Devils front line   作:白黒モンブラン

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―――知るために


Act108 To know the true intention

月明かりが全てを照らし、緩やかに吹いた風が吹く。流れる雲によって満月が隠されては再度露わになるのを繰り返し、地上は光闇を幾度となく繰り返していた。

人知れず行われている現象の下で錬金術士と侵入者は、かつての仲間である夢想家が潜伏しているであろう基地内部へと侵入していた。

内部はわざと電力を落としているの暗闇だけ支配していた。歩く度に響き渡る靴底が当たる音が暗闇と相まって何時も以上大きく響き渡っているなと廊下を歩いていた錬金術士はそう感じつつも夢想家がいる場所を目指していた。

念の為灯りになるものとしてフラッシュライトは隣に立つ侵入者が持っていた。しかし敵に位置に知られる事を恐れ、灯りを灯す事無く二人は周囲の警戒を維持したまま歩みを進めていた。

一言も発する事もなく、そして敵と遭遇する事もなく二人は廊下を進んでいく。電力が落ちている事もあって、行く先々で見つける部屋のドアは閉じられており、只々真っ直ぐと道が続いているのみ。

誘われている。

言葉にせずとも二人は同じ事を思った。順調に進み過ぎていると感じたのだろう。ここまで順調ならそう感じてもおかしくない。

すると何かの考えがあってのものか錬金術士がそっとM79グレネードランチャーを手に取ると榴弾を装填し始めた。隣でその行動を見ていた侵入者は彼女へと問い掛ける。

 

「何をす―――」

 

何をする気だと言い切る前に爆発音が響き渡った。閉ざされていた扉は派手に吹っ飛び、火災が発生。当然こんな事をやったのはM79グレネードランチャーを構え榴弾を放った錬金術士である。

しかしだ。錬金術士の暴挙のおかげか、或いは突然の事だったせいか、落ちていた電力が復帰。照明に灯りが灯り火災を止める為に施設全体のスプリンクラーが起動する。そして纏っていたローブがびしょ濡れになる始末。

 

「変な事もあるのですね。室内で雨が降っていますよ?」

 

「はて、誰が火遊びをやっていたのやらか」

 

「貴女のせいですからね?」

 

「何の事か知らんな。灯りになるものも得た上に奴に地味な嫌がらせが出来た。さて…ずぶ濡れ姿のあいつの顔でも拝みに行くか」

 

素知らぬ振りを決め込み、クールな笑みを浮かべながら錬金術士は先へと歩みを進めていった。

先を行く彼女の背を見て呆れた表情を見せつつも侵入者はその後を追うのだった。

一方、監視カメラで二人の行動を監視していた夢想家は錬金術士の地味な嫌がらせを見事に受けていた。椅子に腰掛け優雅な笑みを浮かべいたら、錬金術士がやらかした事によって濡れ鼠状態。まだ火災が続いているのかスプリンクラーは動いており、降り注ぐ消火水に止まる気配はない。

体をプルプルと振るわせながら顔を下へと俯かせる夢想家。黒く長い髪が前にしなだれており、その姿はホラー映画で見るテレビの中から出てくる女の怪物を彷彿させる。

 

「あんのっ…クソ女があああぁぁっ!!!」

 

優雅な笑みは何処に消えたのか、錬金術士に向かって口調を荒くし怒りを露わにする夢想家。

その後で同じくずぶ濡れになりながらも控えていた追跡者。柔和な笑みを浮かべながらも怒り狂う彼女を見て静かに呟く。

 

「彼女の今の顔を見たら流石に破壊者もすぐ泣き出しそうだ」

 

くすくすと可愛らしく笑いながら、追跡者はまだかと思った。

二人に()()()をお披露目できるその時を。

 

 

夢想家へと行った地味な嫌がらせが絶大な効果を誇った事を知る筈もなく錬金術士と侵入者は基地内部に存在する別区画へと訪れていた。

通路は正面へと向かえば情報管理区画。右へ行けば宿舎区画。左は医療区画へと分かれており二人は情報管理区画へ続く道を選びそちらへと歩き出した。そこに夢想家がいるという確証はない。だが彼女ならばという理由で向かう事にしたのだ。

油断しているのか、それとも潜ませているのか。敵が出てくる様子はないがいつ襲われてもおかしくない。手にしている武器をすぐさま放てるように周囲の警戒をしながら二人は奥へと進んでいく。

そしてどれ程歩いただろうか。二人は情報管理区画内に存在する連絡通路前広場へと来ていた。二階へと通ずる階段は破壊されており、残っているのはどこか向こうへと通ずる道の入口だけ。

 

「錬金術士に侵入者。久しぶりね?暫く会えなくて寂しかったわ」

 

その先へと向かおうした矢先、聞き慣れた声が響く。

声の主の方へと振り向けば、二人が探していた相手が、夢想家が二階の通路で立っており彼女達を見下ろしていた。びしょ濡れな姿を見せる訳には行かず、軽く乾かしてから急いでここに来ておりほんの小さくであるが息を整えている仕草をしていた。

それを侵入者は見逃さなかったのだが追求する事はせず沈黙を保っていると隣に立っていた錬金術士が榴弾を装填したグレネードランチャーの銃口を夢想家へと突き付けながら返答する。

 

「それはこちらもさ、夢想家。先程ちょっとしたサプライズをした訳だが喜んでくれたか?」

 

「サプライズなんてあったのね。ごめんなさい、知らなかったわ」

 

さも気付かなかった様な口振りで残念そうな表情を浮かべる夢想家に対し侵入者は柔和な笑みを浮かべて先程見逃さなかった仕草について指摘した。

 

「その割には息を整えていた様子でしたが?駄目ですよ、夢想家。こういう時はしっかりお礼を言わないと。それともお礼を言うのが恥ずかしすぎて嘘を言ってしまった感じですか?」

 

侵入者の言葉を聞き、薄っすらと反応を見せる夢想家。

挑発され、まさかそれに乗っかりそうなったのだが敢えて堪えたのを二人が気付く筈もない。

だがそれを見抜いていたかのように錬金術士は侵入者の後に続く様に口を開く。

 

「それは悲しいなぁ。折角サプライズを用意してやったと言うのにお礼の一つもなく、代わりに嘘をつくとは」

 

大袈裟に悲し気な素振りを見せる錬金術士だったが、それも数秒も経たぬ内に解かれ再び夢想家を睨む。

さて…と小さく呟くと本題へと切り出した。

 

「S10地区の件といい、侵入者に起きた件といい…ましてや切り捨てるとはな。どういう意図があってこの様な事をやったのか聞かせてもらおうか」

 

「ああ、その事…」

 

問いに対しどうでもいいと言わんばかりの態度を見せる夢想家。

しかし態々ここまで来てくれた褒美のつもりか彼女はその問いに答え始める。

 

「実験に協力して欲しいって言われたのよ。相手はどっかの宗教団体。まぁそんなつまらない事に協力する気なんてなかったけど…協力してくれた際のお礼を聞いた時、気が変わったわぁ。何て言ったってそれを手に入れば面白い事になるのだから」

 

「そのお礼とやらは、訳の分からん騎士や赤い竜を作り出す技術か?」

 

「残念ながらそれは違うわね。じゃあ何かって教え上げたい所だけど、どうせ死ぬ相手に教えるつもりはないわ」

 

じゃあね~と言いながら踵を返しその場から去って行こうとする夢想家。

去っていこうとする彼女を呼び止める錬金術士であったが、止まれと言われて止まる馬鹿はいない。やむを得ずグレネードランチャーを放とうとする錬金術士だが…

 

「P.T.E.Bじゃろう?そのお礼の内容とやらは」

 

突如として響いた声によって引き金にかけていた指を離した。

自分達が通ってきた通路の奥からカランコロンと固くて軽いものが地面に当たる音が響き渡る。

咥えた煙管を吹かし、手には消火水の雨を防ぐために使ったのか赤色の和傘。白を基調とし鮮やかな桜模様が施された着物を纏い、その者はゆっくりとこの場に姿を現した。

端正な顔立ち、瞳は赤く輝き、スラリとした佇まい。決して大きい訳ではない。しかし慎ましくとも実ったそれが彼女の魅力を更に引き出させる。

淡い金色の髪を揺らしながら、紫煙を吐き出す。ゆらゆらと昇っていくそれを見届けると彼女は笑みを浮かべる。

この場には余りにも不釣り合いな格好。浮いているとして言いようのないのだが気にとどめる事もなく口を開いた。

 

「全く妙な事もあるもんじゃ。基地内で急に雨が降り出しおった。何処の阿呆が変な事でもやらかしおったのかの。傘がなかったら大事な着物がずぶ濡れになっていたわ」

 

現れて早々に愚痴をこぼす女性。

誰しもがその者へ警戒を強め、それに気づいた女性は愚痴を言うの止めると夢想家へと喋りかける。

何処か驚いている様子の夢想家へと。

 

「やはりだったか。その顔を見れば分かる。何故それを知っているかと言った顔じゃ」

 

「…」

 

「聞きたい事はそちらも、そしてこちらも山ほどあるが…まずはワシの自己紹介をさせてもらおうかの」

 

吹かしていた煙管を咥え、彼女は高らかに挨拶する。

 

 

「グリフィン所属。本部直属諜報部所長のダレン・タリオン。…まぁこれは表向きの顔。ここからは正体と行こうか。ワシの名は"ダンタリオン"。十の顔を持つ悪魔。得意分野は電子戦とかでの。ワシに言わせば、正規軍が相手でもこのワシに勝つ事は出来ん。それぐらい得意でのう。…短い付き合いになるがよろしく頼むの」

 

 




次回も錬金術士&侵入者編でお送りいたします。

さてこの場に現れたダンタリオン。
彼女もまた今後に大きく関係いたします。

では次回ノシ
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