Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――信じていたのは混在の記憶


Act107 Encounter with the past

恩返しを終えて翌日の事。

いつものように店で本を読んでいたギルヴァは突然シーナに呼び出され基地内第一会議室へと向かっていた。

 

(理由もなく来い、とはな。些か強引だな)

 

所属する人形達や職員達が行き交う廊下を歩きながら、彼は理由もなく呼ばれた事に疑問に思っていた。

不満がある訳ではない。急を要する何かだという事は理解している。

そこで思い付くのが悪魔が絡む案件だった。自分が呼ばれたとなればそのことぐらいだろうと判断し、彼は第一会議室へと歩みを進める。

廊下を抜け、第一会議室前へと到達すると室内へと入る。そして中にいたのはシーナに404小隊全員とAR小隊の三人。するとギルヴァはAR小隊の中で見覚えのない人形がいる事に気付いた。

黒い髪、黄色のメッシュに眼帯をした少女。AR小隊のメンバーと一緒にいる所を見ただけで彼は彼女が何者なのか察した。

 

(はぐれていたAR小隊の一人か)

 

―これで迷子は全員見つかった訳か。しかし何時の間に合流したのやら

 

(404小隊とAR小隊の三人が緊急任務で昨日出ていたと聞いている。恐らくだが…)

 

―なぁるほど。緊急任務の内容は迷子のお出迎えって訳か。

 

内々で蒼と会話しながらギルヴァは呼び出したシーナの元へと歩み寄っていく。歩み寄ってくる彼に気付いたのか手を振って挨拶するシーナ。

彼女の傍まで歩み寄るとギルヴァは自身が呼ばれた理由について尋ね始めた。

 

「呼ばれて来たぞ。呼んだ理由を聞こうか」

 

「その理由を話したいんだけど…まずはこの映像を見てくれる?」

 

「映像だと?」

 

訝しげな声を上げるギルヴァにシーナは手にしていたタブレット端末を操作。

ギルヴァに見せる映像を選択しつつ、展開したスクリーンにその映像が映し出された。

流されたそれにこの場にいる全員がその映像へと視線を向けた。

流れるのは誰かが撮影した映像。物陰から映しており、その先に映っているそれを見て誰もが言葉を失い、室内へ映像から音声が響き渡っていた。

爆発音、破砕音。空へと昇っていく黒煙の中から赤い瞳が輝き、ゆらいとそこから何かが姿を見せた。発達した四肢。赤色に輝く鱗に尻尾。その姿は竜の様にも見える。

だがそれが悪魔なのか、或いは伝説上の生き物なのか。誰にも検討がつかなかった…この男を除いて。

 

(…ッ!!?)

 

頭の中に流れてくるノイズ交じりの映像。

雨が降る中で響いた一発の銃声。その直後に地面へと倒れ伏せる少女。可愛らしい真っ白なワンピースを染め上げる様に彼女の下で大きな輪を描く様に広がっていく真っ赤な花。

額に開いた穴から大量の血潮。見開かれた目には生気はない。言葉にせずとも少女は既に絶命していた。

ギルヴァは少女の事を知っていた。血の繋がりはない。それでも妹の様に接してきた少女…カエデだと。

だがその最期は自身が知る最期と違っていた。

 

(あの時カエデは死ぬ間際に俺に生きてと願って死んだ筈だ。どうなっている…?)

 

自身が知る記憶と突然流れた記憶に齟齬をきたしている事に彼は混乱していた。

沈黙を保ちながらもギルヴァの様子が変と感じた者が一人いた。

 

(…ギルヴァ?)

 

傍に近寄り彼の隣に立っていたUMP45だった。

何時も以上に険しい表情を浮かべており、それは映像に映る赤い竜に対してだと彼女は判断した。

だがそれは違った。

今ギルヴァの頭の中では本人でしか知り得ぬ事が起きていたのだ。決して本人でしか分からぬ事であり、それを知る筈もない45は彼から映像へと視線を映した。

赤い竜は体の機能の一つなのか腕からブレードを展開。鉄血兵達を容易く切り裂き、その巨体は似合わない動きで鉄血兵を頭から潰す。相手に一切の抵抗を与えず蹂躙していき、それは周囲の敵を全て片付けると高らかに咆哮していくとその場から飛び去って行き、そこで映像が終了した。

室内は沈黙に包まれる。誰も言葉を発さない。

沈黙が数分続くとそれを切り開く様にギルヴァは尋ねた。

 

「この映像…撮ったのは誰だ?」

 

「私さ」

 

問いに対し自分だと答えた聞き覚えのない声が一つ。

ギルヴァが声の主へと視線を向けると、そこにいたのはこの第一会議室に入った際にギルヴァと蒼との間で会話に出ていた人形…M16であった。

表情こそは笑っているが、どこか品定めされている様な感覚を覚えるギルヴァ。目を軽く反らし彼に対しM16はフッと笑い、先程の話を続けた。

 

「お前の話は妹から聞いている。人知れずこの世界に居る"悪魔"とやらを討伐する専門家なんだろう?どうだい、専門家から見て"あれ"は悪魔なのか、それとも別の何かなのか教えてくれないか?」

 

「…正体までは分からん。だが悪魔という事だけは間違いないだろう」

 

この時ギルヴァは敢えて赤い竜の正体を敢えて伏せた。

余計な不安を与えない為という意味もあるが、その正体に対し確証が抱けなかったのもあった。

赤い竜が悪魔だと聞き、ジッとギルヴァの目を見つめるM16。しかしどこか納得したのか笑みを浮かべそれ以上は何も言わなかった。

 

「今後"あれ"が何時、何処で出くわすか分からん。指揮官、基地の面々には任務に出る際に注意点として伝えておくと良い。鉄血の部隊があのザマでは、こちらも同じ事になる」

 

「…分かりました。ギルヴァさんも何か分かれば教えてね?」

 

「約束しよう」

 

先に戻ると伝えるとギルヴァは足早にその場から去っていった。

去り行く彼の背をM16はジッと見つめていた事に気付かずに。

 

 

第一会議室を出て、彼は基地の屋上へと訪れていた。

青々と広がる空を眺めながらギルヴァは蒼へと話しかける。

 

「…よもやアレのおかげで抜けていた記憶の一部を思い出すとは思わなかったな」

 

―正直俺もびっくりしてるさ。一度ならず二度もあれを見るなんて。それにお前の記憶の事もな

 

「そうか…」

 

今までギルヴァは過去に起きた出来事は全て嘘偽りのないものだと思っていた。

だが赤い竜の影響か自身の身に起きた出来事の記憶の一部が抜け、あろう事か混在してしまった事に驚きを隠せなかった。

何が本当で、何が違うのか分からなくなっており彼にしては珍しく覇気がない。そんな姿の彼を慰める者はおらず、ギルヴァはどこか自虐じみた笑みを浮かべるがすぐさま神妙な表情へと切り替え、蒼が彼へ告げる。

 

―色は違うが、姿形は間違いねぇ。あれは…

 

 

 

 

「お前と出会って直後、異形と化し暴走した"俺"に間違いなさそうだ」

 

 

 

時間は過ぎ去り、夜空へとすり替わった今。

ある基地にてローブを纏い歩み寄る二人の姿があった。

基地入口まで歩み寄ると一人が足を止め、もう一人が声を掛けた。

 

「どうされましたか?錬金術士(アルケミスト)。まさかここまで来て怖気つきましたか?」

 

「そんな訳ないだろう、侵入者(イントゥルーダー)。ただ奴に真意をやっと聞けると思ってな」

 

「その対価にとんでもないお土産があると思いますがね」

 

「それはその時だ。…行くぞ」

 

その声に侵入者は頷き、錬金術士は同じ境遇に遭った者と共に基地内へと足を踏み入れた。

全てはその理由を知る為。

だがここから蝕む始めた悪夢の一端が姿を見せるとは気付かずに。

 

 

その頃…。

何もなく、ただ平野だけが広がる地帯にて一台の車両が駆け抜けていた。

運転席には銀髪と赤のグラデーションがかかった少女。その隣では車窓を開き煙管を吹かす女性が一人。

電波が悪いのかまともなラジオも流れる事もなく、車のエンジン音を響く中煙管を吹かしていた女性が運転を務める少女へと話しかけた。

 

「腹減ったのう。そろそろ休憩にせんか、ルージュ」

 

「さっき食べたばかりでしょう。もう少し我慢してください、ダンタリオン。それにS10地区の前に訪れる場所も近いんですから」

 

「おお、そうじゃったの」

 

その言葉を聞き、ダンタリオンと呼ばれた女性は笑みを浮かべ、口から紫煙を吐く。

流れて消えていくそれを目で追う事は無く、笑みを浮かべたままであったが目は笑っていなかった。

そして彼女は静かに呟く。

 

 

「どれ…。何が目的が聞かせてもらおうかの、鉄血よ」




つまりギルヴァが今まで信じていた記憶はかつて起きた事が原因で一部が欠損していた事に加え色々混ざってしまっていた記憶だった。今回M16が撮影し、映っていた赤い竜を見て一部を思い出し、自身の記憶がごちゃ混ぜになっていたといた事に気付いた訳です。

次回は真意を尋ねる為に動いていた錬金術士と侵入者編を書く予定です。
と言っても予定なので約束通りにならない事もあるのでご容赦を

では次回ノシノシ
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