――――狩人よ。命を弄ぶ悪魔に制裁を与えよ
この時期にしては少し風は冷たく、夕暮れ時にしては空は薄っすらとどんよりでその色は闇へと染まっていく。
流れる雲は何処か灰色に染まりながらも風に流され、空を漂う。
かつての舞台となり、今やその面影を失くした地。
その先に新しく佇む建物。そびえ立つ建物からは負の感情の様なものが放たれ、おどろおどろしい。周囲の雰囲気がそれをさらに助長させていた。
そんな人形売買組織が拠点としている基地が遠くに見える中使われなくなった飛行場を仮司令塔とし忙しく動き回る者達がいた。
飛行場周囲に停められたいくつかの装甲車と滑走路全体を占領するかのように鎮座する白き機動兵器の側面に貼られたデカールに記された『S10FLB』の言葉。
そう。ここに集まり過剰とも言える戦力を投入し作戦に備えている者達は全員『S10地区前線基地』に属する人形達である。
一人は銃に弾倉を差し込み、一人は仲間と入念な打ち合わせ、一人は既に準備を終えたのかただ静かにその時が来るまで待機。決して賑やかな雰囲気ではない。寧ろ物々しい雰囲気と言える中、便利屋「デビルメイクライ」を経営し、その身に悪魔の血を流しながらも悪魔を狩るハンターである黒いコートの男…ギルヴァは愛刀「無銘」を杖の様に立て向こうを見つめていた。
今は姿なく、かつては存在していた人権保護団体過激派の基地での共闘作戦の事を思い返していた。
「懐かしい?」
向こうを見つめるギルヴァの後ろから声を掛け歩み寄る人形が一人。
サイドテール、金色の瞳、左目に残された傷、己と同じ名を冠した銃を手にUMP45が彼の隣に立つ。
姿を見ずとも声で判別していたのかギルヴァは隣に立った彼女の方を向く事は無く、先程の問いに返答する。
「ああ。もう遠い話な気もするがな」
「そう?私からすれば昨日の出来事の様に鮮明に覚えてるけど」
UMP45にとってはあの時の作戦は悪魔達に苦戦を強いられた事もありあまり思い出したくない作戦でもあった。
しかし良い事はあっけなく忘れてしまい、嫌な事だけがはっきりと覚えてしまうのは人間にもあれば人形にもある事。
彼女はあの時の作戦での出来事をはっきりと覚えていた。その時の記憶だけ抹消する方法がない訳ではない。それは現実逃避でしかないと思っているのかそれをせずにいた。
事実苦戦を強いられたからこそ、学んだ事も決して無い訳ではなかったのだから。
「そしてハンター一家やあの女社長が悪魔に関わったのもこの時だったか」
「そう言えばそうだったよね~。あの人達、今どうしてるのかしら」
話は切り替わり、かつての作戦に参加してくれた彼、彼女達の事をギルヴァは思い出していた。
グリフィンの援軍はなく、依頼を受けてやってきたのはハンター一家とある会社を経営する女社長。しかしこの者達の助力が無ければあの時の戦いは長引いていただろう。
s11地区での戦いで両者と共闘し、そして片方は本社制圧作戦以降今やどうしているかはそれを知る手立てはない。そう簡単にやられる者達ではないと確信している為かギルヴァは連絡を取るという事はしないと決めていた。この世界は広い様で狭い。また何処かで顔を合わす事もあるだろうと思いながら。
違法組織に対する作戦開始時間が刻々と迫る中、一足早くギルヴァ、ブレイク、処刑人の三人は基地へと歩いて向かっていた。代理人によるニーゼル・レーゲン レールガン形態の砲撃の後、ノーネイムが駆けるリヴァイアサンに装備されたミサイルで飽和攻撃。後に三人が内部へ突撃し、群がる悪魔どもを始末する。三人が内部で悪魔どもを殲滅している内にS10地区前線基地の部隊が基地内部へと突撃し、敵を撃破しながら囚われている人形を解放、および保護といった流れで行う形となっていた。
少しでも相手に攻撃させる隙を与えない為にも基地へと向かっていく最中、ブレイクは急に顔をしかめた。
「嫌な臭いがプンプンするぜ。ごみ溜めみたいな臭いだ」
「分かるぜ…。右腕がこれになったからか嗅覚が変に鋭くなってな…。ひっでぇ臭いだ」
ブレイクの言葉に同意を示す処刑人もまた顔を顰めていた。
その中でギルヴァは酷い臭いだと理解しつつもそれを顔に出す事はせず歩みを進めていく。
基地近くまで歩み寄った時、基地正面外部に広がった光景に処刑人は言葉を失った。ギルヴァとブレイクはその光景を見て険しい表情を浮かべ、そして遠くから砲撃態勢に移行していた代理人が通信越しに言葉を漏らす。
『悪趣味な…』
どうやったのか無数に張り巡らされたワイヤーの様なもの。
そこにつり下がっているのは、人型の鉄の檻。そこで囚われていた内部骨格らしきもの。それが十は超えるだろうか。無数に吊り下げられており、ゆらゆらと揺れていた。
これが人形売買組織の仕業かどうかは分からない。しかし骨格に付着している血液らしきものを見てそれがかつては人形のものだと思える以上、誰の仕業か簡単に判別できる。
中にはS10地区前線基地所属する人形と同じ人形だと思われるのがつり下がっているのだから、尚更余計に理解が進んでしまう。
まるで自分達に逆らった人形達の末路だと言わんばかりに広がる公開処刑場。いかに今回の潰す人形売買組織が凶悪であるかを示唆していた。
動く気配がないのか、ギルヴァ達が基地近くまで歩み寄ったとしてもつり下げられたそれらに動き気配ない。このまま作戦開始時間まで待機する三人の無線に仮司令塔たる飛行場からシーナの声が飛ぶ。
『作戦開始まで30秒前。砲撃用意』
指示を受け代理人はニーゼル・レーゲンをレールガン形態へ変形させると広場中央へと狙い定める。
このまま撃てば吊り下がっている遺体達も爆発に巻き込まれるのだが、だからといって代理人は狼狽えない。さめてこの一撃で安らかに眠れる様に祈りながらレールガンを最大出力までもっていく。
余剰エネルギーによる羽は大きく広がり、鮮やかに輝く光。生み出されるエネルギーによって紫電が周囲に放たれていきながらも代理人の狙いに狂いはない。
上空をノーネイムが乗るリヴァイアサンを駆け抜け、いつでも飽和攻撃が出来る状態を維持しつつ旋回する中代理人はシーナからの指示を待った。そして通信越しに彼女の声が轟く。
『狼煙を上げてッ!!』
「…安らかに眠りなさい」
骸と化した彼女達へと詫びる様に呟く代理人。轟いた声と同等の砲撃音が静寂たるこの地帯に大きく響き渡った。
砲口から放たれた閃光が決して軌道を歪ませる事無くただ真っ直ぐ突き進んでいく。
着弾まで数秒も掛からない。水色に輝く閃光は基地前広場に着弾し、大きな爆発をあげた。
周囲に響き渡る破砕音と爆発音。そこに加わる様に上空からミサイルのシャワーが降り注ぐ。悪魔達をあぶり出す様に爆発音が連鎖し、それに合わせてギルヴァ達は動き出す。飽和攻撃が収まり広場へと足を踏み入れた時であった。
その場で起きた事に処刑人は怒りを露わにした。
「こんの…クソ外道どもがッ!!!」
その声はこの作戦に参加している面々の無線に響いた。
当然と言うべきか、シーナの耳にも届いており突然の事に彼女は処刑人へと叫ぶ。
「処刑人!?どうしたの、何があったの!?」
それは現場でしか分からぬ事。
砲撃、飽和攻撃の後に人形売買組織が繰り出した対抗手段にギルヴァもブレイクは険しい表情を浮かべる。
ガシャンガシャンとまるで鎧が歩く様に音が幾度ともなく連鎖し、彼らを敵対者として認定しているのかその歩く速度は足早である。
それは生への執着か、或いは自身が味わった苦痛を、恐怖を、死を無差別かつ無慈悲に味合わせるべく動き出したのか。かつて銃を握っていたという記憶は忘れ去れる事なく、肉を失い骨だけと化しながらも人の形を模った鉄の檻に捉えられたそれはギルヴァ達へとかつて己と同じ名を冠した銃の銃口を向ける。
既に亡き命。だというのに命を弄ぶかの様な悪魔の様な行いに処刑人は言葉を荒げる。
「何が人形売買組織だ!!人形だったら何でも良いのかよッ!!」
背に背負ったクイーンを抜き、怒りの表情を浮かべる処刑人。
怒りに呼応するかの様に右手のデビルブリンガーは輝きを放った。
まるで命を弄ぶ外道どもに制裁を下せと言わんばかりに。
動き出した鉄の檻に関してはDMC2に登場する敵、アゴノフィニス、テレオフィニス、モルトフィニスを参考しています。
原作では刑死者の怨念に操られて生者へと襲う感じですが、こちらも同じように犠牲となった人形の怨念に操られて生者へと襲う感じになっています。
今回ではかつての作戦でコラボしていただいた所の名をわざと濁して出しましたが…怒られたら修正いたします。
さてここからは人形売買組織襲撃作戦編をお送りいたします。
色んな悪魔も出てくるよ!…多分
そしてここからは処刑人に新たな力が加わります。デビルブリンガー持ってんなら、あの引き金も覚えないといけねぇよなぁ?
では次回ノシ