Devils front line   作:白黒モンブラン

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──守る為、これ以上失わない為、彼女は欲する──

──更なる力を──


Act116 Give sanctions Ⅲ

刃と刃がぶつかり合う。

大型でありながらも巧みに槍を操るボルヴェルク。全身を駆使し、クイーンを振い力強い一撃を放つ処刑人。

両者の間では目まぐるしい程までの速さで剣戟の嵐が巻き起こっていた。

一見すれば互角の様にも見えるが、処刑人の表情を険しかった。

 

(こいつとんでもない位つえぇ…!さっきから少しずつ押されてる…!)

 

流石は魔界の戦士というべきか。

ボルヴェルクはパワーだけならギルヴァやブレイクの上を行く処刑人を圧倒していた。

反撃しようにも繰り出される強烈な技の数々に処刑人は防戦一方を強いられていた。

距離を取ろうにも不用意に動けばそこを突かれて、下手すれば死を招く恐れもある。

どうにか距離を取る為に処刑人は動き出した。

 

「!」

 

大きく薙ぎ払われる槍。

大振りだった為、穂先が到達するまで若干の時間がある。攻撃が到達する直前にバックステップで回避する処刑人。そこから体を捻りつつ、クイーンを抜き放ちながら勢いよく踏み込み、ボルヴェルクに接近。

推進剤噴射機構は一段階だけ解放してある。勢いよく刀身を振いつつ持ち手付近のレバーを引き、推進剤を噴射。

マフラーから噴き出す推進剤が炎を纏う。処刑人の力と相まってボルヴェルクに迫る刃は恐ろしいまでの速さを得る。

 

「ぜぇりゃあああぁッ!!!」

 

雄叫びと共に刀身はボルヴェルクの胴体を右斜めしたから左斜め上へと一閃。

そのまま二撃目を繰り出そうと上半身と腕を大きく回転させ、クイーンを振るう。推進剤に速度に回転も合わさった攻撃はさらに早くなる。寸での所でボルヴェルクは槍を前方に展開し処刑人の攻撃は防がれる。だが繰り出された攻撃は処刑人よりも一回り大きいボルヴェルクを容易く吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。

勢いよく叩きつけられた為、土埃が舞い上がりボルヴェルクの姿を隠す。

二度目の攻撃は防がれたものの一度目の攻撃に確実な手ごたえを感じた処刑人。体勢を立て直し息を整えると動きが止まっているボルヴェルクへ駆け出した。

休ませる気などない。

距離を詰め、勢いよく飛び込みクイーンを振り下ろそうとした瞬間であった。

土煙の中から飛び出した鋭い何か。

先程の槍ではない。飛んできたのはまるで光る刀身の様なもの。

 

「!」

 

不味いと感じた処刑人は素早くクイーンの刀身で攻撃を受け止める。

だが宙に飛んでいた為か勢いまでは殺せず吹き飛ばされ背中から地面に叩きつけられる。

一回、二回、三回と転がり、慣性が失われると処刑人はゆっくりと立ち上がり、歩んでくるボルヴェルクを睨む。纏っている黒い炎はさらに燃え盛り、手にしている槍の穂先には光る刃が発生している。

 

「ォォォォォ…!」

 

まるでその声は怒りを露わにしている様であった。

本格的に本気になったと悟る処刑人だが、その目はまだ死んでいなかった。

強力な悪魔だという事は分かっている。だがそれがどうした?

こいつは悪魔であり、戦友を奪った悪魔と変わらない。それに今こいつを自身の手で仕留めなければ、守れるものも守れなくなる。その思いが彼女を奮い立たせる。

痛みはあるが、気にする程度ではない。クイーンを構え果敢に彼女はボルヴェルクに突進。

槍のリーチは長くなっており、自由自在にその長さを変えられる光刃に触れればデビルブリンガーを持つ処刑人でも一瞬で切り裂かれるであろう。そこにボルヴェルク自身が持つ技と速さが組み合わさる為、接近するだけでも危険であった。

 

「ぐっ…!」

 

自身が持つ技を、力を総動員させ、ボルヴェルクへと攻撃をする処刑人。

だが先程まで遊びであったのか、繰り出される攻撃を難なく受け流していくボルヴェルク。そして攻撃を弾き返し、体勢が崩れた所を突きクイーンが吹き飛ばされる。

処刑人の手から離れて飛んで行くクイーン。距離を取ろうとする所を許さず、空いていた腕を伸ばし処刑人の首を掴んだ。

万力の様に捕まれた腕はデビルブリンガーを持つ処刑人ですら振りほどく事は叶わない。呼吸が上手く出来ず、デビルブリンガーの光もまるで生命の終わりも差し示すかの様に次第に消えていく。

止めを刺さんと言わんばかりに槍を突き立てるボルヴェルク。

 

「が…グッ……く、そっ…!」

 

薄れゆく意識の中、処刑人はボルヴェルを睨みつける。

まだ終わっていない。まだ諦めていない。そんな思いが彼女の中で宿る。

こんな悪魔に負ける程度では本当に守りたいものすら守れなくなる。

こんな所で終わってしまうのかという悔しさが交わる。

意識が朦朧とし、そして彼女の視界は暗闇へと暗転する。

闇に包まれる中、誰かの声が響く。

 

─まだ終わってないだろ?─

 

(…ハンター…?)

 

─こんな所で諦めるお前じゃない筈だろ?…背中は押してやる。前を向け。手を伸ばせ。まだ終わってない証拠を見せてやれ─

 

(そうだ…。まだ終わってねぇ…)

 

デビルブリンガーにほのかに光が灯り始める。

その思いに答える様に。

 

(何も守れてねぇんだよ…)

 

 

─失った痛み─

 

 

(大事なあいつらを守る為なら…)

 

 

─守れなかった後悔─

 

 

(この身を悪魔にくれてやってもいい…)

 

 

─今度こそ守るという決意─

 

 

(だから…!)

 

 

─自分を受け入れてくれた彼女らや彼らを守る為─

 

 

(力を…!)

 

 

─彼女を欲する─

 

 

(もっと…)

 

 

─今度こそ大事なものを失わない為の…─

 

 

(チカラヲッ!!!!)

 

 

 

 

 

右腕を介し、処刑人の全身から溢れ出す膨大な魔力。

その勢いはとどまる事を知らず、空間させも振動させる。

 

「ッ!!?」

 

まるで息を吹き返し、何処にその力があったのか再び動き出そうとしている処刑人にボルヴェルクは驚きを隠せなかった。

何かをする前に仕留めようと槍を突き放つが、穂先が処刑人を貫く前にボルヴェルクは魔力によって発生した暴風に吹き飛ばされる。

壁に叩きつけられた後に地面に膝をつく。槍を杖代わりにしつつ立ち上がり、処刑人の方へ向いた。

 

「…」

 

そこに居たのは確かに処刑人だ。

だが溢れ出す魔力によって形成されたのか、その背には青白く光る魔人の姿が浮かび上がっていた。

その魔人の姿はボルヴェルクは知りようがなくとも、ギルヴァや代理人が見ればある人物の名を口にするであろう。

その姿は先に逝った戦友 狩人に酷似していたのだから。

完全に彼女という訳ではない。刀と一体化を果たしたかの様な右腕、両手には彼女が愛用していた二丁拳銃。まるで悪魔と彼女が組み合わさったかの様な姿をしていた。

 

「守れるなら魂を悪魔に捧げたって良い…。だから…!」

 

どこかノイズが混じった声を響かせる処刑人。

飛ばされたクイーンを回収し右手に持った太刀状の魔剣『狩人』を握り直しボルヴェルクへ突撃、瞬く間に間合いを詰める。

一瞬の事に反応が遅れるボルヴェルク。

それを見のがさなかった処刑人はクイーンで一閃。その直後に魔人が手にしていた魔剣『狩人』と同じ形状をした刀を振るい、追加攻撃。相手の手数が増えた事により先程の状況とは打って変わって防戦を強いられるボルヴェルク。反撃を試みるが回避されお返しと言わんばかりにデビルブリンガーによる強烈なアッパーカットをお見舞いされる。

宙へ舞い上がる巨体。重力に引かれ地面へと激突しそうになった直前に脚が掴まれる。

 

「テメェをぶちのめすッ!!」

 

右腕の力が、納めていた刀が秘めていた力が解放され何時も以上パワー有した処刑人はボルヴェルクの脚を掴んだまま振り回し地面に何度も叩きつけた。

もはや一方的とも言えるが、悪魔にくれてやる慈悲はない。

必要以上に叩きつけ止めと言わんばかりに全力でボルヴェルクを地面に叩きつける処刑人。これでおとなしくなると思えば、フラフラになりながらも再び立ち上がるボルヴェルク。

足掻き続ける悪魔に処刑人はとっておきをくれてやる事にした。腕を飛ばして引き寄せると、狩人を左手に右手を持ち手を添え居合の態勢を取る。

 

「終わらせてやるよ…」

 

親指を鍔に押し当て鯉口を切った瞬間、抜刀。

逆袈裟から右薙ぎ。そこからクイーンの刀身を叩きつける。

再び狩人を右から左へと薙ぎ払いつつ左足を軸に回転。回転の勢いを利用して狩人とクイーンによる二連撃。

華麗なる乱舞を見舞い、ボルヴェルクを追い詰める処刑人。

そしてそれは最後の一撃か、持ち上げた二つの剣をX字の様に重ね…

 

「ぜぇりゃあああぁッ!!!」

 

ボルヴェルクの体を木端微塵にする程の一撃が放たれた。

跡形も残す事無く、処刑人に敗れた魔界の戦士は何か発する事もなく手にしていた槍と共に消失。

その最期を見届けた処刑人は解放された力 デビルトリガーを解除。

クイーンを背負い、狩人を格納しながら呟く。

 

「…ネンネしな」

 

その声は誰の耳に届く事はなく、小さく反響するのみ。

悪魔との戦いを終え、軽く息を吐く処刑人。勝てたのは良いが、まだまだと思う所は山ほどある。

今回はデビルブリンガーが、ひいては太刀状の魔剣『狩人』を隠し持っていた真の力…デビルトリガーが解放された事が勝利に繋がった。もし解放されてなければ、今頃無残に地面を転がっていたであろう。

 

(…あの時、あいつの声が)

 

視界が暗転し、暗闇に包まれた時に聞こえた戦友の声。

解放した時も背には彼女らしき魔人がいた。

彼女はそっと右腕を見つめた。もしかすればと思ったからだ。

しかし右腕が喋り出す訳がない。彼女はその場から去っていくのだった。

 

 

同時刻。

先行していたブレイクは群がる悪魔を討伐しながら奥へと歩みを進めていた。

上へ繋がる階段を上がりきると、正面のドアを開く。

何らかの用途があって作られたのか、そこは人が数十人は軽く入る事が出来るであろう広い部屋。

そして待ち受けていたのは黄金の甲冑を身に付け、斧槍を手にした何か。

ブレイクが訪れた事に気付くと、黄金の甲冑を身に付けた何かは斧槍を構えた。

 

「やる気満々って感じだな。ごみ溜めの中じゃマシな方だ、ガッツもありそうだしな」

 

「…」

 

リベリオンに手を伸ばすと思いきや、ブレイクは腕を回しまるでカンフーの構えの様なポーズを取る。

 

「来な」

 

その言葉通り相手はブレイクへと突撃。

一気に距離を詰めると斧槍を彼の首へ目掛けて振るった。

刃が迫ってきているにも関わらずブレイクは呆然と立っているだけ。すぐそこまで迫った瞬間、刃はブレイクの首を…

 

「遅いぜ」

 

跳ね飛ばす事は出来なかった。

一瞬だけ現れた障壁。それによって攻撃は当たらなかったのだ。

守りを模った構えを取るブレイクに対し黄金の悪魔は続けざまに斧槍を振るう。しかしまた障壁によって攻撃が無効化される。それでも諦めるつもりはないのか斧槍を振い続ける黄金の悪魔。

障壁を貫こうと突きを放った瞬間、赤い何かが駆け抜け黄金の悪魔を宙へと舞い上げた。

 

「やれやれ。さっき言った筈だぜ?遅いってよ」

 

一切傷を負う事は無く、呆れた表情で黄金の悪魔へと呟くブレイク。

彼が一体何をしたのか、例えこの場に人が居たとしても誰にも分からない。

ただ分かるとするのであれば、その戦法は防戦及び反撃を主としたというもの。

その戦法を名付けるとするのであれば…「ロイヤルガード」と言うべきだろう。




まぁ…そういう事です。
色々と飛ばし飛ばしですが、処刑人にもデビルトリガーを持たせます。ただし姿が変わるのではなくDMC4のネロの様なデビルトリガーと思って頂けたら幸いです。

次はブレイク編。斧槍を手にし黄金の甲冑を身に付けた悪魔ですが、とある別ゲーからです。まぁこういう奴が悪魔というのも面白いかと…。


では次回ノシ
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