提案の元、まずは物を投げてみて発動を促す作戦が行われた。

彼女が投げた物に向かってシーナは言われた通りの気持ちで意識を集中させる。

必ず止める。

その思いを乗せて彼女は手を突き出した。その時、シーナはクイックシルバーの針が動く音を耳にした。

 

(動いた?)

 

そちらへと視線を向けようとした時、隣に立っていたMG4がある方向を指さしながらシーナへ声をかけた。

 

「し、指揮官」

 

何処か驚いている様なそんな口調。

何事かと思い彼女が指さす方向を見た時、シーナはその目を見開いた。

投げられ、宙に浮かんでいた物を包む込む様に何処からか現れた球体。球体には歯車の様な模様が描かれている。

そしてその中に取り込まれた物はまるで時間が緩やかになった様にゆっくりと降下していた。

何が起きたのかシーナは確信した。

 

「発動した…」

 

展開された力場は一秒で消失。中に取り込まれた物は地面へと転げ落ちる。

クイックシルバーが初めて発動した事に呆然とする二人。そこに第三者の声が室内に響いた。

 

「幾らか練習したと思うが、流石だな」

 

その声によって我を取りも出した二人。声がした方向へ向くとシーナに依頼を受けた事を知らせに来たギルヴァだだった。背を壁に預け、先程の光景を見ていた口ぶりだった。

すると蒼がシーナの魔具を扱い方を感心した様に喋り出した。

 

―はえー…意外とセンスあんのかもな、指揮官は。あの手の魔具は扱いが難しいからなぁ

 

(それも易々と…。あながち間違ってはないのかもな)

 

そう答えながらもギルヴァは少しだけ不安な気持ちになった。

普通の少女が時間操作系の魔具を所持した。信用できる所は兎も角、何も知らない所にこの情報が洩れる事があればそれを目当てに狙われる危険性もある。この基地は戦力などには自信あれど、情報には少し不安が残る所があるのだから。

そこまで思わせる理由はシーナの隣に立つMG4の一件があったのが大きかった。

彼女があちらに何処まで情報を流したのかギルヴァは知る気などない。しかしいずれ情報面に気を配らなくてはならない時が訪れると判断していた。

だが今はその事を伝えに来た訳ではない。早速ギルヴァは依頼を受けた事を話し始めた。

 

「依頼を受けた。依頼主はS09P基地に所属するノアからだ」

 

「あの子からとは珍しいね。それで依頼内容は?」

 

「ある武器の扱い、剣術指導、二丁拳銃の撃ち方…それらを色々と教えて欲しいとの事だ。明日あちらに向かう予定だ」

 

「それなら態々私に報告しなくても良いんじゃ?そっちが受けた依頼なんだから」

 

ギルヴァが予想していた通りにシーナから報告に関しての疑問が出てくる。

確かにその通りなのだが、報告しに来た彼にはもう一つの理由があった。

 

「ノーネイムを連れていく。あいつには"あれ"で移動して貰おうと思ってな。その許可を得る為に此処に来た」

 

「"あれ"って…まさか」

 

「そのまさかだ。一回飛ばしただけで終わりはないだろう?定期飛行という名目で動かせばいい。あのまま腐らせるのは勿体無い」

 

二人の会話を傍で聞いていたMG4も"あれ"が何のか察しが付いており、ギルヴァと同じくあの一回で終わりなのは流石に勿体無いと感じていた。

当然シーナもそれを感じていたのだが、作戦でもないに関わらず飛ばすのは如何なものかと感じた。

あの時は試験飛行の為許可を得て上空を飛行した訳だが今回は違う。だが定期飛行という名目で動かすのは決して悪くない案とも思っていた。

 

「…分かった。もし苦情があれば責任もって私が対処する。それと出来るだけ遠回りするルートを選んで。以前と今回は理由が違うから」

 

「了解した。ノーネイムにもそう伝えておこう」

 

「それとあの時の後に向こうに手紙を出そうと思っていたんだけど、ここ最近はごたごたしていたからね。お礼の手紙をあちらの指揮官に渡すと約束してくれるのであれば許可するから」

 

「約束しよう」

 

「なら良し。手紙は明日渡すからね」

 

シーナからの許可が下りるとギルヴァは礼を一つ述べてから、その場から去っていった。

後に連れていくメンバーに依頼の事を伝え、明日へと備えるのであった。

 

 

翌日。

昼下がり時に一台のバンが早期警戒基地内へ入っていった。バンの側面には「Devil May Cry』と綴られたネオンサインが取り付けられていた。出迎えに来てくれたランページゴーストのノア、アナ、そして副官であるナガンM1895の前で車両は停止。一番に降りてきたギルヴァに続いて、ブレイク、代理人、処刑人、マギー、フードゥル、グリフォンが降りる。そこに依頼主であるノアがギルヴァへと話しかけた。

 

「依頼を受けてくれて感謝する。今回は宜しく頼む、ギルヴァ」

 

「ああ。そちらもこちらに依頼してくれた事に感謝する。それと副官、シーナ指揮官からの手紙だ。後でユノ指揮官に渡しておいて欲しい」

 

軽い挨拶を済ませるとギルヴァは懐からシーナからの手紙を取り出し、ナガンへと差し出す。

それに対し、ナガンは了解じゃと答え差し出された手紙を受け取る。

 

「んじゃ行こうぜ。これで全員か?」

 

「いや、もう一人来る。ノア、昨日そちらの基地敷地外で周りに何も無くただ広い場所について話した事を覚えているか?」

 

「覚えてる。良く分かってないがすぐ近くにある。取り敢えずそこに案内したら良いのか?」

 

「ああ。頼めるか」

 

「分かった。ついてきてくれ」

 

ノアの案内の元、その場所へと向かう一行。

周りには何もだだっ広く場所が広がっており、何故ここに来たのかギルヴァらを除き、ノア、アナ、ナガンM1895は疑問の表情を浮かべた。

その時だった。遠くから何かの音が響いてきた。突然の事に身構える三人であったがそれが何なのか知っているギルヴァ達は身構える事はしなかった。

何か迫っていると三人が思った矢先、上空に現れたそれを見てノアがまるで子供みたく目を輝かせ興奮しながら口を開いた。

 

「オイオイオイ!マジか!マジか!マジか!!」

 

彼女達に姿を晒したのは白き装甲を纏い、ブースターを小刻みに吹かしながら降下してくる巨体。

コックピットにはラヴィーネ装着したノーネイムが搭乗しており、ゆっくりとリヴァイアサンを降下させながら機体を安定させる。ライディングギアを展開させ、リヴァイアサンは着地。

ラヴィーネをコックピットに装着させるとそこからノーネイムが降り立つ。。

以前は水色のヘアピンをしていたが、今はそれは外されており両耳に十字架のイヤリングを付けていた。白いコートを揺らめかせながら、三人に歩み寄る。

 

「遅れて済まない。S10地区前線基地隣接店「デビルメイクライ」所属、名をノーネイムという。宜しく頼む」

 

ノーネイムが三人と軽く挨拶を交わした後に、ギルヴァ一行は案内の元基地内部へと足を踏み入れる。

移動している最中、以前訪れた時比べて幾らか気配が増えている事に感づいたのか蒼がギルヴァへと話しかける。

 

―ここも色々と人が増えたみてぇだな?

 

(そのようだがそれを聞くつもりなどない。今は依頼をこなす事に集中するのみだ)

 

―あんまやり過ぎんなよ?

 

(善処しよう)

 

この男のやり過ぎが何処までのものか知る得る者はごく一部の者だけ。

だからといって外部にやりすぎはしない事はギルヴァも心掛けている。

かくして恩返しの為の依頼が今動き出すのであった。




という訳で「それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!」の作者である焔薙様に許可を頂いて今回の話を書かせていただきました。
もし何か間違っていたりしていたら言ってください!修正致しますので!
また一話にまとめきれないので、恐らくニ、三話続く予定です。


ところでリヴァイアサンを連れて来た理由はだと?まぁそれは追々ね。
さぁてスタイリッシュを叩きこむでぇ
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