Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――さぁ、技を盗んでいけ


Act106-Extra Repayment Ⅱ

ノーネイムと合流した後、ギルヴァ一行はノア達の案内の元、模擬戦を行う為の演習場へ訪れていた。

今回の依頼内容は指南であるが、ギルヴァ、ブレイク、処刑人、代理人はそれぞれが愛用する武器を持ち出している。しかし流石に魔剣や魔具などをぶつける訳には行かない。その為ダミー鉄血兵を出現させるといった内容で模擬戦は行われる事となった。

そしてまず最初に行う事となったのはアナの愛用する大型二丁拳銃『アジダート&フォルツァンド』の撃ち方の指南。当然その指南役は大型二丁拳銃『フォルテ&アレグロ』を愛用するブレイクだ。

二人以外の者達が観戦用の別室へ移動し、演習場には両手にフォルテ&アレグロを持ったブレイクとアジダート&フォルツァンドを装備したアナ。

ダミー鉄血兵を出現させる準備が行われている中、その待ち時間を利用してアナの方からブレイクへ話しかける。

 

「今回は宜しくお願いします、ブレイクさん」

 

「こっちこそ。指南と言っても教えるのは最低限の事位さ。後は勝手に技やら技術やら盗んでいきな」

 

「そうさせて貰います」

 

軽い挨拶を交わした後、ブレイクはアナの視線が愛用しているフォルテとアレグロに向けられている事に気付いた。

それもその筈で彼女が持つ白銀の大型二丁拳銃『アジダート&フォルツァンド』はブレイクが愛用しているフォルテとアレグロを参考に製作されている。

参考元となった銃が気になったのだろう。そう思ったブレイクは軽く口角を吊り上げると二丁の拳銃をアナへと見せた。

 

「気になるかい?」

 

「ならないと言えば嘘になります。参考元となった銃を見る事が出来るのですから」

 

「そりゃそうか。まぁ相棒の性能は折り紙つきでね。アレグロの方は少し衣替えしたみてぇだがな」

 

以前までフォルテもアレグロも黒く染まっていたのだが、何かがあったのかアレグロだけ白銀へと染まっていた。本来であればフォルテは黒、アレグロは白銀色へと染まっている筈だった。だがこの銃を製作したガンスミスが両方同じ色でないと駄目だ!と豪語し、本来白銀であったアレグロに安価の黒い塗料で塗りたくったのが原因。

後にブレイクの有する魔力の影響で塗装がはがれてしまい、本来の色を取り戻しただけの事だがブレイクが原因と理由を知る筈もなかった。

 

『準備出来たよ!二人共準備は良いかな?』

 

演習場に響いた声。

それがこの基地所属のアーキテクトの声だという事にアナは知っているがブレイクは知らない。だが彼をその事を尋ねようとはしなかった。

 

「ああ。こっちは何時でもオーケーだ」

 

「こちらも何時でも行けます」

 

二人の了承が取れるとダミー鉄血兵は次々と現れ始める。

相手が動き出す前に動いたのはアナ。アジダートとフォルツァンドを構え、先手を取った。極端なまでに連射性を上げた二丁の銃は凄まじい勢いで弾丸を放っていき、一人、また一人とダミー鉄血兵を倒していく。

抵抗の隙を与えぬ連射で敵を倒していくアナの姿を見ていたブレイク。いつものように余裕のある笑みを浮かべると彼も動き出した。

アナが距離を取りつつ射撃している所にブレイクはエアトリックを用いて彼女の射線上にいない敵に急接近し頭を踏み台に跳躍すると空高く宙へ舞い上がる。宙で体を上下反転させ、勢いよく回転させると…

 

「よっと!」

 

そのまま真下に居る敵へと向かって降下しながら弾丸の雨を降らし始めた。

模擬戦開始早々に関わらず、とんでもない芸当を見せつけたブレイクを見てギルヴァらと彼を知る者以外の者達が目を丸くしているのは言わなくても分かる事であろう。

一瞬で真下にいたダミー鉄血兵達を蜂の巣へと変えた後、地面へと降り立つブレイク。多方向から敵が迫ってきている事に気づくとアレグロの連射で正面の敵を攻撃しながら、フォルテで周囲の敵を攻撃し始める。

一対多という状況にも関わらず、冷静にかつそして容易く状況を打破していくブレイク。その姿を見ていたノアがある事に気付いた。

 

「さっきから見向きもせず仕留めてやがる」

 

ノアがそう言った様に周囲を敵に囲まれた時、アレグロで正面の敵を攻撃しつつフォルテで周囲へと攻撃する際ブレイクは一切見向きせず攻撃していた。狙いは完璧で放たれた弾丸は相手の頭部へ直撃しており、まるで周囲が見えていると言わんばかりである。

後退しながら射撃を繰り出しブレイクと背中合わせになるアナ。後ろに彼女が立っている事に気付いたブレイクはアナへと喋りかける。

 

「長物を持っている訳じゃねぇのさ。あくまでも持っているのは拳銃で、それを両手に持っていると来た。多方向に対する攻撃が出来るという事も覚えていた方が良いぜ。周囲に向かって撃つ際はノールックで撃てる様になれば完璧だな」

 

「…覚えておきます」

 

「それがいい。あと撃ち方でオススメするならレインストームを勧めるぜ。トライしてみな」

 

「流石にあれは無理ですよ…」

 

アナの返答に対し、ニヤリと笑うブレイク。

敵が最後の一体となった時、二人は同時にそちらへと銃口を向けた。アナはフォルツァンドを、ブレイクはアレグロを向け引き金を引いた。奇しくもそれはS11地区で異形の親玉に止めを刺す時に決め台詞と共に銃を撃った時の姿と似ていたのは知る由もなく、ブレイクの二丁拳銃の撃ち方指導は銃声によって終わりを告げた。

 

 

演習場から別室へと戻ってきた二人と交代する様に演習場へと入っていったのはシュトイアークリンゲを手にしたノアである。

そう。次はクイーン、またの名をシュトイアークリンゲの扱い方の指導である。先に演習場へと足を踏み入れたノアは軽く獲物を振るいながら、指南役だと思われるギルヴァを待った。

しかし遅れて演習場へと姿を見せたのはギルヴァではなく、初代クイーンを背負った処刑人であった。現れた指南役を見てノアは少しばかり驚いた様な表情を見せ、それに見た処刑人が尋ねる。

 

「なんだよ、俺じゃ不満か?」

 

「いや、そうじゃねぇよ。てっきり教えてくれんのはギルヴァかと思ってよ」

 

「成程な。確かに最初はあいつが扱っていたから、そう思ってもおかしくねぇか」

 

ノアの台詞に対しそう返答する処刑人。クイーンを手に取る前に、静かにコートの右袖を捲くり上げた。

見せたのはデビルブレイカーではない。悪魔の腕 デビルブリンガーだ。

あからさまに人形の腕とは思えぬそれを見てこの基地所属の者達は言葉を失った。何が起こればそんな腕になるのか、その他にも疑問が尽きなかったからだ。

 

「おいおい…何だよ、その腕。大丈夫なのか…?」

 

「人を病人扱いか?安心しろよ、こいつが一人でに動き出す事はねぇよ」

 

どこかうんざりした様な様子で処刑人はデビルブリンガーが勝手に危害を加える事はしないと伝えると、ノアへと問い掛ける。

 

「んじゃ始めるか。まず初めに聞くがお前はそいつを扱う際、どういった扱い方をしている?」

 

「えっとだな…」

 

処刑人の問いにノアは思い出しながらシュトイアークリンゲの扱い方を一つずつ話し始めた。

それを耳を傾けながら処刑人は何を教えるべきか判断していく。

 

(溜めてから攻撃に移る、か…)

 

話を聞くうちに処刑人はノアのシュトイアークリンゲの運用方法に指摘する部分を見つける。

そして彼女が運用に関して全て話し終えると処刑人はある方法を教える事にした。

機能というよりもそれは技術に近く、何よりも自身で編み出した方法をだ。

 

「いちいち溜めてからやるんじゃ効率が悪いな。敵も待ってくれる訳じゃねぇしよ」

 

「じゃあどうしろって言うんだよ。剣を振るいながら推進剤噴射機構を動かせって言うのかよ?」

 

「そうだ」

 

「は?」

 

まさかの返答に素っ頓狂な声を出すノア。

それを無視し、処刑人はクイーンを振るいつつ手元にスロットルを捻った。

すると推進剤噴射機構の一段目が解放する音が鳴り響き、その印として機関部が赤く発光しバイクのマフラーを模ったパーツからは微量の推進剤が吹き出ていた。処刑人は一段階だけ解放されたクイーンをノアへと見せつけた。

 

「俺が編み出した技術だが、推進剤噴射機構を一段階だけ解放する技術で名も『EX.Act』。同じ機構を積んでるんだ、これも出来るだろうよ」

 

「すげぇ、そんな方法があったのか。なあ、それを早く教えてくれ!」

 

「言われなくても教えるつもりだ。そういう依頼だからよ」

 

EX.Actのやり方を教え込む処刑人。言われた通りの方法で何度も剣を振るうノア。

しかしそれをやれと言われても難しく中々に発動には至らない。こればかりは鍛錬あるのみと思われ処刑人も仕方ないと判断。どうせなら模擬戦を行い、その感覚を掴めたらと思い急遽であるが模擬戦を行う事となった。

先程ブレイクとアナがやっていた同じ内容で準備が整うまでの間、処刑人はノアはある条件を化した。

 

「やり方は好きにやんな。ただ敵が出てきたら溜めてからじゃなくて攻撃中でもさっきの事をやれる様にしな。初っ端から大技吹っ掛けるのもアリだが、それだと敵に手の内を明かしてるもんだ。意表を突くと言うのも悪くないと思うぜ」

 

『さて二人とも始めるよ!』

 

「ああ、やってくれ」

 

準備が整ったの知らせを聞くと処刑人は始める様に促した。

そして先程と同じ様にダミー鉄血兵達が現れ始め、二人は同時に動き出した。

先に攻撃を仕掛けたのはノア。シュトイアークリンゲを大きく振るい、ダミー鉄血兵を一閃しつつスロットルを捻る。しかし捻るタイミングが遅かったのか発動せず、ノアは軽く舌打ちする。

 

「ちっ…!」

 

「そう慌てんなよ。回数重ねるしかねぇよ」

 

後に続く様に攻撃を仕掛けたのは処刑人。地面を勢い蹴り踏み込み、敵へと突進。体全体を駆使してクイーンを横へと薙ぎ払い、複数の敵を吹き飛ばす。攻撃が直撃する寸前にスロットルを捻り、推進剤噴射機構を一段解放。

そのまま流れる様に持ち手を逆手にし、敵の顎へ目掛けて刀身を振るい上げる寸前に持ち手近くのレバーを引いた。燃焼された推進剤が炎となって噴き出し、複数体の敵を宙へ斬り上げながら処刑人も舞い上がった。

そこから宙を浮かんでいる僅かな時間を用いて連撃を仕掛ける。

二度斬り付けた後、反動活かして体を左へ回転させながら斬り上げつつ更に上へと浮かび上がる。浮かび上がった敵に向かってデビルブリンガーを飛ばし、引き寄せる。

 

「落ちやがれ!」

 

そのまま掴むと思い切り下へ投げつけ敵を地面へと叩きつけるとクイーンを振り下ろす。振り下ろした反動を利用して急降下し、地面へと叩きつけた敵に強烈な一撃を叩きこんだ。

華麗な動きを繰り出す処刑人を観戦用部屋で見ていたアナもナガンM1895、アーキテクトは目を丸くしていた。そしてランページゴーストに所属しているRFBも様子を見に来ており、処刑人が繰り出した一連の動きに驚き、呟いた。

 

「あれって本当に処刑人なの…?」

 

そう言われても無理もないとギルヴァは思った。

悪魔が関わる案件に巻き込まれ、大事な戦友を失った。彼女がS10地区前線基地に身を置き、新たな力を手にした以降は殆どの時間を鍛錬に費やしている。

ただ適当に剣を振るっていた時期と比べると今の動きは見違えるほどと言えた。

 

「かなり上達しましたね、彼女」

 

「…そうだな」

 

隣で立っていた代理人がギルヴァにそう伝えると彼も肯定を示す返答をするのであった。

 

模擬戦は終盤へ向かい始める。

ダミー鉄血兵達の数も減っていき、残り僅かとなっていた。見様見真似で処刑人の技を真似るノア。対する処刑人は何か手本になる技とかはないものかと考えながら攻撃を繰り出していた。

そして残り一体となった時、処刑人はある事を実践しようを考えた。勢いよく踏み込み、敵の目の前まで迫るとデビルブリンガーで強烈なアッパーをたたき込んだ。そこから蹴りを二回放つと流れる様に拳の乱打を開始。

体全体を動かしながら繰り出される拳。敵に滅多打ちにするという荒業は処刑人が考えた戦法だ。

何十発もの拳を叩きこむと背後に回り込み、相手の体に腕を回すと後ろへとぶん投げる。

 

「大当たりってな!」

 

そこから体勢が崩れた所に顔面に向かって処刑人は止めのドロップキックをぶつけ、吹き飛ばす。

剣術だけではない。己の体もまた武器の一つ。それを証明するの様な動きをやってのけた処刑人はコートに付着した埃を払いながら静かに口を開いた。

 

「ま、こんなもんか」

 

それが合図となって模擬戦は終了する。

この後に処刑人はノアに『Ex.Act』の更なる発展技、推進剤噴射機構を全開放する『Max.Act』があることを教えた。自身も練習中であることを伝えた上で、やり方も『Ex.Act』と変わらない事も教えた。

注意としては判定がかなりシビアな為、中々発動しない事。その事を伝えた後に処刑人は演習場へと去っていくのだった。

 

 

二丁拳銃の撃ち方、クイーンの扱い方指導は終了しギルヴァらは一旦休憩を取る事となった。

ギルヴァとノーネイム、ナガンM1895を除くメンバーはカフェで休憩。そしてギルヴァとノーネイムはナガンM1895の同伴の元、ある人物が居る部屋へと訪れていた。

身籠っていた事にギルヴァは内心驚きつつも、挨拶する。

 

「久しいな、ユノ指揮官」

 

「うん。久しぶり」

 

二人が尋ねにいった人物とはこの基地の指揮官 ユノ・ヴァルターであった。

軽く挨拶をしたい。そしてノーネイムの事を紹介したいとギルヴァがナガンに申し出た所、少しの間だけならという条件で許可をもらいここに来ていた。

軽く挨拶がてらに談笑した後に、ギルヴァの隣に立つノーネイムが気になったのかユノ指揮官がギルヴァへと尋ねた。

 

「えっと…そっちの子は?」

 

「ああ、紹介が遅れたな。便利屋所属で名をノーネイム。…俺の娘だ」

 

「へぇ~。って…え、娘?」

 

娘と告げられた時、二人は困惑した表情を浮かべ、少し抜けがあった事を思い出したギルヴァはノーネイムの事情を話した。彼の訂正があって何とか納得して貰うとノーネイムからユノへと話しかけた。

 

「紹介にあった通り、私はノーネイム。会えて光栄だ、ユノ指揮官」

 

「こちらこそ」

 

二人が挨拶を交わし、軽く話し始めた傍らでギルヴァはその様子を見つめていた。

その隣で立っていたナガンが彼へと話しかけた。

 

「娘とはのう。にしては随分と成長しておるの」

 

「先程の話をもう忘れたか?」

 

「忘れておらんよ。だがお主が知らぬ内に父親になっていた事には驚いておるがの」

 

「その事を連絡してもいいと思ったがな。だが生憎とこちらもごたごたしていたのでな」

 

―とか言いながら忘れただけじゃねぇの?

 

(うるさいぞ)

 

蒼の指摘に対し、冷たくあしらうギルヴァ。

やれやれと蒼の声が聞こえるのも無視しながら、何かを思ったのか彼は静かに呟いた。

 

「無理はするなよ」

 

「無理?何に対してじゃ?」

 

「…それは分からん。だがそう感じ取っただけに過ぎん。」

 

ここで起きている事。その事を知る方法はギルヴァにはない。

ただ悪魔としての勘、あるいは人間としての勘か。またはその双方が合わさってその台詞が出たのかも知れない。

 

「心配するでない。大丈夫じゃ。…お前さんも随分と世話焼きじゃの」

 

「…否定できんな」

 

心は捨ててないのではなと言って言葉を締めくくるギルヴァ。

時間が訪れるまでノーネイムとユノが楽しそうに話している様子を静かに見守るのであった。

一方でカフェではマギーが二代目クイーン、アジダート&フォルツァンド、レーゾンデートルⅡ、フードゥルⅡを製作した本人だと代理人によって明かされ、アーキテクトと熱く語り合い、フードゥルとグリフォンがこの基地に所属している人形達にナデナデされていたのは言うまでもないだろう。

 

休憩を終え、再度演習場へと戻ってきたギルヴァ達。

一通り依頼された事は終えているのだが、ギルヴァが日本刀を使う事を聞いたのかアナが剣術指導して欲しいと申し出た事により、演習場には愛用の無銘を手にしたギルヴァと高周波ブレードを持ったアナがいた。

三回目となる模擬戦を行う事となり、ギルヴァはアナが手にしている高周波ブレードを一目見て激しく斬り結んで行くには少々厳しいかと判断していた。

既にダミー鉄血兵達は出現しており、武器を構える二人。動き出そうとした時、ギルヴァがアナへと伝える。

 

「武器の耐久性に難を感じているのなら斬り合うな。一撃で仕留める事を勧める」

 

「一撃…ですか」

 

「ああ。技術、技は勝手に盗んでいけ。それをどうするかはお前次第だ」

 

無銘の鍔に親指を押し当て鯉口を切りつつ姿勢を低く維持。

そして居合の態勢から敵へ向かって地面を蹴った瞬間、ギルヴァの姿を消えた。黒い残影がダミー鉄血兵達の間を駆け抜け、その後に続く様に無数の真空刃が発生。嵐と化した真空刃が瞬く間に敵達を切り裂いていき、気付けば敵達の背後へと彼は移動していた。刀を手で器用に軽く回転させるとそのまま刀身を鞘へ納め鞘と鍔がかち合う音を響かせる。それが合図となって切り裂かれたダミー鉄血兵達は瞬く間に地面へと倒れていった。

 

「遅い」

 

ほんの一瞬で神業にも等しい事をやってのけるギルヴァ。

観賞室では人数が増え、模擬戦の様子を見に来ていた人形達も驚きの表情を見せた。そしてギルヴァ達の事を知らない一部の者達は疑問に思った。

一体何者なのかと。

そんな疑問が上がってきている事とは知らず、ギルヴァとアナは模擬戦を続ける。

最初に披露した『疾走居合』から、動きは同じであるが螺旋を描く様に複数の敵を巻き込みつつ斬り上げながら自身も宙へ舞い上がる『螺旋天翔』や彼しか出来ない神技『次元斬』を披露した後、納刀した状態の無銘の鞘の素早い殴打から抜刀斬りを繰り出すギルヴァ。その様子を見ていたアナが口を開く。

 

「鞘で攻撃とは…」

 

「使い方次第では鞘も武器になる」

 

「…真似してもよろしいでしょうか」

 

「言った筈だ。勝手に盗んでいけとな」

 

会話しながらも技を披露するギルヴァ。それを見ながら記憶していくアナ。

かくして全ての依頼は完了し、模擬戦は終了する。

三回目に行われた模擬戦はギルヴァの時が一番早くと終わったのは後で知る事であった。

 

全てを終えた後、リヴァイアサンが複座式という事をマギーから聞いたのかノアが乗ってみたいと申し出た。ノーネイムが操縦を務めるという条件でノアを乗せたリヴァイアサンが空へと飛び出し、二人が戻ってくる間ギルヴァ達はバンを停めてある外で待機。そして車内ではマギーがアナに許可を得てアジダート&フォルツァンドの整備を行っていた。

 

「乱暴な扱いされてない様で嬉しいですね。かなりの腕をお持ちなのでしょう」

 

「いえ、まだまだです。寧ろこの銃を作ってくれた事にとても感謝しています。今となっては無くてはならない存在です」

 

「そうですか。この子達も鼻が高いでしょうね。貴女の様な方に扱ってくれているのですから」

 

アナと会話しながらも慣れた手つきで銃の点検をこなしていくマギー。

自身が製作した銃なのもあるが、構造は殆ど頭に入っている。例え目隠しでも整備できるくらいに。

油を指し、トリガーの緩み具合を調べ、元の形へと戻しちゃんと作動するか確認し問題ないと判断すると二丁の拳銃をアナへと返した。

 

「これで大丈夫。それとこれを渡しておきます。今後の役に立てて下さい」

 

愛用しているバックからマギーが取り出しアナへと渡したのはアジダート&フォルツァンドの予備マガジン複数と英語である言葉が記された箱。

その言葉を見てアナをそれを読み上げた。

 

「エクスプローション・バレット…。あの、これは一体?」

 

「こちらが良く相手する敵用に製作したその銃専用の炸裂弾です。相手に着弾し、数秒後に爆発するといった弾丸です。反動は倍近く跳ね上がるのが難点ですけど、貴女なら使いこなせるでしょう」

 

こちらが良く相手にする敵用にと聞いた時、アナはノアに聞かされた事を思い出す。

そして彼女は良く相手する敵の名を口にした。

 

「悪魔…ですよね?その良く相手をする敵の名は」

 

「…聞き及んでいいましたか」

 

「はい。あまり実感はわきませんが…処刑人の腕を見て実感せざるを得なかったです」

 

ギルヴァやブレイクに初めて会ったユノやナガン、S11地区の作戦にて彼らを知った者もいるがアナは違う。S11地区の作戦では彼女は居なかった。いきなり悪魔と言われても実感が湧かないのも無理もなかった。

そんな中、突然マギーは自身の正体を明かした。

 

「私も悪魔ですよ。見た目は人間ですけどね」

 

「! 貴女も…?」

 

「ええ。魔界出身であちらではマキャ・ハヴェリという名前で生きて居ました。伝説の魔工職人とも言われてきましたね」

 

だいぶ前の話ですけどね、と言いながらマギーは道具の片付けを始める。

その姿は決して悪魔と断言出来ない。普通に生きている女性と何ら変わりない。しかし何故マギーが自身の正体を明かしたのか、それにはある理由があった。

 

「悪魔と言えど、心を宿した悪魔もいる。私もこの世界で心を宿した悪魔なんですよ」

 

「悪魔が心を宿す…」

 

「ええ。ギルヴァやブレイクもその身に悪魔の血を流しています。けど他の悪魔とは決定的な違いがある。それが心です」

 

そう言いながらマギーは優しい笑みを浮かべながらアナの方へ向く。

悪魔ではない。優しい笑みを浮かべた一人の女性がそこに立っていた。

 

「どうかあの人達の事を怖がらないで下さいね?」

 

怖がって欲しくない。

それがマギーが正体を明かした理由であり、願いであった。

 

リヴァイアサンが戻ってきて、依頼は完了した事により別れの時間が訪れた。

オレンジ色の空が広がり、基地の外へと繋がる場所の前では見送りとしてノア、アナがいた。代理人、処刑人、マギー、フードゥルとグリフォンは車内に、ノーネイムは先に基地へ向かって飛んでいっており後はギルヴァとブレイクばバンに乗り込むだけであった。

 

「色々助かったぜ。今日教えてもらった事は忘れねぇから」

 

「ええ。欲を言えばもう少し教えてほしかったのもありますがそれ以上は我儘になりますし」

 

二人の言葉を受け、軽く笑みを浮かべるギルヴァとブレイク。

恩返しの為とはいえ、彼らにとっても悪くない時間を過ごせたと感じていた。

そろそろ出発となるとブレイクが別れの挨拶を告げる。

 

「じゃあな、お二人さん。体には気を付けなよ」

 

腕を軽く上げ、ブレイクは車内へと乗り込んでいく。

そして最後に残るはギルヴァだ。

 

「未来が読める訳ではない。この先何が起きようとも無理はするなよ。…暇になったら遊びにでも来い。シーナ指揮官なら喜んで迎えるだろうからな。…また会おう」

 

二人に別れの挨拶を告げると後ろへと振り向きギルヴァは車内へと消えていく。

バンのエンジン音が鳴り響き、『Devil May Cry」を綴られたネオンサインが光出す。

車両は基地の外へ走り出していき、去っていく。こうして恩返しを終えた彼らはS10地区へ戻っていくのだった。




都合上書けませんでしたが、ギルヴァとアナが模擬戦をやる前に一応代理人も模擬戦に参加しています。その際ニーゼル・レーゲンの脅威的な変形を用いてスタイリッシュに動き回った模様です。因みに多くの人形達に見せつけています。
それとノーネイム操縦の元リヴァイアサンに乗ったノアちゃん。テンションMAXだった事をここに記載しておこう。

これにて恩返し編は終了です。
焔薙様、本当にありがとうございました!
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