※話の順番を設定せずにそのまま投稿してしまった為、一旦削除し設定し直してから再び投稿させていただきました。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
それはとてもとても不思議な物語。
黒き外套を見に纏い、神速の如く刀を振るう悪魔狩人が主役でもなく、赤き外套を揺らめかせ反逆の名を冠した大剣を振るう悪魔狩人が主役でもない。
ましてや復讐者だった少女でもなければ、悪魔の右腕を持つ人形でもなく、多彩な重火器を振るう人形でもない。
今回の主役…それは彼ら、彼女らを支えてきた『銃』達だ。
陽が沈むと橙色に染まっていた空は黒へと染まる。
後一時間で日付が変わろうとしている星空で彩られた空の下。
S10地区前線基地隣接店である便利屋「デビルメイクライ」本店の明かりは既に消えていた。
店で住んでいる者達は各々の部屋で静かな寝息を立て、店主であるギルヴァもまたベッドに寝転がり、静かに眠っていた。
ベットの傍には日本刀状の魔剣 無銘。そしてテーブルの上には、ある銃が置かれていた。
かつての姿を有していた時にギルヴァと出会い、使用頻度が多い訳ではないが彼を支えてきた銃。
銀色に染め上げられた二つのバレルに十二発装填可能という特殊回転弾倉。
そして装填される弾丸は13mmという常識外ともいえる特殊大口径弾。
またほぼ二発同時発射するという機構を有している事と使用する弾丸の問題もあって、発射時の反動は何かに固定して発砲しなくてはならない程反動が凄まじく、また大型という事もあって凄まじい重量を誇る。
その為この銃は人間ではおろか、人形ですら扱う事は不可。最初で最後の主であるギルヴァが使ってこそ、存在意義と銘打たれた銃は真価を発揮する。
ただこの銃は元から二つの銃身及び十二発装填可能な特殊弾倉、同時発射機構を備えていた訳ではない。
ギルヴァと出会った時は銃身は一つであり弾倉も六発までしか装填出来なかった。
既存のリボルバーとの違いを上げるとするのであれば、13mm弾を使用する為に大型化しているぐらいで紆余曲折あって現在の姿を得たのだ。
その姿を得た事により、後輩が存在する事になり、一つはマギーが気まぐれで製作した銃を、とある作戦の報酬として送られた一丁と本銃の特徴的な部分を継承しつつ使用する弾薬の変更及び経口の変更。扱いやすさを取り入れたそれは『アニマ』という名でかつては処刑人と呼ばれていた彼女の元へと渡っている。
そしてその二丁の銃の先輩とも言えるのが、銃声を声代わりとして自らの存在意義を問い続ける銃…『レーゾンデートル』であり、その銃が机の上に置かれていた。
当然ながらレーゾンデートルという戦術人形はこの世には存在しない。故にこの銃は喋る事もない。
静寂に包まれる室内。眠る様に机の上に横たわるレーゾンデートル。
時計の長針と短針が12の所で重なり合ったその時、薄っすらとレーゾンデートルが光に包まれた。
次の瞬間、レーゾンデートルを包んだ光はギルヴァが居る部屋から姿を消した。
外へと飛び出し、どこかへ導かれる様に光は街中を駆け抜け、大通りから路地裏へと入る。
迷路の様な路地裏をまるで分かっているかの様に光は闇に包まれた路地裏を駆け抜ける中、突如として何かが前を塞ぐ形で姿を現した。
風で月を遮っていた雲が流れて行き、月光が地上を照らす。それは路地裏まで照らし闇を払いのけ、その何かを照らした。
そこにあった等身大のサイズの『鏡』。
装飾を施されたその鏡は何故か意思を有しているかの様に自立し僅かながらに宙を浮いていた。
そしてこの場にギルヴァ、ブレイク、シリエジオ、ネロ、シーナ、ノーネイムが居たらその鏡の正体に気付いていたであろう。
その鏡には名前があるのだ。
『映されし異界の鏡』という名前が。
そしてそれは魔具。世界と世界を繋げる力を有したとんでもない代物なのだ。
だが光は止まらない。それどころか迷う事無く異世界にあるどこかの『路地裏』を映し出す鏡の中へと飛び込んでいったのだ。
レーゾンデートルを包んだ光が鏡の中に飛び込んで数秒後も、何処からともなく複数の光が姿を現し先程と同じく鏡の中へと飛び込み、姿を消していった。
そこは薄暗いが上を見上げれば青々とした空が広がる路地裏。
あまり人が立ち寄らない小さな袋小路に少女が一人。
気絶しているのか、傍には宙に浮かぶ魔訶不思議な鏡の傍で彼女は倒れていた。
「…っ……」
目を覚ましたのか、少女はゆっくりと体を起こす。
雪の様に白い肌。すらりと伸ばされ、透き通るような銀髪。整った顔立ち、華奢な体つき。
丈の短い白のワンピースの上から羽織るのは裏地に青色の刺繍が施された黒いコート。
まるで鎧の様な質感を感じさせるブーツ。
そして腰のホルスターには銀色に輝く巨大なリボルバーが収められていた。
「…ここ、は…?」
周りを見渡しながら彼女はふと呟く。
目は閉じているにも関わらず周りをしっかりと捉えている様子。
座り込んでいた場所から立ち上がり、衣服に着いた土埃を払い落す。
その時、彼女はある事に気付いてしまい、土埃を払い落していた手を止めてしまった。
グローブをはめた手を見つめながら、どことなく驚いている表情を浮かべる。
「何故…」
何に対しての問いなのか。
それは彼女だけにしか分からない。だが彼女は何かを思い出し素早くホルスターに収めてある銃を抜き取る。銀色に輝く巨大なリボルバー…レーゾンデートルを見て驚きから確信した様な表情へと切り替わった。
「私は人になっている……?」
存在意義。
その名を与えられた銃はつい先程まで銃の姿をしていたにも関わらず、何故か人の姿となって異世界に迷い込んでいた。
それもその世界はかつて自身の主が訪れた平和な世界であり、例の喫茶店がある世界という事を若干混乱気味のレーゾンデートルが気付く筈もなかった。
一方、その頃…。
そこはかつて異世界からやってきた悪魔狩人達が訪れた地区ではなく、遠く離れた地区。
そんな地区にある大通りの歩道を歩く二人の少女がいた。
一人は長く伸ばした黒髪に金色の瞳。黒を基調とし、所々に金の装飾を施したコートを羽織っていた。
もう一人はセミロングで透き通るような銀髪を揺らし、金色の瞳を有していた。白いコートに金色の装飾が施されたコートを羽織っている。
髪型、髪の色、着ているもの以外はもはや双子ではないかと思わせる程同じ顔つき、同じ体つきをしていた。そしてコートの内側に隠したホルスターに二人の色と同じ色をした銃が収められている。
黒コートの彼女の名はフォルテ、そしてフォルテの隣を歩くのはアレグロ。
どういう訳か彼女達もまたレーゾンデートルと同じくこの世界に迷い込んでいた。
「さてと…ここどこだと思うアレグロ?前に来た場所ってこんな感じじゃなかった気がするんだが」
「私に聞かないで、フォルテ」
「はいはい」
ため息を付きながらフォルテは道中で見つけたベンチにドサッと腰掛けた。
足を思い切り伸ばし、顔を空へと向ける彼女の隣にアレグロは腰掛ける。
風によって空を彩っていた雲が流れる様子を見つめながら呆然とするフォルテ。
「気付いたら人の姿になっていて、気付いたら"あそこ"とは違う別の地区、か…」
「正確には列車を利用しなくては行けない所にある地区という事ね。そしてそこへと向かう金もない。さて…どうしたものやらか」
無一文という事実に二人は深いため息をついた。
金など持っている筈もなく、どうやって例の場所に向かえば良いのか。
人の姿になったにも関わらず、フォルテとアレグロは途方に暮れる一方。
「腹が減ってきたな…糖分がほしい」
「私はピザね。…って食事の話はしないでよ。余計に腹が減ってくるんだけど」
「怒るなよ。小さい事でキレてたら、胸に栄養がいかねぇぞ?ただでさえまな板だというのによ」
「あ"?」
女性が出してはいけない声がアレグロから出てくる。
ベースとなった銃は同じだというのに、フォルテには胸があってアレグロは悲しい事に胸がない。
それはもう見ては分かる通り、平原が広がっている。
「…その余分な脂肪引きちぎってあげましょうか?」
「おー怖い怖い」
アレグロがキレているにも関わらずフォルテは笑みを湛えたまま肩を竦める。
その姿を見て、ほとぼりが冷めたかのかアレグロは大きくため息をつくとベンチから立ち上がった。
「取り敢えず移動するだけ移動してみましょ。ここでどうでもいい話をしていても埒が明かないわ」
「ま…それもそうだな」
ここで立ち止まっていても何も始まらない。
どうにかして例の場所へと向かう為の移動手段を見つける為にアレグロとフォルテは歩き出すのであった。
レーゾンデートルが路地裏で目を覚まし、アレグロとフォルテが遠く離れた地区で立ち往生している中、この二人もこの世界に迷い込んでいた。
アレグロとフォルテと同じ様に例の地区から離れた地区で目を覚ましており、二人もまた歩道を歩いているのだが、既に目的地は決まっているのか二人は駅へと目指して歩いていた。
白をベースとし、襟で口元が隠れる様な服装に身を包み、長く伸ばした銀髪を束ね、そして身の丈以上のあるであろう何かを布で包み、それを担いでいる彼女の名は『シルヴァ・バレト』
そしてもう一人の名は『アニマ』である。
黒い髪を伸ばしており、赤い瞳が特徴。
灰色のシャツの上から黒のジャケットを着崩して羽織り、ホットパンツにブーツという格好で、そして例にも漏れず腰のホルスターには黒のリボルバーが収められていた。
「むぅ…」
「まだ感じ取っているのか?シルヴァ・バレト」
「それもそうだろう。お礼欲しさにやった訳ではないのだぞ、アニマ」
駅に向かう前、シルヴァ・バレトとアニマは偶然にもトラックの荷台から重たい荷物を一人で下ろしている老人と遭遇していた。
量も量で、また老人一人では荷が重い。
その様子を見てシルヴァ・バレトが居ても立ってもいられず見ず知らずの老人を手助けしたのだ。
それを見てアニマも手伝いを申し出て、一時間は掛かる重労働を十五ッ分で終わらせる事が出来たのだが、問題はその後であった。
見慣れない出で立ち。その二人の姿を見て旅人と勘違いしたのか老人が旅の足しと称してお礼にある程度の金銭を渡してきたのだ。
無論二人はお礼欲しさにそんな事やった訳でもないので、やんわりと断ったのだがそれでも食い下がる老人にシルヴァ・バレトが折れてしまい、受け取ったのだ。
確かに列車に乗る為には金がいるのも事実。だがどことなく後ろめたさをシルヴァ・バレトは駅に向かっている今でも感じ取っていたのだ。
その様子にアニマはため息を付き、呆れた様に口を開いた。
「そんなのは分かってるさ。けど向こうの気持ちを駄目にすんのも悪いだろ?」
「むぅ…」
「いい加減割り切れよ。いつまでくよくよされているとこっちが滅入る」
それに、と前置きを呟くとアニマは頭をガシガシと掻きながら口を開く。
「他の連中も探さなきゃならない。
「分かっているとも。三人は兎も角として、一番心配なのはペインキラーだ。あいつを探すには骨が折れるぞ」
この場に居ない仲間の一人であるペインキラーと呼ばれる者にシルヴァ・バレトの表情に影が差す。
それを見てアニマはやれやれと呟きながら手を額に当てた。
「まぁ…大丈夫だろ。勝手にどっかに消える癖以外はな」
「…」
「まぁ今は列車に乗ってあの地区に行く事を考えようぜ。探すのはそっからだ」
「了解した」
まずはそこへと向かわなくてはならない。
老人からお礼として貰った金銭を片手に二人は駅構内へと足を踏みいれるのであった。
同時刻。
そこはSO9地区。とある公園で一人の少女がベンチに腰かけて静かに空を見上げていた。
白と水色が混じった様な色をした髪、黒色の髪留め、全体的に黒を基調とした学生服らしきものを見に纏っており、その上からコートを羽織るといった格好。そして腰に下げたホルスターには一丁のリボルバーが収められていた。
「…」
少女はじっと空を見上げるだけであり、口を開く事もない。
一体何を考えているのか、それが分かるのは本人のみである。
しかしベンチに十五分以上座っている為か、心配そうに見つめてくる者も居るのだが本人はその視線を気にする様子もない。
だが行動を起こす者もいる訳で、ベンチにずっと腰掛けて動かない少女の元にある人物が歩み寄ってきた。
近づいてくるその者に少女は気付いたのか上げていた顔を下ろし、そちらへと向ける。
「こんにちは」
それは偶然とも言うべきか。
少女に声をかけたのはかつてこの地区にある道路橋で起きた悪魔騒ぎに出動した人形 M4A1であった。
休日だった事もあり、例の喫茶店へと向かっていた彼女だがこの公園に人だかりが出来ていた事に気付き、事情を聞いた上で少女に話しかけたのだ。
「?」
話しかけてきたM4に対しこてんと首を傾げる少女。
座っていたベンチからゆっくりと立ち上がりながら。
意外にも少女はそこそこ身長があり、M4と同じくらいの背丈をしていた。
「いきなり声をかけてごめんなさい。ずっとここに居るみたいだって聞いて、それで心配になって声をかけたの」
「…そう。でも大丈夫。心配してくれてありがとう」
ぺこりと頭を下げる少女。
年相応の笑みをM4に見せると空を見上げながら、ここに居た理由を明かした。
「知り合いが来るのを待っているの」
「だからここに?」
「ええ。でも会う事は出来ないみたい。皆、バラバラの居場所にいるみたいだから。それも遠い所。一つは…この近くにいるのかな」
「どういう意味…?」
まるで知り合いの場所を分かっているかの様な口振り。
その台詞にM4は訝し気な声を上げるが、少女は見上げていた顔を下ろすと再び笑みを見せてから公園の出口へと歩き出した。
「え、あ…ちょ、ちょっと待って!」
呼び止める声に少女は反応し足を止める。
M4の顔を見つめながら、彼女は口を開く。
「そう言えば…あの時、『あの場所』に居た人形だよね?私はその場には居なかったけど、彼女に代わりにお礼を。見ず知らずのあの人達に協力してくれてありがとう」
「あの場所…?見ず知らずの人達…?」
告げられた言葉を繰り返す様に呟くM4。
その様子にクスリと微笑む少女。
「そう言えば名前言ってなかったね」
そして名を名乗っていなかった事に気付いたのか、名を明かし始めた。
「ペインキラー。それが私の名前。…じゃあね、
それだけを伝えるとペインキラーは踵を返し、公園の出入口へと向かいそのまま公園から去っていった。
小さくなっていくその背を見つめるM4だが、ふと先程の台詞にある事を気付き、それを口に出した。
「…なんで私の名前を?」
それに気付いた時、ペインキラーにその事を聞く為に彼女は駆け出した。
しかしペインキラーの姿は消失しており、M4が彼女に追い付く事はなく、モヤモヤした感情を覚えながらも喫茶店へと向かって行くのであった。
えくすとら!と着いている通り…
今回から数話に分けて、いろいろ様作「喫茶鉄血」とのコラボでございます!
いろいろ様、この場をお借りしてコラボのお願いを聞いて頂き、ありがとうございます!
今回はギルヴァ達ではなく…その彼ら、彼女ら愛用する銃達が主役です。
映されし異界の鏡によってあちらの世界へと迷い込む銃達。それも何故人の姿となって…という感じでございます。
ここにあちらの世界に迷い込んだ銃達を軽く紹介しておきます。
:レーゾンデートル
使用弾薬 13mm、二つのバレル、12発装填可能な特殊弾倉、二発同時発射機構を有する化け物リボルバー。使用者はギルヴァ。
異世界に迷い込み、人の姿を得た。
普段から目は閉じられているが、ちゃんと周りは見えている。
白のワンピースから羽織る黒のコート。その裏時には青い刺繡が施されており、自身の主たるギルヴァを模倣している。
大型特殊拳銃だというのに、胸ははない。絶壁である。
:アレグロ&フォルテ
コルトガバメントをベースに極限にまで大型化、堅牢化が施された二丁の銃。
使用者はブレイク。
銃の色に合わせるかようにそれぞれ着ている服の色が違い、髪型、髪の色が違う。
それ以外は全く同じなのだが…フォルテに胸があるに対しアレグロには何故かない。レーゾンデートル同様に絶壁。とても不思議である。
:シルヴァ・バレト
対化け物用狙撃銃。銀色に輝く銃身を有し、その口径は29mm。
化け物クラスの銃であり、非常に頑丈。使用者は代理人。
見た目のイメージとしてはアズレンのコロラドで、着ている服を白と黒に変更した感じ。
:アニマ
レーゾンデートルの特徴的な部分を継承しつつ使いやすさを取り入れた銃。ベースとなった銃はトーラスModel454だが、その原型は髪の毛一本程もとどめていない。
使用者は処刑人。
使用者の影響を受けているかは定かではないが、ガサツな割に面倒見がいい性格をしている。
:ペインキラー
Painekillerという名はあくまでも愛称でしかなく、本来の名はマテバ2006M。
使用者はシーナ・ナギサ。
上記の五人と比べると謎が多い。シルヴァ・バレトとアニマ曰く、勝手にどっかに消える癖があるらしい。